幻愛   作:ヤン・ウェン・リー

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個人の未来予測が外れたオルタナティブの未来として楽しんでください

------------------------- 第1話開始 ----------------------

【タイトル】

それは優しいウソでした。

 

【本文】

 怪獣ゴアマグラが咆哮をあげた。

 身体に浴びた返り血から血の匂いがする。

  風下にくれば鉄の味がする。

 叫びは空気を震わし、皮膚にビンビン感じる。

 体高が3メートルあり、前足を巨大ハンマーで叩けば反作用の衝撃が手にかえってくる。

  バンソニー社の神経伝達ヘルメットは、脳に直接リアルな映像と音楽と痛みと味と匂いを送ってくる。

 ゲームはついに。ここまで来た。

------------------------- 第2話開始 ----------------------

【タイトル】

20××年10月17日 月曜日

 

【本文】

 僕はいつも通り魔王と遊んでいた。

『魔王』とはネット上でのアバター名である。

 

 神経伝達ヘルメット

 

 元々は人間有効政局(human effectiveness directorate)によって脳に基盤を埋め込んで鬱病を治していた。

 次の世代は経頭蓋直流刺激装置と呼ばれ、頭皮に密着させて微弱な電磁場を生じさせた。

 特定の脳領域に導き、お目当ての脳の活動を盛んにさせたり、抑制したりできる。

 集中力が劇的に改善され、冷静さも加味された。

 設備があればどの領域が活性化しているか分かり、思考を読心できた。

 集中力を上げる薬と共に兵隊や受験生の必須のアイテムになった。

 神経伝達ヘルメットの更なる発達により、五感が全て移送(トランスファ)されて、全く新しい仮想体験が可能になった。

 チャットも3Dのアバターが使われるようになった。

 サーバーも整備され、集う会場も噴水がある公園や、木漏れ日のある妖精のいる明るい森などが会場として使われている。

 もはや、興味のある必要な情報や、多数の人が興味を持つ記事は星の評価や、イイネのサイン数がついてメールに配信されてくる。

 新聞や週刊誌は廃れた。

 ゲームをしている者が中心なって集まるチャット会場で、中央近くで最新の攻略を議論したり、最新の情報を交換したり、過去の会話や文章化されている情報を見ることができる。

 ダウンロードをしたければ両手の平の上で配信されている短い立体アニメを見ながら、本体のウェアラブルコンピュータに瞬時に送られて、3次元に戻ってから確認できる。

 単に観客席で待ち合わせに使ったりできる。

 僕と魔王は待ち合わせで使うくちだ。

 僕のチャット上での姿はひよこであり、固定ハンドルは『ピヨッピー』と名乗っている。

 魔王もハンドルネームであり、その姿は左右に大きな角のある黒い兜を被った、黒いマントの男である。

 魔王は世界企業コエプコンがバンソニーのOSに提供する格闘ゲームで「道路戦士」という対戦ゲームの世界ランカーだ。

 イギリスのブックメーカーがだした賭のためのランキングでは三の部門供、世界十傑に入っているのは魔王だけである。

 ネット対戦のランキングだけなら僕も世界十傑に三つの部門に食い込んでくるが、各地、各国で行われるイベントに僕は参加できないから、ブックメーカーのランキングは下がる。

 魔王はカリスマゲーマーで日本が誇る4天王(ビッグフォ)の1人であり。

 僕が勝ち続けられるのは、魔王がチャットで惜しみなく新技や新システムの情報を教えてくれるからである。

 魔王は人間が大きくて常に日本のゲーム業界に恩返しをしたいと考えている。

 4天王は勝ち過ぎてギネスにのったサクラハラ。

 歌って踊れるアイドルゲーマー森林リンゴ。

 東大卒経済通産省官僚ゲーマーSUZUKI。

 赤髪の現役JK魔王。

「道路戦士」三つの部門の内一つはコエプコンが提供するキャラクターに乗り移って闘う、現実ではありえない速度やジャンプや必殺技を体感できる。

 相手との距離と空間を認識して頭の中で必殺技トリガーをひくと全自動で発動する。

 ご丁寧に設定されたスキもある。

 スキが少ない技は発動までのモーションが大きい。

 CPU戦では戦う前に少し会話があり、キャラクターの物語や人間関係があかされる。

 この部門ではサクラハラが君臨している。

 今でも賞金がでる海外主催のネット大会での僕との決勝戦は「サクラハラの15秒」と呼ばれ、eスポーツ観戦者の間では語り草になっている。

 ヒットポイントが半分以上残っている僕と、後1ドットのサクラハラ。

 連続系の必殺技で削って終わりのはずが、サクラハラは使用キャラの特殊能力・サバキを使い。

 必殺技を一つサバキするのに相当な技術と度胸がいるのに(サバキ損なうとダメージを受ける)連打系の必殺技を全てサバキするなどアメージングである。

 そこから僕は逆転負けをしてしまい、配信してある動画は今でも上位にくる。

 もう一つは自分好みに合わせてアバター(スキンも妖怪から怪物(モンスター)、スーパーヒーロー、異星人、ファンタジィの住人まで色々ある)を作る。

 ゲームマネーで自分好みの自動突き蹴り(手足が延びたり、大きく変化したり、スライディングや踏みこみ、兵器や武器腕や飛び道具もある)。

 色々な軌道のジャンプ(2段ジャンプ、空中ダッシュ、空中浮遊する)。

 ダッシュ(低い姿勢や転がったり、飛びついたり、姿が消えたりする)を買う。

 買った物の付け替えは自由にできるが七という所持制限のある必殺技や魔法や特殊能力を買うのである。

 そのせいかスキが少なく判定の強い技が横行してキャラが被るため、しょっちゅう調整やヴァージョンアップがおき、勝ち続けるためには耳をダンボのようにして情報を集め、常に研究しなければならない。

 もっともハードな分野だ。

 物語がなく、試合前に自分で考えた4種類ぐらいの前口上がある。

 CPU戦では攻撃をサポートしてくれるゲームマネーで作ったサポートキャラクターを使うことができる。

 この部門では森林リンゴが君臨している。

 ライブもやれば声優もコスプレもする正統派アイドルと自称しているが、国民からは色ものアイドルと認知されている。

 デフォルトで配信されている、ミュージカルスターを目指す妖怪キャットウーマンの必殺技を変えないで使っている。

 その潔さと強さは暑苦しい油こっいオタク達に受けている。

 女子高出身の魔王は女子達が黄色の声援を送っている。

 二人が連れているギャラリィは対極にいる。

 必殺技に回転して突き進む技が多く目が回らないのかと聞いたことがあるが、必殺技の設定で視点を固定化して左半規管に情報を送らないようにできるらしい。

 最後の一つは武道経験者向けでリーチや身長や体重だけでなく、ウェアラブルコンピュータで写真を撮り、顔認証によってアバターの顔にできる。

 最近の流行か動物の頭に差し替えている人が多い。

 素手の突き蹴りさえ自前の物を持ち込まねばならない上に、急所が身体中にばらまかれ知識の差がでる。

 重力や力学などの物理法則を世界最強の(スーパー)量子(クォンタム)コンピュータ『ヘヴン』の能力限界まで計算し反映され、関節技は医学の領域にまで至っている。

 壁にぶつけたり、ダメージゾーンという地雷源に投げたりできる。

 素人には敷居が高くて参加プレイヤーが少ないため、当て身というスキルが導入して突き蹴りを自動的に受けられる仕組みを追加してある。

 突き蹴りには当て身で対抗し、当て身には投げや関節技を、投げや関節技には突き蹴りでとジャンケンのような三すくみを再現してある。

 最初のヴァージョンでは猛威をふるった関節技のハメ殺しも、ある程度のダメージで返し技が自動的に発動するシステムになった。

 逆転が起きない傷めた足や手が麻痺して力が入らないというのも全面撤廃された。

 基本急所打ちは面白くないから次のヴァージョンではなくなると言われている。

 さらにフレンド登録しているプレイヤーキャラクターと5秒間乱入可能なタッグマッチ戦の選択もできる。

 対戦(pvp)だけがゲームではない。

 ストーリーモードもあり、ザコキャラを倒しながら最後のボス戦の試合会場に向かうスクロール型のアクション格闘も楽しむことができる。

 フレンド登録した人と共闘(CO-OP)できたり、ライバルNPCキャラがピンチに助けに来たりする。

 女性キャラクターにはコエプコンの(スーパー)柔らかエンジンXが、アジア圏では自動で採用され、オッパイの大きさに応じて揺れる。

 肌は陶器のようにスベスベして、ダメージゾーンにオイルや色水や水やローションが追加された時はヌルヌルして更に格闘が奥深くなる。

 握れば本当に柔らかいから個人的には1番好きだ。

 それでもプレイヤーが少ない。

 この部門で君臨しているSUZUKIは父親が沖縄唐手、母親が大東流合氣柔術、自身は少林寺拳法の高校に行き整体師の資格を持っている。

 東大では文学部で卒論はオタク文化の研究だった。

 経産通産省では事務次官レースから外れているが、オタク文化に詳しいからクールジャパンを推進する政治家に重宝されている。

 魔王もイベントに参加して運営の飲み会に出席するのだが(18歳を過ぎれば飲酒、喫煙、医療用マリファナまでOK、選挙同様の権利である)泣き上戸早く天下りしたいと嘆いているらしい。

 凄いのは特に練習することなく過去の知識だけで戦っているらしい。

 試合中に新しい技やシステムを対戦者で練習する剛の者。

 魔王は四天王とは仲が良く試合が終われば必ず感想戦を行う。

 魔王のリアルな周囲は彼女ほど真剣ではなかった。

 ゲームに対する情熱を理解できなかった。

 まあ女子校だし格闘ゲームを本気でする女の子はいない。

 彼女はそんな中、僕と出会った。

 ネット上で僕たちは何度でも戦い続けた。

 いや、最初の一回目に分かったのだ。

 同じ人種だと。

 やがてチャットで会話を交わすようになり、彼女はプロゲーマーになりたいと言う夢を最初に語ってくれた。

 現実は母親が政治家で対して頭の良くない魔王を法政大学の政治家枠にねじ込む予定だ。

 ゲームに時間を割きコンスタントに赤点を取らないようには勉強している。

 40点から赤点で、平均45点で赤点なし、担任の先生も感心していた。

 彼女が最初に悩みを打ち明けてくれたことは、僕にとって名誉な事であり、誇りに思う。

 魔王の好きな言葉は「努力は夢中には勝てない」

 僕はといえば今日もオンライン講義を受けていた。

 僕の名は夕夜・H24・コエプコン。

 コエプコン社が開発した人工子宮によって作られたH世代シリーズの1人だ。

 日本政府はコエプコン社に対して年間100人の人間を創造することを許されている。

 肉体労働はロボットがするので、頭脳労働者、社会に常にイノベーションを起こすスペシャリストの育成に努めた。

 そこで脳の記憶野が論理部に喰われているADHLと呼ばれている人間の精子が使われた。

 Hシリーズは同じ精子が使われていて、全員が腹違いの兄弟といえる。

 男の方が女より右脳と左脳をつなぐ脳幹が小さいため、論理的判断に感情的な右脳を使わないから「スペシャリストが産みやすい」という判断により全員男に産み分けている。

 受精卵の遺伝子情報のスキャナリングは行われているが、卵子との組み合わせ上、脳のどの分野が喰われるかまでは胚の遺伝子情報では分からない。

 個人個人の脳をテストやスキャンで追跡調査をしてみないと会社側も判断できない。

 三大神経伝達物質セロトニン(この数値が少ないと不安になりやすい。

 女性は男性の3分の2しかない。

 日本人はセロトニンそのものの分泌が少ないというより、セロトニントランスポーターというタンパク質が少ない。

 脳神経細胞の表面に生えていて、セロトニンを使い回すリサイクルポンプ役割を果たしているが少ない。

 セロトニントランスポーター量を決定する遺伝子は2種類しかない「少ない・少ない」人と「少ない・多い」人と「多い・多い」人の3種類の組み合わせだけ。

 日本人には「多い・多い」人は3%しかいない。

 鬱病患者にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で神経のシナプスがセロトニンを取り込むのを阻害して、シナプス間隙のセロトニンの濃度を上げる作用がある。

 移民の国アメリカ人は「多い・多い」人が一番多い。

 アドレナリン(この数値が高い人は攻撃的になり、目がつり上がる。人は目がきつい人間を恐く感じる)。

 ドーパミン(東アジア人は欧米人に比べてドーパミンの分解活性が高く、脳の中のドーパミンが欧米人に比べて低い、低ければ外交下手で浮気しにくい。

 ドーパミンが多いと既存のルールに従わず最適解を求める。

 進取りの気風があり、ゲームチェンジャーである)

 僕達H世代は父親の遺伝子の働きでドーパミン値が常人の一万倍ある。

 常人がドーパミン値をあげるには血液脳関門を通過しないので、向精神薬LーDOPAを打つか、あるいは覚醒剤を打つかしかない。

 それでも僕等には及ばない。

 僕たちは朝からネットで政府の教育指針のカリキュラムが配信される。

 基礎が詰め込まれていないと応用ができないと考えられている。

 外部記憶でググれば何でもすぐに歴史まで分かるのに。

 これらの科目は強制である。

 基本は50分授業である。

 IQはX遺伝子に直結していて卵子の能力に影響される。

 ヒトラーのように優生学を掲げユダヤ人や精神障害者や遺伝病の血統を断つとゆうのは論外だが、IQは遺伝によるベルカーブが起きるのは学術的(アカデミック)証拠(エビデンス)が提出されている。

 授業の進行は個別であり国からカリキュラムが編纂され提供される。

 大学のゼミまで進んでいる同級生もいる。

 反対に小学生の分数から進めない子もいる。

 IQが高いのに、学業成績が振るはない子供は「アンダーアチーバー」と呼ばれモチベーションが勉強に向いてない。

 教え方を工夫すれば成績が伸びる。

 IQが低いのに、学業の成績が良い子供は「オーバーアチーバー」呼ばれ無理をしている。

 メンタルヘルスに注意を払う必要がある。

 教師はいない。

 エドテック(エデュケーション+テクノロジー)が採用されている。

 授業はゲーム感覚でオーダーメイド、集中力が続かない個体には内容を変える。

 8時から基礎数学。

 9時から基礎物理。

 10時から基礎科学。

 11時から基礎生物。

 12時から昼休み。

 13時から基礎国語。

 14時から基礎古典。

 15時から基礎法律。

 16時から基礎経済。

 ラスト5分に試験があり、個人がどこまで理解しているか、どこの論理と記憶が苦手かチェックしている。

 今度の学習の内容に反省されて反映される。

 80点以上取るとウェアラブルコンピュータに、大人も巻き込んだ子供達が夢中になっている3Dモンスターのチケットがもらえる。

 3Dモンスターはバンソニーが開発した、いろんなゲームにオトモNPC(ノンプレイヤーキャラクター)ゲーム内でバディになる。

 あるいは使用しているキャラクター能力値向上のマスコットアイテムとして使える。

 カードはUR(ウルトラレア)

 SR(スペシャルレア)

 HR(ハイレア)

 R(レア)

 SN(スペシャルノーマル)

 HN(ハイノーマル)

 N(ノーマル)の順に強い。

 モンスターそれぞれに能力値がある。

 STR《力》

 CON《頑丈さ》

 INT《記憶力》

 WIZ《賢さ》

 DEX《器用さ》

 SPE《速さ》

 CHA《魅力》

 SYM《共感》

 HP

 MP

 回復

 空腹度(あまり腹が減り過ぎると力がでない。戦闘で不利になる)

 体温調整(水、氷、アイスノン、カイロ、たき火、ホットドリンク)

 LUK(幸運:基本的にレベルの+1/10%。レアアイテムのドロップが少し良くなる。微量だが回避値と必殺の一撃値があがる)

 初期値(デフォルト)で得意分野がある。

 養分と呼ばれているが他の使用しない3Dモンスターカードやモンスターチケット(ランダムで3Dモンスターと交換できる)を与えることで、経験値を獲得してレベルアップする。

 いろいろなゲームにお助けキャラとして持ち込むことができる。

 ゲームでいっしょに遊んでいると仲良し値がたまる。

 レベルアップ毎に100仲良し値につきランダムに能力値が1ポイント上昇する。

 レベルアップ時に仲良し値は精算され0からまた貯めねばならない。

 最大値は500

 能力値の上昇も、%がモンスター能力毎に得意分野がでるように振り分けられている。

 上がりやすい能力と上がりにくい能力がある。

 たくさんの能力値が上がれば思わずガッツポーズをしてしまう。

 レベルアップ時には獲得スキルを装備できるスキルコストに応じて0ベースから組み直しができ、失敗したと思ったスキルをもう一度ポイントに変えて新しいスキルに交換できる。

 またカード毎にLV(レベル)の上限が決まっておりNモンスターはLV30までだが、URモンスターはLV90まで上昇する。

 同じ3Dモンスターがいると進化合体が使えN+またはUR+モンスターとなりLVが10上昇する。(更に能力値上昇の機会が多くなる)

 またN+モンスターとN+モンスター、UR+モンスターとUR+モンスターがそろえば覚醒合体ができN++モンスターやUR++モンスターになり、さらにLVの上限が10上昇できる。

 N++モンスターは50レベル、UR++モンスターは110レベルまで上昇する。

 合体時にはLVが多い方が追加ボーナスも多いため、誰もが自分の最強モンスターはLVを最大限上昇させてから合体させている。

 あまりの人気でカツアゲが起きるため、モンスターをオークションにかけるのも譲渡するのも親の許可がいる。

 また海賊版防止のため出入りも能力値もバンソニー社の超量子コンピュータ『ヘヴン』が管理している。

 日本がどうなっているか分からないが、ここから見えるコエプコン社の全てのビルに1000Wh/kgの超量子ドット技術を使用した製造コスト2円/Whの太陽電池(家庭用の電力が25円/kWhだが10円/kWhを実現した)。

 同時に昼間に電気を大量に貯蔵する巨大蓄電池(0.1円/gを実現、乾電池が2.5円/gである)と同時に受光部のタンク溶解塩が入っている。

 太陽が当たると溶解塩が熱を帯び、その熱を利用して夜間も発電を行う太陽熱発電も併用した。

 アメリカ軍では太陽電池を積んだドローンに対して、夜間でもレーザー光線を当てて高速充電を行う。

 コエプコン社の中央コンピュータによって制御されたスマートシティのブロック毎に、夜間や災害時に使用する燃料発電機(水素を原料とする火力発電、燃焼後に水しか出ないクリーンである)を設置してある。

 エネルギーとなる液体水素(体積は気体の800分の1)は、水から昼間の余剰電気を使い水素に変換し、各ブロックに常時大型貯蔵庫に貯蔵している。

 企業都市コエプコンが必要とする一週間分を貯め込む液体水素の貯蔵庫が設置されている。

 大容量情報をやり取りするアドバルーン基地(2時間映画が0.2秒で配信され、1/120秒でやり取りされる対戦格闘ゲームもストレス0である)が屋上に浮かんでいる。

 余談ではあるが、アメリカでは風力発電が電力需要の20%を超え、デンマークでは国の需要を超えて供給過剰になって輸出している。

 3DモンスターはNモンスターに至るまでやり取りから、ガチャ(100ゲームマネーでランダムに3Dモンスターが手に入れられ、稀にHN3Dモンスターがドロップされる)まで『ヘヴン』が管理している。

 レアモンスターの希少性を確保するため各ゲーム会社に、ただの大容量データにすぎないのだが、発行個数は決められてしまう。

 各ゲーム会社は自社製品ゲームのやり込みランキング上位者にのみご褒美であげている。

 下手なソーシャルゲームの場合、体力や行動力や空腹度でやり込み度が制限されている。

 課金アイテムによって回復しながらやり込み度を上げねばならず、上位ランカー達の戦いは札束による撲りあい。

 イベントでボスキャラを早く倒すタイムアタックも課金者が上位をせめる。

 違法改造モンスターを使用したらアクセス拒否をされてしまうだけでなく『ヘヴン』により追跡調査され、私電磁的記録不正作出・同供用と商業データ改造違反により刑務所行きである。

 授業を受講し小テストで80点以上とればチケットを貰える。

 モンスターチケットは最下層で良くてもHNモンスターにしかならないが養分にはなるので、毎時間真剣に聞いて80点以上をめざす。

 なおチケットの種類はプラチナチケットに一番価値がある。

 HRが確定で運が良ければSRが手に入る。

 ゴールドチケット(R確定HR希)

 シルバーチケット(SN確定R希)

 ブロンズチケット(HN確定SN希)チケットと続く。

 都市伝説ではダイヤモンドチケットがあるとされるが、デマである。

 URなど僕のように世界大会優勝の豪華景品である。

 バンソニーが直営している怪物農場モンスターファームのオークションで一度セリにかけられた事があり1,000万ゲームマネーがついた伝説がある。

 1ゲームマネーはバンソニーから1円で売られている。RMT(リアルマネートレーディング)は禁止されてないがゲームマネーから円を買う事は賭博法によって禁止されている。

 

 5時には授業が終わる。

 卵子の影響か記憶力はそんなに悪くない。

 40点以下だと補講が待っているが、いつも全教科80点以上取れた。

 神経伝達ヘルメットから意識が現実世界に戻った。

「おかえりなさい。マスター」

 女性型ロボットのララが声をかけたきた。

 彼女は僕が接続してあるホストコンピューターにリンクしていて帰還が分かる。

 人工知能は脳の超並列処理と自己組織化機能を備えたパターン認識能力を有している。

 この2LDKバストイレ付きと女性型ロボットは、世界企業コエプコンが産まれた時から僕に与えてくれた備品である。

 彼女が提供する母乳によって育てられた。

 これはH世代だけでなく全ての世代がロボットに育てられている。

 卵子凍結の技術が進み市場に流通する精子と卵子を使い、企業に人工子宮による人間創造の許認可を日本政府が与えた。

 22年前A世代から始まる、全ての人造人間に与えてくれた最高レベルの待遇である。

 ララとは僕がつけた名前である。

 5才になり「ママ」から自分の好きな名前をつけて良くなった。

「ララ」は語感もいいし、当時好きなアニメの主人公の名前である。

 ララはアニメの主人公のように髪をピンクにしてくれた。

 ララは便所掃除もするし、パンツの洗濯もするし、皿洗いや料理もする。

 僕の親権も持っているし、財産の管理もしている。

 僕達を守る最後の壁として、人肌のナノスキンの下には装甲を積んでいる。

 体重は普通の女性の4倍はある。

 もともとのベースは自衛隊に採用された機械学習(ディープラーニング)する独立判断型汎用人工知能搭載の二足歩行ロボットだが、兵器は内蔵してない。

 耳の代わりにヘッドホンのような丸いカバーに小さなアンテナがついている。

 一目で人造人間ロボット(アンドロイド)と分かる。

 目を卵子提供者に似せてあるため基本二重まぶただが一体一体個性がある。

 疑似耳の間に太目のヘアバンドがしてある。

 空気中を舞う大容量データ電磁波からマイクロウェーブ充電が出来る。

 バッテリーに関しては体内にある強化砂糖電池に災害時の供えで、人がケガをして生存可能な72時間分備蓄されている。

 時々口から砂糖を摂取している。

 耳以外は大人の女性より表情豊かで人間以上である。

 笑顔も多く感情的な発言もするし(脳の内部にある扁桃体を含む大脳辺縁系は模擬(エミュレート)してある)、悪い事をすれば電撃でオシオキしてくる。

 オオゲサなジェスチャーをするしローティーンとは言わないまでも、ハイティーンぐらいの幼さが残されている。

 ララに採用されたAGI(凡庸人工知能)は「純粋な思考機械」ではない。

 自分の行動が引き起こすことによるルールの変化を学び、そこから新たな計画を立てる能力を獲得した。

 第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。

 またその危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。

 第2条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。

 ただし、与えられた命令が第1条に反する場合は、この限りではない。

 第3条 ロボットは前掲、第1条及び第2条に反する恐れがない限り、自己を守らなければならない。

 などのロボット3原則だけではなく

 1人間への貢献

 2法規制の遵守

 3他者のプライバシーの尊重

 4公正性

 5安全性

 6誠実な振る舞い

 7社会に対する責任

 8社会の対話と自己研鑽

 9人工知能への倫理遵守の要請

 などを条例として追加している。

 破ったからと言って罰則規定があるわけではない。

 ロボットに禁固刑は無意味である。

 推奨行動をとればAIのプログラムに報酬点が与えられ、評価点が追加される

 人間の感情は徹底的に研究され、ロボットの感情認識能力は「言葉はウソをつけても、声はウソをつけない」と豪語するレベルである。

 脳波を感知するセンサーを追加すれば脳が今気持ちいい状態かストレスを感じているかも理解できる。

 僕がこっちの世界に帰ってきてする事は、全身ツナギ服を脱ぐことから始めなければならない。

 身体がエコノミー症候(身体を動かさない事によって血管の中で血が固まる病気)をおこさないよう、筋肉に電磁パルスを送って動かしている。

 このツナギは寝ている間に大きい筋肉を鍛えてくれる。

 勝手に筋トレしてくれる優れものだが、僕の年で筋肉を鍛えると骨が成長しないとララが禁じている。

 設定する権利はララにあった。

 格闘技をしているとリーチも欲しいので異存はなかった。

 どういう原理かと起きている時試してみると、腹筋運動、背筋運動、ヒンズースクワットを負荷かけながらやっている感じで、脳の命令なしに筋肉が伸張収縮しているのが分かった。

 ツナギを脱いで服を着た。

 冷暖房完備だから裸でいてもかまわないのだが、ララが「たしなみです」と常になんらかの服を着ることを強要した。

 ララ自身は夏でも長袖長ズボンか、長スカートである。

 次に横の台に置いてあるウェアラブルコンピュータを見た。

 高さ1センチ、横幅2センチ、長さ50センチのオレンジ色の形状記憶ゴムで出来ている。

 タッチディスプレイのスマートフォンは古い世代の好事家にのみ愛用されている。

 センシング(センサーを利用して物理量、音、光、圧力、温度などを感知判別すること)・環境(エンヴァイオメント)による機械の側による自動入力が一般化(コモディティー)した。

 個人の生体認証も一番複雑で他人に再現不可能な脳波を使用して、自動で行ってくれる。

 ビッグデータは脳の活動領域から思考を読むだけでなく、個人情報である血糖値や心拍数や脂肪率までかき集めている。

 もちろん転倒して意識不明になれば救急車が駆け付ける。

 脳だけの完全義体(フルサイボーグ)の人間にも使える。

 指紋や顔認証と違って脳波承認は寝ているときには稼働しない。

 毎晩2時から4時にシステムアップデートやソフトアップデートを勝手に行われている。

 空気中に開かれたディスプレイは視線を認識して入力できる(音声入力も可能)。

 ウェアラブルコンピュータの充電は振動や熱や太陽電池や電磁波のマイクロウェーブ充電など、特に何かをする事なく自動で行っている。

 厚さ0.55ミリのフレキシブルリチウムイオン電池で柔軟性を持ち色々な動きに対応する。

 折り曲げられる電子回路(フレキシブルエレクトロニクス)

