ワンフォーオール…?知らない子ですね   作:悲しいなぁ@silvie

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ハイエンド…?知らない子ですね

「病人?なんのこったよ…俺は産まれてこの方風邪もひいたことねぇアルティメット健康優良児だぜ?」

 

「自分の行動の異常さに気付きもして無いのか…?だからお前等は病人なんだ…英雄症候群の病人共ッ…!」

 

(しかし…このガキ、構えが素人丸出しだな。大方強力な個性に胡座をかいてロクに鍛錬も積んでいない…こんなガキに鉄砲玉八斎衆(あいつら)がやられるとは、本当に嫌になる。)

…と、治崎は冷静に分析する。いくら怒ろうと、いくら苛立とうと、いくら予想外であろうとも治崎は決して取り乱さない。

(相手はガキといえど鉄砲玉八斎衆を一人で相手取りここまで来た戦力を持つ…一体何の個性だ?いや、そもそも一人なのか?報告はガキ一人のみ、だったが…足止めもマトモに出来ない奴らだ、報告も鵜呑みにすべきでは無いな。)

ちらと、治崎は後ろに控えた部下に目配せする。

 

「貴様…一人か?そもそもなんの目的があって死穢八斎會(ウチ)に来たというのだ?」

 

鉄砲玉八斎衆が一人、音本真…その個性は『真実吐き』。

音本の質問には真実しか答えられない。

音本は治崎からの目配せから彼の欲する情報を一瞬で把握し問い掛ける。

 

「一人だよ!!目的ぃ!?んなの決まってらぁ!我こそは愛の戦士!!ここにネグレクトを行うバカが居ると聞いて制裁を加えにきたぁぁぁ!!!

…?口が勝手に…まぁ、そういう事よ!覚悟しろよ治崎廻!お前に家族愛の素晴らしさを嫌という程に教えてやるぜぇぇ!!」

 

その少年の言葉に音本は自身の聞き間違いを疑い、治崎は音本が個性を使わなかったのかを疑い振り向くもその音本の顔を見て…少年の正気を疑った。

(このガキ…ッ!正気か!?個性破壊弾の情報を嗅ぎ付けて…の方が万倍理解出来る。ネグレクト、つまりコイツは…見たこともない壊理を助ける為に来たってのか!?家族愛だのなんだの…病気だ!!コイツは、救いようもなく狂ってる…)

治崎は自身の身体に蕁麻疹が出るのを感じた。今までに出逢って来た中でもトップクラスに狂った…自らには欠片も理解出来ぬ思考をもつ少年に対して、肉体が拒絶反応を起こしているのだ。

(殺さなければ…コイツは、治らない。ここまで狂った奴は個性(びょうき)が消えようと狂ったままだ。故に、殺さなければ…)

と、治崎が明確な殺意を以て少年へと向き直る…しかし、そこには誰も居ない。

そして…

 

「御大層な自信よなぁ…勝負の最中に目線切るバカは初めて見たぜ。」

 

自身の懐に入ってきていた少年の声を聴き…その直後、視界が真っ白に染まる程の激痛を味わった。

 


 

「ハァ…ハァ…クソッ!」

 

爆豪勝己は苛立っていた。自身が唯一認めた親友である緑谷出久が自身に声も掛けずに一人で何処かに行っている現状にも、彼を見つけ出そうとGPSの位置情報を頼りに進む道中で轟燈矢の移動速度に全く追い付けていない事実にも…爆豪勝己は苛立っていた。

緑谷出久という男は、常に自分の先を歩いていた。自分が誰よりも早く文字の読み書きが出来たと自慢すれば、緑谷出久は新聞片手に凄いなと褒めてくる…そんな男だった。

それまでは…運動でも勉強でも自分に勝てる奴は、誰一人として居なかった。自分は優秀で、周りは自分より劣っていて…だから、そんな奴等と一緒に居る必要は無かった。

自分より遥かに劣る取り巻き共…自分ではなく、自分のする事しか見ない、そんな奴等となんか友達になれない、なれっこない。爆豪勝己の周りには常に人が集まれど、少年の友達と呼べる人間は誰一人として居なかった。

