竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第19話 雄英体育祭・4

 時間となり騎馬を組み始める中で、心操が2人に新しい指令を伝える。

 それは、絶対に指示に従うこと。例え『ハチマキを取られそうになったとしても』。

 尾白は反論しかけるが、心操の信じろの言葉に自分の言葉を飲み込む。チームのブレインは心操だ。そう、チームで決めた。なら、それを聞くのが自分のすべきことだと、そう尾白は確認する。

 

 呼人のように割り切れるわけじゃない。洗脳をかけられたのは許せないし、洗脳はずるいと思う。でも、呼人が言ったとおり、それは彼の個性なのだ。自分が尻尾を使うように、呼人がモンスターに変身するように、彼は人を洗脳する。呼人との短い会話からでも、彼が何か鬱屈した感情を抱えているのがわかった。

 

 だが、それらは今は関係ない。チームを組み、彼に上を託したから彼に従う。そうあるべきなのだ。自分たちは仲良しゲームのためにここにいるわけじゃない。

 

「良し、行こう百竜、心操」

「おう」

「……当たり前だ」

 

 

******

 

 

 騎馬を作っている最中から互いに戦力の見定めは始まっている。やはり注目を集めるのは、1位緑谷の騎馬。騎手として緑谷が乗り、その下に麗日、常闇、サポート科の発目が騎馬を組む。

 

 そして2位轟と3位爆豪も騎馬として3人揃え、最大人数の4人騎馬。それもA組のメンバーばかり集めて、連携の出来る戦力を揃えてきている。

 

 そして2チームが狙うのは当然1位の緑谷、1000万ポイント。

 

「ぶっ潰す!」

「全部俺が取る」

 

 その意気込みや十分。緑谷の騎馬だけでなく、他も圧倒して優勝する気満々だ。

 

「百竜は―――どういうことだ?」

 

 一方、皆の注目を別の意味で集めたのは、4位、百竜の騎馬。いや、正確には百竜の騎馬ですら無い。上に乗るのは、ヒーロー科ではない人間。彼の実力を考えるとあまりに不自然な人選で。

 

 それが周囲の疑念を掻き立てた。

 

「百竜が普通科を乗せてる? なんかあるね」

「あのチームからは目を離さないでね!」

 

 耳郎と葉隠は、百竜の普段を知るゆえに。

 

「百竜さんは油断出来ませんわ」

「ああ。だが好都合だ。あいつが下にいるなら潰せる。頼んだぞ上鳴」

「ああ、才能マンには負けねえ! 百竜に効かなくても他の2人に効けば騎馬は止まるぜ」

 

 轟と八百万は、得体の知れない相手として。

 それぞれに警戒する事を念頭に置く。

 

 一方、それを良いチームを組むことが出来なかったのだと侮る者たちもいた。

 

「4位は脱落、と。早い段階でハチマキをもらっておこうか」

「ああん? 4位のやつがらしくねえことしてやがるぞ! 良いのは威勢だけみたいだな!」

 

 そして当の心操騎馬の面々は、少しばかりの誤算を感じていた。

 

「あんた、思ってた以上にヘイト高いな」

「いやー、個性使ってないのに調子乗って走ってたら4位になってたんだよ。こういうルールってわかってたらもう少し順位落としたんだけどな。まあ、身体能力の限界値も試したかったし」

「……やっぱあんたすげえよ」

「は?」

 

 百竜の疑問に答えず、心操は内心笑う。自分の個性は、とてもヒーロー向きなものではないと思っていた。だからその個性をさながらヴィランのようにすら使ってでも、『なりふりかまわず』ヒーローになってやると。

 

 だがこの百竜というやつは、個性を全く使わないで、鍛え抜いた自分の体だけで、化け物ヒーローの卵共が集まるこの体育祭で個人種目4位を取ったという。諦めていた自分を笑うかのように。

 

「……序盤はばれない程度に情けないふりをしろ。ついでにハチマキも取らせる」

「あいさーリーダー!」

「演技、苦手なんだよな……」

 