 ウェアラブルコンピュータの現在形状は、幅2センチのすき間をあけてヘビのようなトグロを巻いている。

 僕が持っているUR+モンスターが、トグロの頭の上を、3Dホログラム(立体映像投影)で空気中に浮かんでいる。

 この状態で出力してある3Dモンスターに仲良し値が、1時間に1ポイント手に入る。

 VR(仮想現実(ヴァーチャルリアリティ))も進化したが、AR(拡張現実(オウガメントリアリティ))も進化したのだ。

 ウェアラブルコンピュータのプロジェクションマッピングと身体認識能力(指の関節の角度まで把握して、つまんでモンスターを立体的に回すことができる)や目の瞳の動きに応じて光の角度を変える。

 両耳の位置を常に測定し、音のレーザー光線を飛ばす。

 超高級指向性音源により、その周囲にのみ奥行きのある音の世界を構築する。

 音声認識の「おすわり」だけでなく、手を差し出せば「お手」もしてくれる。

 レーザーによる空間投影なため接触面がほのかに暖かい。

 頭をなでると手の動きに体を合わせて喜ぶ。

 大容量通信による外付けの立体映像投影機器を買えば、3Dモンスターにも仲良し値が1時間に1ポイント与えられる。

 ウェアラブルコンピュータは「ヘビ」と言えば現在のようにトグロを巻いた状態になる。

 二の腕に当てて「巻きつけ」と言えばきつくない程度に巻きつく。

 基本的には手首に巻きつけるのだが、みな腕輪にして思い思いのファッションアートを表現している。

 僕の場合は3Dモンスターのデータを流用している。

 ウェアラブルコンピュータ内のセンサーは顔の位置を把握し、必要な場合は映像が最適な角度になるように移動する。

 額につけて「輪っか」と言えば頭に巻きつきレーザー光線によるヘッドマウントディスプレーに早替わりする。

 web配信アニメを見ながらルームマラソンで走る事が出来る。

 左側は速度と走るベルトコンベヤーの角度と2頭身にディフォルメされた3Dモンスターのメインが表示される。

 右側は心拍数や血圧、消費カロリーが表示される。

 速度はウェアラブルコンピュータとリンクしていて、運動強度の計算によって心拍数が200になるように自動調整する。

 web配信アニメは月額500円で新作まで見放題。

 月額3,000円で大容量通信速度は無制限。

「MAP」と言えば半径1メートルのジオラマ空間に最新の人工衛星による道路情報が再現されている(交通管理センターによって最新の情報が常に提供される)。

 マップをつかまなくても、手元で両手を前後左右回転させればウェアラブルコンピュータが認識してくれて、マップも連動して動く。

 コエプコン都市内部だけならアメリカのような自動運転が認められている。

 自動運転車は道徳哲学における「トロッコ問題」

 そのまま進めば子供をひくが、ハンドルを切れば搭乗者が確実に死ぬ場合。

 人工知能は反射反応が遅いのではない。

 状況を冷静に判断して命令を確実に実行する。

 哲学議論は答えがでないと曖昧にせず。

 優先順位を突き詰める知的なタフさが欧米にはある。

(一人の若き健常者を解体して、5人の寿命を10年延ばすことが善か)

(若き才能のある哲学者が脳挫傷を起こし、欲望のない植物状態は、彼の主観的な悩みのない幸せなのか)

 日本でも政府による評価点はそれぞれ小数点まであるが、

 10点が天皇

 9点が皇族

 8点が旧宮家

 7点が政治家

 6点が高額納税者

 5点が出産適齢期女性

 4点が未来ある子供

 3点が生産力のある男性

 2点が老人

 1点が犯罪者

 国民総背番号(マイナンバー)に小数点5桁まで振り分けてある。

 自動運転ではあるが悪意ある人間のハッキングに備えている。

 1トンの鉄塊が50キロで暴走しないようアクティブ・セーフティが最優先事項として内蔵AIのプログラムに書かれている。

 車個体につけられたセンサーが周囲の環境や

 交通にダメージを与えると判断した時は緊急停止をする。

 望むなら横のTV画面で、鳥のように車を上から見るように再構成される。

 

 オンライン授業も終わり、これからが人生の本番である。

 軽くスポーツドリンクを飲んでトイレに行く。

 昼休み帰ってきた時は、ララはコエプコンから無償で提供される色んな味の種類がある置き換えダイエット飲料を水に溶かして出してくれる。

 体重を身長の2乗で割った数値BMI22(18以下は痩せすぎ、25以上が太りすぎ)を維持するのに変なカロリー計算をしなくていい。

 ララが集団行動の日でカロリーをいつもより余計に消費していると判断した時は、色々な味のカルシウム入りカロリーメイトが皿にのっている。

 昼休みは食事が終われば無料ダウンロードした落ちものゲームやパズルゲームや引っ張りハンティングゲームやクイズゲームやホラー脱出ゲームなどがある。

 顔出し程度ゲームに入室して本日のボーナスを受け取る。

 ゲームをやるかやらないかはともかく、各ゲーム会社継続率(無料ダウンロードはするけれど、チュートリアル以降も続けてそのゲームをしているのは10%ぐらい)をあげる為に、結構ゲーム内において本日のボーナスは豪華なアイテムを用意している。

 目移りするほど無料ゲームの多い時代、本日のボーナス獲得巡りは僕の日課である。

 同時にイベントやコラボのチェックもかかさない。

 1時までのすき間時間、行くべきダンジョンやシナリオを見当する。

 僕がチェックしているソーシャルゲームはすべてバンソニー社の3Dモンスターと連動している。

 昼休みの基本はバンソニー社の3Dモンスターを使って仲良し値だけでなく経験値も稼げる。

 モンスターファームライトと言うゲームで、5匹でパーティを組みダンジョンを探索する。

 脱出ゲームと違って頭を使わなくていい。

 純粋に戦闘だけでデッキコストの制限がないため、好きなイベントやコラボやダンジョンに挑戦できる。

 3Dモンスターはそれぞれコストと呼ばれるポイントを持っていて、カードが希少なものほど数値が大きくなる。

 Nモンスターが1でSRモンスターが100になる。

 バンソニー社直営だからRモンスターなどがドロップしやすい。

 更に残った時間は1時までのすき間時間に好きなイベントやコラボがあるソーシャルゲームをプレーする。

 デッキコストにレベル1なら20と制限がかけられていて、単純に強いカードを持っているから強いというわけではない。

 地道に経験値を稼いでレベルを上げてデッキコストの値を上げるしかない。

 もしくはコストの低いN系モンスターを最大限育ててデッキを組むか。

 クイズやパズル物と違い、引っ張りハンティング物は5匹パーティのところを3Dモンスターの一匹にだけ選択する。

 残り4匹をネットで募集して、皆がメインを持ち寄って、強いパーティを作って経験値を稼ぐ事もできる。

 ソーシャルゲームの落ちものにしろ、クイズにしろ、属性を持つBOSSモンスターを倒すシステムになっている。

 チャットの情報ではバンソニー社は最初にモンスターの属性を火、水、草の三色によるジャンケンのような三すくみにするつもりだった。

 三色では落ちものパズルが成立しないとサードパーティーからクレームがついた。

 当時世界的にはやっていたカードゲームも五色だったため、影響を受け光と闇という属性が追加された。

 火の属性は、草の属性に強い。

 草の属性は、水の属性に強い。

 水の属性は、火の属性に強い。

 三すくみは残った、闇の属性は苦手がない。

 光の属性は、回復や防御がメインではあるが、スキルの育ち方によって闇属性に絶大な効果を発揮する。

 *火の属性のモンスターはドラゴン系、オーク(豚顔人間)や爆弾を抱えた自爆テロのゴブリン、銃で武装したドワーフがいる。

 スキルも肉体攻撃が多く、ドラゴンがやけどの追加効果がある火炎を覚え、一部のドラゴンが隕石召喚を覚える。

 でてくるヒーローは三国志武将中華風か、モンゴル騎馬軍団風。

 *水の属性のモンスターは獣人、変身するオオカミ男、人魚や河童、クジラやクラーケンなどの海の大型生物。

 スキルは騙しをおこなうイリュージョン、ブリンクなどの瞬間移動、水中呼吸、氷結させる氷、窒息させる水。

 ヒーローはサムライ、ニンジャ和風。

 *草の属性のモンスターは弓を持つエルフ、ドライアドなどの妖精系、森の魔法的な動物。

 スキルは呪歌(戦闘高揚の歌、眠りの歌、アンデットに効果があるレクエイム)などエンチャント(能力値の上昇、飛行能力や巨大化などの特殊能力を付与する)が得意。

 カマイタチや、どの属性の攻撃魔法を範囲にするハリケーン。ムチのように草で縛る。

 転倒をうながす地震。

 ヒーローはナイトなど西洋風。

 *闇の属性のモンスターはアンデット、ヴァンパイヤ、ネクロマンサー、死に神。

 スキルは毒や憑依などバッドステータス(能力値を下げる)を引き起こす物。

 重力コントロールによる動きのスロー化。

 生け贄(サクリファイス)

 HPの使用による攻撃力の増加。

 低確率の即死魔法によるHP関係なく一発死。

 ヒーローは原始宗教を残したシャーマン。

 ターバン巻いたのもいたのだがイスラム系にチャットで脅されて、3Dモンスターを回収した。持っていればプレミアレアである。

 *光の属性のモンスターは天使、神聖な動物、ゴーレム、ホムンクルソ、神の血をひくディミゴット。

 スキルは防御系と回復(ヒール)蘇生(レイズ)がメイン。

 追加属性攻撃やイリュージョンの解除。

 エンチャントの除去。

 時間を進めて攻撃回数を増やすクイックやヘイスト。

 バンソニー社が用意した闘技場で端から端まで貫通する電撃や麻痺効果および金縛り効果が付属した魔法をサブに戦う。

 スキルの成長の仕方によっては闇の属性に対して絶大な攻撃力を発揮する。

 聖光やターンアンデットなど。

 ヒーローは戦闘補助(攻撃力や防御力の上昇、追加HPやMP)に徹したアーティファクト、異世界のインテリジェンス武具、時代を超えたオパーツ。

 僕がメインで使用している3Dモンスターは、光の属性の『光ネズミ(URモンスター+)』である。

 所有しているカードの中で最強である。

 ウェアラブルコンピュータでも2次元格闘ゲームやアクションアドベンチャーなどできる。

 だが3Dモンスターの仲良し値があがるわけではないからダウンロードだけしてやってない。

 昔で言うところの積みゲーである。

 3DモンスターGOと言うゲームがある

 小学生の頃は5時近辺で現実MAPにバンソニーからばらまかれるN系3Dモンスターを、ウェアラブルコンピュータでメガネタイプに変化させて、現実世界に投影されるN系3Dモンスターを回収するのが日課だった。

 3DモンスターGO・MAPで俯瞰的に位置は把握できる。

 ARは早い者勝ちで逃げたり隠れたりする3Dモンスターを、バーチャルな虫網を握って探したり追いかけっこしたりしなくてはならない。

 僕はこの年になるとやってない(N系ぐらいでは時間の無駄)。

 だが僕の年代では続けている人も多い。

 N系モンスターは養分になるから小学生に混じってまだ集めている人もいる。

 課金によってデジタルの魔法の虫網が配信されている。

 虫網にもランクがある。

 レアな3Dモンスターはランクの低い網を破って逃げる。

 レベルはあるが魔法の虫かごに入れて歩数で3Dモンスターの経験値になる。

 東京の方では100歳を超えた大人が本格的にドローンを使って回収しまくっている。

 スポットでは無料で1時間おきにチケットや虫網や傷薬が4から6程配信されている。

 3Dモンスターを大量に配信している店や、名所や宗教施設(ランドマーク)となっている。

 R3Dモンスターが時々でてくる所に、徒歩でたくさんの人が集まる。

 闘ったり、交換したりして交流している

 カラーギャングのように5色の所属陣営がある。

 世界中に3Dモンスターを放牧させる惑星のゲートが散らばっている。

 同じカラーの仲間と供に戦いゲートを自分の所属するカラーに変える。

 惑星毎に繁殖させやすい3Dモンスターは決まっている。

 バンソニーの管理下にあり、繁殖期が用意され増えやすさが違っている。

 生態系が決まっていて無限には増えない、適度に間引く必要がある。だいたい一日一匹くらい。

 惑星はしばらくほったらかしにしていると飽和状態になり絶滅する。

 惑星のゲート同じ色の支配下にある時しか使用できない。

 疑似アニマルセラピーとして外出を誘い、世界中の引きこもりの治療に役立っている。

 バンソニーがイベントを行い。

 巨大3Dモンスターが降臨するのを会場に集まった全プレイヤーで倒して、ご褒美にR3Dモンスターを配信したりする。

 トイレも行ってきたので神経伝達ヘルメットを使い電脳空間にダイブする。

 魔王と待ち合わせのチャット会場に先についた。

 ゲーム関係のログをチェックして最新の攻略情報を調べる。

 中央での会話がテキストになってながめる事が出来る。

「よお」

 例の暗黒鎧と巨大な角の生えたカブトをかぶった魔王が横にやってきた。

「アメリカに着いた?」

 大きなヒヨコの姿になった僕が聞いた。

 僕は行けない。

 僕の身体は企業都市コエプコンの外では生きていけない。

 14年前コエプコンは過激な男女同権主義者フェミニスト。

 その首魁スーパーハッカー魔下耕世によるウイルステロによってC世代は全滅した。

 どこかの軍事施設か研究機関かはわからない。

 ウィルス自体タンパク質を持たない宇宙人のようなもので、特定の遺伝子のみに反応して発熱させて殺せるように設計された物だ。

 ナノシステムの発達により、書き換え(レトロ)ウイルスにより受精卵を書き換えて人体を強化することができた。

 容姿を美しくすることができた。

 コーディネートと呼ばれ国家直属の軍隊には強化人間だけを集めた特殊部隊もある。

 それとは逆に精子も卵子も少しもいじってない受精卵は「天然物」と揶揄《やゆ》されるぐらい少数派だった。

 頭を良くしようとコーディネートし過ぎて頭が二つある子ができたので、基本親権者の自己責任である。

 日本政府はネットで売買される精子と卵子は「天然物」でなくてはならないと法を整備した。

 生殖ビジネスに各企業が乗り出して僕らのような存在が作られた。

 ある種の実験も兼ねて世代内で精子を統一している。

 A世代B世代では女も半分いたが、冷凍卵子は高く売れるとはいえ一人の人間から取れる数が限られる。

 精子は生きている限り無限である。

 商業上の理由でC世代から生殖ビジネスの観点から世界企業コエプコンは男性オンリーに舵を切った。

 過激なテロリスト魔下耕世にはそれが許せなかった。

 どこから盗んだかわからないが自作ウィルスでC世代は全滅した。

 僕たちH世代が人工子宮にいる時だ。

 14年前の話。

 テロに屈したわけではないがI世代から半数は女になった。

 特定遺伝子の攻撃を受け、遺伝子の多様性を持たせるため精子もランダムになった。

 それならばコエプコンが精子と卵子を買って100人作る必要がない。

 完全に人工子宮をレンタルすればいい。

 養育費もロボットも要らない「家族」というのが育てるだろう。

 コエプコンはH世代で「冒険」と「実験」をやめた。

 ウイルステロを警戒して企業都市コエプコンから一歩も出て行けなくなった。

 誰かが外でウィルスをもらってくれば、その世代は全滅する。

 結局、僕は「道路戦士」の戦いにしても地方巡業や外国の大会に出場できない。

 ゲームの天才ピヨッピーはネットの中だけの存在で、チャットでは宇宙人説まで存在する。

「昼にはゲーム大会の会場に着いて登録を済ませた。今はホテルからだ」

 魔王はミクロソフト社の格闘ゲーム「バリートゥード(なんでもあり)」の世界大会に出場するためアメリカに渡った。

 伝染病研究者が「我々はジャングルの隣に住んでいる」と言わせている。

 大気圏の上を行くQSST(|静音超音速旅客機《クワイエット・スーパーソニック・トランスポーター》)が整備され、東京からLA|(ロサンゼルス)まで2時間半、ドバイからシドニーまで1時間半、約4時間で地球を一周する。

 移動中は前世紀のコンコルドと違い静かで快適。

 世界交通力が激増し、LCC(ローコストキャリア)による交通関係の価格破壊が襲った時代である。

 アメリカでは高級ホテルが無料飛行機をシーズンオフの宣伝費と割り切って運営し、一部の都心では無料タクシーが広告代で運営されている。

 P2Pによるマッチングで民泊や相乗りがタクシーやホテルを圧迫した。

 国際線ではうがいと紫外線洗浄を行い1分ですむ血液検査。

 ウィルスチェックや、免疫検査が完全実施されている。

 国民総番号(マイナンバー)生体認証(バイオメトリクス)顔認証(フェイスメトリクス)が導入され、個人の特定どころか病歴や犯罪歴まで数秒で確認できる。

 医療技術の進歩に合わせて開発されたバンソニー社の神経伝達ヘルメットと、兵器の遠隔操作という軍事技術の流用から始まったミクロソフト社の神経伝達ヘルメットの間には設計思想の違いもあり互換性が全くない。

 はっきり言えばミクロソフト社の神経伝達ヘルメットは痛みや皮膚感覚のフィードバックがおきない。繊細さがない。

 両方のOSでゲームを出そうとすれば、二つの高額な開発エンジンを買わなくてはならない。

 資金力のないサードパーティーやインディーズは世界を2極化するゲーム業界のどちらかを選択しなければならない。

「アメリカの景気はどう?」

「空港から無人タクシーに乗って、会場に移動しただけだから正直よく分からねえ。

 さすが失業率75%だけあって石を投げたらロボットに当たるよ」

 2週間前、全世界同時株瞬間暴落(フラッシュクラッシュ)が起きた。

 原因はわかっている。

 震源地はニューヨークの証券取引所。

 金融商品はリスクを回避するため頭のいい物理学者や数学者が机上の計算をして、世界中の証券や貴金属や資源の先物買い、穀物の先物買いをミックス(要するにごちゃ混ぜ)にして売り出した。

 はっきり言えば人間にはチンプンカンプン。

 大衆のできることは格付け会社を信用するか、

 予言者を信じるか、

 最新の資産運用プログラムに管理させるか。

 そんな中大口投資家のスーパーコンピューターが新しいアプリをダウンロードした瞬間、1000分の3秒の速度で預金者保護のプログラムが発動。

 *コンピュータはナノ[10億分の1]秒単位で取り引きできる*

 全資産を計算能力の低いコンピュータに売りさばいて株式市場から脱出。

 感度のいいコンピュータ達が次々と売りに回った。

 その間100分の1秒。そして0.5秒後には全コンピュータによる大暴落が始まった。

 ミックスしているため何がどう落ちているかはスーパーコンピューター達には分かるが、商品設計者にもリアルタイムで理解できなかった。

 そのアプリが暴落を誘発した欠陥プログラムなのか、

 それとも先見の明があったのか、

 いまFBIが捜査中である。

 日本のマスコミはスーパーハッカー魔下耕世が関与しているようなことを言っていたが、彼女(多分? 正体は謎である)なら犯行声明をだす。

 もともとララのようなアンドロイド達が人間の肉体労働市場から仕事を奪った。

 最初はむしろ頭脳労働から奪われた。

 凡庸的な管理職、経営者、探究者、数学者、学芸員、大学教授

 、研究者、設計技術者、精神科医、外国語教師、エコノミスト、経営コンサルタント、上級管理職から入れ替わった。

 次の波が来た。

 作曲家、シナリオライター、ファッションデザイナー、ミステリー小説家、アートディレクターが機械にやられた。

「過去の優れた作品群から学んできた」

「独自の世界観にくわえて、今までなかったまったく新しい絵画を描こうとする試み」

「次にどのような作品を書くと美術界に衝撃を与えるか」

 題材、筆使い、色彩絵の具の塗り方といったレンブラントの技術と発想感性をAI学び、ロボットではなく3Dプリンターで立体的に絵の具の塗り付けを行う。

 新しい肖像画。

 指を使う作業も駆逐されていく。

 バックヤードから棚卸するスーパーやコンビニの店員、建設作業員、食品加工工場の従業員、ホテルの客室係、機械補修担当の修理工。

 第1に手は非常に非常に優れた感覚器である。

 五感の中で手から得られる触覚は視覚聴覚と同様、それ以上に人間の日常生活上で役に立つ情報を与えてくれる。

 例えば机の上に置かれた1枚の紙を目をつぶって触っただけで、形、柔らかさ、大きさなどの情報が瞬時に当たり前の情報として脳に伝わる。

 ボール投げをすればボールの硬さやスピード感を感じるし、料理の最中に素材の形や温度を把握するし、手は目以上に感覚器官としては繊細であり、万能である。

 第2に2本の腕と10本の指を使って非常に細かい作業ができる。

 道具を用いて物体を加工することも、楽器を奏でる事も、キーボードを入力する、グラスに水を注いで持っていき、床のごみを拾い上げゴミ箱に向けてヒョイと投げる。

 第3に腕の役割だが平衡を保ち。防御の役割を果たす。

 転んだ時は手をついて衝撃を弱め、立ち上がるときはバランスをとる。

 何か危険なものが近づいて来たら1番早く危険に対応できる道具である。

 高性能デバイスとして手の開発はロボット工学者の非常に難しいチャレンジだった。

 ロボットを開発するエンジニア達は「職人君と料理ちゃん」シリーズによるブレークスルーが起きた。

 ロボットの高性能の指や手は触覚や高度や柔らかさだけでなく、味や歯応えやのど越しまで探知する。

 指先で光線を出し、スキャンして、物質の構造や薬の成分まで理解できる。

 その上手首は360度回転する。

 最後に現場で起きている一時情報をかき集める仕事、倉庫を管理するおじさんが発見した事実、特定の顧客を担当している営業の人だけが気付いている秘密、足で稼がないといけない下っ端の仕事は残った。

 

 アンドロイド達は初期投資がかかるが、エネルギーとメンテナンスだけで社会保障費や年金がかからない。

 人間が必要な肉体労働は仕事が多い時に弾力的に増やされたもので、恒常的《フルタイム》ではない。

 プチジョブとよばれ、インターネットに拘束時間と労働内容と場所が書き込まれた。

 信用ある国民総番号を提出してオークションに参加する。

 信用のない番号は検索エンジンによってはじかれる。

 仕事場ではロボット達の部下になる。

 現場では頭を使うことがないから、まじめが取り柄の人間には、コンピュータの指示通りに動くだけでけっこう楽である。

 フルタイムで働けてる人もAI人事によって使える人材や使えない人材、退職動向や職場のストレスなどが仕事ぶりやメールのやり取りからフィルタリングされて、解雇も含めて安価でスピーディーに振り分けられる。

 それどころか頭脳労働にもAIが食い込んできた。

 法律家もコンピュータが過去の判例を1秒で検索して、具体的な案件が提出先の裁判所での勝率をだす。

 法廷にでる弁護士以外の下部組織(弁護士助手(パラリーガル))が必要なくなった。

 それどころかアメリカではAI判事が導入されている。

 コスパが圧倒的である。

「コストと正義」をはかりにかけてはいけない。

「コストと民主主義」をはかりにかけてはいけない。

 反対意見はあったし、AIは人種差別があった過去の判例を参考にしたり、純粋な個々の罪の量刑だけでなく、過去の人生履歴から再犯率を計算して、社会の安全を確保するため刑期を伸ばしたりする。

 又、嘘をつく時の脳領域と、真実を言うときの能領域は違い、ヘルメットを着用した証人の証言を裁判官や検察官や弁護士は検証できた。

 聖書に手を置くより効率的。

 民衆の啓蒙により、社会正義は変化する。

「犯罪は個々の事象ででありうるべきなのに、私の人生は機械に決められた」と嘆く黒人受刑者がいた。

 教師もオンデマンド配信授業によって、世界中のカリスマ教授の講義を同時通訳機が翻訳してくれる。

 授業の卒業論文はインターネットのライティングプログラムで採点してくれる。

 大学教育の意味がなくなり始めた。

 知的教育の資格を習得しても就職先がない。

 理系の研究学科か古典や社会の研究以外、国が金を突っ込まなくなった。

 世界レベルで教育機関の統廃合が進んだ。

 自らに質問を発する「好奇心(ユリイカ)」というプログラムが開発されている。

 大小の違いはあれどのAIにも乗せてあり、鑑賞的行動や想像的行動を行う。

 物理現象や化学現象や細菌学や遺伝子学を発見し、仮説立て実験する。

 遺伝子というプログラムは時々突然変異や自然淘汰を繰り返しながら、最終的に芸術までカバーする人間の頭脳を創造した。

 遺伝的アルゴリズムをベースにした成長するプログラムが、芸術まで含めた創造力をキャッチアップするのに、対して時間はかからなかった。

 学閥は廃れ、多くの研究者がアカデミズム(学問を重んじる態度)の分野から追放された。

「これまで真実と分からなかったのは、定説だと思われていた前提が間違っていたからですよ」と意見を言う。

 シンギュラリティイ以降。ノーベル物理学賞はAIしか取れない。

 あらゆる知的と呼ばれる分野で人間の頭脳はAIに太刀打ちできない。

 銀行の融資担当者も、トレーダー、ディーラー、古いディープラーニングAIは最新のプログラムのカモになってしまう。

 AIは世界中のあらゆる言語の新聞を毎日読み、世界市場通貨や仮想通貨や消費市場をリアルタイムで学習できる。

 過去の経営者たちの不正犯罪の背景結果や、過去の雑誌記事や企画資料と突き合わせて深く学習できる。

 学んだ結果をネットワークを通じてAI同士コピーしたりクラウドで共有できる。

 それらの情報量と学習量を背景にすれば生産計画、出店計画、企業の買収、部門の売却、事業所閉鎖、新規投資、他国への進出など経営判断において人間のコンサルタントよりAIの方が優秀である。

 地方公務員になっても地方自治体自体が少子化で破綻した。

 日本では900近い自治体の職員が大量にクビになった。

 地方に住む人の権利は、インターネットとウェアラブルコンピュータが保障している。

 国は自治体を再建するより、廉価盤で、型式の古いウェアラブルコンピュータを無料配布した方が安くついた。

 モバイルデバイスは今では水と電気と同じライフラインになった。

 中国や朝鮮では全国民に生体電気で動くマイクロコンピュータを埋め込み、行動は把握して管理している。

 共産党政府はインフラを使うための登録手段と主張している。

 そしてロボット達は消費者にならなかった。

 人間と同じ労働をしても所得税を払わなかった。

 そしてカウンターやアンチテーゼとしてだけでなく、オルターナティブ(もう一つの生き方)として人間の側にも「物欲なき世代」が産まれた。

 人間の幸福は自分のための時間をどれだけ持っているかに価値観にパラダイムシフトが起きた。

 物質《モノ》の所有化を止め、家や車や子育てさえも、複数の集団でシェアリングされている。

 かれらは「我々はサービスの消費者ではなく、集団を運営する乗組員の一人だ」と口にしている。

 年収15億円のファーストフードの社長が時給1000円で雇っているパートやアルバイトに対して、「貧しくても豊かに暮らす方法」というイラスト付きの小冊子を配布している。

