ワンフォーオール…?知らない子ですね   作:悲しいなぁ@silvie

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遅くなりました
地球防衛軍3をやってました言い訳はしません


新技…?知らない子ですね

爆豪勝己は目の前のフードと呼ばれた男に向かって自身の繰り出せる最大火力にて奇襲をかける。

ソレは、緑谷出久との鍛錬により編み出した技…僅かな衝撃で炸裂する己の個性の要である汗を両の掌にて貯め、握り込む。その量と握り込む動作により失敗すれば優に両手が消し飛ぶというリスクを抱えながらも、爆豪は一切の躊躇もなくソレの使用に踏み切った。

(このクソフード野郎共、あのサイドキックが守り切れねぇって言う以上は強いんだろう…なら、確かめてやる!俺の…俺とイズクの力がどれだけ通用するかなぁ!!)

爆豪は両腕をあらん限りに後ろへ引くと狙いを定め、一気に振り抜いた。

 

「APショットガン!!」

 

掌より放たれた汗は空気との摩擦により炸裂し、名前の通り散弾銃のようにフードの肉体へ数百の炸裂弾と化し着弾した。

炸裂により加速したそれ等はフードの肉体を軽々と貫き、更に体内にて炸裂する。爆豪の攻撃は瞬時にフードの肉体の約8割を消し飛ばした。

轟焦凍は考える。兄燈矢の言葉を反芻する。

(兄貴でも俺等を守り切れない…こいつらはそんだけ強いんだな。そんで、俺等に戦闘許可…ってことは、兄貴の援護をしろって事だよな。) 

焦凍は兄の想いと正反対の答えを導き出すと腰を落とし、自分に出せる最高出力を…父と兄に協力して貰い編み出した轟焦凍にしか出来ない必殺技を放つ。

 

穿天玲瓏(がてんれいろう)!!」

 

瞬間、焦凍の前方に居た象のような鼻を持つ男は突如として顕れた天を衝くような()()()()()()()氷塊に呑まれる。

晴天の下ではその存在を視認する事も困難な程に透き通った氷を見て焦凍は思い出す。

 

 


 

「おお!!何という出力だ!流石は俺と冷の息子だ!」

 

初めて右の…氷の個性を使った時に、彼の父轟炎司は大層喜んだ。しかし、それは正史での仄暗い感情と野心の入り混じったものとは違い子供の成長を心の底から祝す父親としての笑顔であったし、勢い余って抱き締めてきた時に顔を突き刺さす髭に少年が眉根を顰めたのも無理からぬ事であった。

少年は、轟焦凍はヒーローに成りたいと思った。何時からと問われれば答えに困る程に自然と…偉大なる父と優しく頼りになる兄の姿を見るうちに自然とそう思った。

少年は恵まれていた。一流の師が居たし、個性も強力で本人にも才能があった。

故に、自然と父と兄に稽古をつけて貰っていた。

しかし…

 

「でも、これじゃ壁になって視界が潰れるな…魅せ技には良いんだろうけど実戦には不向きかもな。」

 

「ぬぅぅ…氷の個性は俺達には未知の領域だからな、教えたくとも教えれん…すまんな焦凍。」

 

左…炎の扱いにかけては超一流の二人にも右側の扱いには助言すら出来なかった。

かと言って彼の母、轟冷は穏やかな気性で個性を使う事も滅多に無いような人だった。夏場になれば偶に氷を作りスイカを冷やしたりする程度の、本当に製氷機代わり程度の使い方ならば教えてくれたが…少年の思う使い方ではなかった。

 

「…て事なんだが、どうにかならねぇか?」

 

「……なんで俺に聞きに来たの?知ってる?俺って氷の個性持ちでもなけりゃそもそも個性持ちでも無いからね?ただのツチノコハンターだよ?」

 

焦凍が氷の個性について悩む姿を見かねた兄燈矢は自身の友人である緑谷出久に相談してはどうかと持ち掛けた。

信頼する兄の助言に焦凍はその日の内に緑谷家に向かい相談した。

 

「いや、それは知ってる…悪ぃやっぱ迷惑だったか?」

 

「迷惑って訳じゃないけどね…あんまし良いアドバイスなんて出来ねぇよ?」

 

やっぱりそうか…と肩を落とした焦凍は兄の言葉を思い出す。

 

「ああ、そうそう…出久に相談する時は()()()()()()()()()()()()()()()()()って言うと良いぜ。」

 

焦凍は一縷の望みを懸けて呟く。

 

「そうか…こっそり練習して父さんと母さんを喜ばせたかったんだが、駄目か…」

 

駄目じゃない!!

