竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第17話 雄英体育祭・2

「最初の種目は障害物競走よ! 全11クラスによる総当りのレース!!コースはこのスタジアムの外周4キロ! そして、コースさえ守れば何をしたって構わないわ! ほらほら、スタートは早いもの順よ、急ぎなさい!」

 

 鞭を向けながらのミッドナイトの説明に、皆が大挙してゲートに押し寄せる。人数に対してそれは、圧倒的に狭い。スタートする前から勝負は始まっている。

 呼人は、そんな人達の中程に立っていた。

 

(前に急がなくても、長距離のスピードじゃあまず負けない。それに、どうせすぐに動き始める)

 

 人間として鍛えた肉体だけでなく、オドガロンの力を借りれば、まず普通の人間に速度で負けることはない。負ける相手がいるとすれば、飯田か、爆風を利用した爆豪か。だが、この競技は障害物競走。【障害物】があるのであれば、立体機動にも長けた自分にも分がある。

 

 だが、呼人はこの競技で極力個性を使うつもりがなく、それに何より、“この種目には”、絶対にというほどには、勝つつもりが無かった。

 

 それぞれがそれぞれにスタートダッシュの準備をする。

 

 そして、全てのランプが――点灯した。

 

 一斉に飛び出す生徒。そしてその全員がもれなく、詰まった。それはもうみっちりと。明らかにキャパシティオーバーな人数がゲートに詰めかけたのだ。

 前方は少しずつ人が抜けていくが、全員が抜け切るには時間がかかる。

 そして、それを悠長に待ってやるほど、あいつらは優しくない。

 

「止まってろ」

「どけモヤモブ共!!」

 

 前方の、すでにゲートをくぐり抜けた選手たちから悲鳴や怒号が響き渡る。

 

「きゃっ!? 足がっ!」

「冷たっ! 凍らされた! ちくしょう!」

「あいつやりやがったぞ!」

 

 周りを巻き込んで足元を凍結させながら走る轟だが、狙うは緑谷と呼人含めたクラスメイト。だが、前方から飛び出した緑谷は他のヒーロー科のメンバーの中に見えるものの、まだ他科の集団に埋もれている呼人の居場所をつかめなかった。

 

「あいつ、どこに消えた?」

 

 そしてその隙を、こいつらは見逃さない。

 

「そううまく行かせるかよ半分野郎!!」

 

 爆豪が。

 

「甘いですわ轟さん!」

 

 八百万が。

 

「一回見せてもらったからね!

 

 尾白が。

 

「うぉっと危ねえ!」

「轟のウラをかいてやったぜ!」

「溶かせば大丈夫だもんね!」

 

 そしてクラスの皆が。

 

 一瞬仕留めに戻るか躊躇った轟に追いすがる。

 

「お前らなら当然だろ」

 

 だが、それは轟にとっては予想の範疇。この程度で『自分の』クラスメイトが脱落するとは思っていなかった。誤算があるとすれば、予想以上にB組や他の科の生徒の反応が良かったこと。そして、百竜の位置が把握できていないこと。

 

 だが、勝つためにはそこに拘ってはならない。まだ先頭にいる轟は、足場を凍らせて利用しながら走り始めた。

 

『やっぱり抜けてきたなA組ィ!! 担任としてどうだ“ミイラマン”?』

『……休ませろ』

 

 一方その頃の実況席では、プレゼント・マイクと無理矢理につれてこられた包帯ぐるぐる巻の相澤が並んで座っていた。

 

『このレースの様子は各所に設置されたカメラロボがきっちりお届けするぜ!』

 

 プレゼント・マイクはただ会場内での実況だけでなく生放送向けの解説も交えるため、少しばかり忙しいが、その合間にもきっちり実況をしていた。

 

 

 ******

 

 

 一方後方集団の呼人。轟がいなくなったことでようやく飛び出すことが出来るようになった後方集団が続々とゲートから飛び出し、呼人も続いて飛び出す。

 

 この体育祭では体操着やシューズの着用が義務付けられているため、グリップ力のある爪を使ったり、体操着に収まらないほどの人獣形態に変身して走る事はできない。

 

 だが、完全に人間の状態でも走る速度で負ける気はしない。

 

「もっと気合入れて走れ!」

 