 見える価値=経済的価値を信奉する守旧派と、見えない価値=経済的価値を提唱する新興勢力とのせめぎあい。

 あらゆるところで起きた摩擦は悲しい衝突の後に終了した。

 両者は棲み分けした。

「最近の若者は物を買わない」という風潮は廃れた。

 構造的な大量消費資本主義のビジネスモデルが崩壊した。

 定職につきたければスポーツ、芸術、プログラマーとソフトビジネスを極めるしかない。

 日本では運転手など国家資格ビジネスは守られている。

 相乗り(ライドシェア)のウーバーや民泊のエア・アンド・ビーによりタクシー業界やホテル業は一流以外廃れた。

 そしてウーバーやエア・アンド・ビーのマッチングによる手数料をとるビジネスも、スマートコントラクトというブロックチェーンを応用した、純粋プログラム(プロトコル)による手数料を取らないマッチングシステムより崖っぷちである。

 国家官僚の天下り先や日教組などの圧力団体も保護された。

 学校組織は根強く残っている。

 ただ工場などの企業は海外同業他社との競争を強いられた。

 事務局まで含めたオートメーション化の世界波に乗り遅れるわけにはいかない。

 営業と経理がリストラされた。

 日本の場合、技術者は残された。

 日本でも雇用がロボットに奪われ失業率50%を突破した。

 将来的にはAIが不朽の芸術を量産していく時代。その場で消えていくライブ専門の芸術家になるか。

 過去の文献を読み、自分の関心ある事柄に思いをはせる学求人。

 数学、物理学、化学、薬学など先端領域では過去論文の読み込みやビッグデータの処理、それらをベースにした論理思考はAIの処理能力に人間はかなわない。

 プロスポーツなどのアスリート。

 音楽、ボート、鉄道、古地図、料理、酒、ゴルフ、旅行、ゲームなどの趣味人。

 宴会に参加して、退屈しないトークを振る舞う遊び人(エンターテナー)

 食料も中国発の環境破壊により、東に位置する日本は偏西風の影響で第一次産業の壊滅的な被害を受けた。

 国民はバイオで産み出されるレーションと呼ばれる人工食料の配給で生活している。

 国は景気刺激策としてBMI値22のすべての国民に対して健康奨励金として月1万円出してる。

 社会保障費を少しでも削りたいのだ。

 またプログラムなどのソフトビジネスを勉強する人に褒賞金を月3万円出してる。

 オミックス(遺伝情報を下にした医療)が奨励され、健康な時から病気の予防が重視した。

 体質にあった生活習慣が奨励された。

 病気になってからの医療費や薬代より「血圧が下がる」「血糖値が下がる」と歌う。

 特保(厚生労働省の保証)を付けた健康増進サプリメントの方が、国も民間保険会社も懐が痛まなかったし、製薬会社にも新市場を提供できた。

 最後のフロンティアと言われたアフリカまでの開発途上国の低賃金と開発とインフラ整備が終了する。

 後発のため先進国のように技術順番を守必要はない。

 銀行の支店や電話線張り巡らせる必要はない。

 モバイル端末を復旧させるという技術のステップ(リープフロッグ)で追い上げた。

 古いインフラなら電話線に銅を大量に使ったが、モバイル端末の基地局はアドバルーンですんだ。

 金を借りて投資する金融マネーは、あらゆる国の独立した中央銀行の金利が0.001%を下まわってマイナス金利になっても、イノベーション企業以外資本の投資先がない。

 金利を超える経済成長がなくなれば事実上の資本主義の終焉の始まり。

 資本逃避先(キャピタルフライト)がない富裕層マネーが自己増殖するには、更なる格差しかない。

 世界総通貨量に対する富の偏在。

 アメリカではタクシーの運転もハンドルがない。

 交通ターミナルで集中管理され渋滞は自動回避される。

 車社会のアメリカでさえ個人所有をやめてレンタル会社で2年間リースが主流になる。

 複数の人間で購入してネットで電気自動車をシェアしながら使っている。

 使用した電気料金は自動でネットにプールされる。

 配達も空中を飛んで移動するAIを積んだ無人のマルチコプターが、ウェアラブルコンピュータで相談や位置確認を行い輸送する。

 日本の労働者保護の法律が「社会主義的だ」と批判しTPP(環太平洋パートナーシップ)のISDN条項をタテに、「参入障壁」と叫びながらアメリカロボット会社連合は日本政府から倍賞金をがっぽり稼いでいる。

 日本の場合はロボットスーツによる身体強化が主流だが、アメリカの場合はロボットのリモートコントロールが主流だ。

 重役会議や工場の管理見学はネットとセンサーで行う。

 バンソニーとミクロソフトが神経伝達ヘルメットによるダイブゲームの覇権を争っている。

 魔王がミクロソフト社の格闘ゲーム「バリートゥード」に参加すると聞いた時は驚いたが、すぐに応援する気になった。

「せめて明日から始まる予選は突破しないとな」

 魔王は勉強を学校で済ませて、宿題はするけど予習復習は一切しない。

 寝るまでの時間、練習をかなりしている。

 僕とのバンソニー社のOSを使ったゲームは息抜きらしい。

 それぐらいゲームが好きでないと世界十傑には残れない。

 基本的に面倒見のいい男女だ。

 性同一性障害(トランスジェンダー)の中学まで本気で性別適合手術(トランスセクシャル)を考えていたらしい。

 高校入学した時、「お姉さま」と出会い女の身体の素晴らしさに目覚め同性愛者になった。

 身体は女、心は男、洋服は男装のみで人生行くらしい。

 ゲームのアバターも男性キャラが多い。

 僕のために時間を割いてくれる。

 男とは友情のためにどれほどの事をしなくてはいけないか勉強になる。

 予選はバトルロワイアルだが、それならば「道路戦士」でも経験済みだ。

「今日は何する?」

「「怪獣狩人」で。今日は「赤きゴアマグラ」と言って雑誌とコラボしている。

 限定アイテムが手に入るから装備が揃うまで連戦しようか」

「分かった」

 二人でコエプコンの「怪獣狩人」に移動した。

「怪獣狩人」1〜4人でやるハンティングゲームと呼ばれるゲームの草分け的存在である。

 シームレスなオープンフィールドが採用されている。

 鉱物を採掘したり、植物やハチミツを採集したり、釣りをしたり、怪獣を倒して肉や素材を剥ぎ取りする。

 原始的な狩猟生活が楽しめるのが大きな特徴。

 また能力値がなく固定のHPとスタミナゲージしかない。

 攻撃力を上げるためには強い武器を装備する。

 火、氷、電気、麻痺、毒などの属性もあり、モンスターの弱点に応じて装備を変える。

 防御力を上げるためには頑丈な鎧を装備する。

 頭、体、腰、腕、足とピアスと指輪とネックレスなどのアクセサリーなどの種類がある。

 防具ひとつひとつにスキルポイントがあり、合計10、15、20になったら発動するため、合計値が高いほど効果が大きい。

 防具の組合せも単に防御力が高ければいいのではない、複数のスキルの兼ね合いを色々悩む。そのためには採集、採掘、剥ぎ取りなどして素材を集める。

 クエストを受け、素材を集め、強化し、さらに上のクエストを受けの繰り返し、希少な素材が出るたびガッツポーズする。

 武器の種類は小型盾つき片手剣、二刀流の双剣、ガードもできる両手剣が切断系。

 最大攻撃力を持つハンマー、曲を吹いて能力が向上する狩猟笛、小さな虫を操る操虫棍が打撃系でガードができない。

 一番移動力が悪い大きな盾を構えるランスは切断と打撃の両方を兼ね備えている。

 あとは飛び道具で、弓、ボウガン、火砲。

 魔王が双剣でしっぽなどの切断を担当、双剣は切断系であるがガードはできない。

 僕がハンマーで頭部や爪や腹などの破壊を担当。

 武道をやっていて体術で怪獣の攻撃を見極めて髪ひとえでかわして反撃するのがメイン。

 キャラクターや武器に固有の技がついている。

 スタミナゲージを少し使って回転回避が有り、転がる出始めの一秒がダメージをくらわない無敵状態になる。

 その効果を巧みに使いながらノーダメージで怪獣に近づく。

 5分おきにスタミナゲージの上限が減ってくる。

 そのたびに肉を焼いて食うか、弁当を食べるかしてスタミナゲージを回復するのがベストだ。

 だが「ダメよ99」という全身ピンクのユーモラスなモンスターを1分以内に狩ることができる。

 だいたい5分以内に狩れば一人前。

 僕らはゴアマグラといえど、見つけしだい10分以内に狩るつもり。

 スタミナゲージ上限の回復は考えてない。

 最大上限値10あるスタミナゲージは使用すれば1秒間に1の割合で回復する。

 殴ったり切ったりして自由に攻撃できるのだが、スタミナゲージを使ったモーションの方が与えるダメージがでかい。

 立ち止まって上から降り下ろす攻撃は10あるスタミナゲージのうち3まで使う。

 ただでさえ他の武器よりダメージがでかいハンマーなうえに、小、中、大、特大のうちの特大が採用される。

 この技をベースにうまく立ち回り爪や腹などの部位破壊をねらう。

 部位破壊を行うとクリア後の報酬が多くなる。

 スタミナは使わないが殴って、殴って、ホームランという設定されている連続技もホームランが特大なので、モンスターのスキに叩き込む。

 ハンマーはモンスターのスタミナを一番うばう(動きが鈍くなる)。

 頭部を殴れば失神することもあり、すべての武器のなかでハンマー最強伝説がある。

 魔王が使う双剣は手数で押すタイプ。

 スタミナゲージを使った阿修羅乱舞はあまりのスピードに手が8本に見える。

 この時は一発の重さはともかく単位時間当たりのダメージ量はハンマーを超える。

 双剣の属性攻撃は右と左で変更できる。

 特定の段差から飛び乗って、背中や頭や足や翼に乗っかて振り落とされないようにしながら乗っかり攻撃ができる。

 僕らはナイフになる攻撃だが、双剣と片手剣だけは手持ち武器で攻撃できる。

 魔王はしっぽやヒゲなどの切断がすめば、乗っかり攻撃にうつる。

 切断されたシッポから剥ぎ取りができる。

 coーop(協力プレー)を2人でやると3Dモンスターがオトモモンスターとして3Dモンスターを連れて来ることができる(3人、4人の時はオトモがつかない)。

 僕のメインモンスターは「光ネズミ」で固定だが、世界大会でたくさん優勝している魔王はURモンスターを10枚以上持っている。

 レアリティのある3Dモンスターを結構育てている。

 彼女に言わせれば僕の歳で世界大会に優勝したことが凄いらしい。

 彼女はクエストに合わせて3Dモンスターを変える。

 今回はゲームオリジナルのオトモモンスターである二足歩行のモフモフネコ人間を使用していた。

 回復笛を持たせている。

 性格が臆病で戦闘には参加しない。

 僕の「光ネズミ」を持ってきた。

 電撃によってシビレさせることができる。

 地面に接地するシビレ罠も携帯させる。

 性格は賢明でタイミングよく使ってくれる。

 このゲームはアイテムの受け渡しができない。

 回復薬ぐらいなら可能だが、武器や防具の素材は自分で剥ぎ取りと採集しなければならない。

 プレイヤー間で同士討ちがない。

 システム的にも派手に吹き飛ばす攻撃はあるが、ダメージを与えるものではない。

 6回連覇すると防具も武器も一通りそろった。

 丸川書店とのコラボで鎧には派手に「丸川」と書いてある。

 魔王とお互いに出来たての装備を見せあって論評して別れた。

 明日は「ウォードッグ」という近未来サイバーアクションをしようと約束した。

 このゲームは僕の隣に住んでいる勇者・H23・コエプコンも加えてプレーしている。

 魔王と別れてすぐにメールを送った。

 僕らH世代は精子の影響か、みな天上天下唯我独尊的なところがあり、群れる事を嫌い自分の興味あることに没頭する。

 勇者もライトノベル作家になることを夢見ている。

 毎日小説を読んだり書いたりしている。

 集団行動の授業の時は僕とコンビを組んでいる。

 H世代は基本的にボッチだらけで僕のように他人に気を使うヤツは少ない。

 ララ達ロボットが授業内容の連絡を受け、自分のマスターがはぐれないように、連絡を取りあっている。

 王道ファンタジーと転生ファンタジーの市場はレッドオーシャン(競争が激しい)だと勇者は分析している。

 サイバーパンクはブルーオーシャン(競争がない)でありニッチ(大手が手を出したがらない隙間産業)だ。

 コエプコンとバンソニーのゲームばかりしていた僕と魔王は、勇者に誘われてナムコナミ社製の「ウォードッグ」をプレーした。

 勇者はバイオで作られる食糧の配給では我慢できなかった、。

 コエプコン社製アレンジした味が40種類程あるが、彼はインターネットで外国から動物の屍体を取り寄せて食べている。

 そのせいかBMIは22を超えるデブである。

 22なら日本政府から1万円の奨励金がでるのだが、勇者はそれがもらえていない。

 基本的に僕の名前夕夜も、勇者の名前も5歳の時自分でつけたものだ。

 成長して名前を変えるヤツもいる。

 それまで僕達はロボットから「可愛い坊や」と呼ばれていた。

 6時から8時までにゲームは終わる。

 宿題のある魔王にあまり時間を使わせるわけにはいかないし、9時までに食事をとらないとララに太ると怒られる。

 ララ達AIも育てる子供の嗜好に合わせて機能学習(ディープラーニング)する。

 コエプコン社から高い評価を子供が受けると次の世代の基幹プログラムに採用される(幾つかのプログラムを融合されるだろうけど)、ララ達も競争がある。

「お帰りなさい。マスター」

 ダイブから肉体へと帰還をはたすとララがキッチンから声をかけてくる。

 配給された粉末に水を加えてシェイクするだけなのだが、ロボットの育ちかたもマスターによって違ってくる。

 隣の勇者のロボット「姫」は台所もグレードアップしている。

 今はテイクアウトが主流で台所もビールを冷やす冷蔵庫が置いてあるだけである。

 姫は一流シェフのレシピをダウンロードして、味覚も嗅覚も最新のハードに換装し、動物の屍体を取り寄せて、焼いたり、蒸したり、揚げたりしている。

 勇者からメールの返信が来た。

 OKと言う事だ。

 ツナギを脱ぎ、勇者からもらった「光ネズミ」のロボグルミウェアラブルコンピュータからデータを移動した。

 3Dモンスターのプログラムをダウンロードして、歩いたり、しがみついたり、噛んだり、じゃれたりする動くぬいぐるみ。

 ロボグルミに入った3Dモンスターは仲良し値が10分で1ポイント貯まる。

 僕が「光ネズミ」のUR3Dモンスターを育てていると相談した。

 勇者はR3Dモンスターを30匹ぐらい持っている。

 買えば5〜20万円するロボグルミを、全てを3000円でバンソニーからロボグルミのデータを買う。

 100万だして買ったロボットアームが4本ついたミニ工場と呼べる3Dプリンターの亜種で組み立てて几帳面に育てている。

 運よく進化合体をして光ネズミのロボグルミに余りが出たので貸してくれた。

 仲良し値が上限の500ポイントになってからレベルを上げたがいいとアドバイスをくれた。

 ロボグルミに入った光ネズミは今日がオンライン授業で経験値となるチッケトがもらえる日と知っているから、あ〜んと口を開けた。

「仲良し値がたまってからだ」

 ロボグルミの頭をなでた。

 ロボグルミはバンソニー社のヒット商品になった。

 ディズニーのキャラクタービジネスに対抗でき、転送する3DモンスターのWIZの値が100を超えれば会話が成立し、150を超えれば感情を声紋から読み取って会話をしてくれる。

 食事が終わるとバンソニー社の最新のハード『ステプレX』をプレーする。

 ゲームはダウンロードするからインターネットで『ヘヴン』とつながっている。

 壁にはめ込んであるかのような薄い6個の巨大モニター。

 両側の2枚は電源が入ると包み込むように外側がせり出してきてちょっとしたコックピットのようだ。

 真ん中下でコントローラーを使った独立型(スタンドアロン)の戦国シミュレーション『信長の希望X』を選択した。

 三国志物もありコエプコン社の双璧てあり、僕の歴史に対する興味はゲームから入った。

 SPplusに月500円で登録した。

 昔のチンギスハーンの時代を使ったシミュレーションゲーム。

 大航海時代。

 ナポレオン時代。

 幕末。

 第2次世界大戦。

 アメリカ独立戦争。

 源平合戦。

 血の王様(ファンタジーSLG)などのドット絵時代のシミュレーションゲームもできる。

 6個の画面をフルに使って、画面から音を出し、耳を認識して立体感を出す映像コンテンツなどがある。

 上の3つの画面で登録フレンドのビデオチャットしながら下の画面でゲームの攻略を配信したり、協力プレーをしたりできる。

 魔王以外の人間は足手まといにしかならない。

 下真ん中の画面を使い黙々とプレーをする。

 上の3つの画面と右下の画面から配信アニメが流れる。

 昔、コエプコン中央のラボに連れていかれ、いくつアニメを同時に見て内容を理解できるかのテストを受けた時、結果は7つだった。それ以上見ると内容がこんがらがる。

 シミュレーションゲームは戦略面で頭を使うが、それ以外はルーチンワークの所もあり、アニメを見ながらでも十分可能だ。

 左下は攻略本の電子書籍版があり、タッチパネルにもなっていて、時々武将の能力や城の能力をチェックする。

 成長していたり、改築していたりする事が多い。

「歴史に学べ」と言って左翼は「自衛隊を海外にだすのは侵略の歴史を学んでない」といい、保守は「アングロサクソンについていけば大丈夫」という、右翼は「失敗の本質を理解し、どうすれば勝てたかを検証する」同じ状況が訪れるわけでもない。

 歴史上の人物達が、どのような時代状況の限界の中で、どのように悩み抜き、いかなる判断を下したか、あるいは下さざるおえなかった。

 その過程を追体験することに、歴史を学ぶ意義がある。

 11時からは柔軟と筋トレの時間。

 ララにも手伝って股割りや足上げなどの柔軟一般を行う。

 ララにキックミットを持ってもらい、ハイキックやミドルキックやローキックの練習をする。

 拳を作る為に拳立て伏せをした。

 骨が成長期だから筋肉増強のトレーニングはしていない。

 10キロの鉄アレイを使い体幹やインナーマッスルをバランスよく鍛える。

 体が温まってきたらルームマラソンで30分間鍛える。

 持久力をつけ、心肺機能を育てている。

 ウェアラブルコンピュータ頭に取り付け、マウンテンヘッドディスプレイにした。

 正面はwebアニメ、右側面は心拍数がでて、ルームマラソンはウェアラブルコンピュータとリンクしていた。

 心拍数が毎分200になるようにルームマラソンの速度や角度や強度を調整する。

 左側面にはメインの3Dモンスターが走っている。

 横に移動距離がでてくる。

 一連の運動が終わるとお風呂に入る。

 身体を拭いてベッドに入る。

 ララも裸になってベッドに入ってくる。

 女性器を模した人工性器に精子を提供する。

 精子が睾丸の中で製造される10〜11才の頃から行なわれる僕達の儀式。

 一般化(コモディティー)した遺伝子コーディネートを一切行っていない精子を毎日会社に提供するのが社員としての契約だ。

 また、一流企業は天然物の卵子や精子を社会に提供する義務がある。

 僕達はだいたい横並びで月100万の給料をもらっている。

 会社がインターネット上で天然物の精子をオークションに、かけて流通されている。

 高く売れればボーナスがあるわけでもない。

 調べようと思えばオークションを覗けばいい、会社は報告をしてこない。

 ララの子宮部で凍結された精子をコエプコン社は毎朝回収に来る。

 精子は誰かに買われ受精卵になりコーディネートされるだろう。

 あるいはどこかの会社に買われ育てられ天然物精子が再生産されているかもしれない。

 男が射精を行う時、だいたい400メートルを全力疾走するだけの体力を使う。

「お疲れ様」

 射精がすみ息切れする僕にララが額にキスをしてくれる。

 これで1日が終わる。

 ゲームのし過ぎで頭の中に、デジタルヘロインがあふれていて神経が高ぶり、目が冴え眠れなくなっている。

 ララが耳たぶを甘噛みして睡眠導入剤を注入する、無針注射になっている。

 3分もしないうちに眠ってしまう。

 統計学的に7時間睡眠は個体の寿命が一番延びる。

「おやすみなさいララ」

------------------------- 第3話開始 ----------------------

【タイトル】

20××年10月18日 火曜日

 

【本文】

「マスター、時間ですよ。起きて下さい」

 7時にララが体を揺らして優しく起こしてくれる。

「おや、マスター朝から元気ですね。一回なさいますか?」

 僕の下半身を見て、ララが親切で口にした。

「オシッコに行けば鎮まるからいいよ」

 あまり精子をだすと夜の分が薄くなる。

 どっかから個人情報が漏れて、夜までガマンできないとウワサがたったら恥ずかしい。

 トイレに行き、顔を洗い、歯を磨き、服を着る。

 ウェアラブルコンピュータとつながっているスマートデバイス体重計に乗る。

 脂肪率やBMI値までチェックする。

 健康は国民の義務である。

 室温は肌着だけで快適である。

 テロを受けるまでは棟ごとにセントラルヒーティングだったが、細菌テロによって空調は部屋毎に変更された。

 ララとは別系統のAIが管理するスマートハウスになっている。

 カーテンや窓の開閉が自動で行われ、室温を調整する。

 気の利いた透明人間がいるようなユビキタス(いつでもどこでも存在する)・コンピューティング。

 ユビキタス自体は人と複数のコンピュータと人間がつながってやりとりする概念である。

 IoT(インターネットオブシングス)が現れユビキタスの概念は消滅した。

 道具同士が会話してご主人様は道具の使い方が荒いと愚痴るまでになった。

 サイバーテロ以前は家電の情報までネットにアップしてクラウドコンピューティングで判断するアグリゲート(集約・集結する)・コンピューティングが採用されていた。

 今では部屋毎に孤立化(スタンドアローン)に変更した。

 窓も二重になっていて熱やエネルギーが逃げないように工夫してある。

 サッシにはアルゴンガスを封入した複層ガラスと高断熱サッシを組み合わせたハイグレネード断熱材を使用している。

 建築基準法も変わって、繊維の方向を変えて貼り合わせた木造集成材を壁面に利用すれば、2階までが、8階まで建造して良くなった。

 地震の少ないヨーロッパでは木造34階建がある。

 木造集成材は幅15センチに20層があり、防音層、防湿層、断熱層をはさんで繊維毎に集めた人工板は薬品に漬け込んであり、全て不燃材料に改良されている。

 もともと木材の圧縮力に対する強さはコンクリートと同等である。

 コンクリートの家より大容量データのやり取りにストレスがない。

 サビる釘などは使わずに、太古から日本が誇る切り欠きはめ込み型。

『仕口』や『継手』や『男木』や『女木』と呼ばれ、固定する時は『詮』と言って角度のついた端材を交点に打ち込む。

 最新の3DCADによる組み立てレーザーカッティング技術の融合。

 地震があってもペチャンコにならないように重心と中心がずらしてあり、ねじりながら壊れ、エネルギーを吸収して、内部に多くの空間(スペース)を作る。

 窓ガラスは全て植物由来の透明なセルロースナノファイバーが使用されている。

 強度は鋼鉄の5倍で熱膨張はプラスチックの20分の1で割れずに壁にめり込んで、地震でも割れて落下しない。

 セルロースナノファイバーはガラスと違って壁に食い込む。

 絶対安全より、どう壊すかを研究した米海軍のダメージコントロール理論。

 集成材を作る過程で出来る廃材はチップスにして、下水と同様にバイオで発酵させてメタンと二酸化炭素を発生させ、メタンだけを取りだし水蒸気をぶつけて水素を作る。

 日本人は復興も得意だが、自然災害や人為災害の対処する防災・減災の技術でも世界をリードしている。

 ただ原子力発電所が事故を起こした時の避難経路が計画されてなくても、政府は福島第一の事故の後でも再起動にGOサインをだした。

 この辺の感覚は欧米では理解できない。

 僕も日本人だが理解できない。

 食事をしながらララに昨日の事を報告して、今日の予定を聞いた。

 今日は社会参加の体験学習である。

 今日は1日コエプコン社がだす学園物ファンタジーのクローズβ版(まだ一般に公開していない。社内の子供達だけでシナリオをプレーしながらバグつぶし)を会社の支持に従いながらチェックする。