親御さんを喜ばせようと思う気持ちの…その行動の何が駄目なもんかぁ!!

焦凍君…いやショー君!!君のその熱き家族愛に心を射たれた!!是非とも俺に協力させてくれ!」

 

緑谷出久は先の数百倍の熱意をもって焦凍の手を掴んで来たのだった。

 

「そもそも、これだけの氷が出せるって事は空気中の水分がどうのとか体内の水分がーとかじゃなさそうだよなぁ…どっから持ってきてんだ?その氷。」

 

まずはどんなもんか見せてくれ!と緑谷は焦凍と共に行きつけの山まで来ていた。

そして問題の技…穿天氷壁を見せたところ、緑谷は自分でも考えた事のない質問をしてきた。

 

「どっから…?悪ぃ考えた事もねぇ…」

 

「んー…氷出した後に喉渇いたりする?それか周りの空気が乾燥したり…周り囲んでたバケツの水は減ってねぇから近場の水凍らせてるのでもねぇよな…」ブツブツ

 

「どっちもねぇな…悪ぃ。」

 

「んー?別に責めてんじゃねぇんだぜ。

まぁ、アレだ。個性ってのは偶に物理法則に真っ向から喧嘩売ってるやつがあったりすっから…ショー君のもそうなのかもな。

てか、それを言うならそもそも炎司の炎だってどっから熱持ってきてんだ…?いや、そもそも可燃体がねぇのになんで火が出んだよ…口元のは髭が燃えてんだろうけど。…いや、ならなんで燃え尽きねぇんだ?ロウソクみてぇにちびちび燃えてんのか…なら長時間個性使うとあいつはお手軽脱毛出来るのか…?」ブツブツ

 

焦凍との会話もそっちのけで思考の海に浸る緑谷はブツブツと呟きながら座り込む。

焦凍はこんな考え方もあるんだな…と感心してつつも兄燈矢が言った色んな意味で年齢不相応という言葉の意味を実感していた。

 

「…んー、わがんに゛ゃい!!

多分だけどショーちゃんの個性って低温にする個性とかじゃなくあくまでも()()()()()()なんだなぁってカンジ?」

 

「おう…でも、氷がどっから来てるか解ったらどうにかなん…のか?」

 

さらっとちゃん呼びに変化していたがスルーして尋ねる。どうしても氷の出どころと自身の技の改良とが結びつかなかったから。

 

「そらなるよ。

いいかいショーちゃん、今の穿天…牙突?…ゼロスタイルの弱点は…「穿天氷壁」そう!ガトチュゼロスタイルの弱点はその大きさと乱反射やらで視界が潰れる事だろ?

なら解決策として真っ先に出るのは…一つ、氷の透明度を上げて視界を遮らないようにする。二つ、相手の視界も塞いでる訳だからそれを活用する。ってとこだ。

二つ目なら正直個性訓練より戦闘訓練のが必要だけど…一朝一夕じゃ身につかんだろうな。自分と相手の二つの視界を管理しながら闘うってのは案外難しいもんでな…だから一つ目の方を考えてたんだ。」

 

「氷の透明度…そもそも透明な氷ってどうやって作んだ…?」

 

「んー、いろいろあっけど…ざっくり言うと沸騰させて不純物飛ばすかゆっくり凍らせて気泡とか抜くかだな。

詳しく知りたい良い子の皆はグーグル先生に訊いてね!」

 

「ゆっくり…!じゃあ無理なのか…?」  

 

ショックを受けた顔で固まる焦凍にショックを受ける緑谷。

 

「もう一個の方を聞いて無かったんか!?…要は氷の出どころさえはっきりすりゃあ普通の氷作る要領で透明になんねぇかと思ったんだけど、イマイチピンと来ねぇかな?」

 

緑谷の問に首を捻りつつも手を突きだす焦凍。

 

「いや、たぶん解った!…と思う。悪ぃ、一旦帰る。オヤジと兄貴に相談してみる。」

 

と、言い切るや否や駆け出した焦凍を見て緑谷は微笑む。

 

「いやぁ…青春しとりますなぁ。親孝行頑張れよ!」

 

 


 

その後、緑谷から話を聞いて浮かんだイメージを二人に話し足掛け半年がかりでようやく完成したこの穿天玲瓏は左の炎で体内を熱しながらそれと同時に右で氷を作り出すという荒業…轟焦凍にしか出来ない方法にて完成した。

そして、この過程にて思わぬ副産物があった。

炎と氷を併用すると、なぜか氷の出が速くなったのだ。何故かと緑谷に問うと

 

「俺は夏休み子ども科学電話相談じゃないぜ?

