私はご飯が圧縮された二段弁当をリュックに入れて、集合場所へと向かう。
さてさて、今回のバーベキューはどのような面白いハプニングが起きるのだろうか。
わくわくと不安になりながらも、私は家を出た。
さてさて、今日は高校時代の友人たちとバーベキューへとtnhと呼ばれる浜辺へといく。
現在時刻は8時半、私はベッドから飛び起きて外出用の洋服に着替えた。
外出用の洋服と言ってもそんなにお洒落な物ではない。
ジーパンに無地のTシャツというコーデだ。
着替えを終えた私は、大学に持っていってるリュックサックを鷲掴みにして、二階へと降りた。
「おはよ」
ご飯を作ってる母にそう言う。
母も料理をしながら「おはよ」と返事をした。
「ご飯残ってるよな?」
そう言いながら、私は炊飯器を開く。
昨日、私がいつもより多めにご飯を炊いたのだ。
「あるよ」
と、母。
私は比較的大きな二段弁当を取り出して、たんまりと残っているお米をシャモジで掬い、それを二段弁当に隙間も残さぬほどにご飯を圧縮して押し込んだ。
「よし……!」
質量の大きな惑星だったら確実にブラックホールが出来上がるぐらいに圧縮されたお米だけの弁当を見た私は、得意気に呟いて弁当入れに入れてリュックサックの一番下に入れた。
あとはハンカチ、スマホ充電のスティック型モバイルバッテリー二つを突っ込む。
更に財布に必要金額10000円が入っていることを確認して、それをリュックサックに放り込んだ。
そして、スマホから集合時間を確認する。
私がs駅前に着かなければいけない時間は10時。
いまは9時。
電車時刻表のアプリで9時50分ほどにs駅前に到着すれば、何時にどの列車に乗れば良いかをチェックする。
アプリが記した時刻は9時10分に到着する各駅停車だ。
自宅から地元の駅まではそんなに掛からないが、調子に乗ってゆっくりとしていると、踏切で阻まれて乗り過ごすという失態を犯してしまう。
故に、私はすぐに家を出ることにした。
「そいじゃ、行ってくるわ!」
私は母にそう言って、玄関へと向かう。
母もスマホで動画を見ながら、「はーい、行ってらっしゃい。楽しんでなー!」と言った。
外に出ると、蝉の合唱が出迎えてくれた。
蝉たちで合唱コンクールでも行っているのだろうか。
かなりの蝉が鳴いていた。
私は夏が来たという思いに満たされながら、駅へと向かう。
私は敢えてイヤホンをせずに蝉の合唱を聴くことにした。
蝉の鳴き声は大好きだ。
この蒸し暑さと蝉の鳴き声、夏特有の空気の香り。
これぞ夏の風物詩とも言えるものだ。
そんなことを思いながら5分、駅に着いた。
私は定期券を取り出して、改札を通る。
そして、二番ホームに行って列車が来るのを待つ。
その間に、私はイヤホンを取り出して音楽を聴き始める。
東方の「夏風」というタイトルの曲だ。
ぜひ、みんなも聴いてみてほしい。
青天の朝9時ぐらいにこの曲を聴くと、何とも言えない心地よい気持ちになる。
私はその曲を聴きながら、小説の続きを書き始めた。
「(今日中には完成はしないやろうな。まぁ、取り敢えず適当に描き進めるか)」
そう思いながら、本当に適当に書き始める。
取り敢えず、現章の主人公ポジションの朱雀という闇英雄のキャラクターを動かす。
異世界転移し、更に異世界転生した彼がその異世界で魔王の使途であるトコヨ・マリーを、街の皆と討伐する回だ。
「(どんな感じで書くべきか……。迷うな)」
各駅停車が到着し、それに乗り込んでも筆(指)を止めることはなく、書き綴る。
結局、s駅に到着するまで、小説を書いていたのだが、書けたのはたったの3行だけだった。
「ふぃー……ついた……」
私はスマホをリュックサックの中に突っ込み、駅を出る。
「(あと、7分か)」
私はリュックサックからスマホを取り出して時間を確認する。
取り敢えずラインで『いまどこら?』と打って、近くのスーパーに入った。