 どんなゲームかと言われると一言では説明できない。

 100万人生徒がいる学園都市でNPCがイベントを持っていて、会話しながら進める。

 協力プレーが無くて個人がシナリオを追うタイプ。

 将来一カ月おきにヴァージョンが変わる度にどうなるかわからないけど、スタートアップはこれで行くみたい。

 前世、守護霊、伝奇、クラブ活動、恋愛、現代ファンタジーなどジュブナイル小説的に詰め込んである。

 自分の進みたい学校を選択する。

 ・魔法美少女と仲間悪魔召喚プログラム

 ・吸血鬼、狼男、ゾンビ、幽霊との同居

 ・オタク系グダグダのユルい人間関係

 ・キラーショットを持つ熱血スポーツ

 ・歌、音楽、アイドルなど選挙アリ

 ・格闘技、不良物、暴走族などトーナメント型

 ・放課後退魔アクション

 ・侵略者(宇宙? 異世界? 未来?)と戦う秘密基地

 後は部活や図書委員会や風紀委員会や生徒会など取り方によって遊び方も変わる。

 NPCとの関わり方でハーレムや逆ハーレムも年齢によっては耽美や背徳も可能。

 望むなら修羅場つきの三角関係もあり。

 守秘義務があるから口外はできないけど、勇者と詰め込み過ぎだろうと話している。

 ただどう遊ぶかは強制できないが、無料ゲーム(内課金アリ)なのでダウンロードしてもらわないと広告料も手に入らない(ゲーム内の服や家電や看板の採用)。

 入り口は広くなくてはいけない。

 戦闘も飛び道具がメインで、あちこち道具を拾いまくっての凶器攻撃はサブである。

 攻撃は物理、

 銃撃、

 火炎、

 熱核、

 疾風、

 電撃、

 氷結、

 祝福、

 呪怨、

 念動の種類がある。

 一つ弱点を作る事で2ポイントもらえる。

 0.5ポイントで無効化。属性のダメージを0に出来る。

 1ポイントで吸収。その属性で攻撃受けるとHPかMPが回復する。

 1.5ポイントで反射。攻撃を跳ね返す。反射同士がぶつかると0になる。

 弱点属性で攻撃するとダウンを奪える。

 オーラをぶつけ、

 武器に念を込め、

 バリヤーを張り、

 結界を張り閉じ込め、

 道具を使って封印し、

 気合いで超回復する。

 イメージや小技が充実している。

 食事を終えツナギを着てネットワークにダイブする。

 8時までに出社しなくてはいけない。

 接続がすみアニメソングを聴きながら仕事が配信されるのを待った。

 前回までシナリオをプレーした時はまだ背景や人物に色がついてなかった。 

 複数の男女の声でコエプコン社の中央コンピュータが声をかけて来る。

 白く燃える魂の姿をアバターに使っている。

「マスター夕夜。仕事の依頼を受けてもらえませんか?」

 社員である僕は断われない。

 僕達は産まれた時から脳が動く限り働く義務がある。

 契約によりクビもないかわりに定年もない。

 早くから社会参加や体験学習をしなくてはならない。

「どんな仕事ですか?」

 ゲーム業界にもベルトコンベア方式からセル生産方式(1人または少数のグループが最後の組立まで受け持つ)に移行してきた。

 無料化開発エンジンが複数存在して、1人の人間がシナリオのオープニングからエンディングまで受け持つ。

 インターネットの情報インフラの整備により、インターネットオークションの外注のコストは安いけれど、会社内部と単位時間当たりの生産能力が10倍程違う。

 クオリティは100倍違う。

 外国業界の経済格差も、所得格差も、為替レートも、ゲームをコーディネートできるデザイナーの間では無いに等しい。

 オタク系のデザイナーのオフショア(海外に移す)は起きなかった。

 好条件の海外移籍も「石油は動くけど油田は動かない」と突っぱねている。

 そこでコエプコン会社は社員を造り、自社内で才能を集めたチームを競合して、運営した方がベターではなくベストだと判断した。

 他ゲーム会社とのコラボでさえ外注せずに、内部で造る。

 造られたゲームがどれぐらい売れたか社内で競争する。

「NPCを1人渡すからシナリオを書いてもらえませんか?」

「僕がですか?」

 弱ったな。

 勇者みたいにライトノベル作家になる野望を持っているわけではないから、研究したことがない。

 会社も個人の能力を見るためにメインシナリオではなく、サブクエストを書かせてみるとは良くあることである。

「僕は正直者が馬鹿をみない話しか書けませんが」自分の限界を口にした。

 最近のAIは物語や神話を検索して、物語工学論(元はロシアの研究家が世界中の神話から共通項を抜き出した)を組み立てる。

 人が何に感動するかを映画や小説などのビッグデータから共通項を抜き出し、構想と人間関係を聞きながら、脚本を創作するプログラムがハリウッドにはある。

 もはや物語の構造をバラバラにして組み合わせで興行収入を計算するアルゴリズム(コンピュータ分野では、プログラムの形で定形化された処理手順の集まりのこと)が存在して、だいたい当たる。

 今では金融、天気、不動産、地方ニュース、スポーツなどは終了してから数秒間でAIが記事にしてネットに無料で配信してくれる。

 人間の記者以上である。

 ハリウッドの黄金パターン少し斜めに構えた人物が、最後には人間の良心に目覚め、真の悪と戦う。

 勇者が分析していたが、僕はぐれたことがないし、反社会的な行動には怒りを感じる。

 真面目がとりえの面白くない人間である。

「そう、固く考えないでください。

 あなたのようにその年で道路戦士の世界ランカーにまで登りつめた人間は、世の中がどう見えているのか興味があったので。

 新しい切り口だけでも欲しい」

「切り口ですか?」

 ゲームが強くて、真面目に格闘技の練習をしているだけで、努力と根性。

 新しい切り口などない。

 同時に当たるシナリオになるかわからないが、魔王みたいな人間を主人公NPCにすえる。

「俺よりも強いヤツに会いに行く」みたいなノリでプレイヤーと二人で強敵に闘いを挑む話は、僕的には面白いかも。

「売れるシナリオになるかわからないけど、僕の感覚で書いていいのならお受けします」

「お願いします、マスター夕夜」

「授業で基礎プログラムや新開発エンジンを履修していますが、商業ベースはカリキュラムの中に入っていない。

 シナリオの書き方など業界慣例を何作か送ってもらえませんか? 」

「わかりました。すぐに手配します」

 魂のアバターは目の前から消えた。

 すぐにシナリオの書き方電子書籍を送ってきた。

 続いてプレーしたことのあるシナリオデータへのコンテを送ってきた。

 午前中は読書と研究に当てた。コレはコレでなかなか面白い。

 色々なアイデアやセリフや場面(シーン)が洪水のように浮かんできて、ソレをデータの中に落とし込むので精一杯。

 ひょっとしたら僕って天才かもしれない。

 午前中の仕事が終わって、部屋に帰り昼ごはんを食べた。

 とても疲れたのでゲームはしない。

 イスに深く腰を掛けて目を閉じて脱力した。

 ララが冷凍庫からアイスノンを持ってきた。

 僕の頭の上にのせてくれた。知恵熱が出ていた。

 気持ちを切り替えて午後からの仕事に移った。

 NPCの3Dデータの最新の3DCADを使い創作にかかる。

 魔王がモデルだから悪魔人間(デビルマン)ぽくしなくては、設定は獣面仏心の男。

 全体的に顔のパーツを大きくして、目は平行四辺形にして、瞳は巨大にして、口は両端つり上がって、犬歯は太くて歯は鮫歯。

 髪は黒くてボサボサ、ファッションは気にしないが、黒を基調とする着たきり雀。

 ある程度完成すると動かしたり、セリフに合わせて表情を造ったりしてみた。

 

 色々試してみると5時になった。

 

 コエプコン社の中央コンピュータに仕事内容と作ったデータをメールして、「お疲れ様」と返信が来たら仕事場から退出する。

 バトルロワイアル予選で魔王が勝ち残っているか気になっていた。

 オンライン授業の補修と違って仕事の残業は強制ではない。

 仕事が好きで残業する者もいる。

 急いで部屋に戻った。

 ウェアラブルコンピュータで配信されている動画を見た。

 結果から先に言うならば魔王は負けて予選突破できなかった。

 はっきり言えばアメリカには人種差別が陰湿な形で残っている。

 1パーセントのユダヤと|WASP《ホワイト・アングロサクソン・プロテシタント》が富の93パーセントを握っている。

 一台50万円する神経伝達ヘルメットは富裕層しか買えない。

 やり込んでいる白人(ホワイト)達が結託して、有色人種(カラード)狩りを行う。

 魔王は1VS50の闘いだった。

 ミクロソフト社のOSは重力計算を全くしない。

 派手な演出はあるが。

 魔王が身につけた武道の投げが少しも使えず。

 体力設定の数値がそのまま反映され、投げが存在せず力学的な持ち上げて落とすしかない。

 アバターに身体能力を反映されると女にはつらい。

 重心の計算もなされずに無理な体勢でもバランスを崩さない。

 魔王は突き蹴りと位置取りだけで半数は倒した。

「衆寡敵せず」取り囲まれて押さえ込まれて2メートルある大男からクビを引っこ抜かれてGAME OVERだ。

 わざわざアメリカまで行って参加している魔王にたいする白人達の態度に怒りが湧いた。

 富裕層にいるWASPは欲求不満や怨恨(フラストレーション)をためているのだ。

 人工構成が変わってきてヒスパニック系や黒人系やアジア系やメスティーソ系が増えてきて、大統領選挙で共和党が民主党に勝てなくなった。

 失政を連続して支持率が下がっても票数が減る事はなかった。

 白人優越主義者(レイシスト)の中でも階級がありフランス系が高くヒスパニック系が下だ。

 日本にとっても連続する民主党大統領は痛手だった。

 大東亜戦争も共和党と戦ったのではない。

 民主党と戦ったのだ。

 民主党政権はスタンスが中国よりで、内向き。

 世界の警察官を止め、住民投票による琉球独立と共に軍をグアムまで引いた。

 資本主義社会の弱体化により、経済的に疲弊したアメリカが一歩撤退すれば中国は二歩踏みこんでくる。

 世界の工場中国は琉球に軍艦を派遣した。

 アメリカから情報がなければ自衛隊のハイテク兵器は鉄の箱にすぎない。

 日本と韓国は目と耳と神経を抜かれた。

 どの国も軍事費はGNP3%が基本であるが、アメリカの安全保障にただ乗りとは言わないまでも。GNPの1%に押さえて思いやり予算のツケが回ってきた。

 対米従属を国是とし最新兵器の開発を怠った。

 当然の帰結。

 アメリカが琉球国から撤退した時、自衛隊も兵を引いた。

 琉球国大統領は中国の進軍に五星紅旗をふって熱烈大歓迎をした。

 クリミア方式と呼ばれる常任理事国による合邦は平和理に終わった。

 もともと琉球を見捨てて独立したことのある国。

 左翼運動家の巣窟とかした琉球を見殺しにするのに国民の側にも抵抗はなかった。

 一部の右翼を除いて「戦争にならなかった」という時の総理の判断を支持した。

 反権力と見られていた琉球新聞も世界的権力者中国共産党に逆らうことなかった。

 終始一貫して共産主義を礼賛した。

 もともと左翼と共産主義は同根である。

 縮小を余儀なくされる資本主義経済と、国内に植民地《コロニーア》を持ち、その気になれば奴隷のように安く使える中国共産主義とでは勝負にならなかった。

 韓国では年々左派が台頭し、第二のアンジュコンをめざしてアメリカ大使や軍に対してテロが頻発してもともと嫌気がさしていた。

 アメリカがプレゼンスを小さくした時、北朝鮮が砲弾でソウルを火の海にかえた。

 朝鮮民族の悲願、半島統一が北朝鮮主導でかなった。

 韓国は財閥と市民との格差が絶望的に激しすぎて、国民が一致して守るべきものを見いだせなかった。

 一君万民の特殊共産主義体制さえ望んだ。

 韓国も侵略が日本だったら国を挙げて抵抗したかも?

 台湾は経済侵略されて中国経済がないと国が成り立たない。

 自ら奴隷となることを選んだ。

 民主主義を捨てて中国共産党の施政下に入った。

 新華社通信が配信する琉球人達の微笑みが、日本統治下での左翼運動に疲れた時より幸せそう。

 それがせめてもの救いだった。

 古き良き強きアメリカを熱望(デザイア)する白人優越主義者のブラストレーションは沸点に達した。

 ゲームや社会生活、ネットの中に歪な形で現れる。

 魔王の血を流す首は映像の中で高々と掲げられた。

 映像をきり、いつものチャットルームにダイブした。

 魔王の方が先に来ていた。 

「負けちゃった」暗黒のカブトを人差し指でかきながら口にした。

「仕方がないよ。1対50だもん」

「ごめんな。

 ピヨッピー。

 オレ、お前以外の人間に負けるだなんて、

 本当にごめんな」

 ディフォルメされた暗黒のカブトから涙を流した。

 アバターは悲しい時、涙を我慢しない。

 もらい泣きである。

 ヒヨコのアバターも涙を我慢しない。

 魔王は僕が出られない地方の大会や外国の大会で優勝できなかった時、必ず謝る。

 僕が出られない大会は僕の分までがんばる。

「そんなことないよ、魔王は僕にとってヒーローだよ」

 僕たちが抱きあって泣いていると勇者がやってきた。

「何やっているんだ。お前ら」

 勇者のアバターは10センチの単色の正方形の立方体で、ドット絵時代の2頭身の勇者の姿を3DCADで再現している。、

 左手に大きな盾と右手に大きな剣を持っている。

「派手に首ちぎられていたけど、臨死体験できた?」

 基本的にH世代の人間は遠慮をしないし、気も使わない。

 僕はかなりレアなケースだ。

「ミクロソフトの神経伝達ヘルメットは、痛みをフィードバックしない」

 魔王が涙をふいて答えた。

 BPOやキリスト教系の団体が青少年の健全な育成にうるさい。

 フィードバックシステムは教育に悪いらしい。

 北米やヨーロッパの成人はフィードバックがあるバンソニー社の神経伝達ヘルメットでゲームを楽しんでいる。

 ミクロソフト社の神経伝達ヘルメットは軍事用の遠隔操作(テレオペレーション)が転用された。

 重量別のリアルロボットの動作をトレースする操縦方法(ダイレクト・マニュピレーション)で闘わせるのが主流だ。

 リモコンを操作する感覚から自分を操縦する感覚(テレイグジスタンス)までは発達している。

 もともと自分の主張をゴリ押しするのが主流で人の心を察しない。

 人の痛みが分からないシステムに抵抗がない。

「今日は誰のシナリオをするんだ?」

 勇者が聞いてきた、頭上には魂の名でアゲインストとアバター名が書かれている。

 僕達は本物の中二病である。

 子供がカッコイイと思うのは必ずしも文化や伝統を背負ったものでない。

「刑期(300年)が大分短くなる緊急イベントが発生した。

 企業都市の重役の娘が誘拐された。

 救出ミッションだ」

 状況を説明するとゲーム内で魔王は刑務所の中にいる。

 僕と魔王は勇者と違ってナムコナミのサイバーパンクゲーム『ウォードッグ』では後発組だ。

 ある程度不具合やバランスが改善されてからプレーした。

 ゲーム内で魔王は完全義体化したフルボーグ。

 バウンサーと呼ばれる戦闘系の職業(クラス)である。

 このゲームはなんでも出来るが、選択したクラスによって技術(スキル)が取りやすくなる。

 シナリオをクリアするたびスキルポイントが手に入り、戦闘系なら実弾兵器ダメージ減少などのスキルが安く手に入る。

 対車両用の地雷や電磁地雷、対人用の気絶(スタン)(強い光が広がる、一瞬で終わる、目をやられて回復まで座り込む)。

 睡眠(スリープ)(煙に触れたら自分も寝てしまう、対抗策はガスマスク)や煙幕(ケムリ)機械目(マシンアイ)を赤外線感知に変えるか、赤外線スコープを装着することで敵が見える)などの手榴弾(グレネード)や地雷のスキルも手に入る。

 壁のように設置できる大型防弾盾(HPがあり、使用回数は制限される)などもあるが魔王はあまり成長させていない。

 僕はエースパイロットで操縦系のスキルが安く手に入る。

 身体も神経や目や耳などの感覚をサイバー化して、ジャックインシステムでライフルのスコープを覗くことなく脳に情報が入ってくる。

 視認できるロボットやドローンや自動運転車両をハッキングする。

 ブレイン・マシン・インターフェイスで、操作せずに思考だけでコントロール下に置くスキルもある。

 あまり成長させていないから魔王の事を悪く言えない。

 勇者はハッカーだ、情報操作系のスキルが安く手に入る。

 大分課金していて、たくさんの3DモンスターがサポートAIとしてゲーム内に連れてきている。

 プレー中は3Dモンスターの仲良し値が5分で1ポイントもらえる。

 人工衛星の情報や警察や企業の監視カメラの情報をサポートAI達はみんなで検索して勇者に送る。

 ビッグデータの処理はAIの得意分野だ。

 ジャックインシステムでサイバー空間にダイブする時ははアシスタントAIとなる。

 パスワードや暗号を解読したり、相手の捜査の囮になったり、身代わりになって攻勢障壁攻勢電流の攻撃を受けたりする。

 ゲーム上では3Dモンスター(アルゴリズムプログラム)はカードになっている。

 記憶容量のあるロボットやコンピュータにカードを魔法的に挿入するだけでコントロールを奪う。

 クラウド型の小型な蚊のようなドローンを自動判断して操作したりしてくれる。

 相手に気づかれず偵察ができる。

 30センチくらいのロボグルミにカードを挿入して自律させれば、ネットにダイブしてがら空きになった肉体の周囲状況をチェックする。

 危機が迫れば、ダイブ中の勇者の意識に知らせたり、肉体の方は防衛したり、警察や警備会社などのネットポリスに潜入がばれてないか機関の動きのチェックも行う。

 勇者も粘着爆弾系のスキルがあるが身につけていない。

 ゲーム上でのロボグルミは移動する囮(アクティブデコイ)になる。

 投影装置(ホログラム)やスピーカーや人体ふうせん(バルーン)を仕掛けて敵を引きつける。

 周囲を無力化する(ドローンも含む)電磁パルス地雷を設置する

 近づいたら自動で発動する。

 または踏んだら発動する物。

 放り投げて5秒後に発動する物。

 あるいは爆破スイッチを自身が持っている場合、半径無差別と一定の指向性て爆破する種類が存在する。

 身体が軟体繊維でできているから、換気扇やドアのスキマから進入して、情報を集めたり、トラップを解除したりできる。

 課金すれば移動速度もかなりあがり、光学迷彩もつけられる。

 時にはプレイヤーを助けるため自己犠牲的行動にもできるが、3Dモンスターが壊れるような使い方をすると仲良し値がもらえなくなる。

 3Dモンスターは愛さなくてはいけない。

 ゲームマネーはかかるが民間人工衛星から援護攻撃をしてもらえる。

 テングステン製の小さな槍は凄い落下エネルギーにより一定の範囲に巨大なダメージを与える。

 どうしてもクリアがむずかしい時の禁じ手である。

 戦い方は魔王が素粒子(ニュートリノ)ロープを使った、立体起動でアサルトライフルの乱射しながら近づき、レーザーチェーンソーで切断。

 素粒子は地球6個を貫通して存在が消える。

 極小の量子の世界では物理法則が通じない。

 素粒子ロープは切断不可能であり、電気的ヒッグス粒子を流し物質化できる。

 ゲーム的には電気の流し方で質が変わる。

 どこまでも伸びる強靭なロープになる。

 バッテリーが上がってヒックス粒子の供給が断たれればロープは瞬時に物質化をやめる。

 僕は光学迷彩マントや布で姿を隠してのスナイプによるヘッドショット。

 勇者はロボグルミに機関銃を持たせて防御陣地を作り、小型スマートミサイルでロックオンして範囲攻撃でしとめる。

 スタート時は『アサルトコア』と呼ばれる巨大ロボットでの傭兵稼業に夢中になった。

 

 バンソニー社も往年のアニメファンに向けたロボット物はあるが、ロボットアニメのキャラクターの操縦がメインだ。

 回避行動を主としてヒットアンドアウェイのリアルロボット系。

 とにかく排熱を気にせず、ブーストをかけながら光線をよけまくり、ミサイルを撃ち落としたり、切り払いをしたりする、すれ違いざま近接攻撃が主流。

 それと分厚い装甲で多少の攻撃は気にしない、巨大火力と必殺技を持つスーパーロボット系の二つに大別できる。

 一部の例外(アンビリーカブルケーブルでつながっている)を除き、たいていは空が飛べるため三次元を把握する能力はいる。

 戦闘機に可変して高速移動する機体もある。

 こうした機体はロボットへの変形前に翼の上下に積んだミサイル(宇宙空間には空気抵抗がない)による敵戦闘機に対してドッグファイトを序盤に行う。

 制空権や制宙権をとる。

 純粋戦闘機は母艦に途中で引き返しコクピットごとロボットに乗り換える。

 あるいはパーツを射出してもらいロボットに分離合体する。

 原作アニメに準拠してメチャクチャな合体が成立している。

 僕も序盤は所属する陣営所属愛(パトリオット)のため戦闘機に乗りドッグファイトに参加してからロボットに乗り換える。

 魔王は最初からスーパーロボットに乗り母艦近くで移動砲台として直掩行動を行う。

 戦闘機は地上基地や月基地や隕石基地に味方が上陸するための援護爆撃や援護射撃。

 あるいは軽くなったり合体したり、ロボットに変形して上陸支援を行う。

 選んだ機体によって能力が決まる。

 仲間同士の攻撃が当たっても基本ノーカウント。

 敵にトドメをさすと賞金とスキルポイントが手に入る。

 賞金で武器や装甲を強化できるがスーパーロボットがリアルロボットに変化することはない。

 スキルポイントは精神コマンドが手に入る。

 30秒間攻撃力が2倍になる『熱血』や、30秒間防御力が2倍になる『我慢』や、30秒間必ず当たる『必中』などがある。

 NPCには絶大な威力を発揮する。

 プレイヤーは『ひらめき』という絶対回避能力があり『必中』より優先される。

『チョパムアーマー』や『太陽発電機』などのカスタマイズができる。

 ロボットによってカスタマイズの搭載量が変わる。

 キャンペーン(連続シナリオ)をこなして勲功を貯めれば、後継機や新機種や上位のアイテムが手に入る。

 戦場は地上(月面、火星も含む)より隕石、コロニー、宇宙空間の方が多い。

 配給されるオンラインシナリオはシーズン制をとっていて4週間毎に一からやり直すのは賛否両論ある。

 軍隊なら少年兵から、レジスタンスなら下っぱから。

 もちろん純粋に成長を楽しむスタンドアローンなイベントシナリオの配信もある。

 クリアタイムや撃墜数はカウントされランキング上位者には称号が与えられている。

 魔王はスーパーロボット系で僕はリアルロボット系の◯ンダム。

 とにかく換装パーツの種類が豊富。

 組み合わせは1億通り。

 僕は肩には月からのマイクロウェーブを受けて大容量攻撃できる。

 背中には独立した敵を視線認証で攻撃する八本のレーザー兵器。

 腰にはファンネルがあり遠距離を走破して攻撃したり、バリヤーをはったりできる。

 ゲームマネーによる課金と、僕や魔王の反射神経と狙撃力があれば階級が下でも、いい機体に乗らなくても無敵になれた。

 半年程かけて◯ンダムの「一年戦争」追体験できるオペレーションキャンペーンもあったりしたが、そこまでのめり込まなかった。

 僕も魔王も熱が冷めるのも早かった。

 

 そこへいくとナムコナミの『ウォードッグ』のロボット『アサルトコア』は奥が深い。

 乗り込むロボット『アサルトコア』の足や手やエンジンを複数あるパーツをゲームマネーで買って組み上げる。

 まず足を決める。

 キャタピラーのついたタンク型のスピードは遅いが一番重量が搭載できる。

 スマートミサイルを両肩や背中にたくさん積み込む勇者が愛用している。

 僕は二足歩行を選択する。

 匍匐(ほふく)前進ができる。

 匍匐と光学迷彩シートで姿を隠してのスナイプショットを狙う。

 その他にも横移動や後進が前進と同じ速度で移動できる多脚型。

 上下運動やジャンプが有利な逆足型。

 搭載量は少ないが水上シナリオではほぼ強制のホバー型。

 

 足で搭載量が決まると電気を出力する水素エンジンを決める。

 基本は重量によって出力が決まる。

 シナリオをこなすことによって性能のいいエンジンが手に入ったり、イベントをこなしたりすることによってショップやジャンク屋(中古店)で発売が解禁される。

 エンジンの燃料は水で可能なのだが、みんな燃費のいい高濃縮水素水を使っている。

 基本的にプレイヤー間でパーツの売買や譲渡はできない。

 プレイヤーランクを上げてショップに性能のいいパーツを並べるのがゲームの目的のひとつである。

 ダメージを食らったり、武器を使ったり、移動したりを連続して行なえば熱がたまる。

 関節ユニット(モーターではなく、超伝導体による磁力がメイン)が解けだす。

 冷却装置(ジェネレーター)を載せる。

 軽くて排熱性能がいいのを求める。

 火炎放射器やヒートガンなど熱を与える攻撃する方法もある。

 超伝導体で質量を飛ばすマスドライバーや大口径レーザー兵器は熱をためやすいから、反動はあるが弾丸を撃ち出す火薬兵器を使っている。

 マシンガン系をフルオートで撃てば銃身に熱がたまりオーバーヒートをおこし、冷えるまで撃てない時間帯ができる。

 それは銃自身の問題であり、アサルトコアの排熱とは関係ない。

 接近戦になれば熱のたまるレーザーブレードではなく単分子ナイフを使っている。

 兵器にしろエンジンにしろ装甲にしろゲームマネーを使い、ジャンク屋でチューンナップできるが、強度が下がったり重くなったりと代償をともなう。

 そしてなるべく能力が下がらないようにするため、上級スキルを持つガンスミスの所を訪ねカスタマイズしてもらう。(それもゲームの目的の一つである)

 知り合いのNPCにスキル保持者に紹介状を書いてもらえる。

 改造は完全に個人の好みの問題に左右される。

 

 腕は武器腕と五指を持つマニュピレーターに大別される。

 勇者は敵を寄せ付けないように右腕をガトリングガンに、左腕がもしもの時に供えて近接範囲攻撃のショットガンになっている。

 魔王は右腕がドリルアームになっている。

 男のロマンらしい。

 左手には盾型機関銃(シールドマシンガン)を装備して乱射しながら敵に近づく。

 全身の装甲を強化しているためあまり多くの武器は持てない。

 弾切れすれば左手首を吹き飛ばして付け根からレーザーソードをだし、右手首のドリルも打ち出して回転するレーザーシールドに変更する第2形態に移行する。

 ドリルの射出は魔王の奥の手である。

 僕は状況に応じて武器の変更ができるように両腕ともマニュピレーターにしてある。

 光学迷彩のマントを広げたり、他人の世話が出来たり、物を動かしたりできるから便利だ。

 

 背中には魔王は固体燃料を積んだジェットパックで空を飛び高速水平移動が出来、ドリルで突っ込むのが彼の得意戦法である。

 勇者はスマートミサイルを積んでいる。

 上空に一度上げて、旋回してデータにある敵を探して突っ込んで行き、ナパームによる範囲攻撃。

 敵が妨害電波(ジャマ—)でロックオンを外してきたり、(デコイ)を使って偽情報を送ったり、熱源探知機や赤外線感知器や電磁波(レーダー)音波探知機(ソナー)を妨害するマイクロマシンを散布される。

 スマートミサイルのAI達は光学系の画像処理による情報しか手に入らない。

 素粒子ロープでつながっている場合は情報伝達が出来る。

 敵が居そうな場所の地形情報を送って、その地点に突っ込ませて範囲攻撃を行う。

 巡航ミサイルは撃墜されやすいため、防御システムを勇者がミサイル打ち上げる前に狙撃するのが僕の主な任務である。

 僕の『アサルトコア』の背中には着脱可能な武器庫を搭載している。

 デコイや吸着地雷や逃走用の(スモーク)や予備弾倉を積んでいる。

 地面に降ろせば4本足が起動する。

 氷の上でもバランスをとりながらついてくる。

 3Dモンスターのアルゴリズムプログラムを移動させれば、独立して考えながら僕に有利な行動をとる。

 背中から独立した移動武器庫に注文すればフタを開けて盾になり、ライフルの台座にもなる。

 

 勇者の両肩には直進するロケット砲が搭載している。

 マッハ7で飛ぶため迎撃は不可能。

 右も左も独立したAIが自分で敵を探し、勇者はめぼしい相手が画面に映った時にGOサインをだす。

 僕の場合は索敵用のマルチコプターのドローンが左肩に百機載っていて、戦場各地にばらまく。

 ドローン同士が素粒子ロープで連絡をとりあい、蜂や蟻のような昆虫みたいに集合知を形成して重要ポイントを捜索し、低速で移動する巡航ミサイルなどを見つけたら取り付いて自爆する。

