竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
―――2週間。
百竜、障子、尾白の3人は、毎日放課後に演習場を訪れては、組み手や体を鍛えるトレーニングなど、個性だけでなくその地力を鍛え続けた。
始めは個性への無意識の信頼があった障子や尾白も、改めて自分の個性と向かい合い、何が出来るか、何に使えるかということを1つずつ確認し、それを体に叩き込む。それは演習場での活動だけでなく、下校時間になった後は反省会をしながら帰り、帰ったらしっかりと栄養のある食事をとったり追加のトレーニング、あるいはイメージトレーニングなどに励むなど、2人の己を鍛えることへの考え方は、以前とは大きく変わっていた。
それに付き合った呼人も、以前よりも更に人間状態での戦闘に注力していた。モンスターに体を一部変化させた際も、人間形態を取るのであれば格闘戦の都合は変わらない。そういう意味では、イメージの中にある動きを実際に外に出してみる、というのは個性の活用ではなく、正に個人の地力を鍛えるのに最適であった。
ちなみに、その間にトビカガチを見た障子がテンションを非常に高めたのは言うまでもない。
背中に乗せてくれと頼まれたときには尾白と違って掴む手段が少ないため『振り落とされる可能性がある』と危惧したのだが、触腕の先に更に腕を複製してリーチを伸ばし、それを体に巻き付けるようにして体を固定したため、呼人もそれなりの速度で走ってみせた。
呼人の思っていたのとは違う歓迎のされ方だったが、それはそれで、悪い気はしなかった。
******
――――そして体育祭当日。
雄英高校を一人の男が訪れていた。
「さてと、一年生の会場は……」
初めて見る場所、更に事前の調べをしてこなかった男は、周りの流れに乗るしか無い。と、その中で見知った顔を見つける。
「おー、シンリンカムイくんじゃないか」
そう言って男が声をかけたのは、他のヒーローと話していたシンリンカムイという人気ヒーローである。街中を歩いていれば人々に声をかけられるような彼だが、今日ここに来ている人間たちは『体育祭』を見に来ているため、周りにヒーローがいても声をかけることがほとんどない。彼が首にかけている警備員の証のネームタグもその一因だ。
「ジ・アドベンチャー、何故あなたもここに? 警備に名前は無かったと思うが……」
「今日は応援だよ。知り合いが体育祭に出場するからな」
「……今日は観客として、ということか」
まだここでの活動時間が短いジ・アドベンチャーだが、同じフリーのヒーローということもあってシンリンカムイとは少しばかり話したり、食事を一緒にしたこともある。
「だから一年生の会場がどこか教えてほしいんだ。どこかに案内付きのパンフレット無いか?」
「一年生ならあっちだ。あの奥の角を曲がると大きな看板がある。パンフレットは入り口で受け取っていないのか?」
「無くても行けるかと思った」
あっけからんと言うアドベンチャーにため息をつき、シンリンカムイは自分の分のパンフレットを渡す。
「ならこれを使え。我は今日は警備だ」
「お、悪いね」
サンキュー、と、呑気な声を上げながらアドベンチャーが去っていく。その背中を見送るカムイに、一緒にいたヒーロー達が話しかける。
「誰ですか? 今のフランクなおじさん」
「ヒーローだ。最近俺達のエリアで活動し始めたフリーの」
「あー、なんか新しい人がいるって言ってましたけど、あの人なんですね」
「実力は?」
「……わからん。あまり主だって活動しようとしない。避難誘導か現場の隔離ばかりやっている」
「……」
シンリンカムイの微妙な評価に、他のヒーローが戸惑った顔をする。ヒーローというのは成果主義的な一面もあり、活躍したものほど認められる。そして成功するために人気もその要素となる。
その中で避難誘導や現場の隔離ばかりというのは……言ってみれば、警察とやっていることは変わらない。それを積極的にするヒーローというのは、珍しいのだ。
だが、シンリンカムイは彼が実力を隠していることに気付いていた。避難誘導など裏方の仕事をしていながらも、常に何かあったときにいてほしい位置にいるのだ。回数が重なるとそれはまぐれにも思えず、個性が強力ではないにしても、慣れがあるのだろうと感じていた。
******
この体育祭では、ヒーロー科とその他の科の公平性を期すためにコスチュームの使用は禁止されており、全員が体操着を着用しなければならない。そのため、A組の面々も体操着を着て控え室にいた。
「お前は……こういうときでも読書か」
「暇な時間は作らない主義なの」
「らしいなほんと」
呼人は、障子と尾白と3人で控室の隅の方に座っていた。普段こういうときに一緒にいる耳郎は八百万や上鳴と2週間の成果の確認や緊張を解すための会話を、葉隠は緊張しているのか一人で深呼吸を繰り返して芦戸達に笑われている。
「少しは緊張しろ」
「ルーティーンって知ってるか?」
「百竜が言うと嘘っぽいけどな」
あくまで読書はルーティーンだと、そう言い張る百竜だが、絶対『読みたい』が強いと2人は看破する。が。
「いや、選手宣誓があるからほんとに緊張してる」