 そう周囲に叱咤しながら、綺麗なフォームで走り抜けていく。個性をあえて使っていないためその速度は人間の範疇に収まるものではあるが、4キロを走らなければいけない事を考えると相当に速い。

 

「あいつ、ただ走ってあのスピードか!?」

「なんかの個性使ってるんだろ!」

「個性使ってあんなんじゃあヒーロー科の首席になんてなれないでしょ?」

「じゃ、じゃああいつ、ただ足が速いのか?」

 

 それを見た普通科や経営科の生徒達も奮起した様子で走る。だが、呼人との距離はどんどん開いていく。

 一方の呼人は、すでに前方に先行した集団の背中を捕らえていた。

 

 

 

 その頃の前方集団。

 

『最初の関門、第一の障害物は“ロボ・インフェルノ”ォォ! ヒーロー科の入試で出てきた敵代わりのロボットだ!』

 

 コース上に出現した入試の仮想敵、しかも0Pの大型の大群に進路を塞がれていた。

 

「一般入試用の仮想敵ってのはこれのことか」

「ヒーロー科はこんなのと戦ったってのか!?」

「無理だぁ、勝てるわけがない!」

 

 プレゼント・マイクの放送と轟の呟きに、周囲の他科の生徒が反応する。

 

『ただの長距離走じゃねぇぞ、障害物競争だ!! どんな障害物が出てくるか、油断するなぁ!! 第一関門の始まりだリスナー達よぉ!!』 

 

「戦ったけど戦ってないよ! あの時は逃げただけ」

「私は助けられただけ。でも今は、自分で切り抜ける!」

「あの時は恥ずかしい姿見せちゃったからね」

 

 他科の生徒が心折られる一方で、ヒーロー科の生徒たちの意気は強い。入試の時は、ただ逃げ出すだけだった。だが、今ならば、と。

 

 やはりと言うべきか、最初に動き出したのは轟だった。

 

「どうせならもっとすげえもん用意してくれ」

 

 地面に手をついた彼の手から氷が走り、正面の巨大なロボットを凍りつかせる。ロボットは機械で駆動しているため凍結に弱い。その完全に機能停止したロボットの足元をくぐり抜けて轟は先へと進む。

 

「ロボットが止まった! 今なら……!」

 

 そして、それに便乗しようとするものも現れる。当然以前は逃げる対象だった仮想敵が障害として現れたとはいえ、何も地力で倒す必要はない。ただ、障害は障害らしく切り抜ければ良いのだ。

 

 だが。

 

「適当に凍らせたからすぐ倒れるぞ」

 

 凍りついていたロボットが大きく体勢を崩し、便乗しようとしていた生徒の頭上へと倒れ込む。

 

『A組轟! 攻略と妨害を一度に決めたあ!! こいつは―――』

 

 プレゼント・マイクの言葉の最中。他の生徒の頭上へと倒れ込もうとしていたロボットの倒れる向きが変わり、後方のロボットへと突っ込む。

 

 それを為したのは、遅れて到着した勢いのまま後方から飛び出した呼人。ロボットの支えとなっていた足元に衝撃を与え、角度をずらしたのだ。

 

「倒す方向考えろよな!」

 

 前方を行く轟にそう叫ぶと、呼人もまた先へと足を向ける。

 

『轟の妨害を同じくA組百竜が突破ァ!! ヒーロー科入試1位の実力は伊達じゃねえ! だが今回は、0Pをぶっ壊すのはお預けかこの野郎ォ!!』

『……壊せば良いものじゃないだろ』

 

 そして、その先行を許さないのが、A組の生徒たち。

 

「先に行かせるかよ!」

 

 爆豪が爆風を利用してロボットの群れを上から突破し、似た機動力をもつ宵闇と瀬呂がそれに続く。

 

「前は任せるぞ尾白」

「ああ、任された!」

 

 尾白と障子もまた、2人で連携して突破しようとしていた。前に出た尾白が前面の敵を押しのけ、目を複製した障子が最適なルートを探る。

 

 A組全員が思考を止めること無く、それぞれのやり方で前を目指そうとしていた。

 

『さあ盛り上がってきた障害物競走!! 一抜けすんのはどいつだ“ミイラマン”!!』

『……勝負は最後までわからん』

『模範的な解答センキュー!!』

 