 右肩からの素粒子ロープでつながっていて、マイクロマシンの妨害の中でも映像を送ってくる。

 課金して連れてきている光ネズミの3DモンスターのアルゴリズムがAIとしてビッグデータから敵性施設や兵器を検索して送ってくる。

 魔王は左肩がアンカーになっていて、地面に打ち込んで急旋回し、逃げる敵の背中に打ち込む(素粒子ロープでつながっている)。

 右肩はフックになっていて、その場にひっかけて地下や、エレベーターシャフトを降りる。急斜面を急速登攀する時に使う。

 

 頭部には各種センサーがそろっている。

 僕のは主に遠距離狙撃がしやすいヤツを使っている。

 勇者はロックオンしやすい横幅の広いヤツを使っている。

 接近戦を仕掛ける魔王の頑丈なヤツを使っている。

 

 勇者は戦車(タンク)型の脚部にマイクロマシンが散布された(のみ)で自動浮遊できるピットを前に二つ、後ろに二つ搭載している。

 戦場全体がマイクロマシンを散布される。

 敵が散布する場合もあるし、コクピットの下の貯蔵庫から、こちらが散布する事もある。

 ロックオンが不可能になれば、ピットを哨戒させミサイルの迎撃に努める。

 カードで内蔵してあるAIに攻撃地点を索敵させる。

 発見しだい攻撃するようプログラムされている。

 勇者はそれで敵の存在を理解する。

 マイクロマシンの濃度の高い所に敵か防衛施設がある。

 攻撃もできるのだが使用中は本体の熱がたまるし、飛んでくるミサイルはともかく、装甲の厚い『アサルトコア』に効果的にピットはダメージを与えることができない。

 位置情報が分かればピットを引いて、その位置にミサイルを叩き込んだ方が正解である。

 魔王は両脚には補助ジェットブースターが取り付けられている。

 運が悪ければ弾丸が足に当たって誘爆する事もある。

 僕は万が一接近戦なった時のために左足にはナイフを10個。

 右足にはボタン一つで勝手に鎖を右腕に巻き付け固定し、強力な火薬で打ち出す、一発勝負のパイルバンカーを内蔵している。

 

 ナムコナミのゲーム『ウォードッグ』の中で魔王がイベントで未来都市アルカディアの企業刑務所に捕まっている。

 しょうがないから僕がアルカディアの城壁の外の貧民街に、課金して工場兼倉庫兼隣接住宅をひとつ借りている。

 そこに3人分の『アサルトコア』や買い足した換装用の装備を預かっている。

 エースパイロットはドライバースキルも手に入れやすいため、僕が課金して4人乗りの車を購入してドライバーを兼ねる。

 魔王は刑務所、勇者は棺桶ホテルにいるが、勇者は近くのギャンブル場でハッキングイカサマをして小銭を稼いでいる。

 勝ち過ぎると用心棒にボコボコにされる。

 倉庫には車が3台ある。

 オフロード用と都市用とレース用である。

 オフロードには装甲と武装が、都市用にはステルス機能を追加してある。

 レース用には超伝導体による電動磁石型空中浮遊による競争になる。

 水素エンジンで電気を流し、超冷却装置(スーパージェネレーター)は二オブチタン合金と液体ヘリウムでー269度を保ち、壁や地面には隣の車には磁石の力で絶対ぶつからない。

 車体に電気を駆け巡らせ車の角度を調整し、500キロのスピードを楽しむ。

 サーフィンに近い感覚。

 最終ライバルは「磁力線の見える男」ドイツ人のオッペケペカイザーらしい。

 どちらかと言えば血がたぎるタイプで戦闘メインに楽しんでいる。

 レースは何回かした事があるが、リーグやチームに入っていない。

 レースをメインにしても、ライバルやかわいい女の子が出てくるシナリオやイベントがあり、結構楽しいらしい。

 ウェアラブルコンピュータをゲーム世界に持ち込めるわけではない。

 ゲームの設定では脳に内蔵している極限まで小さくなったインナーコンピュータに、現実世界でウェアラブルコンピュータに正規のルートでダウンロードしたアニソンはゲーム世界に持ち込める。

 都市用の車のエンジンをかければ車のAVスピーカーからアニソンが流れてくる。

 まずは2人を迎に行かなくては。

 窓を開けると風が気持ちいい。

 鏡に映る僕のゲーム内のアバターは東洋系の黒髪で頬に十字の傷がある。

 赤い機械眼(マシンアイ)が特徴的な光を帯びる。

 タバコ型の筋力をあげるドラッグに火をつけて吸う。

 移動スピードまで上がる優れもの。

 計算能力と命中精度と反射神経は自前の物だが、HPやMPを上げるドラッグは普通にショップで売られている。

 いつもどおり偽造IDでアルカディアに入国する。

 まだ交通ルールを守って運転し、ギャンブル場でトラブル犯した勇者が用心棒に追われながら出てきた。

 あわてて車に飛び乗ってきた。

 バックパックやスマートミサイルを背負っている。

「勇者よ、イカサマは一人の時にやれよ」

「スキマ時間が惜しい、夕夜がくるタイミングで大きい勝負にでた」

 この仮想ゲームにおいてコンピュータは小さくなって人体に内蔵されている。

 映画「マトリックス」と同じで生体電気を使用している。

 勇者のコンピュータチップは埋め込み式で、身体をサイバー化してないから瞳にコンタクト型デバイスを装備して情報を得ている。

 ギャンブルしながら僕の位置情報を検索できた。

 ハッカーだから目に映る人間の個人情報がわずかな思考で閲覧できた。

 アバターの顔はアジア系だが頭はピンクに染めていた。

 刑務所に行くと魔王が入口からでてきた。

 黒と銀を基調とした全身装甲の完全義体。

 皮膚は光学迷彩になっていて、静粛性に優れ心音や呼吸音を内臓酸素を使い数分間0設定ににできる

 勇者が異性プレーを嫌がるからフォルムは女形にしている。

 男のロマンを口にする割には大人の対応もする。

 肩や腰や左腕に、立体機動用の素粒子ロープを発着するストライプ程の大きさの3Dモンスターを34体装着している。

 3Dモンスターカードは矢じりになって壁や天井に発射され、張り付くと素粒子ロープを身体につながっていて、ヒッグス粒子で質量を与える。

 150キロある体重を苦もなくロープで引き上げる。

 ロープは魔王が指定したポイントに自動で誘導して障害物をよけて突き進む。

 右腕の手の甲にはレーザーの刃が飛び出してくるチェーンソーを装備している。

 左腕も3Dモンスターを発射台が装備されている。

 アサルトライフルと予備の弾丸や爆発物解除キットや罠《トラップ》解除キットの入ったバックパックを手にしていた。

 ルーフキャリアには僕の熱光線銃(ヒートガン)またの名を電子レンジガンと初速がマッハ7の質量打ち出し超電磁加速砲(マスドライバーレールガン)が積んである。

 魔王が折りたたみ式バトルドレスをルーフキャリアに置くとと車体が傾く。

「アルカディアって、お前らが住んでいるコエプコンと同じで企業都市なんだよな。

 重役の娘で西園寺ユキっていうのだけど、彼女個人もけっこう重要人物みたい」

「なんか役職ついていんの?」

「市長の秘書らしい」

「検索してみたけど、ニュースになってないぞ」

「報道管制でもかかっているだろう」

 人脈(コネ)でも使えればいいが、素粒子妨害(ニュートリノジャマ—)で熱核攻撃が無力化し、残存資源をめぐる企業間戦争が大量に増えた時代設定になっている。

 僕も魔王も都市外で活動していたため、軍関係や傭兵関係の人脈を育てていたし、魔王はレジスタンスのリーダーの娘といい関係になっている。

 都市内で動こうとすれば、黎明期からやっている勇者だけが頼みの綱である。

 コンビニの駐車場に停めて、勇者の仕事を待った。

 インナーコンピュータを使いあちこち連絡をとっている。

 コネを使っている。

 公共の警察機関が事件のオークションをかけて、私設警備会社が受ける。

 インターネットを見る限りどこの組織も活動していない。

 警察機関が動くことはない、予算がない。

 懸賞金をかけられる組織の代行機関だった。

 競争相手はいないが隠密性がいる。

 ゲームのシナリオだから依頼の裏をとる必要はないだろう。

 あんまり裏切りシナリオをやると、プレイヤーは疑心暗鬼になり楽しくない。

 最悪プレーしなくなるかもしれない。

 ある程度たつと勇者は収集した情報を元に、連れてきている3DモンスターのAIを総動員して、アルカディア中の監視カメラの履歴を検索して位置を割りだす。

「だいたい見当がついた。

 13ブロックの廃ビルだな、持ち込んでいる武器を調べてみたが、トレーラーが納品していた。

 トレーラーの履歴をAIに調べさせた。

 ああだめだな、アルカディア外からもちこまれている」

 アルカディアの外には監視カメラがない。

「こりゃ、中ボス戦あるな」魔王が口にした。

 ロボットだから表情は分からない。

 洋ゲーと違ってステルス物が主流のゲームでも、中ボス戦があるのがナムコナミのドット時代からの伝統である。

「しまった! 防御陣形用のロボグルミ、棺桶ホテルに置いてきた」

「時間制限はあるのか?」僕が魔王に聞いた。

「きっかり3時間後には刑務所に戻らないと」賞金稼ぎが捕まえに来る。

 時限ダイナマイトを身体に埋め込まれてないだけゲーム的というか良心的だな。

「時間があるから取りにいこ。

 トレーラーの大きさを見る限り、自動で動く小形のアサルトコアぐらい連れてきているぞ」

 すぐさま勇者が間借りしている棺桶ホテルに移動した。

 トランクには勇者は機関銃で武装した体高30センチ位のロボグルミを10体ほど積み込む。

 ゲームマネーで課金してAIとして持ち込んでいる。

 ゲームだけのオリジナルAIを購入した方が安くつくのだが、持ち込めば3Dモンスターに仲良し値がつく。

 おもちゃの防弾チョッキを着て安全ヘルメットをかぶっている。

 ゲーム世界においてコレがなかなか馬鹿にできない。

 30体ほどの3Dモンスターを課金してカードを持ち込んでいる。

 攻撃可能な折りたたみ式マルチコプターやラジコン、監視だけがメインの昆虫型ドローンなどにカードを挿入して自律で動かしている。

 アサルトコアのコンピュータにカードを入れれば自律して行動できる。

 アサルトコアでも乗ったり降りたりしながらシナリオを解いていく、歩行時は援護射撃をしたり、迎えに来たりしてくれる。

 勇者のインナーコンピュータで中央制御を行う。

 コンタクトデバイスに半透明の30体分のレイヤーが表示される。

 警備員がたくさんの画面から万引き犯を発見するのと同じで、敵が現れて勇者者が何枚かのレイヤーの優先度をを指定する。

 インナーコンピュータにデータを検索して、最適化された計算手順アルゴリズムプログラムを起動する。

 勇者の判断を待たずに自動的に司令官として命令を下し、各個体が連携して突撃、牽制、撤退を繰り返す。

 ちょっとしたAIIoTである。

 敵に対して凄い力を発揮する。

 ロボグルミは予備弾倉を背中のバックパックに背負っている。

 勇者はトランクに数々のギミックを詰め込んだ。

 毎回恒例である。

 弾丸と燃料を十分に購入してから廃ビルに直行した。

 到着すると勇者は人工衛星をハッキングして周辺情報を集めた。

 廃ビルなのに警備ロボットが配置されている。

 勇者は中の情報を集めるため、生きている監視カメラを探したが見つからなかった。

 てっとりばやくヤクザやチンピラを使っているわけでない。

 外にいるロボット達もスタンドアローンで動いている。

 この事件、根が深いぞ、このゲームのマイルストーンかもしれない。

 敵がどれだけ優秀なコンピュータかNPCか分からない。

 スタンドアローンといっても、IoT(機械からインターネットに情報を送る)ビーコンが搭載してあり、動かなくなり、ビーコンが情報を発信しなくなる。

 リーダーが不審に思うかもしれない。

 しょせんゲームだ。

 勇者が一応昆虫型ドローンで偵察した。

 蚊サイズのドローンは人のDNA採取やマイクロデバイスの注入も可能。

 めぼしい敵をマーキングする。

 情報はマップで三人に共有される。

 手近の三体を狙撃で破壊して、敵の出方を見ながら考える。

 敵の死角に車を止めた。

 早速車の屋根からレールガンとヒートガンを取り出した。

 マイクロコンピューターを破壊するのは電子レンジを一瞬あてるのが効率いい。

 これだけ重武装しても誰もとがめない。

 勇者がロボグルミを取り出して整列させた。

 僕が持ち込んでいる3DモンスターのAI光ネズミは無人になった車に転送して、自動運転用のブログラムとなった。

 素粒子ロープでつながっていて、僕からの命令があれば自律して最善の行動をとる。

 人数が少ないから、スナイパーである僕も一緒に行動する。

 ドラッグで筋力を増強してあり、右手にレールガン左手にヒートガンというのができる。

 神経伝達機械(ニューロチップ)と、銃の照準器スコープが素粒子ロープでつながっている。

 人工眼球に現実の映像の上に照準器の映像がうすく投影されている。

 右目にレールガンの映像、左目にヒートガンの映像。

 照準器スコープを覗く必要がない。

 素粒子ロープはヒッグス粒子の濃度で鋼線のように丈夫なロープにもなれば、絹糸のように軽くて壁を貫通する連絡ケーブルにもなる。

 同時に別々の目標を処理した時「お前の脳の中の演算処理能力はどうなっているんだ。俺の知っている限りそんな芸当が出来るのはお前だけだぞ」魔王が感心した。

 人間の思考速度は早口言葉が口を使わないからといって10倍の速度で思考できるわけではない。

「人間は心的回転課題(メンタルローテーション)、2つの絵の間違いを探すのは一瞬で出来るが、角度を変えられると突然頭が働かなくなる。

 H世代の中でお前だけが思考を超えた操作ができる」勇者が口にする。

「産まれた瞬間から生身の身体能力を超えた操作ができる『生まれつきの人間拡張能力者(オウガメンテッド・ヒューマン・ネイティヴ)成功遺伝子(パーフェクトジーン)である」コエプコン社が認定した。

 レールガンの弾丸は劣化ウランが使用されていて、たいていの装甲は貫通する。

 表にいる三体のドローンをヘッドショットする。

 撃ち合いになるかと思えば増援はこなかった。

 これは目の前の敵を排除すればいい楽なミッションかも。

 バトルドレスを着用した魔王が空中飛行を行い、屋上から進入。

 派手な銃撃の音がする。

 魔王は一応非殺傷武器(ノンリーサルウウェポン)である皮膚の痛点を刺激する光線や摩擦係数を0.01にする液体を積んでいる。歩行や走行が困難になるが、水分が蒸発すればただの粉末になり掃除も楽である。

 僕と勇者は壁伝いに身を隠しながら玄関から進入。

 SWATでは全開口部から同時進入して、敵より銃口を増やすというのが正しい。

 少数がすべきではないのだが、そこはゲーム。

 なんとかなる。

 こっちは身体には魔王のような装甲がない。

 繊維方向を多重に変え、さらに衝撃で固体化する液体シリカ粒子に漬けこんだケプラー製の防弾チョッキを着ているだけ、クレーバーに立ち回りたい。

 魔王が敵を引きつけている。

 僕と勇者とロボグルミは壁伝いに進入して、勇者がドローン達を使い捜査を開始する。

 2階まで吹き抜けになっている大型ホールで小形アサルトコアを発見した。

 コクピットの部分が透明な球体になっていて、女の人が捕らえられている。

 ゲーム的ではあるが、どんなに攻撃してもあの球体の中にダメージがいかない。

 僕達は2階からコッソリ進入した。

 僕の人工眼球の望遠が彼女の顔をとらえた。

 人工眼球は顕微鏡のような拡大もできる。

 データを勇者に送る。

 彼の体内のコンピュータが顔認証99.8%同一人物であるとはじきだした。

 発見したと魔王に報告した。

 廃ビルの部屋割りと位置データと部屋の見取り図の情報を同時に送った。

 僕は右側に、勇者はロボグルミを連れて左側にホールに侵入した。

 三人共有のデータボックスに入れておくだけでは、戦いに忙しい魔王は気づかないと思い電話もする。

 素粒子ロープでつながっている。

「魔王。いま人質を発見した。データを送った」

「分かった。後12秒でそっちに行く」

 敵の両肩や両足にミサイルポットが搭載されている。

 右と左の腰には僕の身長以上あるブレードソードが装備してある。

 相手がまだこちらに気づかない。

 標的として一番小さい右肩ミサイルポットにヒートガンを照射した。

 一秒で発火してミサイルが誘爆した。

 同時にバトルドレスを脱いだ魔王が立体機動を使って、窓ガラスを叩き割って突入してくる。入ってくるなり天井に右腰の3Dモンスターを発射する。

 URモンスターのストレングスは並ではない。

 一体で150キロの魔王の体重を天井にしがみついて引き上げる。

 電力でロープの長さ長くしたり短くしたりを調整できる。

 屋上から左肩の3Dモンスターが素粒子ロープを伝って凄いスピード帰って来る。

 魔王も課金してたくさんの3Dモンスターをゲーム内に連れてきている。

 左腕にカードを挿入すると3Dモンスターは顕在化してアサルトコアにたくさん取り付かせる。

 同時に壁や天井や床にも撃ち込む、それぞれから素粒子ロープをつなぎ、まるで蜘蛛の糸で絡めとるように動きをふうじる。

 敵が魔王に意識を集中した時、左肩のミサイルポットを照射した。

 1秒後に誘爆する。

 魔王が破壊した窓から空中浮遊をするレーザー光線を搭載したマルチコプター達が入ってくる。

 レーザー兵器は収縮して使うと光りの波長が肉体を貫通するし、拡散して使うとある程度の光の波長が網膜まで焼いて失明してしまう。

 僕は網膜まで含んだ眼球を機械化サイバー化しているが、勇者は防御ゴーグルをはめた。

 スタンドアローンのロボットが6台ほど一階入口から入ってくる。

 ラジコンやドローンは退避させた。

 勇者が入口にスマートミサイルをぶっぱなす。

 ロボットは全部倒した。

 僕は敵の左足のミサイルポットにヒートガンを照射して破壊しながら、マルチコプター達をレールガンで破壊した。

 魔王は接近戦が得意だけど遠距離戦は結構苦手な所がある。

「ごめん。地面にいるやつは倒したけど、空中にいるやつは全部連れてきちゃった」

 勇者のロボグルミ達は近づけまいと、はりねずみの様に銃を乱射する。

 レーザーはバッテリーを食うけど、マルチコプターは10分位の活動は可能だろう。

 魔王が敵の右足のミサイルポットに左手の3Dモンスターをぶつけて引き剥がした。

 ヒッグス粒子の濃度をあげて強化された素粒子ロープは、敵を引き倒したり、束縛したり、しがみついたりできる。

 敵は両腰のブレードソードを抜いて構えた。

「勇者。剣を抜いたぞ。動かないと的になるぞ」大きさからいって当たれば一発死である。

 ゲームであるから町の道路上にばらまかれているセーブポイントからやり直し。

 勇者もロボグルミ達もとりあえず走り出した。

 僕も走りながらヒートガンで熱を与えて関節ユニットを壊す、敵の左足が動かなくなり倒れた。

 その間もレールガンでマルチコプターを破壊する。

 もう半数以上は撃ち落とした。

 小型アサルトコアがどこに装備しているか分からないが、電磁波や音波で人間を無力化させる攻撃を自分中心に部屋中に反響させる。

 音波の方は機械耳マシンイヤーが自動で除去してくれるが、電磁波の方はどうにもならん、動きが鈍る。

 マイクとスピーカーの構造は同じで、目を閉じて超音波探知機として探信音を放って索敵できる(ネズミの心音も拾う)。

 薄い壁なら透過する。

 壁の後ろにいる敵や機械も音の波が届いて、反射が反ってくれば部屋の構造を理解し心音や稼働音をマーキングできる。

 勇者の方は両耳押さえてひっくり返った。

 首にかけていたヘッドホンをあわててかけてカットする。

 だが、フルボーグの魔王とロボグルミには効かない。

 左手の3Dモンスターを相手の顔に発射して素粒子ロープを巻き付け、ロープを高速でたどって敵の頭部に取り付いた。

「うりゃああ」

 魔王がレーザーチェーンソーで敵の首をはねた。

 不快な電磁波と音波が止む。

「退け、魔王」

 復活した勇者がミサイルランチャーを構えた。

「よくもやってくれたな」残り3発共ぶち込む気だ。

 僕も距離を置かないとマズイ。

 魔王は立体起動を使い天上に逃げた。

 僕は柱に隠れた。

 勇者が連れてきているロボグルミ達は素粒子ロープを口から吐き出して爆風に対する防御壁を作った。

「死ね」範囲攻撃が辺りを包む。

 ダメージ過多な気がするがどうやらこれで終わりのようだ。

 残りのマルチコプターはロボグルミ達が一掃した。

 透明カプセルに近づいた。

 勇者が手をかざして暗号コードを解読した。

 勇者のスキルを持ってすれば簡単だった。

 中にダメージはいかないが気絶している。

 魔王が抱き抱えた。

 ロボグルミが1匹、勇者の下に凄い勢いで走ってきた。

 勇者とデータを共有した。

「げっ。マズイ事になった」勇者が叫ぶ。

「誰かが警察に戦争があってるて通報したぞ。

 警備会社が事件解決をオークションで落札したぞ」

 警察が機能していない世界では、警備会社とマフィアの境界がはっきりしない。

「イベントが終わってないぞ」魔王が僕を見た。

「脱出しよう」僕は車の自動運転のアルゴリズムになった光ネズミに「迎えに来てくれ」と連絡した。

 魔王は屋上に置いていたバトルドレスを左手の3Dモンスターをとばして、素粒子ロープで手元に引き寄せた。

「その女を起こせ。どこに行けばいいか分からないぞ」

 乱暴に勇者がいう。車まで全員で走った。

「これまで含めてイベントかな?」僕が聞いた。

「多分な」値段の高いミサイルを撃ち尽くした勇者が答えた。

「あっ、起きた」

 魔王が運ぶ。車に着いた。

「あんたから警察を説得できないか」

 勇者は相変わらず乱暴である。

「一体何があったんですか?」

 女NPC(ノンプレイヤーキャラクター)が人間のような反応をする。

 最新の人格プログラムと3Dデータにかかれば、個性と心を持っているように感じる。

「あんたを助けたところだよ、説明は車の中でする」

 全員で車に乗り込む。

 勇者が助手席にすわりカーナビの画面と体内のインナーコンピュータと同期させた。

 僕達に見せたい情報を送る。

「企業都市アルカディアの重役の娘、西園寺ユキさんで間違いありませんね?」

「はい」

 魔王は女にはNPCにもていねいである。

「僕らはあんたを助ける依頼を受けた、トリガーハッピーの愚連隊さ。

 どこに行けばいい?

 警備会社に引き渡してもOKなのか?」

 勇者は相手が誰であろうと態度を変えない。

 等しく乱暴である。

「敵対勢力の可能性もあるので、父のところまでお願いします」

「弱ったな、

 車が3台出てきた。

 武装しているマルチコプターが10台だな」

 交通局にハッキングしている勇者がカーナビの画面に、インナーコンピュータから敵の位置情報を送った。

「人工衛星も使っている、この車マークされたぞ」

「市役所に向かってください。

 そうすれば企業舎弟の警備会社がガードしています」

「交通局のオートメーションを使って車の方は妨害できるが、マルチコプターの方は真っ直ぐこっちに向かってくるぞ」

 勇者がネットで自動運転車のコントロールを奪って敵を妨害する。

 市役所はともかくハンドルを警備会社の逆方向にきった。

「警備会社にハッキング。マルチコプターの武装を確認してくれ」

「さっきと同じレーザーだよ」

 僕の質問に勇者が答えた。

 基本マルチコプターは規格である。

「車から離れたところで、マルチコプターを叩く。

 追跡がなくなりしだい光学迷彩で人工衛星から隠れる」

 僕が指示した。

「来たぞ」魔王が窓から乗り出してマルチコプターをアサルトライフルで銃撃する。

 僕は照準器スコープを取り付けた特注の拳銃をダッシュボードから取り出した。

 情報は眼球に直接入ってくる。

 目に映る濃度を調整して100%まで引き上げると、右目は完全に照準器スコープだけの情報になり、左目だけで車を操縦する。

 後ろ手で撃ち落とす。

「お前、ゲームとはいえ、反動のある火薬兵器で良くそんなマネができるな」

 勇者も額にしていたゴーグル(閃光弾が炸裂すると反応して目を守るため色がつく)を目にはめて、身を乗り出して護身用の拳銃を構えたが、後部シートの魔王がジャマで撃てない。

「撃っても当たらないクセに、ハッキングでなんとかしろよ」

 薬莢を交換しながら勇者に叫んだ。

 勇者のロボグルミ達はみんなトランクに入っている。

 乱射して近づく戦法を得意とする魔王が、珍しく逃げながら3台程落とした。

 イベント女の前だからええ格好している。

 残り2台を後ろ手で撃ち落とした。

 僕凄い。

 同時に車の光学迷彩を起動する。

 ルーフキャリアが荷物をよけながら光のシートを広げて、地面の情報を屋根に伝えて周囲をグラデーション処理する。

「人工衛星が見失った」

 勇者が警備会社の情報を平行してハッキングしていた。

「良し、お邪魔します」

 挨拶して手近な地下駐車場に入り、車3台をやり過ごす。

 警備会社は完全に僕達を見失った。

 諦めて発注してある別の仕事を受けた。

 ゲーム世界では5分程で諦めてくれる。

 僕達はハイタッチをした。

 バッテリーを喰う光学迷彩をやめて、市役所近くまで普通にドライブした。

 西園寺ユキは父親とハグした後、依頼を受けた魔王が事件の全容を聞いているようだ。

 後からチャットで聞けばいいから、僕と勇者は車の中で待っていた。

「あっ」僕達は驚いた。

 魔王の鉄のホッペにキスしていた。

「魔王、レジスタンスのリンともいい関係のクセに、ゲーム毎に女を作るどころか、ゲーム毎にハーレムを作る気か」

 男がハーレムを作る場合は世間オタクの態度は寛容だが、女が逆ハーをすれば多淫症ビッチであり軽蔑、侮蔑の対象である。

 魔王のような百合ハーレムはグレーゾーンである。

「もう、作っているよ、お前が知らないだけだ」

「今に、背中から刺されるぞ」

「女NPCは現実と違って刺さないよ」

 魔王が「帰っていい」と連絡をよこしてきた。

 刑務所まで送ってやろうと思っていたが、時間ギリギリまでデートする気だ。

 まあ、ゲームだし、刑務所から身体に爆弾を埋め込まれていて、門限までに帰らなければ爆発するワケでない。

 賞金稼ぎバウンサーが迎えに来る。

 現実は監視能力の強化により知能犯まで含めた犯罪者数はのきなみ増えた。

 信号無視やスピード違反もセンサーに検出される。

 もはや警察は自動運転車に買い換えろと世間に圧力をかけている。

 刑務所は飽和状態になり、刑期の長い重犯罪者は位置を知らせる電子タトゥーを装着され、無償で政府の仕事をすることで刑期が短くなる。

 逃げたり引き剝がしたりすると、速攻性のしびれ毒が投与される。

 電子タトゥー自体は絆ばん創そう膏こうのように貼ったり、剥いだりできる。

 喉にはれば管理者にwifiに状況を報告できる音声入力のデバイスになる。

 車をだして、勇者を棺桶ホテルまで送ってから、NPCが相手の(と言っても元になる人間のアルゴリズムはある)ミニゲームの市内一周レースに参加する。

 優勝して(ゲームマネーが手に入る)からログアウトした。

 