しかし…緑谷出久は、緑谷出久だけは違った。

初めて、自身よりも優れた人間に出逢った。初めて、自身を…爆豪勝己を見てくれる人間に出逢った。初めて、自分を心の底から案じて叱ってくれる人間に出逢った。…初めての友達に出逢った。

そして、孤独だった少年は無二の友を得た。

…だから、心配なのだ。彼は、少年が心配しようと関係なく危険な事へ首を突っ込むし…彼の周りには、余りにも危険が多すぎる。

故に、少年は鍛えた。研鑽し、鍛錬し、兎に角力を求めた…大切な友を失わない為に。…大切な友が自分の為に死なないように。

しかし、目の前の現実はその少年の今までの血の滲むような努力を嘲笑うようであった。

 

「あんまし飛ばし過ぎんなよ!出久とボウリング行く前にバテちまうぜ。」

 

サイドキック…轟燈矢は自身が磨きぬいた個性による移動法、爆速ターボを遥かに上回る速度で民家やビルの上を走り、跳び移っていた。

(クソッ!!個性も使わずにコレかよ…!これが、これが今の俺とトップ層のヒーローとの差か…ッ!)

爆豪勝己は自身の努力や研鑽を軽々と凌駕する轟燈矢の実力に苛立ち、幼少より鍛錬を積んでおきながら個性も使わぬ男に歯牙にもかけられず、あまつさえ心配までされている自身の現状に苛立っていた。

しかし、その顔に浮かぶは獰猛な猛禽類の如き笑みであった。

(そうだ…俺が目指したのは、俺が辿り着くべきところは!燈矢(コレ)よりももっと上!俺が憧れたのはヒーローの頂上(オールマイト)だ!!超えてやる…!コイツも、オールマイトだって!!皆超えてやる、俺とイズクで!)

爆豪勝己は苛立ちとソレを遥かに上回る高揚を胸に燈矢の後ろを喰らい付くように走り続ける。

 

「ハァ、ハァ…二人共速ぇな、追いつけねぇ…。」

 

爆豪勝己と轟燈矢の十数メートル後方にて、轟焦凍は息を切らしながら二人を見る。

(やっぱ速いな、オヤジが前に言ってたっけ…燈矢(兄貴)()()()使()()()()()()()()()()()って。)

焦凍は酒が入り若干目が据わった父、エンデヴァーが誇らしげに…されど少し寂し気に語っていた姿を思い出しながら兄、轟燈矢を見る。

兄がヒーローとして活躍する姿は日常的に見れど、実際にこうして個性を使って並走しようとはした事が無かった。そして、こうしてみてより実感する。父と母から相反する個性を受け継ぎ、No.2ヒーローの肩書を持つ父から最高傑作とまで言われた(その最高傑作という言葉に「子供は一人一人が最高傑作ダルゥゥオ!?」と出久がキレてオヤジの口髭が引き抜かれたりしたが…)自分はしかし、この兄を超える事など出来ないのではないかと。

別に、それに対して落胆する訳でもないし寧ろ兄への尊敬やこんな兄を持てたことへの誇らしさまである。…が、少し…ほんの少しだけ、悔しくもある。両親や兄弟からはさっぱりとしていて闘争心に欠けると評される焦凍ではあったが、自身と同い年でありながら必死に喰らいつく爆豪の姿を見て自分では無理だと諦める程に腐ってはいなかった。

(押し留めて…一気に解放するイメージ!)

焦凍は父の言葉を反芻しながら自身の個性により更に加速する。

 

「ハァ…コレって、もしかしなくても後で怒られるよなぁ。」

 

轟燈矢は二人の前を走りながらため息をつく。

(いや、青少年の友情青春物語にはこんな一幕も有っていいよな!とか思ってたけど、さぁ…コレって個性無断使用じゃん。しかも俺が急ごうぜとか言ったからだよなぁ…ハァ、また父さんにどやされる。)

燈矢は二人を焚き付け個性を使わせた事で自身に降りかかる罰則に思いを馳せながらビルからビルへと跳び移る。その速度は下を走る自動車を優に超えていた。

(てか…これで出久が普通に遊びに出てただけとかだとマジで俺馬鹿みたいだよなぁ…)