店内は冷房が効いており、非常に心地よい空間となっていて、全身にかいていた汗は瞬く間に無くなる。
漬物などの商品を眺めていると、スマホからピロン!と比較的大きめのメロディが流れた。
多分、メンバーからの返答だろうと思った私は即座にスマホを取り出してラインを見た。
やはりと言うべきか、友人からで既に駅前に到着しているようだ。
私は、すぐに店を飛び出してキョロキョロと見渡すと、6、7人乗りのレンタカーの窓から手を降っている青年の姿が見えた。
「おったおった」
私は早歩きで、彼らの元へも向かう。
「はようさん!」
私は運転する天狼淳也に挨拶をする。
彼もおはよう!と挨拶を返した。
「一番後ろに乗ってくれ」
「あいよー」
そう言われ、私は後部座席に座った。
いや、座ったというか、寝転んだ。
今回のバーベキューの人数は5人。
運転する天狼淳茶
企画した囁木笑弥
その他の空本勝也
おなじく尾橋冠来
おなじく楠崎龍照
となっている。
つまり、後部座席は私一人、自由に寛げるという訳だ。
「じゃあ、まずデパート行って、そこから俺の家でバーベキューセット取ってくるから、お願い」
「うーい」
笑弥が淳茶(以降淳ちゃん)に指示を出した。
淳ちゃんは、それを聞いてハンドルを握り、運転を始める。
私は寝転んだままスマホを弄り、小説を再度書き出す。
ここから、デパートまで20分ほどだろうか、私はそれまで寝転んで小説を描く。
しかし……。
「気分悪い……」
車に乗って5分も経過しないうちに、車酔いにやられてしまう。
空本(以降そっらー)も「大丈夫?」と心配し、冠来は「寝転んでるからじゃない?」とド正論をぶつける。
まぁ、いつもの流れである。
「大丈夫や」
私はそう言いながら、対魔忍RPGを起動してイベント周回を行う。
それを見たそっらーは茶化し始めた。
「お、対魔忍やってんのか?」
「ええやん、このあいだ暇なんやし」
そう言うと、淳ちゃんと笑弥は吹き出した。
私の対魔忍好きは、我々高校の友人内では知らないやつはいないというレベルで知られている。
まぁ、お陰さまで私のことを対魔忍朱雀とかいう称号みたいなのをつけられている。
車酔いに苛まれる中で、やる対魔忍RPGは楽しいかと言われれば、別に。
その後は、笑弥の家につくまで友人たちと下らない話で盛り上がった。
笑弥と淳ちゃんはトレクルというゲームの話、そっらーはなにやら調べもの、冠来は将棋のゲーム、私は再び小説書きに戻った。
そうしているうちに、デパートへと到着する。
駐車場は最上階、ここから車はとんでもない坂をグルグル周りながら登ることになる。
私は、周る時に物凄い酔いが襲ってきた。
「うおおおおおおおおお!!?」
私は車が周る度に呻き声を上げて、その間抜けな呻き声に友人たち全員が大爆笑。
「はやくうううううう!!! めっちゃ気分悪いいいいいいいいい!!!」
「笑かすなや!!」
大爆笑しながらキレる淳ちゃん。
そっらーは苦痛に歪む顔を眺めながら笑い散らかしていた。
「あー、めっちゃ気分悪い……」
「龍照大丈夫か?」
笑弥が心配そうな顔で肩を貸してくれた。
そんな中、私達はデパートの食品コーナーへと行き、ピザ二枚を購入し車に積めた。
これにより私は寝転ぶことができなくなってしまった……。
「後は、笑弥ん家(ち)やな?」
運転している淳ちゃんが隣で今日のスケジュールを再確認している笑弥に話しかける。
彼はスケジュールを見ながら「そうーやな」と言った。
「りょーかい」
そう言って、ハンドルを握る。
再び気分が悪くなる私。
最早死に損ないの虫である。
「龍照大丈夫か?」
ちょっと半笑いのそっらー。
私は「お前ちょっと笑ってるやろ」と頑張って笑いながらツッコミを入れた。
図星を付かれたからか、普通に笑いをあげる。
冠来は私の身を案じたのか、酔いを治す方法を教えてくれたが、全く意味がなさなかった。