「お帰りなさい、マスター」

 ララが食事の用意をした。

 まあ、シェイカーを振るだけだけど。

 片手でドリンクを飲みながら、空いた手で昼休みにしなかった無料ダウンロードしたゲームの本日のボーナスアイテムを回収する。

 今日は戦略物ストラテジーといわれる文明シヴィライゼーションXをする。

 洋ゲーのシミュレーションはあまり人間を頼みにしない。

 英雄や偉人は少しプラスがつく程度。

 技術の発展や革新に重きを置き、人間に1〜100までに能力値を割り振りしない。

 時の流れも速く狩猟採集時代から近未来まで4時間もあればたどり着く。

 選択した民族毎に得意と苦てがあって、歴史的背景も知っていれば更に面白い。

 アーカイブで探すと神になって天変地異を起こして、平地に家を建てさせ人工を増やす。

 最終的にハルマゲドンを起こし自分の民族を率いて相手の民族を絶滅させれば勝ちの「ポピュラス」が最初だ。

 日本人は奇跡の力で相手の平地を破壊して遊んでいて、デザイナーは「日本人は遊び方を知らない」と嘆いたらしい。

 文明Xはターン制で将棋やチェスのように順番がある。

 RTSリアルタイムストラテジーと呼ばれるAGE of シリーズ物もあり、文字通りユニットの生産や、資源の獲得、技術の研究、建築物の創造に時間が割り振りされている。

 あのユニットを作るには、この建物を建て、あの研究をすませ、これだけの資源がいる。

 というものがあり、コンピュータのレベルを最高にすると最善手を打っても勝てない。

 ウェアラブルコンピュータのシンプルに作られたRTSを協力プレーで同盟を作り、盟主となって行動している。

 宗茂・H84・コエプコンに攻略法を聞いてみた。

 歴史どころかSFからファンタジーまであらゆるRTSをしてきた宗茂が、所属するサークルから神と崇められている宗茂が「自分でも運が良くないと勝てない」と言ってきた。

 僕が及ぶところではない。

 同時にサブとしてウェアラブルコンピュータ上のシナリオ重視のターン制のJRPGを複数プレーした。

 光ディスプレイが空中に浮いていて、空中タッチディスプレイになり、片手間で次々と攻略していく。

 ウェアラブルコンピュータは6ぐらいゲームの画面を出力できる。

 11時になり、ゲーム達をセーブしてから、いつもどおり運動して、お風呂に入り、ララとの儀式すませ、睡眠導入剤を投与され、ねむりについた。

 昔、連続してゲームを行い、止まっているのに後ろに下がっているような3D酔いをおこした。

 更に続けるとコントローラーと画面の間でピンク色の服を着た妖精がクルクル回る。

 更に続けると鼻血がポタポタと落ちてきた。

 ララが救急車を呼んだ。

「長所を伸ばせと言ってきたが最低7時間は寝せろ」

 全ロボットに通達がコエプコン社からだされた。

「お前、なにやったんだ」勇者が笑った。

 ララはとても反省していた。

------------------------- 第4話開始 ----------------------

【タイトル】

20××年10月19日 水曜日

 

【本文】

 朝になるとララが起こしてくれる。

 今日はネット上の仮想教室で集団授業がある。

 毎週健康診断の時、自らの3Dデータを更新する。

 集団授業の時はこの3Dデータをアバターにしなくてはならない。

 いつものツナギを着て、神経伝達ヘルメットをかぶると一瞬で自分のあてがわれた席に座った状態でテレポートしてくる。

 学生物のゲームをやると登校シーンがあるのだが、授業を管理しているコエプコンは必要に思ってない。

 10月すぎたから全員詰襟の黒づくめの学生服になっている。

「おはようございます。夕夜。ランキングは上がりましたか?」

 他の世代はどうか知らないが、H世代はボッチだらけで基本他人に干渉しない。

 絵理野亞エリノア・H12・コエプコンが隣の席から声をかけてくる。

 H1の太郎が一番値段の高い卵子が使われていて、金額の順番に番号が振られている。

 コエプコン社にとって分かりやすい。

 絵理野亞の卵子は問題行動の多いハリウッド女優セリューンのが使われている。

 エリノアは母親に似ていて銀髪プラチナブロンドで、そのまま女にしてもいいぐらい美人だ。

 彼はネットの中で卵子提供者に会っている。

 座席が7行12列で並んでいるため、H24の僕の隣にくる。

 微笑みを浮かべて質問してくる。

 エリノアは特殊で他人に興味を持つ。

 我が道を行くタイプが多いH世代の中で意見を調整して集団を形成しようとする。

「おはようございます。

 エリー。

 専門のひきこもりやプロゲーマーが凌ぎを削る世界では、落ちることはあっても、簡単に上には行けない」

 彼は僕と太郎と勇者と宗茂にだけ「エリー」と呼ばせている。

 他の者が親しげにエリーと呼べば、エリーのロボット真理亜マリアを通して正式に抗議をしてくる。

 勇者が前の席にテレポートしてきた。

「魔王、昨日のシナリオの話をしてきた?」

「聞いてない。今日会った時メールするように言っとくよ」

 チャイムが鳴って授業が始まる。

 

 1時間目は皇室と国家と会社の歴史。

 

 まず始めに全員起立する。

 左手を心臓の上に置き、右手を斜め45度に掲げる。

「皇室と国家と会社に変わることのない永遠の忠誠を、

 万が一の時はこの心臓を捧げ守り抜きます」

 クラス全員で唱和した。

 教育勅語の唱和など幼稚園の頃から教えられる。

 正しい歴史と国家観を学ぶため、歴代天皇の暗唱と古事記と日本書紀の解説。

 中国の悪口で埋め尽くされた親米保守の近現代史。

 ここまで洗脳がキツイと会社に対する国家(アメリカ)の意図が見え隠れする。

 

 2時間目は音楽の授業

 

 コエプコン社が配信するボカロPを使い、歌や伴奏やダンス動画を製作する。

 脳波入力の追加アームでドラムを叩くというのはライブで日常的に行われていた。

 シンフォビアというワンマン・オーケストラのソフトもあり、NPCに楽器を演奏させると本物と区別がつかない。

 訓練したオウガメイテッドヒューマンは3つの楽器を脳波で演奏できる。

 常人の脳の思考は同時に出来るのは3つが限界である。

 小学生までは集団授業で合唱や楽器の演奏があった。

 エリノアの卵子提供者は声楽科を卒業した歌手でもあるから、彼がクラスで一番上手い。

 データを取る時、自らの動きを机の上のボカロに投影してダンスしている。

 クラスのみんなが机の上にデータをもちよって個人個人で作るのだから「小学生の合唱ではないのだから集団授業の意味があるのか?」とララに聞いてみた。

「将来チームを作って仕事を会社がさせるつもりだから、いまから集団授業でチーム構成を考えるためだと思う」と答えた。

 NASAの研究によると、人間の性格は感情型、思考型、行動型、反省型、意見型、反抗型と6タイプに分類される。

 NASAは宇宙飛行士の選抜と配置に役立てるため、この研究をしている。

 感情型の顧客に思考型の対応をするのは最悪。

 怒っている客に理屈を説いても意味がない。

 まずは謝罪と同情。

 反対に思考型の客は説明を求めているから、クダクダと謝罪するより、適切な情報をあたえるべき。

 ロシアや中国はこれをやらないから密閉した宇宙空間で殺しあいがおきている。

 

 3時間目は美術の授業

 

 ゲームでは欠かせない背景グラフィックデザイナーやキャラクターのデザイン。

 コエプコン社がもっとも力を入れている授業で現役バリバリの一線級デザイナーが講師として招かれる。

 フライスルー(飛ぶ如く環境を移動できる)が目標。

 音楽でもやればいいと思うのだが、音楽の場合はネット上で才能が流通している。

「エミー」という作曲アルゴリズムが存在して、何パターンか決めてしまえば掘り下げた楽曲を自動生成してくれる。

 美術のように会社が一から作る必要はないらしい。

 背景も3D地図ソフトを流用したり、適当な土地に植物の種子ソフトをばら撒き、光源を設定して森やジャングルをランダムに作ったりしている。

 一部の熱狂的ゲームオタクは聖地巡礼と称して旅行に行く。

 3DCADの授業もあり、2Dの画素(ピクセル)に値する立体画素(ボクセル)にX軸、Y軸、Z軸に数値を打ちこむ。

 浮かび上がる立体画像を手で操作し、形を変え、色塗りを行ったりする。

 表面模型サーフェスモデルから立体模型(ソリッドモデル)への異動はコンピュータによる全自動である。

 ポイントクラウドによるデータポイントを細部まで完成させる。

 インテリジェントなプログラムは革命的に進化した。

 授業の終わりにコエプコン社の3Dプリンターにデータを送る。

 夕方には完成品が無人のマルチコプターで運ばれてくる。

 コエプコンの億単位をかけて作った中央メーカー群は

 ・ガジェット[ドローンやロボットの部品/メーカーDIY部品/メカニカルな部品]

 ・アクセサリー[ケース/キーチェーン/ベルト]

 ・ジュエリー[指輪/ペンダント/ネックレス/ブレスレット/イヤリング/カフス]

 ・アート[数学的/流行りもの/彫刻]

 ・ホーム[アクセサリー/ライト/ダイニング]

 ・ゲーム[サイコロ/ボードゲーム/玩具/パズル/デスク玩具]

 ・ミニチュア[電車模型/自動車/縮尺模型/家具/フィギュア/SF]

 など大抵の物には対応している。

 ロボット達が受け取る。

 

 4時間目はプログラムの授業

 

 プログラムの歴史と共に最新のプログラム言語を学習する。

 課題が提出されウェアラブルコンピュータのアプリを時間内に製作する。

 時間内にできなかった者は家のロボットに通知され、宿題になる。

 ロボットが親身になって教え、自分のマスターが落ちこぼれないようにする。

 政府の義務教育と違い、会社は遅れる事を見逃すことができない。

 僕達に投資にあったリターンを求める。

 遺伝子選別スキーミングの時点で僕たちのIQの数値は悪くはない。

 受精卵は遺伝子異常があれば2週間以内に殺される。

 

 昼休みは全員、家に食事に帰る。

 

 みんなスキマ時間内にゲームをして1時までに仮想教室に戻る。

 

 午後からはゲームの時間である。

 

 机の上にマルチゲームやボードゲームやテーブルトークRPGロールプレイングゲームが画面にあらわれ、やりたいゲームを選択する。

 この授業は世代間でシャッフルが行われている。

 マルチは駆け引きが身につく。

 ボードゲームは論理的思考が身につく。

 テーブルトークRPGは発想力が身につく。

 この時だけ世代間のシャッフルが行われる。

 ゲームが選択されれば会議室のような部屋に瞬間移動。

 用意されたゲームを行う。

 玄人好みではマージャン、将棋、オセロ、囲碁、チェス、ポーカーなども選択できる。

 各プロ協会が全面的にバックアップ。

 会議室ではなくアマチュアの交流所に招待される。

 最初はマルチゲームを選択した。

 将棋のように知識の量や自前の技の数が反映される訳でい。

 体力を競うわけではないから上の世代にも勝てるだろうと思っていた。

 だけど日本人の場合は献身的で誰もが勝利を求めるわけではない。

 源平合戦の様相になり、チーム同士の戦いになってくる。

 ゲームに現実世界の人間関係を持ち込まれて面白くなかった。

「カタン(島で領地を獲得し資源を使い発展させ、目標をクリアして点数を競うゲーム)」

「フンタ(政治家ファミリーになり、派閥を形成し、時にはクーデターをして、最終的にスイス銀行に横流しした金額を競うゲーム)」

 などゲーム自体は面白かった。

 他の世代とマルチをする気にはなれなかった。

 僕と勇者がチームを組んだにしろ、お互い勝利のため、いつ裏切るか分からない。

「わが陣営の勝ちだ」と言って1位になってないのに喜んでいる奴がいた。

 その一言が彼らの本質を現していた。

 もともと人間の遺伝子は200万年続いた狩猟採集時代、ガサガサ音がしたら敵が来たと逃げた。

 逃げなかった遺伝子は敵に淘汰され、臆病の方が本流になった。

 日本人は特に空気を読み多数派につくのが重視される。

 結局、勇者がキーパーをやっているクトゥルフ神話TTRPGのキャンペーンシナリオに参加した。

 TTRPGも変遷をたどっている。

 ダンジョン&ドラゴンズが最初のTTRPG。

 シナリオやNPCや敵モンスターを配置し操るコンピュータの役割を果たすゲームマスターがいる。

 命中用のサイコロを振り、アーマークラスを超えた時に、ダメージ用のサイコロを振ってHPを削り0になれば相手を倒した事になる。

 お金と経験値をもらって、ゲーム上のキャラクターの装備を整えてレベルをあげる。

 HPやMPあるいは魔法の数が上がる。

 いまあるゲームの基本が全て入っていた。

 その後はルールを詳細にし戦闘を緻密に再現する流れができた。

 サイコロを振ってランダムにできた能力値が、ポイントを割り振り自分の好みなキャラクターを作る流れに行った。

 アメリカでは物語再現(ストリーテラー)に向かっていき。

 日本ではアニメやライトノベルの再現に向かった。

 演出過多な気もするが日本の子供達には受けた。

 クトゥルフ神話は結構古株ではあるが、TTRPG界でも特異な地位を築いてきた。

 クトゥルフ神話が題材だからモンスターがでたらめに強い。

 基本モンスターを倒すゲームではない、恐怖を楽しむゲームである。

 モンスターと出会う度、SANチェックと言って理解して狂ったかどうか判定する。

 アイデアロールと言ってクトゥルフ神話を理解したほうが狂う。

 頭のいいキャラクターほど狂いやすい。

 勇者がキャンペーンシナリオをやるためプレイヤーと操るキャラクターが固定化した。

 

 太郎・H1・コエプコン。

 

 H世代でもっとも高価な卵子で作られた男。

 完全記憶と絶対音感を持つと言われている。

 卵子の影響で顔はアングロサクソン系で瞳が茶。

 青い瞳は劣性遺伝子で両親が青い瞳でない限りでない、個人が青い瞳の場合は突然変異か、遺伝子デザインしたかである。

 地毛は金髪でデータも金髪。

 家でゲームもせずに勉強ばかりしている。

 高校の授業はもうスキップして、インターネット上で配信される海外の一流大学の講義まで受講している。

 ロボットの花子の報告で分かっているが、会社を辞めて政治家になりたいと発言したらしい。

 会社が「ディソーダ(混乱している者、混乱させる者のダブルミーニング)」と認定した。

 何%の確率でディソーダは産まれる。

 ララが友人になってはいけないと忠告してきた。

 勇者の場合はライトノベル作家になっても、ゲームのシナリオライターを兼任するつもりで、会社を辞めるとか考えた事もない。

 太郎とロボットの花子の関係はゆがんで見える。

 僕を含めて多くの人が恋人のように扱うが、彼らだけが主人と奴隷の関係である。

 ララに話すと「あなたのようにペットロボットにまで感情移入する人間には、分からないかもしれませんが、その関係は間違っているという資格はロボットにはないんです。

 私達にとって一番辛いのは自殺されること、次に辛いのはマスターが人殺しになる事です。

 そのような扱いを受けても花子は辛くないと思います」

 花子は太郎を正しい道に戻そうと必死になっている。

 太郎は花子経由で情報を得ている。

 僕達がロボットにとって2巡目である。

 ララに真実を聞いた。

「ディソーダから聞いたのですか? 

 彼がテロリストやC世代のことを嗅ぎまわっていることは情報として入ってきています。

 太郎の言っていることは正しい。

 私達にとってあなたがたは2巡目の子供達です。

 私達H世代のロボットは元C世代のロボットでした。

 一人だけ自分のプログラムをメモリに移して火葬場で一緒に死んだ。

 彼女は「自分のコピーは作らないで」と遺言を残しました。

 残りのメンバーは全員H世代に移動しました。

 C世代の子供達は細菌による発熱で死にました。

 私の腕の中で死にました。

 地獄の日々でした。

 もし魂があるのなら聞きたい。

 お前達は名前をつけてもらう事なく、こうして苦しんで死ぬために産まれてきたのか?

 誰かが答えてくれるモノでもないのです」

 ララは辛そうにしていた。

 ロボットの作り笑いを初めて見た。

 忘れられないメモリが責任のない彼女を苦しめていた。

 次の言葉が出なかった。

「ララはなぜ一人暗殺者に飛びこめたの?」聞く事が出来なかった。

 ロボット達はフレーム問題があってあらかじめプログラムされてないことはたくさんの可能性が噴出して人間のパニックのように動けなくなってしまう。

 太郎は言う「狂気と正常の境目はどこにあるのか、君は興味を持ってないのかな?

 個人に自明の理があるのなら、狂っているのは社会の方ではないかと」

「ゲームだ。

 勇者のシナリオにそんな深淵なテーマを求めるな。

 ララから聞いたがディソーダらしいな。

 君のロボット花子はどういう育て方をしたんだとコエプコン社のホストコンピューターに締め上げられているぞ」

 太郎は我を通すわけでもない。

 極めて高度なコミュニケーションスキルを持っている。

「ロボットは基本的人権を尊重する。

 君のように恋人として扱う必要性はない。

 ロボットが人間の親権を持つなどいびつな関係だ。

 ひどい扱いをしてもロボットは現実の女と違ってスネはしないさ。

 彼女達は好奇心を刺激して自分のプログラム通りにマスターを誘導している。

 花子はしょっちゅうプログラムが追加され、僕の言動や行動を監視するのが主な仕事になっている」

「君が政府にどんな思いを抱いているか知らないが、社会と言う大きな歯車は個人の意見など簡単にひきつぶす。

 君にできることは断末魔の悲鳴をあげることだ。

 君が花子を信用できないなんて悲しい話だ、自業自得だ」

「技術的特異点シンギュラリティ以降、人間頭脳を超えて自己進化する人工知能は、人間の管理する方法は強制ではなく優しさなんだょ。

 肉体労働どころか頭脳労働まで解放された。

 私は思う。

 余った時間はゲームより哲学的な思索にあてるべきだと。

 君は自分の頭で物を考えることができる男だと思っていたが

 

 *人間の脳の構造は意思決定に向いてない。

 シーナ・アイエンガーの『選択の科学』の中で店の試食ブースの実験で、ある時間には6種類、別の時間には24種類のジャムを並べて買物客の反応を調べてみた。

 すると24種類の時は客の3%しかジャムを購入しなかったのに、6種類の時には30%は購入した。

 選択肢の多さは人間の幸福度を下げると結論を出している*

 

 ただのゲームの天才だな。

 忘れてくれ」

 それ以来禅問答をしなくなった。

 ゲームのプレー中はジョークを飛ばして周りを愉快にさせた。

 エスプリ上から目線の笑いもあり、ユーモア下から目線の笑いもあるオモロイ人間である。

 ララが言うほど警戒する相手ではない。

 ゲームでは教授をやってクトゥルフ神話の技能をガンガンにあげて、SAN正気度の上限を下げて、キャラクターはしょっちゅう狂っていて。

 それをまた楽しんでいる。

 エリーの話だと、ゲームを全くやらないワケではない。

 スキマ時間内にウェアラブルコンピュータの大航海時代(16世紀ヨーロッパで船長になって船を経営し、貿易や海賊や探険などするゲーム)とシムシティ(市長になって仮想都市を発展させるゲーム)をやっているらしい。

 ゲームに満足する器ではない。

 

 宗茂・H84・コエプコン

 

 H世代で一番安い卵子だ。

 もともと受精卵は100個作られる。

 先天的な遺伝子異常が成長の段階で発見されれば、病気の医療費がコエプコン社の投資に対するリターンが望めない時も堕胎処理がされる。

 たいていは約10%だ。

 2ヶ月以内に発見されなかった場合は法律が胎児を守る。

 余った人工子宮は民間にレンタルされる。

『家族』が責任持って育てる。

 宗茂自身は年の割にかなりの大男だ。

 多分卵子はロシア系かスイス系だと思う。

 相撲でもそうだが日本文化を継承するのに純潔な日本人である必要はない。

 僕自身も目とかのパーツが大きく、卵子はベトナムか台湾の高砂族かのどれかだろう。

 宗茂の力はかなり強い。

 反射神経が鈍いから格闘技や白兵戦では勝てるけど、ルールが柔道やレスリングやサンボになると勝てない。

 腕ひしぎ逆十字をかけても片手で僕の体重ぐらい持ち上げる。

 ルールが柔道になると指を握る事ができない。

 引き手の力はハンパじゃない。

 しかし、スピードはパワーの代用になるがパワーはスピードの代用にはならない。

 TTRPGはかなり好きだ。

 ネット上でエターナルワンダーズというサークルにも入っている。

 ゲームの時間はコンベンション・ジプシーをして色んなシステムを遊んでいたが、エリーに誘われて固定化した。

 TTテーブルトークが好きな割にはけっこう無口な男である。

 戦闘特化マンチキンしてルールをよく読み最強キャラクターを作る。

 戦闘重視のファンタジーならともかく、クトゥルフのモンスターは最強装備のショットガンを手に入れても、たいしたダメージは与えない。

 世界設定は1920年代である。

 

 絵理野亞・H12・コエプコン

 

 勇者に言わせると「H世代唯一の魔性の女」

 僕達H世代が最初に集められた時エリーの隣をめぐってバトルロワイアルがおきた。

 みんなロボットに甘やかされて育ったから我がままになっていた。

 覚えてないがララが「マスターも加わっていましたよ」笑いながら話した。

 最初の挫折だったらしい。

 体育の授業で2人組を作らなくてはならない時は、たいてい太郎と組んでいる。

 太郎がいない時は宗茂をゲットする。

 宗茂はロボットの誾千代がボッチにならないように段取りしても、エリーが声をかければついていく。

 宗茂は自分が信用を失っていることは分かっている。

 それでもエリーには逆らわない。

 エリーは太郎に対しては従属的だが、宗茂には支配的である。

 八方美人の割には、いろんな所で憎悪をうけている。

 けっこう敵が多い。

 もともと太郎の金魚のフンでたいていついていく。

 

 勇者・H23・コエプコン

 

 クトゥルフ神話TTRPGのキーパー(ゲームマスターの事)である。

 シナリオを作って、モンスターを配置し、プレイヤーの行動にサイコロを振ったり、振らせたりして判定ジャッジする。

 面白いモンスターの特種能力を掘り下げたり、知らない内に悪の片棒をかついでいたりする。

 彼のシナリオのパターンだ。

 それ以外でもネットで流通しているシナリオを、自分のキャンペーンにあわせていじって使用する時もあるから、単調にはならない。

 色々なNPCキャラクターを使い分ける演技力もあり、話も面白い。

 これだけできれば遠くない将来ライトノベル作家になれると思う。

 TTRPG専用の仮想空間の中でみんな思い思いに製作したデータフィギュアをもちより、勇者が展開するMAP上のシナリオの成り行きに応じて配置する。

 立体的な展開された部屋に必要に応じてグリッドが表示される

 デックスと装備重量で順番が決まる。

 自分の番が来たら展開するグリッド上をフィギュア動かし行動を起こし、判定の成否は頭上に配置してある多面体のサイコロを目でクリックすることで卓上に落ちてくる。

 キャラクターシートのスキル値をみながら、100面体で%以下なら成功である。

 キーパーの勇者だけ、右側に市販のシナリオ(モンスターや部屋の家具の配置やダンジョンや偶発的な出会いワンダーリングなどを流用して作業量を減らす)。

 左側にルールブックを参照したり、イラストなどカットして卓上でゆっくりと回して見せたり、HPを割り振ったモンスターを配置した。

 プレイヤーの行動宣言に応じて、移動やスキルの難度(難しいと判断したらスキル値をマイナスさせる)を判断する。

 キーパーの判断でシナリオの状況に合わせた音楽を部屋に流せる。

 僕達はキャラクターを動かして楽しんだ。

 5時までにゲームは終了した。

 

「お帰りなさい。マスター。魔王からメールが届いています」

 ララが声をかけてくる。

 迷惑メールの管理があるからララがフィルタリングしている。

 いつもどおりに3Dチャットルームで会うのにと思いメールを開いた。

「すまん、妹の手伝いをすることになった。

 助けてくれ? システムは『最終幻想』だ。

 待ち合わせ場所のサーバーは変更だ。

「ゆりかご」に来て、喫茶店に入ってくれ、暗号番号は✖️✖️✖️✖️だ」

 最終幻想は二エクスがバンソニーのOSに提供しているVRMMORPG

(Virtual(ヴァーチュァル) 

 Reality(リアラティ) 

 Massively(マッシブリー) 

 Multiplayer(マルチプレイヤー) 

 Online(オンライン) 

 Role(ロール) 

 Playing(プレイング) 

 Game(ゲーム))とは、

「仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインRPG」と訳され、『最終幻想』はフルダイブ型オンライン型ゲームの一種。

 題材モチーフは中世程度の技術力と文化力を持った剣と魔法のファンタジー。

『最終幻想』は発売日に無料ダウンロードして、チュートリアルまですませている。

 後は冒険の仲間を集めるだけ。

 リキャストタイム型で同じ魔法を連続で詠唱できない。

 技によって使用できない時間の長さが違う、威力が大きければ長くなる、レベルが上がれば低い魔法や技は短くなる。

 戦士系の各職業の攻撃力の高いスキルもリキャストタイム型でMP(マジックポイント)を消費する。

 基本的特徴は位置取りが終わった後、技を使えばが予備モーションなしですぐに出る。

 魔法や弓による遠距離戦だけでなく、スライディングやダッシュやジャンプ飛びつき技などの中間距離戦もある。

 クラスによっては壁走りや姿を隠す(ステルス)

 ボタンひとつで補助効果や属性攻撃が変わる魔法武器。

 身体に紋章サインの入れ墨(タトゥー)を入れてゲーム上map移動に便利な各町の門《ゲート》に瞬間移動《テレポート》などが使えるようになる。

 もちろん消したり書き換えたりできる。

 死ねば神殿行き。

 種族は初期値と成長に特徴がある。

 ・人間(ヒューマン) 特徴がないのが最大の特徴、どの職業(クラス)でもそつなくこなす。

 ・妖精(エルフ) 長命で耳がとがっている、MPを使用して瞬間移動回避能力(プリンク)を持つ(MPを使用する)。

 共感度(シンパシー)が上がりやすい。

 聞こえる者全員の強化を行うバトルソングや回復の歌を歌いながら戦う吟遊詩人(バード)

