ワンフォーオール…?知らない子ですね   作:悲しいなぁ@silvie

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前回(と言っても番外編なので2話ですが)に少し悪戯を仕掛けていたのですが誰にも気付かれ無かったようで少し寂しく思います。
悪戯を仕掛けておいてバレなければそれはそれで哀しい…哀しくない?
あと、漸く残り2〜3話ぐらいで修行編が終わりそうです。


オーバーホール…?知った事か

壊理には、その光景を見届ける勇気も強さも無かった。

ただ、大きな音と悲鳴のようなものが聴こえたから気になって…もしかしたら誰かが酷い目に遭っているのではと思って…否、もしかしたら()()()()()()()()()()()()()()のではと心臓を高鳴らせて恐る恐る確認しに来たのだ。

その行為を責める事などすべきではないだろう。

年端も行かぬ、まだ義務教育すら受けていない子供が親に捨てられ拾われた先でも保護者に身体を切り取られては個性破壊弾(人殺しの道具)にされる日々。

少女が壊れなかったのは幼さ故の無知か?

少女が狂わなかったのは無垢さ故の妙か?

それとも他の何かだったのかも知れない…しかし、少女は決して不幸を望んでいる訳でも不幸を甘んじている訳でもない。

だから、助けを求めた少女を責める事など誰にも出来ない…緑谷出久ですら壊理ではなく彼女を不安にさせた自身の弱さを責めていたのだから。

 

治崎には、その光景が理解出来なかった。

自身の個性により変質した棘は確かに少年の腹を抉り、臓腑の一部すら傷付けているだろう…止めどなく流れる血と傷の深さがそれを物語っている。

故に、理解出来ない。医学的な知見を持つ治崎でなくとも致命の一撃を受けたと容易に理解(わか)る少年が何故立ち上がれるのかが。

脚など感覚すらないだろう。

もはや痛みすらないだろう。

何故まだ立ち上がれる?その身体は死に向かっているというのに…何故、()()()()()? 

治崎が少年の笑みに不快感ではなく嫌悪感を抱き半歩下がったのと治崎の右腕が弾け飛んだのは同時だった。  

 

「…ッ!!?」

 

激痛

痛覚を鈍らせていなければこれで終わっていた可能性すらある程の痛苦。そして、それすらも思考の外に追いやる程の疑問。

(誰だ!?何をされた?腕が…他は大丈夫、やはり仲間が居たのか?音本の個性では一人と言って…AFOの部下?ソレはブラフ…それすらもブラフか…?)

無数に湧き上がる疑問と何が真実か解らぬ不安。

治崎は薄氷の上に立たされているかのような言い知れぬ恐怖により対応が遅れた。自身の行動により薄氷を踏み抜いて仕舞わぬように慎重になったが故のものであった。

だから…ただ呆然と見てしまった。

自身の腕を攻撃した者の正体を…腹部から滝のように血を噴出させながらこちらを見る緑谷出久を。人では無いナニカのように紅く染まった眼を。

 

少年にはその光景が受け入れ難かった。

壊理と治崎を見れば二人に血縁関係が無い事など瞬時に理解出来た。だから、あの人間の屑(AFO)に騙されたのだろう…それは構わない。

…いや後でオールマイトに中学生を騙して死地に送り出した屑だと密告しはするが、それは大きな問題ではない。

問題は、治崎が如何に血縁関係で無かろうと彼女の保護者であった事。

問題は、彼女が治崎の攻撃に対して避けるでも助けを求めるでもなく歯を食い縛った事。

問題は、そんな彼女を安心させきれなかった自分の弱さと治崎がそれを作戦に組み込んだ事。

問題は、家族に愛されない事…()()()()()()()()()()()()に愛されない事。

脳が茹だる程の自責と憤怒の念。

それらが今まで頑なに使用を禁じていたソレを使わせた。

今まで、自身の身体が()()()()()()為に使用すら検討しなかった技術。

乱波との戦闘により身体操作技術が向上した為に、発動ならば容易に行えたソレとは…()()()()()()()