んー、ムペンバ効果って奴じゃない?水って常温より熱湯のが早く氷になったりするらしいぜ?なんでかは知らんけど。」

 

との事だった。…焦凍はそれらの思い出を振り返りながら目の前の氷を見る。

(…ようやくここまで来たんだな。兄貴と並ぶにはまだ遠いけど、それでもこのまま進んで行こう。いつか、みんなで並んでヒーローやんのも悪くねぇ。)

 

「その氷…結構硬ぇから諦めてくれ。暴れると身体ごと割れるぜ。」

 

轟燈矢は仲間二人が戦闘不能になったにも関わらず微動だにしない女に意識を向けていた。

(…妙だな、動揺してないどころか意識にも入ってない。訓練されてるとかそういう類の反応でもない…まるで()()()()()()()()()みてぇな感じだ。)

燈矢は確実に致命傷を与えた爆豪や一歩間違えれば即死の大技を問答無用で放った弟に対して言いたい事が山程あったし、その後の処理にかかる時間や戦闘を許可した自分への罰則等を全て胸にしまって考える。…若干涙目ではあったが。

 

「いいのかよ、お仲間二人はヒーローの卵二人にヤラレちまったぜ?」

 

「…そうだな確かにその通りだ。

いつまで遊んでいる!相手は強敵、全力で潰すぞ。」

 

その声に、頭部と肩部の一部しか残存していなかったフードは目を見開き自らの個性にて上空へ飛び上がると瞬く間に全身を再生させた。

 

「クカカ!!お前!ただノガキかと思エば、お前も強イな!?

うれシイ誤算だ!!」

 

その声に、全身を氷漬けにされていた男…識別名ゾウは異様に発達した腕部の筋力を以て、()()()()()()()氷を砕く。

けたたましい轟音と共に崩れる氷壁の中でただ一つだけ、ゾウの肉体だけがまるで逆再生の如く修復されていった。

 

「強キ者…我ラが糧とナレ。」

 

「…成程な、再生の個性か。結構レアな個性の筈なんだがな…お前等はアレか?再生個性持ちサークルの御一行様とかだったかな…だとしたら謝るが、物騒な事も言ってたし…」

 

燈矢が言い切るのを待てぬとばかりにフードは個性により伸ばした腕をラリアットのように燈矢の首目掛けて振り抜く。直撃すればビルとてバターのように切り裂く膂力でもって放たれたソレは差詰ギロチンとも言えるものであった…あったが。

 

「人の話は最後まで聞けよな…まぁ、これでヒーローへの攻撃による正当防衛が成立した訳だ。

俺の休日を潰した罪はでかいぜ?」

 

轟燈矢は()()()()()()()()()()()()()()()()そう言った。

轟燈矢の強さを語る上で、先ずもって話さねばならぬ事として…その血の滲むような、否もはや地獄のようなと形容すべき特訓の日々を挙げるべきであろう。

轟燈矢は父である轟炎司の個性『ヘルフレイム』を受け継いだ。父よりも高温で広範囲で高出力な個性…しかし、それと同時に母の体質をも受け継いだ。氷の個性を持つ母は暑さに弱く夏場は日傘が手放せないような人で、燈矢もまたその体質を受け継ぎ()()()()()()()()()()炎に、火に、熱に、熱さに、暑さに耐性の無い身体に育った。

幼い頃には、見当違いにも母を憎んだものであった。

幼い頃には、見当違いにも父に見放されたと思ったものであった。

幼い頃…否、()()()()()()()()()()()そう思い続けていた。我ながら恥ずかしく、思い出すだけでも叫びだしそうになる程に幼稚で身勝手な考え…しかし、あの頃の自分にとっては絶対的で絶望的だった考えだった。時折思うのだ、あの少年と出逢っていなければ自分はどうなっていたのだろうと。恐らくは今のように笑ってヒーローをやっていないだろう。もしかしたら未だに父さんとも母さんとも仲違いしていたかもしれない。…なんなら個性の特訓中に焼け死んでたかもな…いや、流石にそれは無いか。

…ともかく、自分は轟燈矢は緑谷出久に救われたのだ。本人に言うとこっ恥ずかしいからやめろと言われるがそれが事実なのだ。

少年の言葉に…あの初対面の日から数日後のあの山での言葉に救われたのだ。

 

「燈矢タン!また特訓かい?精が出ますなぁ。」

 

「出久君!うん…それなんだけど…」

 

俺は出久にその時の思いも想いもなにもかも全部吐き出した。あの日に言わなかった個性の事、ヒーローに成りたいのにそれを認めない父の事、自分の個性を阻む母の体質の事。

 

「馬鹿かテメェ!!親御さんを!…いや炎司は良いか。

冷さんを悪く言うんじゃねぇ!!」

 