「……そう言えば、入試の1位だったか」
「そそ。人前に出るのは良いんだけど流石に大勢に話しかけるってのはな。慣れてないからちょっと緊張する」
そんな事を話していると、やがて飯田が皆に用意を伝え始める。
「そろそろ入場の時間だ! 皆用意してくれ!」
パタリと本を閉じ、それを控室の棚に置く。普段のコスチュームとは違って、本を保持しておくポケットが体操着には無い。
そして立ち上がり、入場の準備をする。この2週間、呼人にとってはいつもどおりの訓練付の毎日であったが、障子と尾白にとっては、初めて明確に意識して訓練をした。それが、彼らの雰囲気を変えていた。
と。
「緑谷。あと百竜、ちょっと良いか」
そう、轟に名前を呼ばれる。緑谷と轟は少し離れたところにいたので、2人に断って呼人も彼らの所へ移動した。
「緑谷。今の段階じゃあ実力は俺の方が上だが、お前―――オールマイトに目をかけられてるよな」
その言葉に、緑谷の表情がかすかに強ばる。だがクラスメイトはそんなことに気づけ無いぐらいに、続く轟の言葉に圧倒された。
(そりゃあ同じ気配がする。まるで歴戦と幼子のそれだが……同種には違いない)
「別にそれを詮索するつもりじゃねえが、お前には勝つぞ。―――百竜、お前にもだ。お前が勝つつもりがあっても無くても関係ねえ。勝つのは俺だ」
堂々の、宣戦布告。それにクラスのムード―メーカーである切島が反応する。
「おお!? 轟がNO.1宣言か!?」
実戦演習や体力テストでは百竜が勝ったが、その実戦演習で見せた戦い方故に百竜が轟よりも優れていると思っている人間は少ない。あくまで同格。むしろ可能性としては轟の方が抱えている。
「入場前にケンカ腰でどうした!? やめろって―――」
そして、轟を制止に入った切島を、呼人が止める。
「なんだよ百竜」
「こういうのは、本人が答えないと意味がない。俺も、緑谷もな」
「仲良しごっごじゃねえんだ。少なくとも今日はな」
当事者2人の言葉に切島も制止するのをやめ、覚悟を持った表情で見つめる。
そして、もう一人の当事者、緑谷は、拳を握りしめ、勇気を振り絞っていた。
「そりゃあ、僕よりはみんなが……轟くんだけじゃなくてみんなの方が実力は上だよ。客観的に見てほとんどの人に敵わないと思う。でも!!」
覚悟を決めた表情で緑谷は前を向く。
「―――他の科でも本気でトップを狙ってる人がいる。僕だって、負けるつもりはない。――――本気で獲りに行くよ!」
自らを最弱と認めた上で、挑むという発言。そういうの、呼人は結構好みである。人間が、人間だけが唯一持つ、“研鑽”という概念。それに何より感動したのは、その概念を持たなかったモンスター達であり、そして呼人だった。
緑谷の言葉にクラスメイトが歓声を上げる中、轟は静かに頷く。
「ああ……それでも俺が勝つ。で、百竜。お前はこれを聞いても、勝とうとは思わねえのか?」
轟の目的は緑谷にもあったのだろうが、百竜にもあった。そしてそれは、あのときの、ヴィラン襲撃事件直前の会話の、再確認となる。それをクラスで聞いたことがあるのは障子だけだった。
わかりやすいその挑発に、呼人もまた答える。轟は、名実ともに一位となりたいのだろう。だからこその、挑発。それに呼人もまた、己の意思で答える。
「…………前にも言ったと思うが、俺は現段階の勝ち負けに意味があるとは思っちゃいない」
その百竜の言葉に、皆がどよめく。短い間だが、誰よりも真剣にことに臨んでいるのが百竜という男だと、皆思っていた。
だが、呼人の言葉は、更に先を、あるいは、ヒーローになるという目的すら越えた、最大の目標を示すものですらあった。
「今日はあくまで、どれだけ自己を研鑽できたか、どれだけ自分の個性と体を使いこなせているか、を確認するための場だと思ってる。ゴールは3年後―――いや、俺の人生が終わった時、どれだけ俺が俺に満足しているか。だが――」
―――だからといって負けてやるつもりはねえぞ。
不敵な笑みとともに放たれたその言葉に、轟の表情がわずかに変わる。
笑った。目の前の男が、自分と同じステージに立ち、競いあうのだと。そして、自分はそれに挑み、勝ちたい。その、『己の意思の発露』。
―――束縛からの解放は近い。
「……勝つのは俺だ」
「言ってろ。個性の差が戦力の決定的差じゃねえと教えてやる」
互いに、バチバチと火花を散らす3人。
そこに、飯田から入場が告げられた。
3人はそれぞれに別れ、呼人はクラスの集団の後方にいる2人のところへと戻る。
「……あれがお前の覚悟か」
「見ているものが違い過ぎるな。……でも、あんま上ばっかり見てると、足元掬うからな?」
「俺は足腰が一番頑丈なんだ」
「そういう意味ではない」
あえて軽く返した呼人と突っ込んだ障子に、3人の中に笑いが起きる。この2週間をともにしたことで、3人の間には他のクラスメイト以上の関係が出来ていた。
そして入場。まだ入場しないうち、通路で待機しているところに、プレゼント・マイクの声が響き渡る。
『年に一度!! ヒーローの卵たちが全力でぶつかり合う大バトル!! ぶっちゃけお前らの目的はこいつら! 敵の襲撃を見事乗り越えてみせた最高の新星ども!!』
―――ヒーロー科一年、A組だろお!!?
