竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第15話 放課後訓練・2

『どうだ?』

「やっぱり、迫力が凄いな」

 

 その異様を以前見たことのある尾白も、正面から正対し、目を向けられて改めて、その巨大さを知る。

 

「……触っても、良いか?」

『良いぞ。背中とか尾は尖ってる部分があるから気をつけろよ。後爪と牙は切れるからだめだ』

「ああ」

 

 感想を述べる前に、障子はオドガロンの体に触りたいと言う。オドガロンの肉体は多少体温が高い程度で触って害があるものでもないため、呼人も許可した。

 恐る恐るではあるが障子が、続いて尾白がその体に改めて触れる。

 

「硬い……」

「……」

 

 尾白がその肉肉しい質感とのギャップに驚く中、障子は脇腹だけでなく背中や尻尾、足先など様々な部分を観察する。

 

「……かっこいいな」

「え?」

『ん?』

 

 つぶさにオドガロンの体を見ていた障子が、そう呟く。

 

「……俺は怪獣や、モンスターが好きなんだ。人に言ったことはないがな」

『ありがとう、と言っておくべきか?』

「俺の方こそ礼を言いたい。この目でこんな怪獣を見れて、良かった」

 

 そう言いながらも、障子はオドガロンの体を仔細に観察する。やがて、障子が満足して離れたところで呼人は人間の姿に戻った。

 

「……これがお前の個性か」

「まあ、な」

「あれ、けどそうすると、あの黒い毛は? 電気を溜めるって言ってただろ?」

「……あれはまた別のモンスターだ。俺がなれるモンスターは一種類じゃない」

 

 その言葉に、尾白と障子が目を見開く。

 

「個性を複数、か?」

「いや、モンスターになるってことは変わらないから、『モンスターになる』っていう個性なんだろう。まあ、正直な所はっきりしたことはわかってないんだ。それに全容は俺にもわかってない」

「え、それじゃあ個性届は?」

「個性学の研究者に『研究の結果わからないことがわかった』って書いてもらった。学校には今のモンスターと黒い毛のモンスターの2つだけ提出してる」

 

 先程ミッドナイトが百竜の名前に反応したのも、それが理由だ。個性の正体がはっきりしない生徒など、前代未聞なのである。

 

「……凄まじい個性だな。それで、別のモンスターというのは」

「それは明日以降だな。お披露目会をしてると訓練する時間が無くなるぞ」

 

 怪獣が好きだという障子が、いつになく前のめりで尋ねてくる

 

「だな。そろそろ、本題に入ろう」

 

 もともとここに来たのは、訓練のためである。途中で話がそれてしまっただけだ。

 

「障子と百竜は、どういう訓練をする予定だったんだ?」

「……以前の実戦演習の際、百竜に格闘戦を鍛えろと言われた。確かに体は鍛えているが、戦う練習をしたことが無い。だからどう鍛えれば良いのかと教えてもらおうと思ったんだ」

「あー、そういうことか。近接戦なあ」

 

 そう言って呼人は静かに考え込む。呼人の格闘戦のそれは、武道のように人間が積み重ねてきたものではない。百竜の中にいる竜達。彼らが人格と人の姿を獲得し、己を鍛えるという行為の実践の過程で見つけてきた戦い方なのだ。そのため、体系だって教えるのが非常に困難である。

 

「俺は訓練の相手は出来るけど、俺自身が体系的に学んでないからあまり教えるのに向いてない。尾白は武道をしてるなら、そういうのに詳しくはないのか?」

「俺も、正直好きで武道はやっているけど実戦のレベルに無いと思う。むしろ、百竜や障子とそう言う訓練ができれば良いと思ってついてこさせてもらったんだ」

 

 互いに教えることの出来るレベルには無い。ならば、簡単な方法がある。

 

「よし、動画を見よう」

「動画?」

「Itubeで?」

「ああ。個性出現以前には、武道や格闘技がかなり流行っていたらしい。個性が出現してからはそれほど流行ってないみたいだが、もともと戦うための技術だから参考になる」

 

 そう言って呼人は、鞄からタブレットを持ってくる。普段は本の方を好む呼人だが、とある用途のために持ち歩いていた。

 

「例えば……格闘技にはたくさん種類があるんだが……これとか、どうだ?」

「武道にはほんとに色んな種類がある。多分格闘技にも、戦い方そのものが違うものがたくさんある。一つに絞らずに色々見て、自分に合ったのを探すと良いと思うぞ」

 

 呼人が再生したのは、ボクシングの初歩の動画。それだけでも、戦うということに触れてこなかった障子には新しい情報が多かった。

 

「なるほど……拳の固め方から考え方があるのか……」

「無茶苦茶にグーにして殴ると自分の手を痛めるからな。俺も昔はよくやった」

 

 懐かしそうに尾白が言う。今の時代武道はかなり廃れており、彼が武道を志してもそれを学べる場所が近くには無かった。そのため、小さい頃むやみやたらと武道の真似事をしたときはよく怪我をしたのだ。

 

「……学ばないと行けないことが色々ある、か」

「後で俺のおすすめの武道をメールで送っておく」

「感謝する」

 

 しかし、そうなると障子が訓練をすることが出来ない。訓練以前に学ばないといけないことが多いのだ。

 

