ワンフォーオール…?知らない子ですね 作:悲しいなぁ@silvie
その後の事は良く覚えていない。
俺は土手っ腹に穴が空いての出血で、かっちんは極度のストレスと骨折の痛みで二人仲良く気絶してたらしい。
ヴィラン?捕まったよ。流石はオールマイトだよな。
そんで、かっちんは次の日には目が覚めたらしいけど、俺はそこから4日間寝っぱなしだったらしい。
なんなら最初は死んだかもって話だったらしいぜ?
そこをリカバリーガール?ってヒーローが駆けつけて来てくれて事なきを得たらしい。ちなみにそのリカバリーガールを呼んでくれたのはオールマイトなんだって。
俺の預り知らぬ所でじゃんじゃか借りが増えてるけど、まぁええやろ。いつか返すよ。
なんたって、俺もヒーローに成るからな!
そう、あの後で大きく変わったモノ…それが俺の将来設計だった。
もちろん、ヒーローって職業の不安定さとかはネックだけど…それでも、泣いてる子供を助けてやれるってだけで十分だろ。
我ながら安直で、助けて貰われたら直ぐ考え変えてって笑われようが構わねぇ。
だって、憧れるだろうが。
あんな背中見て…魅せられて、憧れねぇなんて言わせねぇ。だから…いつか必ず、この借りは返すぜオールマイト!
あんたの隣まで…駆け上がって、追い抜いてやる!
俺が…俺らがすぐにそこまでかっ飛んでってやる!
んでもって、言ってやるんだ…オールマイトに、俺らが来た!ってな。
「聴いてるの出久!!もうあんな事しないでよ!?お母さん、心臓が口から出るかと思ったんだから!!」
「ごめんよ、母さん…」
…でも、その前にマミーのお説教を切り抜けるとこからだな。
最初はなー、それこそ事件に巻き込まれた悲劇の少年だったのに…かっちんが個性で反撃したーとか、俺がヴィランの個性を蹴り折ったーとか有ること無いこと言いまくるから本当の事を言わざるを得なくなって…
もー最悪だよ…マミーは泣きながらめちゃくちゃに怒るし、光己さんと勝さんには泣きながらお礼言われるし。
別に、助かったんだから良いじゃんなんて口が裂けても言えねぇし言わねぇけどさ?そりゃ自分の子供が自分の知らない間に死ぬとこでしたーって言われりゃ取り乱すだろうけど…それでも、泣かせちまった。
マミーにかっちんの親御さん…それに、かっちんも。
かっちんは起きてすぐに俺の安否を確認したらしい。
自分だって指へし折れてて痛かったろうに、最初に聞くのがそっちなのかと聞いてて嬉しいやらなんやら…で、そんなかっちんを出迎えたのは峠を越えるか否かの正に瀬戸際だった時の俺。
そりゃ泣くわ。さっきまで遊んでた奴が寝て起きたら死ぬかもしんねぇって言われてあぁそう、オッケーってなる奴なんか居ねぇもん。
本人は「誰が泣くか!死ね!!」って怒ってたけど光己さんが今まで見た中で一番不安そうな顔で泣いてたってこっそり教えてくれた。
せっかくかっちんがサイドキックに誘ってくれたってのに…これじゃダメダメだ。
だから…やっぱ鍛えねぇとな!うんうん、昔の偉い人が筋肉は全てを解決するって言ってたしな!
「い~ず~く~!!お母さんの話ちゃんと聞いてる!?もう!危ない所には行かないって言ってたのに…」
最初は強く、諌めるようだったマミーの語気がだんだんと弱くなっていき最後には消え入るような小声に…
そして、その目には大粒の涙…まずい。
「聞いてる!聞いてるってもちろん!!だからもう泣かないでよ母さん…本当に、本っとーにすげー反省してる!!もうぜーっ対に危ないとこには行かないから!ね!ね!頼むからもう泣かないでくれって!!」
頼むぜまじで…マミーの泣き顔なんてもう見たくねぇし見れねぇよ。
「うう…でも、爆豪さんのところの勝己君と言ってたじゃない、ヒーローになるって…」
マミーは大粒の涙を堪えたままに俺の顔を確りと見詰めてくる。
…本当に、強い
今回の事で身に沁みてわかった事がある…俺はかっちんの親御さんの顔が浮かんで、あの場では俺を犠牲にしてかっちんを生かそうとした。でも、当たり前みてーだが…俺が死ぬと、マミーが悲しむんだよな。
こんな、こんな泣き虫で…怖がりで、優しくて、美人な上に気も利いて、何より子供想いなこの
なら、本当はここで…例えばかっちんに合わせただけとか、ただのごっこ遊びだよとか言うべきなのかもしんねぇ…けど!俺は、自分の心に嘘は吐けねぇ!
