ワンフォーオール…?知らない子ですね 作:悲しいなぁ@silvie
少年は先が見えない程に薄暗く長い通路をひた走っていた。
…広い!!どーなってんだこの地下は!?蟻の巣のかなんかかよ!なんで悪者ってのはこうタケー場所か地下が好きなんだよ!大人しく二階建ての2LDKとかに居ろや馬鹿がよ!
と、心の中でそんな悪態をついていると…ぐらりと足元がよろけた。足がもつれたとか疲労が蓄積されて、とかじゃなくまるで立っている地面が急に不確かな柔らかいモノになり足が沈みこんだかのように。
それまで走っていた事もあり体勢を崩した俺は豪快に顔からブチ転けた。
「イデェア!ンがァァ!!誰だこんちくしょうが!!」
…まぁ誰だとか言ったけどあたりはついてる。地面が心許ないモノになる感覚と同時に身体を左右から引っ張られるような、頭をグルグルと回されるような感覚…恐らくは八斎衆の酒木泥泥の『泥酔』!
「ヒャヒャヒャ!危ねぇなぁ…酔っ払うと真っ直ぐ歩けねぇだろぉ?俺もだよ!!だから道は歩かねぇ!危ねぇからなぁ!」
声の方に目を向けると天井の配管にしがみつき、器用に酒をかっ食らってる男が居た。えぇ、自分も飲むのか…(困惑)
相手を酔わす個性なんだから自分まで酔う必要無くないか?いや、もしかしたら相手に自分の感覚を共有させる個性とか…いや、なら薬とかでもっと徹底的に何も出来ない状態になって共有した方が良いよな…じゃあなんで飲んでんだコイツ…
「アンタ…酔っ払ってて俺に勝つ気かぁ?シラフのが良かったんじゃ…ッ!!」
瞬間、後ろから途轍もない衝撃を食らい吹っ飛んだ。
痛ぇなぁ!そりゃそうか、そりゃ組むわな…一人より複数で来た方が強いものなその個性!
「ウィイイ、誰が一人だってぇ?俺は見ての通り酔ってるからなぁ。お前の相手はよ、そこの乱波に任せるぜぇ!」
乱波と呼ばれた男は酒木の方を見ながら腕を突上げ叫ぶように言う。
「本当か!!ありがとな!お前は良い酔っ払いだ!」やった
「ヒャヒャヒャ、そりゃどうも…でも任せたっても今ので終わりだろうな。」
酒木の言葉に乱波は首を振り答える。その目は鋭く喜悦に歪んでいた。
「いやまだだ!解る!解るぜぇ!強いなお前…なぁ!お前、強いだろ!!」
酒木は乱波の言葉に首を傾げながら少年が吹き飛んでいった方を見る。
いや、後頭部に直撃して見えなくなるまで飛んでって無事な訳が…!?
目線の先にはこちらに向かって走ってくる少年の姿。酒木は急いで個性を発動した。…そう、発動したのだ。
しかし、少年はソレを無視するかのように乱波の数メートル手前で跳躍すると両足を揃えて乱波の顔目掛けて蹴りを入れる。
ソレはプロレスで言うところのドロップキック…しかし、実情は大きく異なる。プロレスのように見た目の派手さを追求し威力に欠けるソレではなく少年の放った蹴りは10メートル弱の助走により十分に加速した80kgの肉体が持つ破壊力を両足の裏という極狭い箇所に集め相手に叩きつける…当たりどころが悪ければ即死すら有り得る破壊力を持つ蹴りであった。
しかし、乱波はその蹴りを見て裂ける程に口元を歪めると少年の足に向って両手で乱打を叩き込んだ。
1発2発と叩き込んだ腕が弾かれるも気にも留めず打ち込む。そして、その乱打が10を超えたところで遂に少年が弾かれたように吹っ飛んだ。しかし、少年は先程のように見えなくなる程遠くではなく乱波の3メートル程前に身を翻し猫のように着地した。
…いや、ふつー殴るかぁ?見えてたんなら避けねぇのかね…
「くぅ〜〜〜!!!お前っ!名前は!?」
乱波は両手を握り締めて何かを堪えるように屈み込むとぶるぶると震えながら叫んだ。
「…はぁ?」
「名前だよ名前!!あんだろ?教えろ!お前みたいな奴には初めて会ったぁ!!名前を聞いておきたい!」
乱波は傍目から見ても一目でわかる程に上機嫌になりながら少年に詰め寄るように尋ねる。
「…変なやっちゃなぁ…緑谷、緑谷出久君だぜ!覚えときな!」
乱波は緑、緑谷…と口元で小さく呟くと大きく口を歪めながら叫ぶ。
「緑谷ぁ!俺は思うんだ!ケンカってのに
「わかるわきゃねぇーだろ…中学生に何聞いてんだこのバカは。」
乱波は少年の言葉も聞かずに走り出した。
「わかるだろ!?お前も…お前からも人殺しの匂いがする!最初のだってそうだ!あんな吹っ飛ぶ程殴ってない!自分から跳んだんだろ!?」
「…
乱波は再び両手による乱打を始める。しかし、少年はその全てを最小限の動きでいなし、捌き、躱していく。
(冗談だろ?…俺の個性だって効いてる筈だ、立ってるのさえやっとの泥酔で…乱波のラッシュを避けてやがる…っ!
