ワンフォーオール…?知らない子ですね 作:悲しいなぁ@silvie
二人の攻防は明らかにその様相を変化させていた。
乱波は変わらずコークスクリューブローを放つも少年はソレを前後左右に揺れながら、時には崩れるように屈み込む事で回避していく。
「おぉ…っ!お前は…お前はどれだけ俺を喜ばせたら気が済むんだ!?ソレはアレだろ!凄いな!それだけフラフラしといて、まるで軸がブレてない!」
乱波には夢があった。聞けば誰もが鼻で嗤うような夢…幼き日に見た映画、まだ超常が日常に存在しなかった世界での映画。
男がカンフーの達人相手に酒を飲み闘う話…
無論、乱波とて地下格闘場にて数え切れぬ程に闘ってきている…故に知っている。酔拳などというモノはフィクションで酔えば酔うほどに人は弱くなる。三半規管は麻痺し、体幹が崩れ、軸はブレて闘う事すら困難になる。なんの事はない、ただの純然たる結果として乱波はソレを受け入れた。
それでも、ふと思うのだ…あの映画のような、自分に闘う事への憧憬を抱かせたあの拳法と闘いたい。今でも年に数度、酔拳の使い手と死合う夢を見る程に…乱波は焦がれていた。
「御明察…なら解るだろ?俺は酔えば酔うほど強くなるッ!お前、もう終わりだぜ?」
乱波肩動は無神論者である。であるが…それでも乱波は感謝していた。産まれて初めて神の存在を強く意識し、信じてもいなかったソレに感謝し、目の前の少年に敬虔な信徒の祈りにも似た感情を抱いていた。
「ありがとう…この俺を、お前という…お前という男と出逢わせてくれて!
俺は乱波!乱波肩動だ!!緑谷出久、お前の全力を魅せてくれ!」
乱波は両の眼より溢れる涙を気にも留めず叫んだ。その声音はまるで幼い子供が夢を語るような…胸が弾むような声だった。
しかし、喜ぶ乱波とは対照的に少年は追い詰められていた。
無論、少年の言った酔えば酔うほど強くなるというのはポーズである。酔拳とは酔っ払う拳法ではなく、あくまでも酔ったような動きをする拳法である…故に、酔えば酔うほどに弱くなる。
持久戦には活路が無く、短期決戦が狙える相手ではない。
少年の酔拳は苦渋の決断であった。
ボクシングを基調とした乱波相手に低く地面を擦るような攻撃の多い酔拳は一見して好相性に思えるが…少年がここまで酔拳を使用しなかったのには理由があった。
理由は幾つかあれど、特に言うならば不慣れなのだ。少年の元のスタイルから大きく離れた酔拳では全力を出せない。更に、ここまでの戦闘で少年は乱波の戦闘に対する経験値をおおよそ見切っていた。故に、立ち技主体の乱波が足元への対策を怠っているとは思えない。必ず何らかの対策を持っており、自分はソレを知らない…
その対策の内容如何では酔拳と噛み合い、自分に有利に働く可能性もあるが…ソレに賭ける程少年は乱波を低く見ていなかった。
だが、そんな少年が酔拳の使用に踏み切ったのは…もう時間が無かったのだ。
これ以上『泥酔』を喰らうのは拙い…まだ八斎衆はこいつら抜きにしても3人、んで最後に治崎が残ってる。
この泥酔は個性だからモノホンの酒みてぇに二日酔いってはならねぇだろうが、三半規管の揺れはしばらく残る…その状態でクロノに遭いたくねぇ。クロノの個性は掠るだけで一発アウトだ…ふらつく足でやりあうのは避けてぇ。
酔拳だとか酔えば強くなるとかのハッタリで個性を弱めてくれりゃめっけもんだが…期待しねぇ方が良いよなぁ。
だから、これで…次で終わらせる!