「……うん、俺はヒーローに成りたい!」
マミーは俺の言葉を聞くとそっと目元を拭う。
…俺は、悪い息子だな。悲しませるってわかってたのに…心配かけるって思ってたのに。
「出久はさ、なーんか他の子より大人びてるなーってずっと思ってたの。」
「…?母さん、何の…」
「おんなじぐらいの年の子はみーんな玩具を欲しがったりお菓子が欲しいって駄々こねてるのに、出久はお父さんが帰って来なくて寂しくないかって私の手伝いしてくれて…誕生日にはお父さん頑張って帰って来てくれて、でも出久は玩具よりも3人で居れるだけで良いって聴かないし?なんなら母さんだって普段会えないんだからその分もっとゆっくりしてーってご飯まで作って…
知ってる?出久が自分から欲しいって言ったモノなんて、今回ダメになっちゃった靴と本が何冊かだけなんだよ…?
私、私…不安だったの。この子は賢いから…私達に迷惑かけないようにってずっと我慢してるんじゃないかって…」
母さんは話ながらもどんどんと大粒の涙を溢していく。
拭っても拭っても、止まらない。
「だから!!…だから、嬉しいよ?もちろん!!不安だし…今回みたいに怪我してきたりはイヤだけど、出久が自分からしたいって言ってくれて…私、凄く嬉しかった。」
マミー…
「だから…さ、ジャーン!!見てコレ。」
マミーは鞄からゴソゴソと封筒を取り出した。
…?ナニソレ、入院費の明細書?
「フフフ、コレは個性診断書よ!」
「個性診断書?ナニソレ?」
「ほらほら!出久ったらまだ個性出てないじゃない?だからこれを機に一緒に診て貰ったの!」
…それは、つまり…この中に、俺の個性が書いてる…ってコト?
「そうそう!!ヒーロー向きの個性だと良いわね!お父さんの個性なんか火を吹いたり出来るんだし!そっちに似れば…」
マミーが手をバタバタさせながら封をあけて中身を取り出す。
んー、俺も読み書きぐらい出来っから自分で見たい感はあるけど…なんで出来るの?ってなるし読み上げて貰うか。…?なんで震えてんだ?マミー?
てか、震え過ぎて落としたぜ?もう…ん?
これって俺の個性が書いてんだよな?じゃあこれって…
「諦めた方がいいね。」
毛根が死滅した医者がなんか言ってますよ…
「昔、超常黎明期に一つの研究結果が発表されてね。
足の小指に関節が有るか無いかって流行ったの…知らない?
人間使わんとこは必要ないってなもんでね。
無い人の方が型としてまァ新しいと!」
なんだよその耳が動かせるか動かせないかみたいな話は…
「出久くんには関節が2つある。
この世代じゃ珍しい…何の個性も宿ってない型だよ。」
…その後、俺とマミーは病室に戻った。
マミーはずっと俯いてる…正直なところ、そんな気はしてたんだ。
この世界は、個性持ちで溢れてる…けど全員じゃない。
割合としては2割ぐらいの確率で無個性の人間ってのは確かに存在する。まぁ、左利きみたいなもんって思ってくれれば良い。
だから…さ?別に左利きだからってヒーローに成れねぇ訳じゃねぇし?なんならスポーツ選手では対戦経験の少なさから左利きのが有利だったりするらしいし?ならヒーローでも一緒じゃんね?
だから…
「大丈夫だって、母さん。」
「うう゛~ぃずぐ~せっ、せっがぐいずぐがヒーローに成りだいっで言っだのにぃ~!」
「もー、泣かない泣かない!…それに、個性ならあるよ。」
「グスッ、ヒック…嘘、先生が無いって…」
「あるさ!こんな美人で息子想いの母さんに、どんなに忙しくっても俺と母さんの誕生日には絶対帰って来てくれる父さん…そんな二人から愛されてる!!
これ以上の個性があるかよ?無いね!」
俺は椅子の上に立って母さんを見下ろすようにして宣言する。
「見てな母さん!あんたの息子は直にこの国でいっちばんスゲーヒーローに成る!
何でかって?もちろん!母さんが俺にこんな素敵な…この世で一番スゲー個性をくれたから…二人が俺を産んでくれたからさ!!」
マミーは俺の言葉を聞いて、少し呆けたかと思うと次の瞬間には滝のように涙を流しながら…俺を抱きしめてくれた。
「うう゛~ありがとう!ありがとねぇ!!出久~!!」
全く…ありがとうはこっちの台詞だぜ…
「…おや?」
黒い、一目見るだけで上等だとわかるスーツを着た男は呟くように言う。
「む?どうしましたかな先生。」
その言葉に耳聡く反応したのは如何にも老人といった風体の小太りの男だった。
「ふむ、どうやらムーンフィッシュが捕まったようだ。観てご覧。」
男はそう言うとテレビの方を指差す。
そこにはニュースを読み上げるキャスターとその後ろにおぞましい雰囲気をした男の写真。
そして、凶悪ヴィランムーンフィッシュ逮捕!またもやオールマイト大活躍!!の文字。
「むぅ、まぁあれだけ派手に暴れれば何時かはこうなるでしょうな…それが?」
小太りの男はスーツの男の真意を図りかね、尋ねる。
「あぁ、別にムーンフィッシュが捕まったのは関係ないんだ…ただオールマイトが捕まえた…と言うのが引っ掛かってね。」
その言葉に小太りの男はさらに首を傾げる。
「…?まぁ、ワンフォーオールの持ち主ですし…言ってしまえば当然の結果では?」
この小太りの男は知っている。かのNo.1ヒーローの個性を…その成り立ちと血の歴史を。
故にわからない。目の前の彼とて…否、目の前の彼だからこそわかるだろう。あの個性は非常に強力だ…勿論、目の前の彼程ではないが。
そんな個性を持つオールマイトがそこらの殺人鬼ごときに苦戦するだろうか…答えはNOだ。
「いや…ね?こないだオールマイトと遊んだ時に…彼に予知を使っていてね、その予知にこんな事は無かった。
わかるだろうドクター…予知の個性は絶対だ。
それが書き変わったとなると、誰か同じ予知持ちか…それとも…」
スーツの男は口元に手を当てながら思考にふける。
「予知…!なっ、ならば…コレは誰かが先生の予知の個性を破ったという訳ですか!?」
小太りの男は震えながら尋ねる。
初めてなのだ…目の前の絶対者の個性が破られたなどと言うなど。
「うん、そうなるね。
僕の予知は対象の過去から近い未来までを見通す…その見通した結果だとオールマイトはこの時間、近辺で他のヴィランを捕まえて警察に引き渡していた最中だった筈何だが…オールマイトに予知の個性なんて無いし…一体誰が…」
スーツの男が再び思考の海へと堕ちようとした時、ニュースキャスターの声が響いた。
『いやー、それにしても現場には2人の子供が居たという事で…一歩間違えれば惨劇は免れなかった所を、本当にオールマイトはヒーローの鑑ですね!』
『なんでも、子供の内の1人がヒーローを呼びに走るも先の銀行強盗によりヒーローが出払っており見付からず大声で叫びながら引き返したのを聞き付けて急行したとの事です。』
「…子供、フフフ2人の子供…か。」
スーツの男は弧を描くように笑った。
「先生、捕まえに行かれるので?」
「まさか、こう見えて僕は子供には優しいんだぜ?
ただ、予知の個性は希少だ。場合によっては…友達になりたいところだね。」
小太りの男はすぐさま情報を精査しスーツの男に告げる。
「子供の名前は爆豪勝己と緑谷出久、爆豪勝己の方は爆破の個性を使ったとありますので…」
「緑谷出久…か、今どこに居るかわかるかい?」
「ムーンフィッシュにやられて入院中のようです。」
スーツの男はそれを聞きややオーバー気味に両手を挙げて言う。
「そいつは大変だ!ここは友情への第一歩として…是非ともお見舞いに行かないと…ね?」
スーツの男…オールフォーワンは底冷えするような笑顔でそう言った。
次回の候補
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さすがにそろそろ雄英に入学しろ!
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ヒロイン最大トーナメントッ!!
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ホークス…?知らない子ですね
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ボンドルドとAFOって似てない?