そんな下らないことをしているうちに、笑弥の家に到着する。
笑弥、冠来は家の中からU字溝コンクリートにレンガ2つ、この前のバーベキューに使った炭の残り、釣り道具を持ってきて、車の中に積む。
そして、2人は車に乗り込んで、今度はスーパーに向かった。
30分ぐらいして、スーパーに辿り着く。
酔いの方は耐性を得たのか、はじめほど死にかけるほどではなかった。
全員が鞄を持ち車を出てスーパーに入る。
ここで、2手に分かれることなったのだ。
笑弥と冠来、そっらーは肉系、私と淳ちゃんはその他諸々を担当し、必要なものを買うといった感じである。
笑弥たちは、カートを使って肉が陳列されている食品コーナーへと向かい、私と淳ちゃんはお魚コーナーへと向かった。
「龍照はなに買うの?」
「私はハマチと鯛のお刺身を買うかな」
「おー」
淳ちゃんは感心したような表情と口調でそう言った。
「淳ちゃんなんか欲しいやつある?」
「やー、俺は何でもエエよ」
「そいだら、焼き肉のタレ買いに行くか」
「そうやな」
カートを動かして焼き肉のタレが売られているコーナーへと向かう。
「タレってここら辺に売ってるよな?」
「確かそうやったはずやで」
棚に陳列されてある調味料類を見ながら、焼き肉のタレを探す。
因みにだが、友人とのバーベキューでタレを買うとき絶対に買うタレがある、そのタレは焼き肉のタレ醤油味である。
このタレはヤバイ。
焼き肉のタレの革命と言っても過言ではない。
焼き肉のタレ界隈の重鎮、青天の霹靂である。
話すと凄い長くなるので、取り敢えず、このタレは宇宙ということだ。
「あったあった、これはかかせない!」
「あーそれね!」
淳ちゃんも、このタレの素晴らしさを分かっているようだ。
私は更に塩タレもかごの中に放り込む。
「後は、醤油か」
ハマチと鯛を購入するので、醤油、ワサビも欲しいと思い、私は醤油とワサビもかごに入れた。
「他、なんか欲しいやつある?」
「網、着火材か?」
「あー、そうやな」
カートを押して、そのコーナーへと向かう。
大小様々な網が積まれていた。
「小さい網を二枚やったな」
「うーん、そうやった?」
「この前やったとき、そんな感じじゃなかった?」
「あー覚えてない」
「さいでっか」
笑いながら言う淳ちゃんに、ハハハと苦笑して小さめの網を二枚かごに入れる。
更に着火材も数個カゴに放り込んだ。
「どうすー? 一回笑弥たちと合流する?」
「そうやな」
私たちは、笑弥たちがいると思われる肉コーナーに向かった。
しかし、笑弥たちがいたのは、肉コーナーではなくチーズ等が陳列されているコーナーだった。
更に、私たちが近づくと笑弥は呆れ笑いの表情で私に「龍照これみてやぁ」と買い物カゴを見せてきた。
そこには大量の肉の他になぜか食パンとチーズとケチャップが入ってあった。
「なにゆえ、食パン??」
私が笑弥に訊ねると、冠来が物凄い得意気に、しかもかなり真剣な表情で「いやこれまじで必要やねん」と言い出した。
どういうこったよ……。
「んー、パンとチーズとケチャップでピザ的なやつ食べるんか?」
と言うと、冠来は真剣な眼差しで「いやもうホンマにめっちゃうまいねん!」と言った。
こんなくだらないことを真剣な表情で言われても、私はどんな反応をしたら良いのだろうか……。
「まーでも、ええんやない?」
「でも、これ割り勘やで」
笑弥の言葉に私は「おぉい!」と冠来に問い詰める。
冠来はゲラゲラと笑って誤魔化した。
「ちょちょホンマにうまいねんって! 龍照も一回食べたら分かるで!」
「まー、うん。それより肉はどんなの買ったの?」
「鶏肉とか牛肉、タン、ハラミとかやな」
「なーる。あれは買ったの?」
「買ったで!」
笑弥はニヤリとしながら、カゴからあるものを取り出す。
鶏刺しである。
「やっぱ買うよな、でも大丈夫?」