「とりあえず障子は、今日のところは普通のパンチを練習したらどうだ? 体術は繰り返して体に染み込ませないと意味がない。それに、調べたり動画を見たりするのは家でも出来るだろ?」

「……そうだな。せっかく来てもらったのに悪い」

「いや、俺もあんま力になれないで悪いな。とりあえず動きだけは見れるから」

 

 その後、動画を参考にしながら2人から教わった障子が拳を固めてパンチを空に放つ一方で、呼人と尾白は格闘戦の訓練をする。

 

「――! いい動きだ!」

「そっちこそ!」

 

 尾白は四肢に加えて尻尾を使って。一方呼人は、一切個性を使わずに己の実力でもって。特に重たい尻尾の攻撃は受けるのに苦労するが、経験は呼人の方が多く、それが有利となっている。

 

 そして、互いに互いの拳を外に弾いた所で大きく跳び下がった。

 

「少し休憩にしよう」

「そうだな」

 

 屋内演習場の一角を使ってかなり激しめに動き回っていた2人は、一息つくために障子のいる部屋の端の方へと来る。障子は、ひたすらに前に向かって拳を放っていた。

 

「障子、少し休憩しないか?」

「む……2人が休憩するなら俺もそうしよう」

 

 壁際に座り込んだ3人は、それぞれに持ち込んだ水分を取る。

 

「百竜、俺の戦いはどうだった?」

「正直に言っていいか?」

「ああ」

「動きはそれなりに良いと思う。ちゃんと体の動かし方が身についている。でも、動きが『多分こう来るだろうな』って思う通りに来るから予想しやすい。あと、尻尾と比べて手足が貧弱に感じるな」

 

 尻尾があって戦うとすれば、多分こう来るのだろうな。この蹴りの次は、こう来るのだろうな。それが、わかりやすい。俺ならそうする、と思ったとおりに来てくれる。ある意味しっかりしているのだが、それ故にわかりやすいのだ。

 

「わかりやすい、ね。それは尻尾の話?」

「尻尾も、手足も、って感じだな」

「そっか……手足も結構鍛えてるんだけどな」

 

 尾白は苦笑いをするしかない。ただ尻尾があるだけという、言ってみれば没個性だと自分自身でわかっているからこそ昔から体を鍛え続けてきた。尻尾だけじゃなく手足もかなり鍛えている。にも関わらず、それを貧弱だと判断された。確かに普段は大きめの体操服やブレザーを着ているのであまり目立たないが、呼人の体の太さは尾白のそれよりも一回り上に見える。そんな彼から見れば、まだ鍛え方が足りないのかもしれなかった。

 一方、尾白の言葉が気になった障子はそれを尾白に尋ねていた。

 

「手足を鍛える意味は、あるのか? 尾白の場合は尻尾が個性を発現させているから、そちらを鍛えたほうが……」

「いや……俺の尻尾はそれだけで勝てるっていう個性じゃない。むしろ手足に絡めて使う、言ってみれば3本目の腕で、3本目の足だ。身体能力はそのまま出来ることに直結する」

「む……そうか。確かに個性次第、といったところか」

「まあ、轟みたいな相手にはどっちにしろ歯が立たないけどな」

 

 そう、尾白は悟ったように言う。それは、この個性社会の常識。強力な個性に、従来の人間の体は勝つことが出来ない。増強系の個性に対して、違う系統の個性を持つ人間が体で挑もうとしても意味がない。

 

 それが、呼人には理解できなかった。

 

「別に敵わないわけじゃないだろ」

「え?」

「……轟や爆豪の個性は、無理ではないか?」

 

 そう言う2人に、呼人は1つの事実を伝える。

 

「さっき俺が変身したモンスターだけどな」

「ああ」

「うん」

 

「あれに、個性無しで、剣や弓だけで戦いを挑み、討ち取った人間がいる。たった1人でな」

「なにっ?」

「人と戦った事があるのか?」

 

 呼人の唐突な言葉に2人は驚きの声を上げるが、

 

「俺が、じゃないぞ。元のモンスターが、だ。そんな人間がいると聞いて、個性の関わらない体を鍛えても意味がないと思うか?」

「……確かにそれを聞けば、出来ないことはないのだろうが」

「そこまで強くなるのは大変だね」

 

「最高のヒーローになるために、出来ることは全部やるんじゃないのか?」

 

 その言葉に、2人ははっとした表情になる。

 

 自分たちは、何をしていた? 無意識に出来ないと諦め、その理由を常識に求め。そして大変だからと、出来ないと言い張る?

 

 冗談ではない。自分たちは、最高のヒーローを目指す。

 その道に、妥協はない。そのはずだ。

 

「……ひたすらに鍛えるしか、無いのだろうな」

「俺も……もう一回一から鍛え直しだよ」

 

 そう、宣言した2人に、今度は呼人も笑顔を見せた。




小ネタというか外伝と言うか、日常小話というか。
そういう話を本編に組み込もうと考えていたのですが、本編に組み込むのはやめて番外編として適当に書いていきたいと思います。登場人物が人間的、あるいは戦力的に成長する場面で特に書きたいところは本編に入れていきますが、それ以外の演習のちょっとした様子とか、日常の話、あるいは寮での交流とかは“基本的には”番外編で。まあ読んでてうざいなってならないための対策です。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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