いっそ事件に首を突っ込んでくれていた方が個性無断使用の件を有耶無耶に出来るのになぁ…とヒーローとしてどうかという思いを抱く燈矢。

しかし、目的地…爆豪から借りたGPSの発信源のすぐ近くまで来た頃には真逆の思いを抱くに至った。

(此処って…!!?死穢八斎會っ!父さんが言ってた要注意(ヴィラン)団体の本部じゃねぇか!?いやいやいや…なんてとこに居んだよ!)

燈矢はほぼほぼ厄介事が確定した事に頬を引き攣らせながら自身の恩人にして歳の離れた友人へ怨みと心配の入り混じった感情を抱く。

そして…自身の頭上から向けられた僅かな、しかし強大な殺気に嘆息し呟く。

 

「二人共、ここでストップ。…何人居るか判るか?」

 

息を切らしながら止まる爆豪といつの間にかそのすぐ後ろまで来ていた弟。二人は息を整えると

 

「二人だ!」

「二人…か?」

 

と声を揃える。

 

「…別に落ち込まなくていいぜ、他の二人に比べて明らかに気配を消すのに慣れてるのがもう一人居る。」

 

燈矢は殺気を放ってきた奴は別として、かなりの精度で気配を消していた二人目を少年達が察知していた事実に舌を巻く。

二人は落ち込んでいるようだが、自分があのぐらいの歳の頃に同じように察知しろと言われても恐らく一人だと自信満々で答えていたと思う。

 

「そこのお前等!何者でなんの為に其処に居る、答えられるなら答えて貰うぜ。」

 

燈矢は先の返礼に特大の敵意を向けて睨めつける。

 

「クくクッ!!今日ハ良いヒだ!ガキのお守りダって聞いた時には面倒で仕方なカったが…こんな上物に出クワスとはなァ!」

 

三人の内の一人、フードを被ったような風体の男は燈矢に向かい叫ぶ。好戦的な笑みと血走った目は今にも襲い掛かって来るようであった。

 

「フード!キサマ…態と殺気を放ったな?創造主サマからは決して失敗は許されんと念を押された筈だ!」

 

フードと呼ばれた男に食って掛かるボディラインの浮き出た格好の女性。

そして、その後ろで腕を組みながら静観する象のような鼻を持った男…

(勘弁してくれよ…全員かなり手強いな。)

燈矢は向けられる殺気と敵意…そして自身が向けた敵意を物ともしない様子に冷や汗を流しながら後ろを見る。

(正直、こいつ等相手に二人を守りきれるか怪しいとこだな…クソ、こんな事ならスーツ着てくんだったか!?)

燈矢はこの日オフという事もありヒーロースーツを携帯せずに出ていた。自身の戦闘スタイル上、全力を出すにはスーツによる補助が必要不可欠ではあったが並のヴィラン相手ならばスーツを使わずとも圧倒できる自信があった。その自信が今回は悪い方へと転んだ。

個性を制限された状況下では例えこの三人を打倒しえたとしても後ろの二人を守りきれないだろう。燈矢は苦虫を噛み潰したような顔で後ろの二人を見やる。

二人のヤル気に満ち溢れた顔を。

 

「………ハァ、いいか二人共!あくまで、あくまでも自衛だからな!?俺一人だと守り切れないから…あくまでお前等の安全の為に、ヒーロートーヤの名に於いて、二人に個性使用と戦闘の許可を与える!」

 

「ブッ殺す!!」

「わかった!」

 

…解ってねぇよなぁ。と、燈矢は頭を抱えたい衝動に駆られながらも三人に、ハイエンドと呼ばれる脳無の完成形達に向き直った。

 

次回以降の予定…というか相談ですが、この感じだと多分夜嵐が雄英に来ます…ので

  • やっぱ20人でしょ!(誰かリストラ)
  • うるせぇ!21人で何が悪い!!
  • それでも奴は士傑に行くのでは?
  • AFOがヒロインで何が悪い!!
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