「龍照それ毎回言ってるよな」
私の食中毒の心配事に爆笑する笑弥。
「それなら、と」私は野菜コーナーにて、あるものを3パック持ってカゴに入れた。
それをみた笑弥、そっらー、淳ちゃんは笑いをあげる。
薬味のネギを千切りにしたパックだ。
「これは必要やな。これは、私が出すわ」
「いや、それくらいならええよ」
「そかそか」
その後、馬肉や釣り餌、アルミ箔、トング、大量の水、お茶、コーラ、紙コップ、紙皿をカートに入れてレジに出る。
4つの買い物カゴに溢れんばかりの商品、レジ担当の人からしたらとんでもない客が来たと思うだろう……。
「これ、2手に別れた方がエエよな」
「そうやな」
冠来の提案に笑弥が頷いて、2手に別れて会計をすることになった。
我々は丁度セルフレジが開いたので、私と淳ちゃんが必死に会計を済ませた。
「これ、全然反応しないけど、どうなってるんや?」
「こうやで」
「お、ありがとう」
何とか会計を済ませた私達は買い物袋に買った商品を丁寧に積める。
全て積め終わると同時ぐらいに、笑弥たちも会計を終えたようで、袋に積め始める。
「あり得ないぐらい多いな……」
「そうやな」
「てか、肉多くね?」
「これの半分冠来が欲しいって言ったやつ」
「お前かよ!」
突っ込む私、爆笑する冠来。
そして、金額を合計し、そこから割り勘をした。
一人3000円だ。
それを笑弥に渡し、買い物袋をカートに置いて、車まで向かう。
「さて、あとはtnhに行くだけやんな?」
「そうやな」
「あいよ」
淳ちゃんはハンドルを握って運転をする。
tnhまで渋滞がなければ10分ほどで到着するので、その間に小説を書こうと考え、スマホで小説執筆を始めた。
15分後……。
「ついたで!」
tnh駐車場に到着。
私たちは、浜辺に近い駐車スペースを選び、そこに車を止めた。
ここからだと、バーベキューができる場所まで、20秒程度で行けるから最高の場所なのだ。
全員で荷物を持って浜辺へと向かい、バーベキューの準備をする。
「そしたら、私は肉焼いてる間に刺身切るわ」
そう言って私は刺身を斬ろうとしたときだった。
フミヤが「あっ!」と声をあげたので、私たちも「どうした?!」と少し心配な表情で駆け寄った。
「ごめん、油とライター忘れた」
「え?」
「あらー」
「持ってきてないの?」
淳ちゃんと冠来は「マジか」といった表情をして、そっらーは申し訳なさそうな表情をした笑弥にきく。
「忘れてた。龍照マッチ買ってきてる?」
「いや、笑弥が持ってきてくれてると思って買ってないな」
「あー……」
「そしたら、私があのスーパーまで走って買ってくるで」
私はそう笑弥に言う。
しかし、彼は「いや、俺が買ってくるわ」と言ったが、何となくマッチを買わなかった私にも問題があると感じ、リュックサックを背負った。
そうすると、笑弥も「ごめん、そしたらお願いするわ」と言う。
「構ん構ん。あ、そしたら私が買った刺身切っててほしい。この感じやと確実に腐るから、先に刺身全部食っててええで!」
と言って、お供に淳ちゃんを連れてスーパーへとダッシュで向かった。
行く際に、笑弥が「車で行ったら?」と言ったが「駐車料金取られるし、走って行く方が面白い」と言って断った。
20分後……
「買ってきたで!!」
私と淳ちゃんはライターと油、ドライアイスに挟まれた鯛をもって戻った。
「おー、戻ってきた」
そっらーはスマホでゲームをしながら、私と淳ちゃんの方を見て、そう言った。
笑弥と冠来はどうにかして、火を起こせないかと模索している様子が見て取れた。
「龍照ごめん、ありがとう」
笑弥は凄い申し訳なさそうな表情で、私の方に近づき、私の腕に触れて謝った。
「にゃー、気にすんな」
私は笑弥に言って、ライターと油が入った袋を渡した。