『ウオォォォォォォ!』
プレゼント・マイクの声を合図に入場したA組を迎えたのは、それまで以上の、爆発するような歓声。会場にいる万を越える人間、その全ての注目がA組に集まっていた。天下の雄英高校へのヴィラン襲撃事件は、それだけ大きな話題となったのだ。
『続いて、俺達も負けちゃいねえ!! ヒーロー科B組の入場だ!! 更に普通科―――』
プレゼント・マイクの放送を聞きながら、全ての生徒が会場に集結する。それが終わると、宣誓台に一人の女性が上がった。
ヒールにガーターベルト、ボンテージスーツ、そして鞭。呼人曰く『いわゆるエロい見た目をした』ヒーロー、『ミッドナイト』だ。
「相変わらず凄い格好だね」
「ん、あの格好は目立つのか?」
「目立つっていうか……恥ずかしくないのかなって。まあ先生は慣れてるんだろうけど」
『18禁だからこそだろぉ!?』
何やら峰田がいらない事を言って女子に睨まれている。エロいのが好きなのは理解したから少しは隠せ。
そこに鞭の音が響く。
「静かにしなさい! 選手宣誓! 選手代表1-A百竜呼人!!」
その言葉とともに、呼人の背中を障子が押す。前に並んでいた尾白も通る呼人の背中を押した。
台上に上がった呼人は、ミッドナイトの、そして会場全員の視線を受けながらマイクの前に立つ。
普通の宣誓はするつもりがなかった。
「先日普通科の人に、自分が体育祭で優勝すると宣言された」
突如話始めた呼人に、困惑の視線が集まる。
「俺はそれを笑うつもりはない。あいつは誰よりも、本気の目をしていた」
それは、ヒーローなどではない。人間であることの、証明。
――俺は、ここにいるぞ、と。俺にも目指す先がある、と。
だから呼人は、それに答える言葉を口にする。
「この場にいる全員が、それぞれの目標を持っている。そのための努力を惜しむ人間はここにはいない。ならば、挑んで―――勝ち取れ」
それを聞いた『宣戦布告をした生徒』、心操人使は、わずかに下を向く。ああ、そうだ。俺は、必ず勝ってヒーロー科への編入を勝ち取る、と。
「ヒーロー科だからと驕るな。ヒーロー科でないからと逃げるな。今日は、ここにいる全員がライバルだ」
個人としての百竜呼人の決意ではなく、ここに集まる全ての『今日持つべき決意』を代弁する。
―――今日を、最高の日にしてやろう。
その言葉に一拍遅れるようにして歓声が上がり、ヒーロー科以外からも確かな熱気が溢れ出す。
『やってやろうじゃねえか!!』と。
その言葉を、あるいは不機嫌そうに、あるいは無表情にそれぞれの生徒が受け取るが、それは確かに、全員の胸に響いていた。
(……誰が相手だろうと負けるつもりはねえ)
(モブ共が! 俺が全員蹴散らして1位になる!)
「百竜はいつも新しい考え方を教えてくれるね」
「……あれがあいつの強さの理由、か」
「うちだって、負けるつもりはないし」
「私も、負けないよ!」
そして、それは会場にも伝播する。見に来ているプロヒーロー達こそ冷めた目で見れど、一般客はその言葉に、意気の溢れる言葉と上昇する熱気に歓喜する。
今年は凄いものが見れるかもしれない、と。
「熱が冷めない内に早速始めるわよ!! 第一競技はこれ!!」
ミッドナイトが手にする鞭で指すモニターに、競技名が映る。
第一種目【障害物競走】
最近寝る時間と睡眠量がおかしい……
精神やってる判定を複数人に出されたので病院行きます、そのうち。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない