ワンフォーオール…?知らない子ですね 作:悲しいなぁ@silvie
緑谷「生きたいと言えーーッ!!」
壊理「生ぎたい!!!」
治崎「(俺の)命がもったいない!!!」
知らない天井だ…
いや、やっぱ知ってるわ。此処アレだな…昔かっちんと一緒に入院した病院だな?………???なんで??
あれぇ?なんで入院してんだ俺…??
確か…治崎を殴り飛ばして、それから……
「壊理ちゃんは!!?」
ベットから跳ね起きると同時に身体についていた計器類が外れアラートが鳴り響くがそれを無視して飛び降りようとして…
ベット脇に居たマミーと壊理ちゃん達と目が合った。
「……いず、く…?」
「お兄…ちゃん…」
二人は少年が飛び起きたのを見ると一瞬呆けたように固まるもすぐに涙腺を緩ませる。
そして、自身の家族と庇護対象であった少女を見て少年も安堵から脱力し再びベットに倒れるように座り込んだ。
「母さん、壊理ちゃんも…無事で良か「バカぁ!」あらぁッ!?」
二人に微笑みながら語り掛けていた少年の頬を緑谷引子は思い切り張り飛ばした。
涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃになった顔でぶるぶると震えながら引子は真っ直ぐに少年を見詰める。
「いっ、出久は何時も…何時も私の知らない所で危ない事ばっかりして!!
確かにっ!ヒーローに成るのを応援するって言ったけど…それは、心配しないって事じゃないの!!」
少年はぶたれた頬を抑えながら引子を見る。
震えて、涙でぐしゃぐしゃで…きっと自分の息子に最悪の事態が訪れまいかと怯えていたのだろう。……完全に何も伝えずにヤクザの事務所にカチコミを仕掛けた少年のせいであった。
そう、完全無欠に自業自得であったが…好きな美術品って何?と聞かれてノータイムで母親の写真と答えるこの異常者には絶大なダメージであった。
「おぼろろろろ」
そして吐いた。
緑谷出久、死穢八斎會との戦闘ですら折れなかったその不屈の心は母親からのビンタ一発でプリッツより簡単に圧し折れたのであった。
いつかの自分を思わせる少女を助けられたという安堵と最愛の母を泣かせてしまったという事実…そしてその母からぶたれたというショックが混ざり合い少年の精神はグチャグチャになってしまった。
(あのオリーブオイルジジイがあぁぁぁぁ!!!)
そして、若干八つ当たり気味の怨念がAFOに向けられていた。
その後、傍から見れば起きたと思ったら急に吐いたようにしか見えない少年に壊理と引子が慌ててナースコールを連打した事は言うまでもない。
どうやら俺はあの後丸二日寝っぱなしだったらしい。
正直自分でも治崎を殴り飛ばした後の記憶がまるで無いが…なんかあの後かっちんと燈矢たんとショーちゃんが来たりオールマイトがアレヤコレヤしたらしい。……なんで??
やっぱみんな死穢八斎會が嫌いなんやなって…にしても過剰戦力だと思うんですがそれは…
まぁ、済んだことだし良いけどさ。
ああ、後今回俺は怪我一つ無かったらしいから今日一日検査して明日には退院で良いんだってさ。やっぱ壊理ちゃんの個性のおかげやろなぁ…
とか、益体もない事を考えつつオールマイトに送る用のオリーブオイルジジイの告発状を書いているとコンコンというノック音が聴こえる。
「はーい、開いてまーす。」
「……大丈夫か、出久。」
そう言って入って来たのは我らがツチノコハンターかっちんであった。
…??なんか元気無くない?
「俺は大丈夫だよ、怪我一つねぇってさ。てか俺よかかっちんのが大丈夫かよ?しょんぼりしちゃって…生理か?」
「んな訳あるかアホッ!!チッ…色々あったんだよ…色々な。」
かっちんはそう言うと来客用のパイプ椅子にふんぞり返るように座る。
「なぁ…出久。お前、俺になんか隠してる事とか無ぇか…?」
首を反らしたかっちんの顔はこちらからでは見えなかったがその声だけでえらく真剣なのだというのは伝わって来た。
……隠してる事…??……はっ!!まさか、かっちんをちょいちょい盗撮して光己さんと一緒にかっちんのアルバムを作ってる事がバレたか…?
それとも、勝さんと一緒に作ってる爆豪一家のホームビデオの件か…?
まさか、かっちんの名義で参加しまくってるボランティアの炊き出しの件じゃねぇよな…?