すると、もうひとつの買い物袋に目が止まった笑弥は、「龍照何か買ったん?」と聞いてきたので、私は「ほい、鯛の刺身」と袋を持ち上げて言った。
「また買ったんかよ!」
笑弥の笑う声に冠来やそっらーも笑いながら、私の買った鯛を見る。
「だって、切っててっていった鯛は全部食うたやろ?」
「いや、龍照の分残してるで」
「まじで!?」
「クーラーボックスに入れてるで」
笑弥が指差すクーラーボックスのなかを覗くと、鯛の切り身があった。
「oh....鯛買わんでよかったな……」
「まー、ええやん」
淳ちゃんは私を励ました。
励ましているのか分からんけど……。
いろいろと、ハプニングはあったが、何とかバーベキューが始まった。
レンガの上にU字溝コンクリートを置いて、その溝の中に炭と着火材を入れて、網を被せる。
そして、ライターで着火材に火をつけて網の上にさまざまな肉を焼いた。
「焼いてる間に鶏刺し食べようかな」
笑弥はクーラーボックスから鶏刺しを取り出して、塩タレを紙コップに垂らす。
そして、鶏刺しを塩タレにつけてパクリと食べた。
「めっちゃうまい! 龍照も食べや」
「まぁ、ちょっとだけもらうわ」
そう言うと、私は自分のリュックサックの中から、弁当を取り出して蓋を開け、更に紙コップに買ったネギを大量に投入し、醤油タレをかける。
それをみた笑弥は「ちょっと待って」と言いながら超爆笑する。
その笑いに釣られたそっらーと冠来、淳ちゃんも駆け寄って、私の紙コップの中身を見て、笑弥同様に超爆笑した。
「ネギしかないやん!」
「薬味やで」
私は冷静にそう言う。
紙コップの中の割合はネギ9、タレ1の割合でほぼネギで埋めつくされていたのだ。
私は鶏刺しを一枚貰い、大量のネギに包み込み、それを食べる。
それをみた笑弥は「最早どっちがメインで食べてるんか分からんな」と言い笑う。
更に、私の二段ご飯弁当を見て再び笑い転げる。
「ちょっと……」
何か言いたそうだが、笑って言葉がでないようだ。
そっらーに至っては、笑いすぎて噎せている有り様である。
「なに?」
私はキョトンとする。
ネギ鶏刺し一枚に、縦長の弁当箱に入っている半分のお米を箸で無理矢理掴み、それを口に頬張る。
それをみた四人はまたもや吹き出す。
「一口がでかいねん!」
「カバかよ!」
笑弥と冠来が突っ込む。
それはもうONE PIECEのギャグシーンで浜辺が大爆笑の渦に飲み込まれていた。
私からしたら至って普通なのが……。
因みに鶏刺しは弾力があって凄い美味しかった。
何と言うか、焼き肉のタレ醤油味と鶏刺しの弾力が交ざり合い、このような素晴らしい味になっているのだと思う。
「やっぱ、鶏刺し結構いけるな。後が怖いけど」
「いけるやろ」
心配をよそにムシャムシャと食べる笑弥。
私は、鯛の刺身を醤油とワサビとネギとご飯で全て平らげる。
馬肉やハマチ、鯛で二段弁当はすぐに空っぽになる。
「もうご飯食べたんか!」
「おん」
「龍照早すぎるわ」
そっらーと淳ちゃんは焼き肉を食べながら言う。
私も刺身と馬刺を食べ終えて、焼き上がった肉を適当に取って食べていた。
しかし、その時私はとあることに気づいた。
「おおおぉい!! 焼き肉醤油タレもうないやんけ!!」
「え? まじで?」
そっらーは興味津々で私の持ってるスッカラカンになった醤油タレを覗く。
「ああ、ほんまや!!」
笑いながら醤油タレを指差すが、私からしたら笑い事ではない。
「おい誰やねん。こんなに醤油タレ使ったやつ!」
「ごめん、結構使ってこぼしたわ」
私は空っぽになった醤油タレ2つを手にもって訴える。
すると、冠来が何も悪びれることなく言う。
「お前かあああああ!!」
「アハハハハハハハ!!!!!」
私は笑いながら逃走を図る冠来を全力で追いかけた。
笑弥と淳ちゃん、そっらーは、その光景を見ながら焼き肉を食べて大盛り上がり。
因みに、いまは平日ゆえにこの場所は我々以外誰もいない。
