竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第11話 USJ襲撃事件・3

「『GHYAAAAAN!!』」

 

 その咆哮に、ヴィランの数名が思わず後ずさる。純粋に脅威を感じたのではなく、その見た目と鳴き声から不気味さを感じたのだ。だが、他の者達はそれを脅威とは見て取らず、好き勝手に話し始めた。

 

「はっ、獣化しやがったぜ! 獣は火でしつけてやらねえとな!」

「獣だろうが燃えんだろ!」

「ああ、良いわあ。その自信満々な顔、燃やして上げたい」

 

 そこに、呼人が飛びかかっていった。一番前の敵が反応できない速度で走りより、突き倒す。そして下敷きになった男の顔の上で、これみよがしに口を発達させ、それを大きく開くとよだれを垂らし始めた。そして顔を男の顔へと次第に近づけていく。

 

「ひっ! た、助けてくれ!」

「野郎、調子に乗ってんじゃ―――ねえぞ!」

 

 横合いから炎が放たれたが、呼人はそれを大きく跳び下がって回避した。

 

「た、助かった……!」

 

 今まさに『食われかけた』と本人が思っているヴィランは、立ち上がって味方の所へ下がったが顔色が悪い。目の前で、その無機質な瞳と大きく開かれた口を見せつけられたのだ。本能的な恐怖は得てして理性を上回る。

 

「火の壁作れ! そっから丸焼きにしてやる!」

「おらっ、燃えろ燃えろ!」

 

 ヴィランの1人が呼人の足元を指差すと、そこが熱を持ち始める。それを察知した呼人が跳び下がった直後、足元が発火した。

 

 さらに、跳び下がった呼人に向かって、周囲のビルで燃えていた火が飛んでくる。それに対して呼人が大きく尻尾を振り払って撃ち落とすものの、四散した火に囲まれる。

 

「燃えろ畜生が!」

 

 そして、最後に放たれたのは火球。2発のそれが呼人に迫り、着弾して火炎を撒き散らした。

 

「ヒャッハハ! 燃やしてやっ―――」

 

 直後。火球を放つために両手を上げていた、“集団の中程にいた”男の手から、血が吹き出す。

 その右手の、手首から先が無くなっていた。

 

「ハッ、うあぁぁぁぁっ!?」

 

 その原因は、男の後ろに立っていた。その口元には、人間の手が咥えられていた。そしてそれは、人間の手のひらを咀嚼し始める。

 

「ひっ!?」

「く、食ってやがる……!」

「馬鹿な! 火を突破したってのか!?」

「ば、化け物!?」

 

 ヴィランが固まっている中。手を咀嚼し終えた獣人の体表に赤い光が走り、その口から多量の蒸気が漏れ始める。

 

「『HARRRRRR』」 

 

 不気味な唸り声が響く。

 

「ひ、た、助けてくれ!」

 

 ヴィランの1人が、堪えきれずついに上げた悲鳴に、尾白の方にいたヴィランの多数がこちらへとやってくる。

 

「なんだなんだ、情けねえ奴らだ―――」

 

 そう言おうとした男は、言葉の途中に地面に叩きつけられ、沈黙した。

 

「こいつやべえ! 学生なんかじゃ―――」

「燃やせ! 獣化だろうが火なら―――!」

「ヒジャの火の壁を越えるんだぞ!?」

 

 浮足立つ男たちに、半人半獣となった呼人が襲いかかる。凶器である爪や、爪を変化させた刃、そして牙は消してしまい。肉弾戦によってあっという間にヴィランの集団を殲滅してしまった。

 

「……腹減った」

「ほんとに凄いな。俺なんて2人で精一杯だ」

 

 完全に人間の姿になった呼人のもとに、自分の相手を倒してしまった尾白がやってきた。5人相手にはヒットアンドアウェイで攻撃を受けないように立ち止まっていた彼だが、呼人の方へと数名のヴィランが流れた直後の乱れをつき、2人のヴィランを無力化していた。

 

「十分だろ一年でその戦果。ちょっと待っててくれよ」

「ここから離れないのか?」

「1人手首を切断したんだ。そのままにしてると失血死する可能性がある」

 

 呼人はそう言うと、最初に手首を奪った男に近づいて、腰のポーチから取り出した縄でその両手を締め付け止血する。

 

「うわっ……それは、何で斬ったんだ? ナイフ?」

「いや……食いちぎって、そのまま食っただけだ」

「は?」

 

 何を言っているのかと思わず聞き返した尾白に、呼人は改めて言う。

 

「食ったんだ」

「……凄いな。人間の肉ってまずくないのか?」

「舌も獣化させたからな。人間の状態で食うほどまずくはない」

 

 食った、という言葉だが、その言葉に尾白は一瞬顔をひきつらせたものの、それ以上何も言わなかった。呼人は知らないが、彼はクラスの中ではかなり、戦闘に勝つ、のではなく、戦い傷つく可能性に対する考えがしっかりしている。そのため戦闘で出血することもあるだろうと気にしなかったのだ。

 

「これからどうするんだ? とりあえずここから出るとして……。入り口まで逃げる?」

「いや、心配なところを助けに行く。尾白」

 

 話は変わるが、と、呼人は尾白に話しかける。

 

「何?」

「俺は今から、本当の獣の状態に変身する。怖いとは思うが、信じてくれ」

「……わかった」

 

 尾白が顔を引き締めて頷くと、呼人は少し離れて変身を始める。先程は、変化したもののあくまで人間の形に留まっていた肢体。それが人の形を離れ、巨大な獣の形へと変わっていく。

 

「すごっ……」

『背中に乗って、尻尾を絡めて落ちないようにしてくれ』

 

 完全なオドガロンへと変化した呼人から、くぐもったやや低い声が響く。

 

「喋れるんだ……」

『人間の声帯を残したままにしてるからな。乗ってくれ。移動するぞ』

「わかった」

 

 尾白は、特に躊躇いなく呼人の背中に飛び乗ると、その胴に尻尾を絡める。

 

『前傾姿勢になってろ。風がきついぞ』

「……良いよ」

『良し』

 

 四肢が地面を蹴り、力強く加速する。その速度は、チーターのそれを遥かに上回る。

 

「速っ。風が気持ちいいな」

『……怖がらないな』

「ホラー映画は結構得意なんだ」

『……ふっ、なるほど』

 

 モンスター達の中でも、特に不気味な見た目をしているのがオドガロン。その見た目は、他の畏怖を感じさせるようなモンスターとも一線を画す。だが、確かにゾンビ映画なんかのそれを見慣れていれば、いくらか不気味さへの慣れも出来るだろう。

 

「これからどうする?」

『援護に向かいたい奴らがいる』

「……わかった。俺もついていく。でもなんで?」

『助かる。そこだけ前衛がいないんだ。相手次第では非常に不利になる』

「あの一瞬でそこまで確認したのか……本当に凄いな百竜は」

『尾白も落ち着いてくれているからやりやすい』

「心を沈めるのも、武道の目指す所だ」

 

 武道を嗜んでいる尾白は、その戦闘技術だけでなく、心のありようや沈め方を学んでいる。そのため、この緊急事態でも落ち着いて行動が出来ているのだ。

 

「……百竜。なんで相手の腕を、“1人だけ”食べたんだ? 他の敵には切り傷すら無かった」

『……相手に恐怖させるためだ。そうすればお前よりも俺を脅威に見てくれると思った。腕を食ったのはそこが一番無くなっても死ににくいと考えたからだ』

「なるほど。確かに足や胴体じゃあ死ぬ可能性が高い、か」

『ヒーローは殺してはいけないからめんどくさい』

「物騒だよその言い方」

 

 火災エリアの中でも中央付近に放り出されていた2人だが、オドガロンの強力な移動能力によってあっという間にエリアから離脱する。

 

「どこにいるかわかってるのか?」

『匂いか声が届けばわかるが……っ! 降りろ!』

「えっ!?――わかった!」

 

 急に言葉を荒げた百竜に尾白は戸惑うものの、急停止した呼人の背中から急いで飛び降りる。直後、人間に戻った呼人は、右手を大きく変形させると、そこから風の塊を高速で打ち出した。

 撃ち出した方向には水が広がっている。水難エリアだ。

 

 少しして、呼人は安堵したようにため息をはいた。

 