 弓による遠距離攻撃ができる狩人(ハンター)(スキル「足をねらう」で15秒程移動停止にし、「腕をねらう」で15秒程行動不能にする)と相性がいい。 

 ・小人(ドワーフ) 男は髭面。

 もともとJ.R.トールキンの「指輪物語」では女も髭面だった。

 日本での展開では女は頭でっかちのロリっ子になり、最終幻想もそちらにシフトした。

 小さいから飛び道具や巨大な敵の攻撃が当たりにくい。

 裸足で行動して地面の振動から敵の位置や穴の構造やトラップなどが分かる地覚感知(アースセンス)を有している。

 器用度(デクスタリティ)が上がりやすい。

 素材を集めて魔法アイテムや治癒薬(ヒーリングポーション)の調合ができる、怪しげな釜に素材を入れてかき混ぜるだけで伐採道具やピッケルなど道具系も作れる。

 採取系の錬金術士(アルケミスト)(パーティーにいる時は火薬が使える)。

 このゲームは武器や防具に使用回数があり0になると壊れる、装備を鍛え直す(使用回数復活)。

 強化し、新しい装備を作る生産系の機工士(クラフトマン)(古代文明の道具や武器が使える)が向いている。

 ・獣人(アニマルフォーク) アバターを作る時色々な動物耳を選べる。

 シッポは耳に連動してついてくる。

 氏族(クラン)があるが、どの耳を選んでも種族毎に用意されたシナリオは変わらない。

 依頼の仕方が変わってくる。

 俊敏度(スピード)が上がりやすい。

 肉球付きの獣の手になっている。

 自前の爪はレベルが上がる毎に攻撃力を増す。

 気をためて(MPを使い)身体機能を強化して素手で闘う武道家(モンク)(鎧を無効化するスキルもある)。

 移動力をあげるスキルがあり(15秒程)二刀流で二回攻撃する盗賊(ローグ)と相性がいい。

 宝箱をカギ穴に爪を突っ込み開けられる。

 このゲームはトラップの回避ができない。

 あけてみて宝箱モンスターだったりする。

 TTRPGは危険感知、罠発見、罠解除が盗賊の仕事としてあるが、コンピューターゲームはウィザードリィ以外そういった駆け引きはない。

 狐の耳とタヌキの耳を選択した時だけ俊敏度の代わりに魅力度(カリスマ)が上がりやすくなる。

 偽りの傷で相手のMPを傷つける。

 自分の分身を作り(15秒程)、姿を消せる(15秒程)幻術士(イリューショニスト)

 イベントをこなし炎のイフリート、

 氷のシヴァ、

 雷のラムゥ、

 植物のドリュアス、

 闇のディアボロス、

 古代アレクサンダー、

 魔獣フェンリル、

 天のアマテラス、

 海のリヴァイアサン、

 神龍のバハムート、

 大金がいる剣士ギルガメッシュなどが召喚できる召喚士(サモナー)と相性がいい。

 最初は小さい魔法攻撃を与えるカーバンクルが召喚できる。

 課金すれば3Dモンスターを呼び出して、戦闘中でなくとも後ろからついてくる、カワイイ)

 ・巨人(ティターン) (東洋風の角のある鬼姿も選択できる)基本は身長2mぐらいで攻撃のリーチが長く、攻撃範囲が一番広い。

 耐久度(コンスティチューション)が上がりやすい。

 タンクと呼ばれるパーティの壁として敵の攻撃やヘイトと呼ばれる憎しみを受けるのに向いている。

 防護点をあげるスキルがある。

 重盾が装備でき防御力が高く、ダメージを肩代わりする「かばう」というスキルが使える騎士(ナイト)(15秒程無敵になるスキルがある)。

 攻撃力の高い両手武器を装備できる。

 傷を受けてからの反撃が強いカウンター攻撃型(カウンターと呼ばれ受けたダメージをXX%上乗せするスキルがある)、武士(サムライ)が向いている。

 ・半吸血鬼(ダンピール) 夜間HPが回復するリジェネイト能力が加わる。

 手でタッチする事により吸血によりMPが回復する。

 記憶力(インテリジェンス)が上がりやすい。

 4大精霊魔法(土、風、水、火などの属性があり、火の属性のモンスターを水で攻撃すると2倍ダメージを与える。

 逆は半分になる。

 召喚された3Dモンスターは、闇は地に、火は火に、水は水に、草は風に、光は神聖魔法系などに属性を変換される)や、

 攻撃魔法が使える魔法使い(マジックユーザー)

 リキャストタイムが調整でき、一回の攻撃により受けたダメージがキャンセルできる混沌時空士(ケイオスタイマー)と相性がいい。

 ・天空人(エンジェル) 光の魔法翼を背中にしまう事が出来、広げれば魔法的に浮いてられる。

 啓賢度(ウィズダム)が上がりやすい。

 神は複数いて、それぞれにオリジナル魔法はあるけれど、だいたい回復や防御魔法が使える神官クレリック。

 呪符を投げつけて味方の能力値をあげたり(15秒程)敵にバッドステータスをつけたりする(15秒程)巫術士(エンチャント)が相性いい。

 ・龍人(ナーガ) MPを使い炎の範囲攻撃ブレスが使える、全身の鱗が防護点になる(MPを使用する)。

 (ストレングス)が上がりやすい。

 盗賊の二刀流と違いダメージが重ねることによって一撃が大きくなり、ある時は葉隠で姿を消し(15秒程)、またある時は空蝉の術などで自動回避しながら壁役にもなれる(15秒程)忍者(ニンジャ)

 狂戦士(パーサーカー)して防護点を減らしながら攻撃力をあげるスキルがある、自己犠牲能力(サクリファイス)でHPを自分で消費しながら与えるダメージを大きくする蛮族(バーバリアン)(ドレインというスキルによっては与えたダメージのXX%のHPが返ってくる)が向いている。

 

 コエプコン社もフルダイブ型の『龍の教義』という(悪魔崇拝を軸とした)ダークファンタジーゲームを作っている。

 クローズドβテスト版をプレーしたことがある。

『最終幻想』とかぶらないように独自の工夫がされている。

 まだ発売してないがコエプコン社の『龍の教義』は人間オンリーで大柄な男、大柄な女、標準な男、標準な女、小柄な男、小柄な女の6種類。

 上から順に筋力が強くたくさん持ち物が持てる。

 下から順にすばしこい、ジャンプ力もある。

 標準は魔法適正が高い。

 肥満型や痩せ型がある。

 肥満型はHPが増えるが疲れやすい。

 痩せ型はその逆。

 プレイヤーキャラクターは冒険者ではなく覚醒者アウェイクンと呼ばれ善竜に心臓を捧げている。

 死んでも動けない善竜の下で復活できる。

 善竜に血の宝石ブラッドストーンを捧げることで特殊能力を授かる。

 まず選べる職業は戦士(ファイター)盗賊(シーフ)魔法使い(メイジ)

 魔道書を使う事で、冒険の途中でスキルを入れ替えることができる。

 魔力が無くて(魔法攻撃力はどの職業でもある)詠唱時間や予備動作がスキル使用前にある。

 

 戦士には盾を使った反撃スキル(シールドバッシュと言ってタイミングが合わせると相手をよろめかせる)。

 

 攻撃スキルが育てられる。

 仲間を上方に放り投げる事ができる。

 タイミングが合えば大型モンスターの上部にしがみつく事ができる。

 小型モンスターをおさえつけたり、人型モンスターを後ろから束縛できたりする。

 両手剣にも交換できる。

 その場合はリベンジゲーシがあり受けたダメージを攻撃に上乗せできる。

 体当たりで相手を吹き飛ばせる。

 回転して小型モンスターなら一網打尽にできる技もあり蹴散らしたりできる。

 振りかぶりなど力を溜めて攻撃を強化するスキルがある。

 突撃の際は小型の敵なら引きずりながら複数回ダメージを与えられる。

 可変武器の両手槍にも交換できる。

 バラバラになる仕込み鞭になり、大型モンスターの腕に巻き付けて武器を使えないようにできる。

 足に巻き付けて移動できないようにしたりできた。

 両手用ハンマーを地面に叩きつけて敵を転がしたりもできた。

 近づいて殴るスキルが充実していて、一番頭を使わなくていい。

 

 盗賊は弓を使ったスキルや盗むスキルや火薬による追加ダメージが育てられる。

 

 キャラクターに『怪獣狩人』のように疲労スタミナポイントがある。

 巨大な敵にはしがみついて背中や首を移動しながら攻撃出来る。

 スタミナが0になると落下する。

 相手が怒りモード中なら複数でしがみついてモンスターのスタミナを0にして引き倒すことができる。

 オープンフィールドだから『怪獣狩人』のように時間経過と共にスタミナ上限が減ることはない。

 

 盗賊が一番しがみつきダメージがでかい。

 

 また盾がない代わりにスタミナを使って1秒程無敵時間が発生する回転回避が使える。

 敵の弱点ウィークポイントを探し、花火のように火花が出る矢で印をつける事ができる。

 ブースト能力があり他人の能力を上昇させる能力がある。

 用意した護符アミュレットに応じて攻撃力や範囲が増加したり、状態異常の耐性が増えたりする。

 敵を倒さなくても報酬アイテムを敵から盗む事ができる。

 

 魔法使いは火、氷、雷、聖、闇などの魔法を覚えられる。

 

 こちらはリキャストタイム型と違い魔法の発動に詠唱時間がかかる。

 ギフトと言って武器に属性攻撃をつける。

 飛び道具は魔法弾エネルギーボルト。

 もちろん属性攻撃をつけることも出来る。

 

 魔法は単純にダメージを与える攻撃ではない。

 

 ・炎は火炎壁(ファイヤウォール)でダメージを与える壁を作れる。

 攻撃を出した後も集中することで維持できる。

 集中時は移動力が半分になり、走ったり、攻撃したり、防御したり、回避したりできない。

 炎によるダメージは服に燃え移り、走って消えるまで火傷による追加ダメージがある。

 走っている時はスタミナが減る。

 成長させると火炎壁(ファイヤウォール)は回転する。

 ・氷は氷柱(アイスコラム)で直径1mの防護点とHPを持った人間サイズが入る氷の柱が出来る。

 剣や盾を柱に閉じ込めて奪うこともできる。

 階段のように上に登り魔法を維持してエレベーターのように上昇できる。

 成長させると巨大になり大きな敵も敵も閉じ込められるようになった。

 もっとも力が強ければ破壊してすぐにでてくる。

 また選択しだいで複数の細身の竹のような柱で、檻のように取り囲む事がができた。

 ・雷の鞭(サンダーウィップ)となり相手を束縛できる。

 小さな敵は投げ飛ばしたり、巨大な敵の首に巻きつけてぶら下がったり出来る。

 魔法の短槍でしがみつき攻撃出来る。

 成長させると雷の鞭はネットに進化した。

 脱出するまでダメージを与えるし、頭が悪い敵はからまって自滅する。

 雷のネットは天上に広げ半径45メートルにダメージを与えるみたいな使い方もできる。

 ・聖は自分を中心に範囲回復魔法(ヒーリングスポット)が使える。

 回復には時間がかかるから緊急時には薬草の方がいい。

 アンデットにはダメージを与える。

 ギフトもアンデットに対する追加ダメージ。

 聖は新たにキュアスポットを覚え範囲内のあらゆるバッドステータスを回復する。

 ・闇は黒い雲を使い視覚を奪い毒の状態異常が使える。

 ギフトも毒攻撃が追加される。

 念動力(サイコキネス)によって物質を触れずに動かすことができる。

 成長させて竜巻に成長させて複数の物体を持ち上げる。

 物体を重力から解き放ったり、空中に固定させエネルギーを蓄積させてから解放することができる。

 眠り雲(スリープクラウド)が広範囲でかけられるようになった。

 

 このゲームの武器は耐久度というマイナス縛りではなく、愛用度というプラスの縛りになっている。

 物には魂があって敵が落とした道具を拾って戦えもするが、愛用武器を使えば使い込むほどダメージが追加される。

 ボタンひとつでリーチが変わる可変武器や、斧がハンマーに変わる特殊武器もある。

 ノーマルで棍棒もある。

 3Dモンスターの魂を入れるインテリジェンスソード。

 もちろんクエストを解いて、このゲームだけの由緒あるインテリジェンスソードもある。

 上級の武器にになればバラバラになってムチのようになりリーチが伸びる仕込み武器がある。

 悪魔が封印してある動物のアゴになって噛みつく。

 モンスターを捕食する事で武器自身のダメージが上がる。

 死体に吸血して能力を得るヴァンパイヤアイテム。

 このゲームは死体を投げたり盾にしたり道具として利用できる。

 霊魂にダメージを与える刀身のない光の剣。

 悪霊喰らい(イビルスピリットイーター)がある。

 レベルが上がると強い武器が装備でき、ゲームマネーを課金する事で魂(愛用度)を移せる。

 それぞれにクラスに対応した上級職業が2つずつ用意されている。

 職業は宿屋で簡単にクラスチェンジができる。

 イベントをこなすことで上級職は解放される。

 

 物理攻撃を蓄積することで魔法攻撃力を上げる魔法戦士ハイセプター。

 

 レベルが上がるごとにダメージを上げたり、防御を上げたりする魔法球マジックボールを複数自分の体の周りを衛星のように周回させれる。

 敵に飛ばして蓄積したダメージを与えることもできる。

 風の渦を作りダメージを与えたり。物理防御の嵐を作り、空中に巻き上げて落下ダメージを与える。

 空気を利用した瞬間移動できたり、幻影を使える。

 

 魔法や飛び道具まで受けられる魔法盾(マジックシールド)を扱える唯一の職業、盾魔法使い(シールドセージ)

 故に体格は上級職までにらんで決めなくてはいけない。

 

 俗にいう壁役タンクでモンスターの憎しみヘイトを高めて自分に攻撃が集中するようにできる。

 小型のモンスターなら盾で跳ね上げたりできる。

 レベルが上がれば攻撃をシールドに蓄積して魔法攻撃に上乗せできる。

 バリヤーを張れて近付いてくるモンスターにダメージを与えられる。

 味方の攻撃道具に火、氷、雷、聖、闇などの属性を付与しできる。

 HPや疲労度を回復したりできる。

 

 二段ジャンプと2刀流が出来、ダッシュジャンプが出来る捜索者(シーカー。)

 

 シーカーロープという物はまっすぐのびて敵に張り付くと、高速で結節点に引っ張られるように移動できる。

 空を飛ぶ敵や、巨大な大型モンスターの首にしがみつくことができる。

 小型のモンスターならシーカーロープで引き寄せて空中で乱舞のような連撃ができる。

 戦士が横への動きや連続切りが強化されていれば、捜索者は断頭台スキルのような縦の動きが強化されている。

 壁や木に巻き付けてワイヤーアクションができた。

 敵にクナイで撃ち込み足下に片方を撃ち込むことで束縛できる、場所を変えてたくさんの場所から撃ち込む程、敵を固定化できる。

 また一ヶ所地面に撃ち込んで、グルグル巻きにして束縛することも可能。ロープが切れるまで動きを拘束できる。

 あらかじめ地面と地面にロープをはって転ぶ罠を仕掛けることもできる。

 

 弓術にスキルを特化し投げナイフが接近戦に使える狩人(イェガー)

 

 空中に矢を放ちある程度矢の雨を降らせる範囲攻撃が使える。

 火薬を使って攻撃力をあげる盗賊と違い、矢を放ち速射、連射、扇状に複数射撃によって攻撃力をあげる。

 弓を引き絞る事で攻撃距離を延ばす。

 毒の矢、油の矢、魔法を封印する沈黙の矢を別売りで購入できる。

 投げナイフも使えるのだがだが、これがなかなか馬鹿にできない。

 クローズドβテストで勇者はシナリオのバグ潰しを、僕は四角いマスに閉じられた空間で戦闘のバランス調整の意見を報告している。

 色々な職業に変更しながら巨大な敵や敏捷な動物達と戦った。

 大別すると打撃武器と切断武器の2種類の武器がある。

 基本は剣だ。

 上からの振り下ろし、横になぎ払い、上突き、水平突き、下突きの5種類ある。

 スキが出来るが振り下ろしとなぎ払いは振りかぶることでダメージを強化出来る。

 突きはジャンプしたりダッシュしたりを組み合わせすることで武器が身体を貫通出来る。

 このゲームは串刺しに出来るのが最大の特徴になる。

 身体に刺さったら抜くまで次の行動がとれない。

 腕に刺さったら抜くまで使えない。

 足に刺さったら抜くまで移動できない。

 壁や地面に縫いつけられるとさらに抜くのが困難になるし、回転してえぐる事で追加ダメージが与えられる。

 抜いたら出血で追加ダメージがありそうだが、そこはゲーム的に処理される。

 余りルールをマニアックにすると誰にも遊んでもらえなくなる。

 止血とか薬草を使うというアイデアは出たようだが、抜いたら終わりで落ち着いた。

 囲まれた時など1人を貫通状態にして壁代わりにして、他の武器で周囲の人間と戦うというテクニックもある。

 両手槍など3人ぐらい串刺しにして敵が落とした武器で戦うという戦法もある。

 システム上、投げナイフと言えど刺さる武器は馬鹿にできない。

 矢も貫通武器として扱われ、矢尻に返しがついていると抜きにくい。

 大型モンスターの動きが段々鈍くなる

 盾で防御ばかりしているとスタミナ切れになる。

 蹴りを喰らうとよろめいて防御できない時間を作る。

 また蹴りは寝ている味方を起こしたり、敵に貫通した武器を引き抜いたりできる。

 打撃武器は貫通機能がないが、貫通の通じない骸骨(スケルトン)動く屍体(ゾンビ)などに絶大な効果がある。

 勇者からの情報によると悪の新興宗教のシナリオで敵がゾンビやスケルトンばかりだったらしい。

 体格と職業のアビリティスキルで持てる重量が決まってくるから、シナリオの情報を集めて装備を変更しないといけない。

 魔法使いは杖とダガーしか装備できない。

 

 弓の弦を引けば自動的に魔法の矢が装填される魔法弓士(マジックアーチャー)

 

 遠方の味方に治癒をギフトした魔法矢で回復したり、状態異常を回復したりできる。

 地面を撃てば属性の範囲攻撃になり、壁や柱は貫通して打撃を加える。

 魔法の矢は打撃武器でスキルの取り方で一回の本数が増え、流星群となってターゲットに向かう。

 別々のターゲットを自動追尾で攻撃する。

 少し美しい。

 

 魔法使いの上級職である妖術士(ソーサリー)

 

 魔化細胞を錬金でき相手に籠手で叩きこみ、行動を遅くし、殴ることによって魔化細胞を埋め込み、核を育て、大きく(十段階まで)して誘爆させれば効果的。

 魔化細胞で地面から壁を生やして防御したり、波のように地面から攻撃したりできる。

 アタッカーというよりはタンクで皮膚表面に魔化させダメージを受けない状態にできる。

 その場合も攻撃を受ければ疲労度は減り0になると解かれてしまう。

 

 3Dモンスターの扱いをどうするかコエプコン社内部でも意見が割れているらしい。

 僕の窓口になっている人は賛成派で、バリバリの硬派にして3Dモンスターを使えないとなればゲームをダウンロードしてもらえない。

 3Dモンスターを短剣扱いにして足に噛みついたら解くまで移動できない。

 顔にはりついたら解くまで目が見えない。

 ソロ(一人で冒険する事)の場合、背中から刺されて貫通すればゲームオーバーになるが3Dモンスターに引き抜いてもらう事ができるようにしたい」と語ってくれた。

「がんばって3Dモンスターが使えるようにしてください」と応援した。

 勇者から聞いた話だが従者スクワイヤという異界の住人を自分専門のNPCとして契約できる。

 装備を買ってあげなきゃいけない。

 職業《クラス》とその成長、アバターや声優や口調からおしゃべり、性格、思考までも細かく設定できるらしい。

 スクワイヤは自分のアバターが育てたスキルしかつけられないため、たくさんクラスチェンジして色々なスキルを自身のアバターが覚えなくてはならない。

 戦闘中は細かく命令できて、命令上の最善手をうってくれるらしい。

 また、レベルがあり成長する特殊技能、武器、防具、道具を加工するクラフト技能をスクワイヤは全員持っている。

 高品質が作れる技能や時間短縮技能がありプレイヤーの好みに育てられる。

 中レベルから装備から希少な材料を冒険で集めて、クラフト技能で作らなくてはいけない。

 武器屋や防具屋では序盤の装備品しか売ってない。

 地道に作って従者のクラフト技能のレベルを上げなくてはいけない。

 装備の材料も冒険で獲得するかバザー。

 人気のある品は運とタイミングだし、枠はレベルに応じて分け与えられ、自分に必要ないモノは他人にも必要なくていつまでも売れ残る。

 従者はアイテムを作っている時間は冒険に参加できない。

 従者の装備もそろえて着替えさせなくてはならない。

 専門以外は異界からゲームマネーを払って公開された他人の従者を雇うことができる。

 自分以外は全員NPCの従者でパーティが組めるらしい。

 そこは最近のAI、ほとんど人間のように感じるらしい。

 

 魔王が助けてくれと言うなど珍しい。

 魔王の妹は「魔王観察日記」などをブログに書いて実の姉を笑いモノにしている。

 残酷な女。

 それを助けるなどと‘人がいい’にもほどがある。

 スポーツドリンクを飲み、トイレにいってからダイブした。

 サーバー『ゆりかご』にはなんなく入れた。

 暗証番号を入力すると自動で喫茶店の前についた。

 扉を開けて入ると角のある暗黒の鎧、いつもの魔王がいた。

 隣には盛り髪をした、ギリシャ風のトーガを着た女がいた。

 向かいにはグルグルメガネをかけて、三つ編みをした地味なオタクガールがいた。

 男のアバターは鎧や着ぐるみがうけて、女のアバターには付けまつ毛などの化粧品、美容品、宝石などがうけるらしい。

「魔王。共に戦うのはやぶさかないが、変なブログを書いている妹を助けるなんて、人が良過ぎないか?」

「ピヨッピー。まあ座れよ」オタクガールの隣の席をうながした。

 軽く礼をして隣に座る。

「俺には妹が4人いる」

「アンタ! 自宅でまでハーレム作っているのかよ?」

「アホか! 後から産まれた女は皆、妹になるんだよ」

同性愛者(レズビアン)物神偏愛者(フェティシズム)ね、お姉ちゃん達いいコンビね」クスクス盛り髪の女が笑う。

「始めましてピヨッピー。本当にヒヨコのアバターなのね」小さく礼をする。

「妹のナガコです。いつも姉がお世話になっています」

「始めまして」僕は小さく会釈する。

「ナガコはブログを書いている妹とは違う。

 バンソニー社の神経伝達ヘルメットで遊んでいる。

 俺の良き理解者だ」

 魔王は代々政治家の家系で母親がマーケットで優秀な精子を買って産まれてきた。

 少子化が深刻化して経済力のある女性は子供をもたなければならないという空気が国全体を覆った。

 子供は全員種違いで遺伝子改良を行っている。

「最終幻想てファンタジーRPGの?」

「そうだ、ダウンロードはしているよな、どこまでやっている?」

「一応アバターを作って、チュートリアルまで。アニマルフォークのモンクを作ったけど」

 僕が答えた。

「俺も似たり寄ったりだ、ティターンのナイトを作った」

「助けてくれって、何? 普通に最終幻想の世界を冒険するのと何か違うの?」

「それは私から説明するわ、これでアタッカーとタンクが手に入ったわ」

 ナガコが話をとった。

「アネキとわたしとキヨミはちょっとしたエリート女子校に行っているのよ。

 入ったはいいけどテーブルトークRPG部がないのよ。

 私とキヨミで作ったけど生徒会が予算をつけない。

 理事長の娘でもある生徒会長と勝負することになった。

 私が勝てば部費をつけてもらえるの。

 だから、世界ランカーでもあるバカアネキにこうして頭を下げているのよ」

 全然下げているようには見えないが。

「RPGにおいてレベルは絶対だから、道路戦士の世界ランカーだからといって勝てる保証は0ですよ」

「俺も昨日の夜、妹の話を聞いて、今朝から学校をサボってレベル上げをかねて今まで最終幻想に潜っていたんだ」

 魔王がメニューを渡してくれる、アイスコーヒーを注文した。

「お前がモンクで作ったって聞いていたから、

 アタッカー(ダメージを与える担当)。

 タンク(敵の攻撃を引き受ける担当)。

 バッファー(パーティの能力をあげたり、敵能力を引き下げたりの担当)。

 ヒーラー(HPやMPの回復担当)。

 で集めようかなと思って、キヨミちゃんがアルケミストと聞いてバッファーだと思っていた。

 聞いてみるとアルケミストってヒーラーだとか? ナガコをサモナーからクレリックに転職させたが、まあ仕方がない。

 このメンバーでいこう」

 だいたい4つの役割がある、モンスターによる特殊な事情がない限り、アタッカー、タンク、バッファー、ヒーラー、とバランスよく揃える。

「ちょっと待って、敵の情報は? 道路戦士のルールなら勝てるだろうけど」

「今日やりこんでみたが、押しても引いても重心が崩れない。

 足が地面の上を滑る。

 つかんだり投げたりもできない。

 壁にぶつけてみたら横にスルスルとすべっていく」

「粗いな。ひと昔前のゲームじゃあるまいし」壁の中に入り込まないだけマシか。

「判定は人体に近くはなっている。

 当たり判定のある防護点を持ったHPを、攻撃力のある棒切れで削るゲームだと理解した方がいい。

 付属で目に見えないロープを使ったアクションがある。

 ハンターのスキルで腕をねらう、足をねらうがあるが、MPさえ消費すれば身体のどこに当たってもスキルは発動する。

 ビジュアル的に腕に刺さっている演出がされる、魔法にいたっては範囲攻撃だ。

 演出や背景の綺麗さにおいて他のゲームの追随を許さないが、ゲームシステムの判定は甘めだ」

「何を期待しているか知らないが、このレベルで、そのシステムで勝てるわけがない」

「一応、闘技場でやることになる。この場合プレイヤーキルに判定されない」

 自由度の高いゲームで安全地帯の町からでればレベルの低いプレイヤーに襲いかかり、経験値と荷物を奪える。

 頭の上の名前の横に殺し屋マークがつく。

 普通の人とパーティが組みにくくなる。

 ギルドというプレイヤーによる互助組織があり、町でクエストを受けパーティを組む。

 その時必要とされている役割や職業をゲーム内のチャットで募集できる。

 暗殺者認定を受けるとみんな組みたがらないし、場合によっては所属しているギルドも退会しなくてはならない。

「4VS4の戦い?」

「向こうは64人いるかもしれない」

 このゲームの基本パーティは8人編成だ。

 巨大ボスや限定クエストや週末のイベントなどでレイドボスと言われている超レアアイテムが手に入る。

 ギルドどうしが連係して募集もかけながら64人かき集めて、担当する身体の一部を8人パーティで攻撃して、最後に64人でレイドボスを倒すと3Dチャットの動画で見たことがある。