つまり、ある程度は暴れ盛り上がれるというわけだ。
3分ぐらい冠来を追いかけ回していると、疲れてきたのか冠来がこちらを振り向き、「待て待て落ち着こう、ほら肉食べられるで!」と停戦みたいなことをしてくる。
まぁ、私もかなりクタクタになってきたので、停戦することになった。
その後は、焼き肉を食べたあとはピザを食べ、何事もなくバーベキューは進行し、時刻が5時半になり夕日が眩しくなり始めたところ、突如冠来が立ち上がり、車から釣り竿を取り出した。
「あの堤防みたいなところで魚釣りするわ」
「あー、じゃあ俺も行くわ」
と言って、そっらーと冠来は餌と釣竿をもって堤防のような場所に歩いて向かった。
笑弥と淳ちゃんは、冠来が買った(割り勘)肉を焼いて食べていた。
一方、私はお腹がいっぱいで、椅子に座って対魔忍のイベント周回を行っている状況。
6時を周り、辺りが薄暗くなり始めたころ、ふと冠来とそっらーの様子が気になり見に行くことにした。
「笑弥ー」
「ん? 龍照どうした?」
「ちょい、冠来とそっらーの様子見てくるわ」
「んー、わかった」
私はそっらーと冠来のいる堤防へと向かった。
彼らがいる堤防へと辿り着くと、二人はそれぞれ別のポジションで釣りをしていたが、なにやら冠来の様子がおかしかった。
不思議に思った私は早歩きで冠来に行く。
「冠来どうした?」
「あー、龍照。ちょっとこれみてや!」
そう言って釣り竿の釣糸を私に見せつけた。
それを見て、私は少しだけ笑ってしまう。
釣糸が絡まっており、五時半から今までずっと釣糸をほどいていたようだ。
「おいこれどうなってんねん!」
悪態をつきながら、かなり雑にほどく冠来。
淳ちゃんもやってきて、あまりのマヌケ様に私たちは吹き出している。
「これをこうしたらええんやない?」
私も絡まった釣糸をほどこうとするけど、全くほどけない。
「ぅおぉい! ほどけねえぞ!!」
どうにもできなくなったのか釣糸をブンブン振り回し始める。
振り回したおかげか、さらに絡まってしまう。
「落ち着け落ち着け!」
「どうすりゃええねん!」
「あははははは!!!」
止める私、喚く冠来、笑う淳ちゃん。
奥の方で、こちらの惨劇を高みの見物とばかりにそっらーが笑っていた。
結局、絡まったまま何とか魚釣りをすることになった……のだが……。
「つれそう?」
「全然」
「だよな」
やはり釣糸が絡まっており、上手くできないようで、ハンドルを懸命に回そうとしていた。
私と淳ちゃんもそれを近くで眺めていたが、その時だった。
そのハンドルがポロリと千切れたのだ。
「……」
「……」
「……」
時間が止まった。
「……」
「……」
「……」
2秒ぐらいだろうが、我々からすれば1分ぐらいの感覚である。
そして、冠来が「おおおおおおい!!!」と絶叫。
「アッッッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」
「ハッハッハッハッハ!!」
堤防に大爆笑の荒波が押し寄せてくる。
特に私がヤバイ。
「アッハッハッハッハッハッハッ!!! アハッアハッアハッハッハッハッハッハ!!!!!」
「モオオオホッハッハッハハ!!」
私の超笑いに釣られたのか冠来も笑いだす。
「これみろよ!!」
「ハアアアアアアアアアハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」
もう腹が雑巾絞りだ。
ツボに完全に嵌まってしまった私は、冠来の千切れたハンドルをみて、死ぬほど笑い転げた。
五分ほど、そのやり取りがあり、結果的にどうなったかと言うと……。
「も、もうやめろおおおおおお!!! 腹イタイイイイイヒッヒッヒッヒッヒッハハハハハハハハ!!!!!」
冠来は釣竿を置いて、大きな毛玉みたいになった釣糸だけをもって、海に垂らした。