少年は決意と共に一際大きく踏み込むと身体を左右に大きく揺らしながら乱波に漸近する。
そして、再び大きく傾いたかと思うと乱波の死角より彼の顎部目掛けて胴回し回転蹴りを狙った。
「ソレはさっき見せたろ…つまんねぇ最後だ。」
才能というモノが、一度見たモノへ瞬時に対応策を思いつきそれを実行に移す事が可能なフィジカルとタクティクスを指す言葉でその才能を以てして天才と凡人を隔てるならば…乱波肩動は前者にあたる。
乱波は大きく傾いた少年の最後に見ていた箇所から自分の顎部を狙っていると当りをつけると同時に先の奇襲を踏まえ、瞬時に少年の位置を補足し今まで一度として見せなかったアッパーカットを少年の頭部に叩き込んだ。
そもそも、乱波の個性は『強肩』でありソレは決して拳撃の威力に直結する
しかし、ボクシングには…運動力学の粋を込めて創られた最新最栄の格闘技には肩を大きく廻すように放つパンチがある。
一つは自身の全体重を相手に叩きつけるように放つジョルトブロー、そしてもう一つが…フックに次いで、ボクシングで最も
弧を描くように放たれたソレは少年の顔面を捉えると少年の回転蹴りの動きすら掻き消し一回転させる。
「なら…コレは見せたかよ!?」
才能というモノが、強敵相手に瞬時にして策を巡らせ相手を自分の張った罠へ誘い込み嵌める知略と技術を指す言葉でその才能を以てして天才と凡人を隔てるならば…緑谷出久もまた前者にあたる。
緑谷は乱波のアッパーカットを受けた瞬間に残していた軸足で強く地面を蹴りその力の流れに逆らわず自分から回転する事により自身の力に
緑谷の策とは、自らの胴回し回転蹴りを乱波が看破し即座に反撃するであろう事を見越した上でのカウンターであった。
カウンターというのは相手の勢いが加算される性質上威力が上がり易いうえに、攻めている相手の意識の外から攻撃を加える為に非常に相手の意識を刈り取る率が高い。
しかし、もしも乱波が胴回し回転蹴りを予測出来ずに喰らっていた場合…先の焼き直しとなり少年は一転窮地に追い込まれていただろう。少年は賭けに勝った。乱波肩動という男をこの場の誰よりも評価したから…一度見ただけの自分の技をそれでも看破し、あまつさえ反撃すらしてくると読み切ったから。
「ギッ!?グオオォォォ!!!」
才能というモノが、自らが全く予期していなかった状況に陥っても一瞬にして最善手を選び取る勝利への執念と常人では辿り着き得ない超常的な打たれ強さ、そしてそれ等を支える強固なメンタルを指す言葉でその才能を以てして天才と凡人を隔てるならば…乱波肩動は、否
乱波は顎部に尋常ではない衝撃を喰らいながらも緑谷の着地に合わせコークスクリューブローを顔に叩き込んだ。
恐るべきはその執念。乱波は先のサマーソルトにて下顎骨に罅が入り脳震盪を起こしながらも常のそれとまるで変わらぬ威力で打ち込んだ。
そして、緑谷はその拳撃が着地に意識を割いた己では避けれぬと悟ると
緑谷は人体における最硬部位である頭部にて乱波の拳撃を受けた。
恐るべきはその判断力。緑谷は乱波の拳撃を知覚し、自身の策の失敗も乱波の超常的なタフネスもそれ等全てを思考から除き自身が今とるべき行動を…勝利への最善手を掴み取った。
この一瞬の攻防…時間にして僅か5秒程の間に乱波は下顎骨に罅と
緑谷は噛み締めていた奥歯が砕け、頭蓋骨の一部が線状骨折を起こしていた。
両者共に通常ならば戦闘不能であり、倒れ伏してもなんら不思議ではない負傷であった。
しかし、二人はどちらとも無しに…
「フフフ…」
「ハハハ…」
「「ハハハハハハハハハ!!!!」」
狂ったように笑いだした。
「最高すぎるだろ…乱波ぁぁ!!」
緑谷出久は震えながら叫ぶ。緑谷出久、異世界へ来て15年…初めて出逢った好敵手への歓喜であった。
「緑谷…緑谷出久!!俺もだ!!俺も!今この瞬間が!たまらなく愛おしい!!」
乱波もまた叫ぶ。涙を流しながら…痛みでも苦痛でもなく、自らが狂う程に渇望した見果てぬ強者に対しての狂喜からの涙であった。
二人の笑いが響き渡る…まるで何かを、互いが互いを誘うような…蜜月に至った恋人同士のような嬌笑が。
「はははは」
そして、そこへ新たな笑い声が加わった。
「活瓶ぇ!やっと来たのか!!速くそこのガキを殺せぇ!!」
活瓶力也の不幸は、相手を子供と侮った事。緑谷出久をたかが子供と侮りブースト薬無しにここまで来た活瓶は触れなければ個性が使えない。
活瓶力也の不幸は、緑谷出久が相手だった事。相手に触られずに勝つ少年のスタイルは活瓶と致命的に噛み合わなかった。
活瓶力也の
…昔から、人の恋路を邪魔する者の末路は変わらない。
「勝負のぉぉぉ!!!」
「ケンカのぉぉぉ!!!」
「「邪魔だぁぁぁ!!!」」
活瓶力也は乱波と緑谷の全力のストレートを喰らい、ピンボールのように来た道を跳ねて行った。
誰の目にももう立ち上がる事は無いと一目でわかった。
「乱波ぁ!?テメェ自分がなにしてんのか解ってんのかぁ!?裏切る気かぁ!!」
「…そうだぜ乱波、仲間じゃねぇのか?」
「はっ、仲間だぁ?勘違いすんな!俺はオバホとやる為に此処に居るだけだ!お前らなんか
そう言いながら乱波は肩を廻す。その目には緑谷出久…己に無限の未知を味わわせてくれる極上の想い人しか映って居なかった。
「良いねぇ!!なら…最終ラウンドだ!!」
少年は吠える。己の全てを懸けるに足る相手だと認識して。
少年の頭にはもう、次が消えていた。
乱波戦3話にまたがるってマジ…?
次回以降の予定…というか相談ですが、この感じだと多分夜嵐が雄英に来ます…ので
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やっぱ20人でしょ!(誰かリストラ)
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うるせぇ!21人で何が悪い!!
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それでも奴は士傑に行くのでは?
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AFOがヒロインで何が悪い!!