クソっ、こいつ…ただのガキじゃねぇ!速く…速く来い活瓶!)
「ハハハ!!凄いな!やっぱりお前は凄く良いぞ!良い奴だ!俺の腕を外に弾いてやがるな!?勢いがあるから無理に戻しゃ外れるだろうな!だから遅れてる!だから隙きを突かれてる!ハハハ!!こんな風に俺の攻撃をどうにかする奴は初めてだぁ!!」
…普通そういうのって思っても口に出すもんじゃねぇだろ…多分彼はクロマニョン人とは別の進化の途を辿ったんだろうな。
しかし、少年の心無い罵倒とは裏腹に乱波は少年の策を看破していた。
乱波の言った通り、少年は乱波の腕の内側に自分の腕を滑らせるように当てる事で乱波の腕を外側に逸らしていた。乱波の『強肩』の個性により尋常ではない加速をしている拳は振り切れば致命的な隙きを晒し、無理に戻せば関節の脱臼が考えられる。故に、乱波は自慢のラッシュの回転速度を著しく落さざるをえなかった。そして、少年の拳は乱波の腕の内側をレールのように滑りながら乱波の腹部や肩部を攻撃していく。そしてそのまま拳を引くのではなく弧を描くように戻す事で乱波の反対側の腕の内側を叩き逸らしていく。
ソレはボクシングのジャブと並ぶ、格闘技における
ソレとは、
地下格闘場で経験を積んだ乱波をして未体験の技術であった。
「確かに凄いが…コレならどうなる!?」
乱波はそう言いながら再び少年へ拳を向ける。そして、少年は…一筋の冷や汗を流しながらスウェイにより躱した。
コイツ…ッ!闘い慣れてやがるッ!!殺し合いがどうのって言うだけあるな!
乱波は通常のラッシュが効果的では無いと悟るとすぐに次の一手を打った。拳撃を放つ際に、腕を限界まで
そう、次の一手…ソレは俗にこう呼ばれる。
「コークスクリューブローかッ…!!」
拳撃の際に限界まで捻った腕の捻りを解放する事で一撃一撃が速く、重く、鋭くなる。更には乱波の強肩の個性により肩までも捻られたソレは通常では考えられない程の上昇率で拳撃を強化していた。
乱波が最初からコレを使わなかったのは打つ際の捻りがラッシュの速度を削ぎ、回転速度が落ちる為…ならば回転速度が落とされている今、使わぬ理由が無かった。
少年はリードブローを実質的に封じらた。捻りにより回転する腕ではリードブローの沿わすような逸らしが効かず、回転により強化された拳撃を戻しの腕では弾ききれないのだ。
故のスウェイ、少年は次の策へ移らざるをえなかった。
(今のも避けるかっ!!本当に…!!なんて良い奴なんだ!)
しかし、連打の速度が落ちたとはいえ一発一発の速度は格段に跳ね上がっている。乱波の拳撃は少しずつ少年に迫っていた。
乱打、乱打、乱打、乱打、乱打、乱打
回避、回避、回避、回避、回避、回避
直撃すれば勝負が決する一撃を振り回す乱波とそれを回避しつつ複数回の打撃を入れるも決定打を持たない緑谷。
先に限界が訪れたのは緑谷だった。
ガクンと緑谷の膝が折れる。頭部を狙っていた乱波の拳は空を切るも、乱波は首を傾げる。
「嘘だろ!?もう限界なのか!!もっと、もっとやろうぜ!!終わらせたくねぇんだよ!!…!!そうだ、個性!酒木ぃ!!まだ使ってんだろ!!早く止めろぉ!」
「止める訳ねぇだろ!バケモノが…やっと効いて来やがったな。
早く仕留めろ乱波ぁ!!」
「おぉー、そうだぁ…こちとら元気イッパイだぜぇ…」
少年は言いつつも足をふらつかせる。重心が定まらず目の焦点もブレ、誰が見ても戦闘不能であった。
「ぐぐぐ…奥で応急処置ぐらい出来る!さっさと治してもっか…ごがっ!!?」
乱波の言葉を遮ったのは
少年は一際大きくふらつくとそのまま身体を回転させ乱波の顔面目掛けて胴回し回転蹴りを叩き込んだ。
「大事なのは嘘に真実を少し混ぜる事だぜ?正直言って本当に足はふらついてんだよ…だから嘘っぽくならなかった。」
「ハ、ハハ…ハハハ!!ハハハハハハ!!!良い!!やっぱりお前は最高だ!!もっとだ!お互いに!どっちかが死ぬまでだ!な!?わかるだろ!!」
…今ので鼻骨砕けただけかよ、バケモンが。
乱波は鼻から止めどなく血を流しながらも喜色満面、少年に向かって走ってくる。
少年はまだ、次の策を思いつかぬままに相対した。
八斎衆…多い、多くない?
コイツまだ治崎と遭遇すらしてないってマジ?
次回以降の予定…というか相談ですが、この感じだと多分夜嵐が雄英に来ます…ので
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やっぱ20人でしょ!(誰かリストラ)
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うるせぇ!21人で何が悪い!!
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それでも奴は士傑に行くのでは?
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AFOがヒロインで何が悪い!!