そして、淳ちゃんが魚の餌をその場所にバラバラと放り落として魚を釣るという方法である。
「どうなってんねん! これ!!」
「も、もう冠来、喋るな!! はら……腹いてえ!」
「見ろよこの釣り方!!!」
「ガアアアアアアアアアアアハッハッハッハッハ!!!!!」
「なんやねんこれ!!」
「やめろおおおおおおしゃべるなあああああああああ!!!! 腹があああああ!!! 腹がアアアアアアハッハッハッハッハッハッハッハアアアアア!!!!!」
真面目にキレた顔で釣糸を持って魚を釣ろうとする冠来を見て、さらに吹き出す私。
流石の淳ちゃんも、この光景には笑いは不可避のようだ。
私も爆笑しながら、餌が入った袋を持って海にちゃぽちゃぽと落とす。
「これも海に落としたらおもろいな」
「さすがにそれは、腹が終わる」
「アハハハハハハ!!!」
ちょっと半笑いの冠来は、フラグを設立した。
想像したら笑けてきた。
しかし、現実はそこまで美味しいフラグは回収されることはなく、笑弥からの「そろそろ焼き肉食べよう!」というラインで、全員がバーベキューの場所に撤収することになった。
時刻は6時半、辺りはすっかり暗くなっていた。
「あー、腹が捩れるところやった……」
「どうしたん?」
笑弥は肉を焼きながら、私に聞く。
私は先ほど起こったことを話すと、笑弥も大爆笑する。
「もうホンマ最悪やで」
「なははは!!」
私も先ほどのことを思い出して、吹き出した。
駄目だ、まじでツボる。
最強過ぎた。
「てか、冠来食えよ肉!」
笑弥は冠来に訴えた。
よくよく考えてみれば、あれだけ冠来は肉を買っていて、そんなに食べていないのだ。
「いや、お腹いっぱいやねん」
「おまふざけんなよ!」
笑いながら、冠来を蹴飛ばす笑弥。
冠来も笑いながら、「あのときは絶対に食べれると思ってん」と弁解をする。
しかし、その大量に冠来が買った肉は割り勘である。
「オメー食べろって!」
私も冠来を取り押さえて、肉を食べさせようとする。
冠来は「いややーお腹いっぱい!!」と笑って抵抗をするので投げ飛ばし、全力で逃げる冠来を追いかけた。
らちがあかないと判断した我々は、仕方がなく、買った肉を焼いて食べ、残った肉はクーラーボックスに入れて、笑弥が持って帰ることになった。
「てか、冠来パンも食べていないやん」
「もうお腹いっぱいや」
腹を抑えて辛そうな表情をする冠来を見て、私は再び冠来を追いかけ回した。
「お前ー!」
「お腹いっぱいいいい!!!」
その光景をみた三人は、ゲラゲラと笑い転げていた。
そして、時刻が7時を回ったころ「そろそろ帰る準備するか!」と笑弥が立ち上がる。
時間をみた我々も同意をして片付けの担当を決めた。
話し合いの結果、冠来と笑弥がU字溝コンクリートやレンガの洗浄、私と淳ちゃん、そっらーが周囲に散らかったゴミの掃除に決まった。
「そしたら、やるかー!」
笑弥がそう言って、冠来と共に鎮火させたU字溝コンクリートとレンガを持って洗い場へと向かう。
そして、我々は散らばったゴミなどをトングで掴んで空っぽになった買い物袋に次々と入れ始める。
「えらい散らかってるな」
「ホンマやな」
「だいたい冠来じゃない?」
淳ちゃんの言葉に私とそっらーが言う。
私達は、スマホ機能にある懐中電灯で周囲を照らしながら、散らかした我々のゴミを回収していく。
ゴミは想像していた以上に散らかっており、五分も経たないうちに、三人のゴミ袋はいっぱいになった。
「これ一旦ごみ捨て場に持っていくか」
「そうやな」
「おん」
私はそう言いながら、ごみ捨て場に向かう。
二人も私の後を追ってきた。
ごみ捨て場の近くの洗い場では、二人がU字溝コンクリートを洗っていた。
「あれ凄いキツそうやな」
「そうやな」
私たちは、手にもっているゴミ袋をごみ捨て場のカートに放り込んだ。
何となく予想ついたが、カートの中は大量のゴミでいっぱいだった。