脳内麻薬と言うものがある。

その最たる例であるエンドルフィンは脳内から分泌される物質でありながら癌患者などに使われる医療用麻薬であるモルヒネや麻薬の王様ヘロインをも凌駕する鎮痛作用を持ち、事故で撥ね飛ばされた男が折れた脚で立ち上がり病院まで歩いたという事例まである程だ。

聞き馴染みのあるところで言うと陸上の長距離ランナーが肉体的な苦痛を厭わず走り続けた先に至る境地、俗にランナーズハイと呼ばれるものも脳内でのエンドルフィンの分泌が原因だとされる。

そして、過剰分泌されたソレは少年の身体から連戦で蓄積された疲労と致命の一撃による痛みを消し去った。

次に、人間の快不快を司るホルモン、ドーパミン。

快楽の創造主とされるソレは俗に快楽物資とも呼ばれ、人間が幸福を感じる際に分泌されている。

少年の口角が上がり、笑顔をつくる…先まで腸が煮えくり返るような怒りを感じていた少年が。

 

「は、はは…ハハハ、アッハハハ!!」

 

口から笑い声が零れる…今尚出血が続き、死に向かっている少年が。

多幸感と全能感に包み込まれるような感覚。

少年は死の恐怖を忘却する。

更に、闘争か逃走(fight-or-flight)のホルモン、アドレナリン。

生物が外敵から狙われた際や獲物を狩る際に分泌されるソレは心筋の収縮力を増強し、常よりも大量の血液を身体に循環させる。それに伴い消化器官が活動を止め全エネルギーを闘争に集中させる。

眼はどんなに小さい情報でも拾えるように瞳孔が拡大する。

火事場の馬鹿力と呼ばれるものがある。

追い込まれた人間が常からは考えられぬ能力を発揮するソレは脳内物質の過剰分泌に過ぎず、肉体のリミッターを外す行為に他ならない。

人は事故の際や死の間際に時間が酷く遅延して感じると言う。

俗に言う走馬灯…これすらも、ドーパミンやアドレナリンと言った脳内物質が過剰に分泌されているに過ぎない。

ならば、その脳内物質を自在に分泌出来たら?

少年の脳内では常人ならば数秒で廃人になる程の量の脳内物質が分泌されていた。

心臓から爆発的に送り込まれる膨大な量の血液は末端の毛細血管を破り少年の眼を紅く染め上げる。

少年の視界は極彩色に彩られ…全てが停止していた。

少年は軽く飛び、目の前の何かに腕を振るう。

何かの一部が吹き飛ぶと生温い液体と鉄の臭いが撒き散らされる。

 

「キヒ、キキキ!!キヒャハハハ!!!」

 

「何だ…ソレはぁ!?」

 

治崎は、死に体だった少年の肉体が一回り程膨れ上がっている事と拡大された瞳孔や異常な精神から一つの心当たりに行き着いた。

心当たりとは…薬物。

 

「ステロイド…他にもあるな。テメェ、正気かッ!!」

 

治崎の読みは間違いではない。外的な要因だろうと内的な要因だろうと結果は変わらない。

少年の肉体は増大した血流により毛細血管が急速に傷付き目や口、鼻や耳から何をせずとも血が流れ、腹部からは取り返しのつかない量の血が失われ続けている。

昂った精神は元の目的を忘れ、ただ目の前のものを攻撃するだけの怪物と成り果てていた。

治崎は冷静に腕を修復すると距離をとる。

(落ち着け…あの状態、まともな考えで動いちゃいない。

恐らくは今のも俺が目の前に居たからにすぎない筈…)

治崎は個性にて壁を乱立させる。少年の速度が自身の知覚できる速度を超えている以上攻撃は得策ではなかったから。

(撹乱して、時間を稼ぐだけで良いんだ…アイツはそれだけで自滅する。)

治崎は息を潜めながら壁を造り続ける。

そして、周囲から聴こえる破壊音。

獣のような咆哮と僅かな水音。

それが聴こえなくなるまでの17秒間を治崎は数時間にも感じていた。

 

「…潰れたようだな。」

 

肺に溜まっていた重苦しい中身を吐き出しながら治崎は呟く。

音が止んだ…その意味は考えるまでもない。

(壊理は…無事なのか?いや、巻き込まれていようが頭が潰れてなけりゃ良いか。)

治崎は極度の緊張により強張っていた身体を軽く伸ばしながら壁の影から出る。

そして、聞いた。

何を?声を、水音を

聞くはずの無い声を

聞くはずの無い音を

 

「……射程…距離……内に…入ったぜ…治崎廻…」

 

「緑谷…出久…」

 

居るはずの無い…立っているはずの無い男の声を

 

「来な…テメェの全力で…」

 

反射的に治崎は手を伸ばす。

(駄目だ…こいつは、自滅なんて待っちゃいけなかった!

殺さなければ…俺が殺さなければ、こいつは何度でも立ち上がる…っ!)

恐怖が治崎の思考のノイズとなり短絡的な行動を選択させた。

パン、と耳を劈くような音と共に伸ばした右手か弾ける。

すぐさま修復するも再び爆音と共に腹部が吹き飛ぶ。

修復修復修復修復修復

轟音破壊轟音破壊轟音

治崎は僅かな…一秒未満の僅かな時間に数十もの致命傷を負うもそれを修復し続ける。

(ふざけるな…ふざけるなっ!!俺は、触れるだけで…触れさえすれば…っ!!)

少年に伸ばす手は悉くが吹き飛ばされる。

治崎には死なぬように己を修復し続ける事しか出来なかった。

(動いた所から攻撃される…ッ!ふ、触れる事すら…出来ないッ!!?)

 

 

 

 

 


 

 

「膠着状態ってヤツだな、こりゃ…」

 

燈矢はウーマンの個性による水のレーザーを首を傾げるだけで避けながら二人の方へ目をやる。

 

「いい加減死んどけや!!このクソサンドバッグが!!」

 

「どうすりゃ良い…俺じゃ勝てねぇのか…?」

 

(目の前の女型の奴も含めて全員がかなりの強度の肉体に高速再生個性持ちで、しかも複数個性持ちときた…どうしたもんかね。)

燈矢は爆豪と弟が苦戦するさまを横目に思考に没頭する。

(二人共決定打が無いな…いやまぁ俺もなんだが。とにかく再生が速くて碌にダメージが通らねぇんだよなぁ。)

燈矢は水のレーザーに混じって背後に迫っていたウーマンの腕を裏拳で霧散させながら思考する。

(再生の個性には限界が無いのか…?あるとしても膨大過ぎてこっちのが先に息切れすんのか、あるいは本人達も自覚出来てないだけでこのまま押し切れたり…しねぇよなぁ。)

目線の先では爆豪が両手で爆破を使用しながらフードを吹き飛ばしている。

ついでに、フードの伸びた腕が爆豪の脚を狙うのが見えたのでその場の全員の()()()()()()速度にてそれを叩き落とすと同じ速度で元の場所へと戻る。

(複数個性ってのも厄介だよなぁ…死穢八斎會の若頭、治崎が使う個性なら人間を繋げてこんな風に出来るのか…?死穢八斎會の本部の上に居たんだしこいつ等も組員だよな?)

チラと横を見ると焦凍がゾウの四肢の関節部を凍結させ炎で応戦している。

あと、ゾウが肉体を肥大化させ凍結を砕こうとしたのが見えたからこっそり十円玉を指で弾いて顎を撃ち抜き動きを止めておく。

(なにより…こんなのが中にも居る筈なんだよな。

外の見張りに3人も置いてる以上、中にはそれ以上居る筈で…)

部分的に巨大化したウーマンの廻し蹴りを同じく廻し蹴りで切断しながら燈矢は呟く。

 

「大丈夫なんだよな…出久。」

 

轟燈矢は自身の恩人にして無二の親友の安否を願いながら片手間にハイエンド3体を相手取っていた。

TS回って需要あるんですか…?私は皆様の正気を疑っております。

  • ある(鋼の意思)
  • そんなものウチにはないよ…
  • いいからラスボスのTSあくしろよ
  • てかTSAFOとか実質安心院さんでは?
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