竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第14話 放課後訓練・1

「ヴィランが来た後なのにやんのかよ!?」

 

 皆のテンションが上がるほど学校っぽいそれだったわけだが、当然懸念の声もある。状況を正確に指摘したのは峰田だ。

 先日は、いつもどおりの警備の中でヴィランに侵入された。だが、体育祭―――それも雄英のものとなると、一般人や報道関係など万単位の人間が校内に入る。先日よりも格段に襲撃がしやすいのは確実だ。

 

 だからこそ、やる。

 

「あえて開催することで、雄英の危機管理体勢が万全だと世間にもヴィランにも示す……ということだ。警備は例年の5倍以上……それに、ウチの体育祭は“最大のチャンス”になる。たかが敵で中止していいものじゃねえ」

 

 体育祭が“最大のチャンス”。その言葉に、皆の目の色が変わる。

 

 かつてスポーツにおいて個人の研鑽を示す祭典であったオリンピックは、“個性”の出現とともにその権威を失った。個々人が同列に立たないことが“個性”によって明確になってしまい、既存のスポーツそのものが権威を失ったのだ。

 だが、その代わりになるものが現代にはある。

 

 それが、『雄英高校体育祭』。それはただ一校の体育祭であれど、規模はもはや体育祭どころか地方競技会の域にあらず。巨大なスタジアムに広大な会場、万単位の観客。そして全国生中継。まさに『現代のオリンピック』。

 

 そしてそれを見に来るのは、何も一般人の観客だけではない。

 

「例年体育祭には、多数のプロヒーローが観戦に来る。しかもその目的は、ただの見学ではなく“スカウト”だ。当然、名のある事務所に入ったほうが経験も人気も得られる。ここで見込まれれば、それで将来が拓けるわけだ」

 

 その言葉に、耳郎と上鳴がヒーローになるための道筋について話す。

 

 高校卒業、すなわちヒーローの資格取得後、まずは1人で活動するのではなくすでに活動しているヒーローの事務所に『サイドキック』という立場で所属するのが定石だ。そしてそのサイドキックは、ほとんどがスカウトから選ばれる。

 

「……そういう事だ。チャンスは毎年1回の最大3回。ヒーロー目指すなら外せないイベントだ。お前ら――時間を無駄にするなよ?」

 

 相澤の言葉に、皆はただその表情で答える。不敵に笑うもの、落ち着き払うもの、緊張を示すもの。だが、全員が体育祭への意気をにじませていた。

 

 

******

 

 

 皆が体育祭への興奮を語り合った昼休みを超えて放課後。

 

 以前の約束を果たそうと障子と呼人が屋内演習場に向かおうと合流したところに、尾白がやってきた。

 

「百竜、障子も。前、屋内演習場に行くって話してたよな?」

「ああ。百竜に戦い方を教えてもらおうと思っている」

「俺も一緒に行ってもいいか?」

「俺は構わないが……」

 

 そう言って障子が呼人の方へと目を向けてくるので、呼人は頷く。協力を請われて手伝うのはやぶさかではないし、何より尾白がここで一番百竜の個性を知っている。特に気にする必要はない。

 

「入り口が騒がしいな」

「ん、他のクラスの人が様子見に押し寄せているらしいな」

 

 聴覚を強化した呼人と触腕から耳を生やした障子は、席にいながら廊下の様子を聞いている。

 

 やがて、爆豪が廊下に出ていって暴言を吐いたことで場が騒然となった。

 

「よし、行くか」

「え、今行くのか? もう少し待ったほうが……」

「今ならヘイトは爆豪に押し付けられる。すっと抜けようすっと。目立つのは苦手なんだ」

「……クラスで一番目立っている男が何を言う」

「障子の言うとおりだ」

「うっ。目立ちたくて目立ってるわけじゃないぞ」

 

 そんな事を言い合いながらも、3人は連れ立って教室の出口へと向かう。扉をくぐると、まだ相当数の人間が集まっていた。

 

「お、宣戦布告の」

「は?」

 

 集団の中に見えた横顔に、呼人は思わず呟いていた。

 

「……なんだあんた」

「A組の生徒だ」

「それは知ってる」

「いや、さっきの宣戦布告を聞いてたからな」

 

 後ろの2人には悪いが、思わず声をかけてしまった。強い決意、それに、憧憬。その細身の男からは、なかなかに勇ましい気配がする。

 

「それで? あんたも自分たちの方が上だって笑うか?」

「いや、笑うつもりはない。ただ―――強くなりたいなら、出来うる限りの事をしろ。その体つきじゃあ俺は本気だと感じないぞ。そういう個性だったら悪いな」

「……恵まれた奴らに言われてもな。俺は俺のやり方で勝つ」

「……上がってこい」

 

 そう言うと、呼人は男に背を向けて廊下を歩き始める。後ろでは、教室から出た飯田が他のクラスの生徒に道を塞がないように頼み始めていた。

 

「……あんな事を言って良かったのか?」

「爆豪もだけど百竜も喧嘩売ってるよな」

「……あいつからは、強い憧れを感じた。本気で狙ってくる。だからアドバイスしたかっただけだ」

 

 そう、それはあるいは、このクラスの誰よりもなお強い、ヒーローそのものへの憧れであるかのように。

 

「目立ちたくないとは?」

「ぐっ」

「目立たない気ないだろ」

「ぐぐっ」

 

 

******

 

 

「……今日は障子と尾白もか」

「はい」

 

 3人が連れ立ってやってきたのは職員室。ヒーロー科の生徒には屋内演習場の使用が許可されているとはいえ、管理の都合上利用する際には担任の教師に言って許可証をもらわないといけない。