やはり、我々と同じくバーベキューをしたのだろうと予想できるものばかりだ。
「まだゴミがあるか見てみるか」
「やな」
一生懸命に洗っている二人を見つめながら、我々はゴミ拾いに戻った。
やはりというか、我々がバーベキューをした周囲には、まだまだゴミがたくさんあり、それを袋に詰め込む。
ちょうど周囲のゴミを掃除し終えたところに、笑弥たちも洗い終えたようで、戻ってきた。
「じゃあ、荷物まとめて帰ろうか!」
「うーい」
「せやな」
「あいよー」
「忘れ物ないか?」
みんながそれぞれの荷物、そしてクーラーボックスやレンガ、U字溝コンクリートなどを持って車へと向かった。
現在7時半、我々は楽しいバーベキューを終えて、車で帰路につくことになる。
まず、笑弥の家に向かい、バーベキューに使った物を家に置いた。
笑弥は最後まで全員見送ってから、電車で帰るらしく笑弥も車に乗る。
「なっかなか楽しかったな」
私の言葉に全員が同意する。
少しハプニングもあったけど、このバーベキューは忘れることのない思い出となるだろう。
s駅に到着するまで、車内では本当にくだらない下ネタ話で盛り上がった。
「冠来と竹下があんなことしてたんやろ?」
「するわけないやろ!!」
「竹下……君のケツの穴は、草原を翔け抜けるつむじ風を彷彿とするよ。まぁ、御上手ね!」
私は竹下と冠来、一人二役で演じる。
「お前いらんこと言わんでエエねん!!」
「ギャアアアアアアアアア!!!」
私のいい加減な下ネタ話に痺れを切らしたのか、冠来は私の脇腹を抉るようにこちょこちょをしてきて、私は絶叫に近い笑いをあげる。
「ごめん!!! ごめんんんんんんん!!!!! イギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
私の悲鳴に車内はドッと笑いに包まれた。
「あー、あー、あー、あー」
くすぐりを終えた後の私は、涙目で息を切らしていた。
しかし、そんなことでへこたれない私。
「まぁ、これは私は悪くありませんね」
反省ゼロの言葉に、笑弥、そっらー、淳ちゃんが吹き出す。
私はさらに言葉を続ける。
「冠来が悪い。冠来が、竹下の話をしなければこんなことにならなかったわけよ」
「お前まだ言うか!?」
「ぎぇええええええええへッヘッヘッヘヘヘヘヘヘヘ!!!!!」
再び始まる脇腹を抉るようなくすぐり攻撃。
私は奇妙な悲鳴を上げる。
そんなことをしていると、s駅に到着してしまう。
「た、龍照ついたで」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「あー、もうくたくたや」
私と冠来は両者クタクタで息を切らしまくっていた。
「じゃあ、私はこれでお別れや」
「おう!」
「龍照ありがとうな!」
「またなー!」
「おつかれー!」
全員が手を振って見送る中、私は手を振りながら、駅内へと入る。
さて、帰るか!
時刻はすでに9時を回っており、人の出入りは少なかった。
「(ふぃー、楽しかったな)」
私は財布から定期券を取り出して、改札を抜けて、ホームで電車が来るのを待つ。
待っている間に、私はLINEで母に「いまから帰る」と連絡をして、小説を書き出す。
暫くして、ホーム内に列車が到着するアナウンスが流れ、ベンチに座ってる人々が立ち上がり、黄色の点字タイル付近で待機する。
列車が止まり、扉が開くと人々は一斉に列車に乗り込みだした。
「(またバーベキュー行きたいな。まぁ夏休み下旬で行きそうやな)」
そんなことを思いながら、私は「夏風」をききながら、自分の家へと帰っていった。
続く
まいったな……。
暇だ。
そうだ、今日は春山の家に遊びに行こう。
私は、春山にLINEで遊びに行って良いかと連絡してみた。
OKを頂いたので、私はリュックサックに遊ぶ物をいれて自転車で向かった。