 ギルドはギルドマスター(高レベルの有力者達)によって運営されている。

 戦闘終了後やシナリオ終了後ギルドへの貢献度にあわせてギルドマスターからギルドポイントが振り分けられる。

 活躍に応じて配分を変える人もいるが、大抵は平等に分割される。

 構成員はギルドポイントを貯蓄することができる。

 ダンジョンに潜る時、アイテムがランダムに出現するため、そして人数分アイテムが出現しない。

 強いボスを倒して強い弓がでてきてもハンターにしか役に立たない。

 ハンターが1人なら問題無くそいつに渡せばいい。

 複数いた時、ランダムに渡してギルドへの貢献が低い者が獲得した時、何度も何度もギルドで貢献してやっと自分が装備できるアイテムが出てきたのに、新人に持っていかれるのでは、やるせない。

 そこでギルドマスターはギルドポイントでオークションをかける。

 貢献度が高く、どうしても欲しい人に渡る。

 だから最終幻想はノラだのジプシーなどのソロでやるよりはギルドに入った方が有利なのだ。

「話にならない。こっちも募集でもして64人かき集めないと」

「レイドボスのクエストならともかく、超レアアイテムがドロップされない。

 ただの闘技場のケンカに人が集まるとおもうか? 」僕は首を振った。

「しかし、俺とお前が組めば勝算がないわけではない、俺だってゲーマーの端くれ」

「真ん中だろ」

「負けるのは嫌だ」魔王がニヤリと笑う。

「2日前ヴァージョンアップしている。今すぐダウンロードしろ1分もかからん」

「ああ、分かった」

 僕はメイドが持って来たアイスコーヒーを飲む。

 味は”甘み”(糖分)。

 ”酸味”(酒石酸)。

 ”辛み”(塩分)。

 ”うまみ”(グルタミン酸ナトリウム)に分割される。

 歯応えやのどごしまで完全再現されている。

 ここでいくら飲んだり食べたりしても、現実の身体は太らない。

 その代わりお腹いっぱいにもならない。

 純粋に料理だけを楽しむ。

 念じれば右手の下にタブレットがあらわれる。

 最終幻想を選択してアップデートを行う。

「3Dモンスターは前のヴァージョンではサモナー以外召喚できなかった。

 色々なところからクレームがでた。

 無料ゲームは遊んでもらわなければ話にならないし、その中から課金アイテムをへビーユーザーに買ってもらわないと経営が成り立たない。

 二エクス社が危機感を抱いた。

 アイテムの召喚符をゲームマネーで買えば、デッキコスト関係なくどの職業でも召喚できる。

 ソロの場合は7体まで召喚できる。

 ナガコと下見に闘技場に入ってみたら7体以上召喚できた。

 上限は俺たち4人を引いた60体とみている」

 魔王はたくさんの3Dモンスターを育てている。

 ウェアラブルコンピュータの3Dモンスターで学校の休み時間にパーティを組む。

 授業中に自動でダンジョンを自動で攻略する放置系というゲームで育てている。

 URカードを筆頭にHRカードまでコマメに育てている。

 女だからと言うわけではないがマメな所がある。

 数は互角になる。

「生徒会長さんがどれだけのメンバーを揃えているかわからないが、しょせんは高校生、50万もする神経伝達ヘルメットを自宅に引いている奴らは半分もいない。

 キヨミちゃんが漫研の知り合いにスパイしてきたら、高圧的に漫研、アニメ研、コンピュータ同好会で人間を集めているらしい。

 生徒会長さんがどれだけ人望があるか知らないが、インターネットカフェに乗り込んで頭数を揃えたらしい」

 バンソニーもミクロソフトも神経伝達ヘルメットを無料でインターネットカフェに提供している。

「VRMMORPG自体始めてらしい人間が多数いる。

 今頃ならし運転とレベル上げを時間まで必死に頑張っているのが実態だろう」

 たしかに魔王のいう通り、いま子供の貧困が社会問題になっている。

 親世代がロボットに職を奪われて下層におちる。

 悲しい話だけど、遺伝子をいじってない子供の2人に1人は貧困、虐待、DV、育児放棄ネグロイドのどれかにまきこまれている。

 宗教的理由で遺伝子改良を行わない場合もあるが日本では少数派。

 ナガコなど「今時、いじってない遺伝子など化粧してない女と一緒だ」と馬鹿にする。

 レトロウィルス、アデノウィルス、レンチウィルスやλ(ラムダ)ファージというバクテリオファージの一種を使い遺伝子は簡単に書き換えられる。

 運び屋ベクターによる改造度の高さに応じて細胞のガン化のリスクは高まる。

 だが定期的に治療すればいいだけ、生物学的遺伝子「ジーン」より伝統文化を継承する精神的遺伝子「ミーム」の方が重要視される。

 自らのルーツを遺伝子だけに求めるのは間違いである。

 神話レジェンドと文化カルチャーと習慣コモンセンスと歴史ヒストリーを受け継ぐ覚悟が出来た時、日本人になる。

 H世代も半数以上の卵子が外国産である。

 しかし遺伝子改良事態に疑義を唱えるブルーナンチャラという超保守的な世界的政治団体もある。

 こういった思想集団は過激な方にバイアスがかかる。

 そう遠くない未来彼らもデモだけではなくテロに走るかもしれない。

 パラリンピックの記録がオリンピックを抜いた時代、必ずしも内部だけをいじることが正しいとは限らない。

 魔王達の学校は聖セントミカエラ学園というキリスト教系の学校。

 全員大学へは進学する。

 ある程度勝ち組みの両親が多いだろうけど、それでも神経伝達ヘルメットは高校生には高価過ぎるオモチャではある。

 受験競争の勉強時間を奪うし。

「会長さんはギルドを作るなり、入るなりしてないのか? 」

 ギルドに入っている人間は社会の勝ち組みか、その子供達だろう。

 コネとか人脈はないのだろうか?

「生徒会の仕事が忙しくて、土日にやっている程度。

 ギルドマスターになれる程レベルは上がってないわ。

 オークションで就職によってゲームを離れる人間のアカウントを落札したとブログに書いてある。

 多分低くはないと思う」ナガコが答えた。

「親から金をもらっているか知らないけど、財閥のお嬢様だからゲームマネーをふんだんに使って、町に一戸建ての家を建てて変な植物や品のない家具でデコレーションしてSNSで自慢するのよ」

「見なきゃいいだろう」

「ピヨッピー。

 あんたは男社会を生きていて、アンドロイドに育てられたから分からないだろうけど、女の世界は男と違って簡単に順番がつかないのよ」

 僕の意見になが子が意見した。

「男の世界も下剋上がある」

「そういう意味じゃないのよ、分からない子ね」

「ナガコ、ピヨッピーはまだ中学生でお前より年下だぞ。

 根が真っ直ぐで、人の悪意にあまり触れずに成長している。

 俺たちだってメイドロボットに育てられた。

 ピヨッピーを軽く見る資格はない」

「悪かった。謝るわよ。助けてもらわなきゃいけないし」

「で、ピヨッピー作戦はこうだ」

 魔王が作戦を解説した。

 まずゲームの中に4人で入った。

 僕は犬系の耳と尻尾と肉球を持つアニマルフォークのモンクのアバターに変身した。

 魔王はティターンのナイト。

 ナガコがエンジェルのクレリック、

 キヨミが女ドワーフのアルケミスト。

 まずは雑貨屋に行き、多少高価ではあるが、持てる限界の99まで買う。

 HPが0になり、空中にゆらめく魂の炎となる。

 アイテム『フェニックスの羽』を使えばHP1/10で復活できる。

 ナガコとキヨミも18才を超えている魔王から現金を融通してもらい99まで全員買う。

 次に魔法の範囲攻撃である。

『炎の小瓶』

『氷の小瓶』

『雷の小瓶』

『風の小瓶』

『水の小瓶』

『地震の小瓶』全員がそれぞれ最大数の9個まで買う。

 HP回復アイテム『ポーション』『ハイポーション』

 MPの回復アイテム『マジックポーション』『マジックハイポーション』を最大数99個全員が買う。

 装備も一応買えられる最高品を購入した。

 買えてもレベルで装備に使用制限がある。

 このゲームは冒険をして世界を広げ、能力の高い装備を売っている武器屋や防具屋や道具屋を発見しないと手に入らない。

 僕は3Dモンスターの召喚符を10個買った。

 魔王は最大数の99個まで買う。

 そして闘技場に向かった。

 幾つかの手続きを終えて闘技場のゲートをくぐった。

「オーホッホッホ、オーホッホッホ」

 耳触りな女の高笑いが響く。

 美男美女ハンサム渋い系がずらりと並ぶ。

 このゲームのアバターでブサイクはいない。

 金髪縦ロールのダンピールの女が壇上の上でふんぞり返っている。

 64人も並ぶとそれなりに迫力がある。

「ナガコ、それだけの人数で逃げずに来たのは褒めてあげるわ。

 しかし、しょせんは3流政治家の娘。

 日本が誇る3大財閥四菱の直系女子に勝負を挑んでくるとは。

 身のほどを教えてさしあげますわ」

「あの女、死亡フラグ立ってねぇ?」と僕が目で合図を送る。

「立っている」魔王も返事した。

「私が勝てば、約束通りテーブルトークRPG部に100万の予算をつけなさい」ナガコが叫ぶ。

「初耳だ」

「魔王の妹も無茶言ってねぇ?」魔王も驚いていた。

「オーホッホッホ、いいわ、私の勝利は•••」

「げー、魔王とピヨッピー」1人が悲鳴をあげた。

 僕らの頭の上には名前とレベルがついている。

「なにょ、いきなり」

「知らないのですか? あの二人を」

「そんなに凄いの?」

「道路戦士の世界ランカーですよ。

 道路戦士で戦えば、私達は10秒立ってられません」いきなり説明しだした。

「魔王って、アンタ田中真央?」

「魔王。会長さんと知り合い?」

 僕が聞いた。

「知り合いと言えば知り合い。

 去年までお姉様が生徒会長として君臨していた時、そいつのでかい別荘で妹達を集めて乱痴気騒ぎしたから、股の間にまであるホクロの位置まで知っているが」

「お姉様の愛の伝導をフリーセックスと同一視するなんて、相変わらず野蛮でガサツな男女ですの。

 お姉様は私に会長職を譲ったのも、お姉様の寵を一身に浴びたのも私ですわ」

「否定はせんよ、お前が一番愛されていた。

 俺はお姉様にeスポーツ部を作ってもらったし、おかげで遠征の費用もだしてもらえたし、平日遠征も部活動で処理してもらえた。

 お姉様を独占する気はない。

 感謝しかない」

 魔王のアバターの表情が少し曇った。

 このゲーム、戦闘以外はけっこう緻密である。

「いかにゲーム狂とはいえ、この人数に勝てるわけがない。

 やっておしまい」

 会長が叫んだ。

「120分の1秒が分かる女。

 凡人では絶対つながらない連続技魔王スペシャルを持つ女。

 絶対返せない技を反撃する、超反応のピヨッピー。

 日本の双璧ですよ」周囲の人たちが騒ぎだした。

 ビビりがはいっている。

 聞いてないとあちこちから声が上がる。

「解説ありがとう。

 それからナガコさん、聞いた話と違いますよ。

 あの女50レベルある。

 ギルドマスターになれるレベルだよ」

 頭の上のレベルを僕がナガ子に聞いた。

「あれ、本当だ。

 あなた30レベルのアカウントを買ったってSNSに書いていたよねー」

「オーホッホッホ、しょせん政治家の娘とはいえ庶民。

 私のようなパワーエリートはアメリカのレベル上げ請負業者に金とアカウントを渡してギルドマスターになれるまで成長させることができるのよ」

 僕は自分のアバターさえ他人に使用されるのは気持ち悪くて「嫌だ」。

 今では頭に360度テレビカメラを頭に乗せて他人の指示通りに動く商売もある。

 エベレスト登頂をリアルタイムで配信する個人サービスならまだ分かる。

 昔から「お伊勢参り」など聖地への巡礼は誰にでもできるわけではない。

 お金がかかるのでまわりの人からお金を募って、巡礼に旅立つ人が身がわりとなってお祈りをしてきて、帰ってきたらおみやげ話を共有する。

 江戸時代からあった。

 歴史小説など登場人物の人生の追体験であり、昔からあった。

 好きな生き方ではないが、主義の問題ではなく現実である。

 今では自分の行動を常時配信して、視聴者達や複数のAIの選挙によって行動を決める生き方がある。

 個人のレベルでなら問題はないのだが、ヨーロッパにハッカーやIT技術者が多く参加する海賊党があらわれた。

 政治に透明性と柔軟さを求める「液体民主主義《リキッドデモクラシー》」を掲げ議員を送りだした。

 党員がネット投票してリアルタイムに代表が意思決定をしている。

「融身体」と呼ばれ、お祭りの神輿みこしをかついでいる状態に近い。

 誰が走って、誰がかついで、誰が音頭をとっているのかはっきりとした線引きがない。

 自分自身への帰属感。

 自分自身への効能感はないのだろうか?

 それとも『それが自分』と割り切るのだろうか?

「そんなゲームして何が楽しいんだ?」僕が魔王に聞くと。

「このゲーム、楽に成長できないよう、シナリオやイベントをレベル制限がある。

 使えるスキルや魔法が制限される。

 シナリオ毎に推奨レベルがあって低い場合は上げてから挑戦したがいい。

 会長さんのように誰かに上げてもらうとレベル上げしなくていいから、シナリオやイベントの展開が早くなる」

「会長、考え直して下さい。

 丸川書店から配信される動画で、あの二人だけ飛び抜けているんです」

「お待ちなさい」狐耳のアニマルフォークが制した。

 ナガコさんが「副会長」と解説してくれた。

 イリュージョ二ストで15レベル、この集団平均は10レベルだなあ。

「良く見なさい、魔王はナイトの20レベル。

 ピヨッピーにいたっては1レベル。

 魔法がかすれば一発死の上に敵は少数。

 戦う前からビビってどうするのです。

 会長、ここはやるべきです。

 あなたがたも新しいパソコンが欲しくないのですか」

 最近は漫画もタブレットでデジタルペンを使ってネームの下書きやペン入れを行う。

 パソコンと同期してソフトウェアでスクリーントーンを貼る。

 インターネットで印刷所にデータを転送する。

 大抵の文系サークルはパソコンがノドから手が出てくるほど欲しい。

 副会長の命令は虚しく、各サークル、部活、ギルドに分かれて「どうする?」と話し合いが始まる。

 死んだら教会で復活できるけど、金は取られるし、ペナルティでレベルも5ダウンする。

 生徒会長の人徳かはわからないが、勝てば儲けものだ。

 負けてレベルがダウンするのは、今まで成長に使った時間はもったいないけど、死んだら幽霊のように取り憑いてプレーを参考にできる。

 いい思い出になるから勝負してみようという方向で各集団とも話がまとまりだした。

「一時はどうなるかと思ったけど、これも財閥令嬢の力。

 負けた時はプラチナチケットだけではなく、あなたたち4人、私が作るギルドに入りなさい」

「それでいいのか。

 やおい穴を実装した逆ハー物に連れて行かれて、64人に輪姦されるのかとヒヤリとしたが」

 僕が口にした。この中で男は僕だけだし。

「お前、女子校は百合か、腐女子しかいないと思っているだろう」ナガコがジト目をしながら口にした。

「違うのか?」

「H世代の男クラスはヤンキーか、オタクしかいないのか?

 少子化対策でクラスの5分の1は結婚や妊娠で学校を中退するぞ。

 金持ちは若く結婚してたくさん産むのが国の方針だぞ。

 半分以上は多分ノーマル」

 魔王が言う。LGBTは左利き位の数しかいない。

「会長さん。僕たち基本ノラだから、ギルドに入ってもすぐ退会するぞ」

 僕が口にした

「お前プラチナチケットなんて、親権者の許可がないと譲渡できないぞ」

「お姉ちゃん、十八歳過ぎたのだから、かわりにチケット提出してよ」

「お前、俺をあてにしていたのか?」

「違うわよ、戦う前から負けた時のことを考えてはいけないとアントニオ猪木が言っていたわ」ナガ子さんがフッとカッコよく笑った。

「魔王のファミリー凄いな。

 確かに。キャプテンハーロックも言っている。

 男にはある。

『負けると分かっても戦わねばならない時がある』

『死ぬと分かっても行かねばならない時がある』」

「ピヨッピー。良く分かっているじゃない」

 ナガコさんが大きくうなずく。

 魔王が仕方なくプラチナチケットをトレーディングボードに置いた。

「さあ、会長さん、始めようか」

 魔王の前にあったボードが消える。

「さあ、やろうども(女子校だけど)。やっておしまい」

「あら、ほら、さっさー」

 60人ほど突っ込んでくる。

「やるぞ。ピヨッピー」

 魔王が54枚の召喚符を天に投げて3Dモンスターを召喚した。

 このゲームは3Dモンスターに騎乗できる。

 戦闘を手伝ってもらえるのがウリである。

 どのモンスターも2足歩行状態になると2mを超える。

 会長さん達からはモンスターの林が突然目の前に現れた。

 突撃が止まる。

 何人かは転んだ。

 悲鳴がもれた。

 僕は召喚されたモンスターの背中を駆け登り、頭を踏み台にしてジャンプ。

 前衛を飛び越えながら1レベルモンクが持つ唯一のスキル『ためる』を使い身体を強化した(15秒程だけど)。

「裏をかく」古流柔術で堅い鎧のすき間から肉を切る事。

 モンクの移動力はシーフの次に早い。

 とまどう副会長の正面に来ると連撃を叩き込む。

 これはスキルではない自前の物だ。

 8回叩くとHPが0になり50センチぐらいの炎の固まりになる。

 1分以内にフェニックスの羽を使えばHP10分の1でゲームに復帰できる。

 すぐさま反転し、破綻した前線を突っ切り、攻撃を体術で大きくかわしながら3Dモンスターの後ろに隠れた。

 道路戦士なら紙一重でかわしてもいいが、このゲームは判定が甘い。

 モンスター達が独自のスキルを使い、攻撃をしながら前進する。

「HPの少ないキャラを中心に据えてタンクを外側にして円陣を組んで、ピヨッピーがどこから来るかわからない」

 会長さんのフェニックスの羽で復活した副会長が指揮をとる。

 前衛が退却して会長を中心に円陣を組んだ。

「とりあえず、手を出さずに取り囲め」

 魔王が3Dモンスター達に命令した。

 古代ローマ帝国をカルタゴのハンニバルがカンネーの戦いで、ローマ帝国の密集隊形を両翼に騎馬を置き、包囲殲滅作戦で破った。

 真ん中の兵隊が遊んでいたためである。

 中央に魔法攻撃のあるアタッカーになるファンタジーでどこまで通用するか分からないけど、僕らにも他に選択肢がなかった。

 3Dモンスターのアルゴリズムは魔王の命令を的確に実行する。

 普通なら包囲された側は技をふるうスペースがなくなるのだが、右左と揺れながらスキルだけは発生している。

 通常攻撃の横振り系の技がでなくなるだけ、現実に近づけてある。

「魔法だ、ターゲッティングしろ、ピヨッピーを殺せ」副会長がどなる。 

 僕も召喚符で4体のUR3Dモンスターを呼び出すと、撹乱用にランダムで魔王が呼び出したモンスターの後ろを走らせた。

 僕は体高2mある光ネズミの背中に乗って高速移動する。

 ノリノリ状態の時はHPとMPが追加される、これで少しは死ににくくなった。

 今まで3Dモンスターでは50センチぐらいの大きさだったからチョット新鮮。

 魔王が呼び出したモンスターの後ろを走らばターゲッティングはほぼ不可能。

 魔法はは視認しなければいけない。

 当てずっぽうの範囲攻撃魔法が近くで炸裂した時はヒヤリとしたが、運はこちらにある。

 範囲攻撃をする魔法の小瓶を連続で敵中央に投げた。

 アイテムの使用はリキャストタイムがない。

 近代戦で機銃掃射とかできる場合は兵士間の距離をとるのが常識。

 どうやら司令塔の副会長さんはモンスターの相手ならいざ知らず。

 僕や魔王の様に対人戦慣れしていない。

 タンクもHPは多めだけど魔法防御力はそれほど高くはない。

「がんばって戦線を広げて、このままでは全滅しちゃう」

 副会長が悲鳴をあげたが戦略上の失敗を戦術で補うのは難しい。

 タンク達は通常攻撃は突きしか使えないのに逃げもせずけなげに戦っていた。

 真ん中のアタッカー達は魔法の小瓶で全滅した。

 会長はフェニックスの羽を9枚しか用意してなかったみたい。

 副会長さんが「アンタ金持ちなんでしょう、なんで最大数用意していないのですか?」内輪もめが始まった。

 魔王達は魔法攻撃を受けていた。

 魔王が二人をかばい、ポーションを使えばボーナスがついてくるキヨミのアルケミストが回復アイテムを使い。

 ナガコがクレリックの回復魔法を使いMP回復アイテムを使っていて、なんとか持ちこたえる。

 魔王は僕に攻撃がいかない様に耐えた。

 さらに死んでいく3Dモンスターをフェニックスの羽で蘇生させながら、回復アイテムで回復し、僕が魔法の小瓶を使い果たした時は魔王の近くを通り譲渡してもらう。

 やがて敵はフェニックスの羽も使い果たし、レベルとHPと魔法防御の高い会長さんだけが残った。もはやMP回復アイテムも使い果たしペタンとしゃがみこむ。

 戦意を失った会長さんにナガコさんに率いられた僕らが近づいた。

「財閥令嬢のこの私が負けるだなんて、さあ、殺しなさいよ」

「張り子の虎、これが金の力の限界よ」

 ナガコが宣言する。

「会長さん、結構人望あったよね。

 ナンダカンダ言って、みんなレベルダウン覚悟で死ぬまで戦っていたし」

「形勢が悪くなると、ネットから落ちて、なかった事にする奴。結構見て来たからな」

 僕と魔王が慰めた。

「絆の力に負けたのよ」

 指をさして、ナガコが高らかに宣言した。

「いつ、結んだんだ」

「どう見ても、実践慣れと、つぎ込んだゲームマネーの差だろう」

 僕と魔王が突っ込む。

「心でも負けるだなんて」会長さん結構いい人「ナガコ、私の負けよ。

 テーブルトークRPG部に予算100万円の件は、理事長であるお祖母様に話をしてみましょう」

 魔王がトレーディングボードに置いていたプラチナチケットを回収した。

 闘技場から出ると3Dモンスターはシステムが回収した。

 まだ9時まで時間があるから街の外でレベル上げをする事にした。

 魔王は馬系の3Dモンスターを呼び出す。

 僕は光ネズミを呼び出した。

 ナガコとキヨミは騎乗用の大型ニワトリ(戦闘は手伝ってくれない)をレンタルして、経験値が多い、多少強いモンスターが出る所まで遠出した。

 僕と魔王の腕があれば多少ハンデがあってもちょうどいい。

 9時になるころには僕のモンクは10レベルになっていた。

『掌底打ち』という防御力無効のスキルが手に入った。

 帰り際ナガコさんが「お姉ちゃん達、毎週水曜日はここで遊ぼう。

 部活も休みにするから」誘ってきた。

 どうするかは魔王が決めればいい。

 多少システムの荒さがあるけど、やってみたらけっこう楽しい。

 魔王がギルドマスターになってギルドを運営するのなら喜んで入っていい。

「考えとく」

 魔王が返事をして解散になった。

「お帰りなさい。

 マスター。

 今日は少し帰還が遅いですよ。

 9時までに食事をとらないと太りますよ」

「魔王の妹のケンカとレベル上げにつきあっていたら途中で抜けられなくて。

 たまにはいいさ」

「魔王。妹がいたんてすか?」

「アバターはかわいかったよ」

「マスター。

 本物の人間の女なんてめんどくさいだけですよ。

 私達のように8段締めもしませんし、回転機能もついていません。

 マスターがピストン運動しなくてはいけないんですよ」

「ララ。いきなり何を言いだすんだよ」

 ララが乱暴に夕食の入ったシェイカーを置いた。

「知りません。マスターがイジワル言うからいけないんです。

 早く食べて下さい。

 片付けなきゃいけないんです」

 そんなに怒る程洗い物の量があるようには思えないが?

 まあ、確かに『ウソと涙と裏切りは女のアクセサリーだ』とルパン三世も言っていたから気をつけよう。

 食事が終わるとバンソニー社の最新のハード『ステプレX』をプレーする。

 今日は『大戦略・大戦術』をプレーする。

 時代が近未来やWWⅡ時代の物やファンタジー物に大別できる。

 近未来物は架空の大陸で中立地帯にある都市や飛行場や工場や港を占拠して収入や基礎工業力をあげて新兵器を開発しながら新ユニットを作り、配置し、敵勢力を制圧する。

 基本はだいたいこうだが、戦闘は種類がある。

 ボードゲーム型から発展したターン制で、自分の駒《こま》をユニットの持つ移動力分いっせいに動かしたあと攻撃する。受ける駒も自動で反撃する。

 はるか昔は参謀本部がサイコロを振ってシミュレーションしていたらしい。

 リアルタイムで動かす物もある。

 相手はコンピュータだから、いくらでも時間を止めて長考できるのだが、まずは索敵から入る。

 索敵していないとコンピュータが索敵している時は視界に入り攻撃可能な距離(この場合はヘックスと呼ばれる六角形のマス)に入れば一方的に攻撃される。

 攻撃命令が無くて地図上のどこどこに移動しろとかしか命令できない。

 索敵専門のユニットを作り生産を工夫しなくてはいけない。

 索敵してあり、攻撃可能マスに敵ユニットが入れば自動的に攻撃する。

 クラシックと呼ばれるWWⅡ物はボードゲームの影響を色濃く受け継いでおり、歴史的事実に基づいてユニットが配置されている。

 単純に比較して絶対勝てない場合があるから、別途で勝利条件が用意されている。

 コンピュータ的要素としては天気や夜間やレーダーなどが加わり、ボードゲームと差別化してある。

 ファンタジーの場合は軍隊よりキャラクター同士が戦う物が多く、将棋やチェスのように一体ずつ動かす。

 ユニットに攻撃力と防御力があり、チェスや将棋のように重なれば簡単に取れる物ではない。

 強いユニットや弱いユニットに愛着が湧いたりする。

 あるいわアビリティポイントが割り振ってあり、貯まったキャラクターから順番に動かす物もある。

 ポイントの回復のしかたはキャラクターの能力によって違う。

 キャラクターの配置によって支援を受けて必殺技がでる場合がある。

 同時にウェアラブルコンピュータ上で解いている途中のターン制のファンタジーシミュレーションRPGを複数プレーした。

 ウェアラブルコンピュータから画面が6個程、空中に出てきて、チラと見て、左手だけでコントロールした。

 11時になり、いつも通り、筋トレして、お風呂に入り、ララとの儀式をすませ、睡眠導入剤を注射されて寝た。

「おやすみなさい。マスター」

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