「乗ってくれ」

「何かあったのか?」

「あっちで蛙吹が何かまずいことになってそうだったから、ヴィランを狙撃して止めた」

「っ! 助けにいかないと!」

「いや、オールマイトが来てくれたみたいだ」

 

 そう言った呼人の耳は、大きな翼のような構造へと変わっていた。それが周囲の音を探るようにせわしなく動いている。

 

「来てくれたのか……!」

『あっちは彼に任せておけば大丈夫だ。ヴィランの注意がオールマイトに向いてる。俺達は別の方に行こう。やはり……心配だ。俺達の相手が弱かっただけかもしれない』

 

 呼人は再び尾白を乗せて走り出す。

 

「オールマイトが来てくれたなら大丈夫じゃないか?」

『……相澤先生がやられていた。敵にも手練がいる』

「っ!? 本当か!? 先生は個性を――」

『消しても意味が無い相手がいたってことだ。場所がわかった。こっちだ』

 

 まっすぐ走っていた呼人は、方向転換をして山岳地帯へと走り出す。

 

「誰がいるんだ?」

『おそらく……上鳴と耳郎、八百万の3人がいるはずだ』

「確かに、前衛がいないか」

 

 その3人の個性を思い出した尾白が呟く。3人とも、ある意味支援、補佐的な扱いが主な能力であり、爆豪や切島、飯田のように格闘戦を得意としているわけではない。また、轟のように広範囲制圧が出来るというわけでもない。

 

『急ぐぞ』

 

 

******

 

 

「―――ゲームオーバーだ。……帰ろっか」

 

 まるで、『遊び疲れたから帰ろう』、とでも言うかのような、ヴィランのリーダーの言葉。

 

「た、助かるんだ俺達!」

 

 峰田ちゃんは喜んでいるけれど、私は気味が悪くて安心することが出来なかった。

 

「あすっ、つ……ゆちゃん。どう、思う?」

「気味が悪いわ」

「だ、だよね。こんなことをしておいて簡単に引き下がるなんて……」

 

 

「けどその前に」

 

 

 ――――ヒーローとしての矜持、へし折っておこう。

 

 

 反応出来なかった。気付いたときには、気味の悪い男の手のひらが目の前にあった。

 

(あっ)

 

 恐らく何かの個性。相澤先生の肘を壊していた。けど、この距離じゃあ―――。

 男の手のひらがスローモーションに見える。緑谷ちゃんが私の方を振り返るのも。でも―――。

 

「うっ……!」

 

 直後。男が大きく体勢を崩し、視界が開けた。僅かな風が頬を撫でる。同時に、緑谷ちゃんが男に向かって飛びかかった。

 

「蛙吹さんから、離れろ!」

 

 SMASSH!!

 

 凄まじい音の一撃。でもその一撃は、巨体のヴィランの、壁のようなお腹で止められていた。

 

「え……?」

「へえ? でも俺をふっとばしたのは君じゃないね。まあ良いや、オールマイトのファンだろ? 君。脳無」

 

 緑谷ちゃんの唖然とした声。私もあんなことは言ったけれど、『殺せる用意があるから』なんて言ったけれど、まさか本当に今みたいな攻撃を受け止めるなんて、思わなかった。

 

 呆然とした様子の緑谷ちゃんの腕を、巨体のヴィランの太い腕がつかむ。緑谷ちゃんを取り戻さないと。そう思って舌を伸ばす。

 

 そして。

 

 バァンン!!

 

扉が破られる音。

 

「もう大丈夫。私が来た」

 

 英雄(ヒーロー)が、来てくれた。

 

 ゆらりと振り返ったヴィランの声が小さく響く。

 

「……コンティニューだ―――」




 梅雨ちゃんの一人称視点についてはなんとなくです。主人公中心の三人称から視点を変える時にどうすればいいかなと思ったら、なんとなく梅雨ちゃんしてんの一人称になってました。今後そういう場面が一人称になるのか三人称になるのかはそのばその場で決めます。 


 今後登場するモンスターが増えたり作内での説明が終わった呼人のモンスターの力の使い方なんかに関して説明する話を作ろうと思っています。今すぐどうこう、というわけではありませんが。



*今更かも知れませんが、作品後半においてモンハン世界とヒロアカ世界を交えるためにそれぞれの世界観の根底に対する作者独自の超解釈が出てきます。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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