 そのため、代表である障子だけでなく呼人と尾白も職員室へと入っていた。

 

「……待ってろ、鍵を持ってくる」

 

 そう言うと、朝よりは包帯の取れた相澤は校長室へと向かって歩き出す。校長の根津は学校の校長であるだけでなくヒーロー科での強い権限を持っているため、呼人の演習場利用を知っている相澤がこんな状況でも許可を出していいのか相談していたのだ。だが、その数が増えたため一応の報告と、そこに保管されている鍵を取りに行ったのである。

 

 相澤が席を離れた後、その場に残されたのは手持ち無沙汰な3人。それに興味を持ったのか、ある教師が近づいてきた。

 

「あなたたち、1年A組よね?」

 

 そちらを振り返った3人の目に映ったのは、学校で見るにはあまりに、その、いわゆる“エロい”コスチュームを纏った女性。

 

 ―――18禁ヒーロー、ミッドナイトだった。

 

 

******

 

 

「校長先生、屋内演習場の利用許可を……」

 

 校長室に入った相澤がそう言うと、校長の根津が鍵を持って近づいてきた。

 

「相澤くんその怪我でお疲れ様なのさ。今日も彼が来たのかい?」

「それと……後2名ほどうちのクラスの生徒が」

「ほうほう。一応名前を教えてもらってもいいかな?」

「尾白猿夫と障子目蔵です」

「なるほどなるほど。それじゃあこれが鍵なのさ! ちゃんと怪我しないように伝えるのさ!」

 

 根津は相澤の体調を気遣いながらも、合理的な問答で必要な情報を引き出し鍵を渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 礼を言ってペコリと頭を下げた相澤は、そのまま校長に背を向けようとする。その背中に、根津は声をかけた。

 

「百竜君が良い影響を与えているのさ?」

「……百竜の影響ではあるでしょうが、あいつは戦うことに重きを置きすぎています」

「他の道も示すのが我々の役目なのさ!」

「……はい」

 

 改めて校長に頭を下げて、相澤は校長室を出る。席まで戻ると、待っていた3人とミッドナイトが話しているのが目に入ってきた。

 

 

******

 

 

「1年A組の障子目蔵です」

「同じく1-A百竜呼人です」

「尾白猿夫です」

 

 授業でしか顔を合わせていない教師に3人がそれぞれ名前を名乗る。一方生徒の方は、全員彼女の名前を知っていた。彼女はヒーローとしてかなり有名であり、後はクラスの変態担当峰田と、ノリの良い上鳴が話している中でよく名前が上がっているのが彼女なのだ。

 

「あなたが百竜……」

 

 思わずと言った風にミッドナイトは呟くが、百竜以外の2人が怪訝な表情をしたことで話を変える。

 

「3人とも、どうして職員室に来たの?」

「……相澤先生に、屋内演習場の利用許可をもらいに来ました」

「ああ、そういうこと。頑張ってるのね」

 

 そうして少しの間他愛のない会話をしていると、相澤が戻ってきた。

 

「相澤先生、真面目ないい子たちね」

「……ありがとうございます。障子、3人分の許可証だ」

 

 相澤が手渡してくる許可証と鍵を受け取り、3人は職員室を後にする。

 

「相澤先生、この段階で屋内演習場を使いたがる生徒って例年いた?」

「……珍しいですね」

「誰のおかげかしら」

 

 いかにも、わかってるでしょ? と言わんばかりの目線。それを相澤は、意図して無視する。

 

「……今年は除籍にしなくてすみそうです」

「……そう。仕事に戻るわ」

 

 望む回答が得られないとわかったのか、ミッドナイトは自分の席へと戻っていった。

 

 

******

 

 

「百竜、こないだの形態が何なのか、詳しく教えてくれないか?」

「こないだのって、お前を乗せた時の?」

「うん」

 

 コスチュームに着替えて屋内演習場に入ってそうそう、尾白がそんな事を言い始めた。

 

「あれか……」

「見せた分は説明してくれるんだろ?」

「そうは言ったけどな……」

 

 確かに呼人はそう言った。それは、一気に個性を全部説明するという、めんどくさいし全部明かすのは避けたいしという2つの理由で、呼人がみんなに提案した条件で、皆もそれを汲んでくれて見たもの聞いたもの以上には聞かないでいてくれている。

 

「……こないだの形態とは何だ?」

「USJのとき、一緒に飛ばされた先で百竜が見せてくれたんだ」

「……俺も興味があるな」

 

 更に障子までこんな事を言い始めた。正直別に障子に見せる分には嫌な事は1つもない。気にするとすれば、耳郎や葉隠など女子に見せる場合だ。女子の方がオドガロンを見た際の生理的な嫌悪感や恐怖は大きいだろう。

 その点障子は、男子の中でも肝が座っているように見えるため問題は無さそうである。

 

「まあ良いけど。障子、お前グロテスクなの……ゾンビとかいけるか?」

「苦手ではないぞ」

「そうか。ならまあ大丈夫か。じゃあ少し離れててくれ」

 

 そう言って距離を取る呼人を障子がそのまま見ていると、尾白がその腕を引いて少し距離を離してくれた。

 

 それを確認した呼人は変身を始める。四肢が赤黒く変化すると共に肥大化し、コスチュームが肌に飲まれる。その顔も変化し、人間のものからかけ離れた――獣へと変わる。

 

 10秒の後、2人の目の前には巨大な獣が立ち、その顔を2人の方に向けていた。そしてそのまま、2人の様子を伺うように円を描いて歩き始める。

 

「っはっ――。正面から見ると迫力が段違いだ」

「……」

 

 そしてその獣―――呼人が変化したオドガロンは、2人の前に座り込んだ。

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