 盛り上がる放送と観客席を尻目に、先行する轟とそれに追いつきそうな爆轟が二つ目の障害物に到達する。

 

『最初の関門はちょろかったか!? なら今度は何もないなんてのはどうだ!? もちろん地面もない、ってなわけで第二の関門は『ザ・フォォォォォル』!!! 奈落に落ちたら即アウトの綱渡りだ!!』

 

 2つ目の関門。先程と違って『地面すら無い』障害が、選手たちの目の前に広がっていた。

 

 

******

 

 

 一方その頃、観戦している教師陣。今日の体育祭においては教師のすることはそれほど無いので、手の空いている教師は集まって競技を観戦していた。

 

「飛び出すのはA組の子たちですね」 

「他の科やB組も決して悪くはない! だがやはりA組は――」

「立ち止まる時間が少ない、ですね」

 

 13号とオールマイト。あの敵連合襲撃事件を生徒たちと一緒に突破した2人が話していると、セメントスも話に参加してきた。

 

「良い方向に作用してくれて幸いでした」

「うん……」

 

 全体を見ながらもオールマイトの目は、定期的に緑谷の方へと向く。2人の関係上当然のことだった。

 

「しかし、先頭の2人は予想通りの活躍として、3番目の彼、百竜くんは何故個性を使わないんでしょうか」

「確かに。彼の個性ならもっと早く走れるだろうね」

 

 セメントスと13号の会話に、オールマイトは先日の基礎学の授業後の百竜との会話を思い出す。

 

 相澤と校長と共に検証記録を再現させてもらったと伝えた後、自分は気になったことを尋ねる。

 

『百竜少年はすでに制御できてるものも多いだろうに、何故全力で使わないんだ?』

 

 他の生徒に聞こえても問題ないようにぼかして尋ねた自分に、彼は答えた。

 

『人間って、個性なんてなくても凄いんですよ。ただ剣や弓だけで、俺がなれるようなモンスター達と戦って、討ち取ってきた。だから、個性が強くなければ駄目だっていう風潮にケチをつけてみたいだけです。ただの人間でも、個性が弱くても、戦い方を工夫すれば、たゆまぬ努力をすればこれぐらいのことは出来るんだ、って。今は廃れちゃってるけど、個性が出てくる前の格闘技とか、武道とか、ホントに凄いと思います。まあ俺のくだらないこだわりなんで、使う時は使いますよ』

 

 他の教師にその答えをそのまま伝えてしまうのは、彼の個性が秘匿されている以上はばかられる。だがオールマイトは、その答えをとても美しいものだと感じていた。

 

「彼は、人間が凄いということを他の生徒達に見せつけてやりたいそうです」

「人間が凄い、ですか?」

「ええ。『個性が強くなければ駄目だっていう風潮にケチをつけてやりたい。ただの人間でも、個性が弱くても、たゆまぬ努力をすればこれぐらいのことは出来るんだと見せつけてやりたい』と言っていました。個性が出てくる以前の武道や格闘技についても詳しいようですから、彼は『個性を除いたただの人間』の可能性を、示そうとしているんだと思います」

「……それを、彼のような個性の持ち主が言っているのが面白いですね」

 

 まだまだ制御する余地を残した個性。それを持つ彼が、個性の無い人間の可能性を謳う。そんな大きな矛盾を孕んだ理想。

 

「思えば、私達は個性が出現して以降個性を効率的に使うことばかり考え、それまで培ってきたものを失っています。彼は、それが気に入らないんでしょう」

 

 それはおそらくは、モンスター達と対等に渡り合ったという人間の“強さ”を知っているから。だがそれは、まだ彼らには秘密だ。それでも、オールマイトにはそれが少し嬉しかった。

 自分はヒーロー足らなければならないという自負がある。だが、彼の理想は、『人間はヒーローなんていなくても強く生きていける』というものだ。人々を愛するオールマイトだからこそ、そんな自分には無かった考えが、新しくて、少し嬉しかった。




あれ、オールマイトって他の教師に対して敬語だっけどうだっけ?(トゥルーフォームのとき)

呼人の目指すところには、ハンター達の影がちらつく……。
モンスターの力を持ちながら、だからこそ誰よりも人間の可能性を信じてる、なんてベタな信条を呼人は持っています。このモンスターと人間の対比はしっかり書いていきたいところですね。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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