と、未来のサイドキックの割に死ぬほど隠し事が多い出久であった。なお、彼の名誉の為に言っておくが全ては爆豪少年の為を思っての事である。
「ねぇよそんなモン、俺とかっちんの仲だろ?」
それはそれとして一切の動揺もなく少年は言い切った。
爆豪少年の問いからコンマ2秒での回答であった…将来はさぞ腕の良い詐欺師に成れそうである。
「…………そうかよ。」
かっちんはそう言うと頭を起こし俺を睨むように見詰める。意志の強さを感じさせるその鋭い双眸が刺すように向けられる。
「…俺は、まだまだ弱ぇってのがよくわかった。ヒーローのテッペンどころか、その足元にすら立ててねぇってのが…」
かっちんは両手を思い切り握り締める。爪が掌の皮膚を突き破りポタポタと血が垂れる。
「今までは…必死に登ってりゃいつかは越えられんだと思ってた、でも…今は、今は……わかんねぇ…
あんなバケモン達に勝てる気がしなかった…戦う前から諦めちまったんだ……あんだけ、天才だとかなんだとか言っといてこのザマだぜ…?笑いたきゃ」
「フッフッフッフ、ハッハッハッハ、ハーッハッハッハ!!」
「何本気で笑ってんだクソが!!」
笑えと言われたから笑ったら怒られた…魚沼宇水かよ。
てか、そりゃ笑うわ。
「あんなぁかっちん…俺らまだ中学生だぜ?そりゃまだ勝てんでしょ。壁ってのは高くあって貰わんとさ…特に、俺らの夢への壁だ。低い壁なんてつまんねぇよ。」
「…そういう事じゃねぇんだよ、俺は…俺はな!!何時まで経っても!どんだけ強く成っても…!勝てねぇんじゃねぇかって…」
「なら、二人でだ。」
俺はベットから降りて俯いてしまったかっちんの肩を掴む。
「一人じゃ無理でも…二人なら越えられる。俺とかっちんでならなんだって越えられるさ…違うか?」
「……チッ、うるせぇよ……クソが。」
かっちんは肩を掴んでいた俺の手を振り払うと立ち上がって病室から出ていく。
しかし、去り際にもう一度振り返り
「テメェの隠し事はいつかしっかり聞き出すからな。」
と、念押しをして行った。…むぅ、光己さんと勝さんに意見を仰ぐべきか…?
壁一面に様々なアンプルや機械類が所狭しと張り巡らされた一室にて小太りの男…氏子達磨と呼ばれる稀代の天才はガリガリと自身の爪を噛んでいた。
「クソっ!あのガキ…まさかたった一人で死穢八斎會を潰すじゃと…?しかも、現場に向かわせたウーマンちゃん達三人が全員死亡など…有り得ん!並のヒーローでは逃げ切る事すら不可能な程の過剰戦力じゃった筈…先生は一体何を隠して…」
「呼んだかい?ドクター。」
「!!?せっ、先生…!?あ、あの少年の見舞いに行かれるのではなかったですかな!?」
自身の考えを纏める為にぶつぶつと口に出していた氏子の後ろから仕立ての良いスーツを着た一人の男が現れる。
この男こそ、裏世界のフィクサーにして最大悪…AFOその人であった。
「ああ…もちろん行くさ、彼が目覚めたと聞いて友人として行かない訳無いだろう?
…ただ、その前に一つだけ気になる事が有ってね。」
「き、気になる事…ですか?」
「ああ…この一件の発端は、僕が緑谷君にプレゼンした強化プランなんだが…何故か、不思議な事にこのプランの中に僕が入れた覚えの無い死穢八斎會のデータが入っていたんだ。
僕も馬鹿じゃあない…流石の彼といえど中学生一人に死穢八斎會を潰せるとは思っていなかった、にも関わらずだ。
不思議だね…ドクター?」
「…そ、それは……不思議ですな…」
氏子を見詰めるその目は確実に気づいているのだろう氏子がデータの改竄を行った事実に。その上で、尋ねているのだ…その理由を。
「まぁ、その不思議のおかげで思わぬ拾い物だって有った…だから、僕は別に怒って無いんだよ?むしろ感謝してるぐらいさ。」
「……先生、僭越ながらこの老体の言葉に耳をお貸し下さいませんか…?」
氏子はAFOを見つめ返すと覚悟の籠もった目で続ける。
「もちろんさ、僕とドクターの仲だろう?」
「では…もう、あの少年に関わるのは止めて頂きたいのです!」
「…あの少年、と言うと緑谷君の事かな?」
「ええ、緑谷出久…あのガキはいずれ先生の前に立ちはだかる壁と成り得る!今回の一件で確信しました!確かにアレの希少性はわかりますが…それでも始末すべきです!!」
AFOはその言葉を受け静かに目を閉じる。氏子はその姿に冷や汗が流れるのを感じる。
この嘆願、要は彼の中の天秤がどちらに傾くかに帰結する。
緑谷出久という未知か氏子達磨という協力者か…どちらが有用かという天秤。
「……確かに、最近は彼に掛かり切りで君を不安にさせてしまったようだね。約束するよ、ドクター…僕の夢の障害となるなら彼といえど排除するとね。」
「申し訳ありません先生…このような…」
「構わないよ、僕も少し考えが足りなかった。傍から見れば確かに不安だったろう…すまなかったねドクター。」
氏子の肩に手を置きながら聖母のような声で語る。氏子は、その言葉に救われたようであった。
「ところで…あの拾い物はどうだい?何かに使えそうかな?」
「拾い物…ああ、あの
使えそう…というか、その…アレは一体どうやって手に入れられたのですか?調べれば調べる程に…」
「ふむ、やはり人の腕では無いようだね…まぁ、予想通りと言えば予想通りだが…」
「いえ、人の…と言うよりも、アレでは…生物と言うのも憚られる…」
そう言いながら氏子は目線を動かす。
そこには円筒状の水槽の中に一本の白い右腕が浮かんでいた。
「人の出来損ない…とでも言えば良いのか、とにかくあの腕の持ち主は少なくとも人とは呼べんでしょうな。」
氏子の言葉にAFOは深く思案しながらも、やがて口元を歪めるのであった。
白いリノリウムの廊下で革靴を鳴らしながらとある病室を目指す。
受付で教えて貰えた事も有りさして迷うこともなく辿り着いた病室の前で私は立ち尽くす。
どの面下げて…少年の前に出れようか。私はあの一件では何も知らずただAFOの思うがままにされただけで…しかも彼を救ったのもそのAFOだ。
笑わせる…このザマで何がナチュラルボーンヒーローか。平和の象徴か…っ!お前の何処に生まれ持ったものが有ると言うのだオールマイトっ!お前は…お前はただ運が良かっただけだろう!貰い物の個性で、命すらお師匠様から戴いた癖に…あのAFOに敵対すらされなかった。アイツは最初から私ではなく少年を救うことだけを考えて動いていた。そんな…
自責の念ばかりが頭を巡りどうしてもドアに手をかけられない。ああでもないこうでもないとドアの前で私が躊躇していると…
「ドアの前で何やってんすかオールマイト…デケェしシルエットからして画風違うんだからバレバレですよ?」
と、私にとってダンプカーよりも重そうだったドアをあっさり開けた緑谷少年は私を見るなりそう声をかけた。
私は昔からそうだ…一つの事に意識が行くと周りが見えなくなる。普段なら死角からヴィランが迫ろうと察知し、周りからはマイトセンスなんて言われる程だというのに目の前の少年が近付いていることすら気付かないとは…
「ハ…HAHAHA!いやー、サプライズで君を元気づけようかと思ったんだが…失敗してしまったかな!?」
しかし、何時までもネガティブモードで居るわけにはいかない。私は平和の象徴なのだ弱い所など誰にも見せる訳にはいかないんだ。
「はぁ…?まぁオールマイトがサプライズで出てくりゃそんだけで特番だって組めそうっちゃそうですね。
難病に苦しむ少年へオールマイトがエールを!…なーんてアオリで、っても俺は別に至って健康ですけどね。」
「健康…そうだね、死穢八斎會に殴り込みに行って無傷で帰って来たんだよね、緑谷少年はさ。」
「あー…無傷ってのはちぃと語弊が……まぁ結果無傷っちゃあ無傷ですけど……」
「なぜ…こんな事をしたんだい?言っておくが、君が今回した事は罪に問われたって不思議じゃ無かった。
まだ君が未成年で、相手が指定敵団体でおまけに君が戸籍上無個性だから…そんな色んな事が噛み合ってのお咎め無しなんだぜ?
勿論、君のお陰で助かった人間が居る以上間違った事をしたとは言わない…しかし、もっとやり方があったんじゃないかな?」
そう、これが私が来た理由の一つ。
大人として、そしてヒーローとして少年に言っておかなければ…なぜこんな無茶をしたのだと。死んだっておかしくなかったんだぞと。
……本当ならこの場でハグの一つでもしたいぐらいには緑谷少年はやり遂げた。死穢八斎會が秘密裏に研究していた個性を破壊する武器を全て破棄し、あまつさえその研究で苦しんでいた少女を救い、唯の一人も死者を出さなかった…私達ヒーローがその尻尾すら掴んでいなかった事件をたった一日で解決しきった。
本来なら讃えられるべき功績だ…しかし、誰かが言わなくては。この子は未成年で、なにより無個性なのだ。
今回の一件は色んな事情が噛み合った結果で、次があると言えない解決方法だったのだと…無茶はもう止めなさいと…言わなければ……
「すんませんねオールマイト…損な役させちまって。」
……やはり、私は顔に出やすいのだろう。緑谷少年はこちらを見ながらばつが悪そうに頭を掻いてそう言うとベッドから降りてこちらに向き合う。
「あん時は、頭に血ぃ昇っちまって…後から考えりゃあかなり馬鹿やったなと思うんですけどね。
でも…なんて言うか、その…考えるより先に体が動いたって言うか……すんません。」
「考えるより先に…体が……」
「あー…っと……すんません…下手な言い訳で……」
ソレは、私も良く知っている台詞だった。
トップヒーロー達がまだニュービーとも言えぬ卵であった頃に残した逸話…その多くが話をこう結ぶ。
『考えるより先に体が動いていた』と……
「それと、馬鹿やったってのは確かに認めますけど……間違った事したとは思って無ぇです。
今回の一件、俺は誰に何言われようが…後悔だけはしませんよ。」
力強い真っ直ぐな瞳だった。
彼になら…否、彼にこそ託そう。
この力、連綿と受け継がれてきた
「緑谷少年…いや、緑谷出久!君は無個性でありながら、あの場で最も多くを救った!!護り抜いたんだ!!
お説教?忠言!?いいや違うね!!
ヒーローってのは命懸けでお節介焼く仕事だ!!!
だから、だからこそ!!君だからこそ…
継いでみないか!私の個性を!!」
「え…嫌ですけど……?」
「あれぇぇ!???」
「いや、仮にオールマイトの個性が貸し借り出来るタイプだったとして…俺に平和の象徴なんて背負えませんよ。」
「あ…ああ!そういう事か!!
心配ないさ、私だってサポートするし…何より君には」
「だとしても…やっぱ要らねぇです。
継ぐとか言ってる以上、一子相伝の北斗○拳的な個性なんでしょうけど…それでもその個性でヒーローやってんのはオールマイトでしょう?個性が一人歩きしてんじゃ無ぇし、オールマイトの努力と献身が平和の象徴なんて言われてんですよ。
前々から変に鈍いトコあんなと思ってましたけど…んな事にも気付いて無かったんすか?
アンタの個性がスゲーから皆アンタを頼ってんじゃ無くて…アンタがスゲーから頼ってんすよ。
俺にはちっと真似出来ません…てかこの世にアンタ一人だけでしょうよ。
だから…って!何泣いてんすか!!?」
この個性を得てから…ずっと心にあったしこりを解された気がした。
ずっと、思っていたんだ…私はズルをしてしまったんだと。
緑谷君…君を見ていると本当にそう思うんだ。私に出来ただろうか…と。無個性だった私でも君のように諦めずにヒーローを目指し続けられただろうか、目の前の理不尽に立ち向かえただろうか、そんな風に…人を嫉妬もせずに見れただろうか……
私は君が積んだ努力を積まなかった。私は人から個性を貰った…でも、それに後悔は無い。有る筈が無い!!
君は…私をそう見てくれるのだな、ならば……この個性は私で終わらせよう。
AFOを打ち倒したその後に…この力はもう要らない。
君のようなヒーローが居る限り。
緑谷出久の言葉に肩を震わせ泣いていたオールマイトは強く拳を握り締めそう心に誓うのであった。
品の良いスーツを着た男は病院の壁に凭れ掛かるように蹲りながら右手でガリガリと頭を掻き毟っていた。
「そんな…筈は……しかし、それしか……」
ブツブツとうわ言のように発せられるその言葉は病室から漏れる大音量の泣き声と心配する少年の声にかき消され誰の耳にも届かない。
「こんな…こんな所に……ずっと一人で居たのかい…?」
その目は虚ろで、何も映さぬ
「違う、違うんだ……お前は彼処に居るものとばかり…」
鈍く光る黒曜石のようで
「なぜ…そうと言ってくれなかったんだい?」
穴に嵌められただけのビー玉のようで
「僕がすぐに気付けなかったから拗ねていたんだろう?」
全てを吸い込むブラックホールのようで
「お前は昔からそういう所があったね」
全てを覆う夜空のようで
「許しておくれ…また、一緒にコミックを読もう…面白いのが有るんだ」
激しい憎しみが
「だから……だから、また…呼んでおくれ…」
抑えきれない愛欲が
「もう一度僕を…兄と呼んでおくれ」
綯い交ぜになったようであった。
「与一…!!」
そろそろ失踪したと思われとるやろし、更新してもバレへんやろ…
愛の戦士君ネタに需要って…
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そんなものうちには…無いよ
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こんなもん有れば有る程ええですからね
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お得男(ヘドリアン)
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そんな事よりAFOがヒロインになったぜ