と、思い切り顔をぶん殴られた。…なんなら吹っ飛んでうずくまって居たところに馬乗りになられて追撃された。

 

「痛ぇか!?痛ぇだろうなぁ!!なんで痛ぇと思う!?テメェが生きてっからだよ!!テメェが!!冷さんに命懸けで産んで貰って!!ちょっと目ぇ離したらすぐ死ぬベイビーの時も!!ワガママばっかでクソ生意気なガキの時も!!ずっと育てて貰ってきたからだろうがよ!!」

 

…正直めちゃくちゃ良いこと言ってんだけど、この頃の俺はこの時点で気を失いかけてんだよなぁ。話しながら顔を殴るんじゃないよ。

 

「暑がりぃ!?体質ぅ!?上等だよ!!それだってテメェの立派な個性だろうが!!親から貰った個性にケチつけて勝手に腐ってんじゃねぇゲロカスナメクジがぁ!!」

 

…なんか思い出すと割と酷い事言われてんだよなぁ。まぁ、俺も悪いよ?悪いけどそこまで言われる程か?

と、こういうやり取りがあって…俺はそこから変わったんだ。

轟燈矢はそれから、毎日必ず日に3時間の鍛錬を欠かさなかった。しかし、それはそれまでの己の身体を焼くようなそれではなく自身の裡で弱い火を燻らせるような鍛錬であった。

登山者が高山病にならぬよう、休息を挟みながら山を登るように…F1カーがエンジンを損傷せぬよう暖機運転をするように。

そして、徐々に火を大きくしていく。初めは小さい火でも3時間後には汗だくで倒れていたが、一年が過ぎた頃には火は大きくなり汗の量が減った。

ガラス細工の職人が長い時を炎と向き合ううちに手の皮が分厚くなるように…轟燈矢の肉体は炎と向き合い、適応していった。

そして、2年が過ぎた頃には遂に炎を操るに至った。そして、地獄の日々が始まった。

緑谷出久が燈矢に課した鍛錬、それはただの一言。

曰く「死ぬ寸前まで炎を出せ」のみであった。

それから燈矢は日に3時間毎日山で緑谷出久と共に鍛錬を積んだ。それまでの鍛錬で自身が焼ける事はなかったが、体内に溜まるあまりの熱に気を失う日が続いた。傍らに常に緑谷出久がおり、有事の際には救命するという安全策はあっても燈矢はこの鍛錬にて都合8回の心停止と23回の呼吸停止を味わった。

半ば拷問とも言える鍛錬が半年を過ぎた頃、燈矢の肉体に変化の兆しが顕れた。高校での体力テストで測った50メートル走のタイムが5秒を切っていたのだ。

それは、筋肉が損傷し修復される際に起こる超回復に酷似した現象であった。繰り返し個性による熱の蓄積と失神を繰り返していた燈矢の肉体は生命の危機を感じ取りその過酷な鍛錬(かんきょう)に適応する為に肉体を創り変えたのだ。

そこから、燈矢の肉体は進化とも言える速度で変貌していった。

今では()()()()()()()100メートルを5秒フラットで駆け抜ける俊足と炎を出し続けても問題ないとある体質を手に入れた。

 

「父さんもそこの二人も勘違いしてるみてぇだから言っとくが…流石に俺でも個性無しでこんなに速い訳でも強い訳でも無いぜ?

ずっと使ってたんだ…外にじゃなくて裡にだけどな。」

 

燈矢はある時から個性を使う事により自身の身体能力が向上している事に気づいた。そもそも、筋肉のポテンシャルを引き出す上で熱の重要性はもはや語るまでもない。

アスリート達の行うウォームアップに代表されるように、本来熱とは最善のパフォーマンスに必須のものであった。

しかし、父である炎司がそうであったように炎の個性により肉体に蓄積される熱の量は本来ならばプラスとなるものが逆に身体能力の低下を引き起こす程のものであった。

しかし、長年の鍛錬により進化した燈矢の肉体は生半可な温度ではウォームアップにすらならなかった。

いつしか燈矢は、炎を使えば使う程に()()()()肉体を手に入れた。

 

「どうした?速く掛かって来いよ…俺が怖いのか。」

 

トップギア時には、プロヒーロー最速とまで呼ばれる男…轟燈矢は底冷えするような笑みと共に言い放った。

次回以降の予定…というか相談ですが、この感じだと多分夜嵐が雄英に来ます…ので

  • やっぱ20人でしょ!(誰かリストラ)
  • うるせぇ!21人で何が悪い!!
  • それでも奴は士傑に行くのでは?
  • AFOがヒロインで何が悪い!!

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