 また難しい注文を、と尾白が引きつった笑みを見せる。それならまだ、必死に逃げ回って捕まるなという指示の方がやりやすかった。

 

「バレたって問題ない。細かいやり方はそっちに任せる」

 

 心操は、『完璧に演技で騙せる』などとは思っていない。ただ、騙されるやつと騙されないやつ、意識するやつと意識してないやつ、それを見定めるのが自分の役目だ。

 

(俺は―――ヒーローになる)

 

 

******

 

 

『行くぜエビバディ!! 一瞬たりとも目を離すな!!?  ――スタァァァァト!!!』

 

 プレゼント・マイクの、試合上での合図に合わせた放送とともに、第2種目、騎馬戦が幕を上げる。

 

 最初はうまく動けないふりに徹するため個性を使用せず、尾白とともに適度な速度で試合上の端の方でフラフラしている。それが心操の指示通りの動き。外縁からどのチームの連携が良いか、そしてどのチームが何ポイント持っているかを、逐一把握していく。

 刻々と変わる戦況に、だが心操の頭脳はその全てを把握しようと動いていた。

 

 一方試合上の中央付近では、すでに試合が大きく動き始めている。狙われるのは当然―――

 

「実質それの奪い合いだおらぁ!!」

「はっはっはっー! もらっていくよ緑谷くん!」

 

 開始直後に至近にいた2チームが、緑谷の騎馬へと群がる。これを、緑谷達は急いで引き離さないとまずい。

 

「右方向に逃げるよ!」

「承知。ムッ――!?」

「足元が沈んでる!?」

 

 その原因は、緑谷を狙っている騎馬の一方、鉄哲の騎馬の一人。B組の推薦組――すなわち轟や八百万と同格の“骨抜”の個性。

 緑谷チームの足元が、ぬかるみにハマったように沈んでいく。

 

「あの人の個性! 麗日さん、発目さん顔そらして!」

 

 直後。麗日の個性によって軽量化された緑谷の騎馬が、まるごと空を飛んだ。

 サポート科発目の開発した『ベイビー達』だ。

 

「どうですか私のベイビーは!!」

 

 非常に楽しそうである。下からの攻撃は、全方位を防御可能な常闇の個性がカバーする。

 

 だが、着地した緑谷チームにまだ追手は迫る。彼らを狙っているのは、何も最初の2組だけではないのだ。

 

 

 

 一方そういったもろもろを、試合上の端からのんびりと観戦している心操一行。狙いやすい相手が来たと行く先々で近くの騎馬に狙われ、すでにハチマキは残り1つになっている。

 

「あんたら、というかとくにあんた、知り合いであんたをはっきり警戒しているやつはいるか?」

 

 残り一枚のハチマキを守り、他の騎馬に追手をなすりつけながら観察を続ける心操が前側の騎馬の呼人に尋ねる。

 

「轟、というより八百万が警戒しているな。轟は俺に負けねえと宣言してたから見ているだろうが、警戒という意味では少し薄い。後はあの透明の騎手がいるところと、でかい男が一人いるところは―――」

「障子と葉隠だな」

 

 わかりやすいようにあえて特徴で説明した呼人に、心操はあえて名前で答える。ちゃんと名前ぐらいは覚えてるから心配するな、と。

 

「そういうことだ。特に障子は俺と尾白が組んでるから警戒すると思う。一応組まないようにするって約束だったからな」

「なるほど」

 

 端的に返した心操は、頭の中で今から駆け抜けるルートを策定する。近づきすぎず離れすぎず、多くのチームに百竜を見せつけてどれぐらい反応するか。

 

「にしてもあんた、背が低いな。乗りにくい」

「コンプレックスだ黙ってろ馬鹿野郎」

 

 騎馬が2人ということもあって、心操はしゃがみ込んでバランスを取っていた。

 

「よし、一旦中央に突入するぞ。指示のとおりに動いてくれ。周りの出方を見たい」

「オーケー」

「流石にちょっと飽きてきた」

「目立つのは禁止だ。なんなら最後の一枚もくれてやって構わない。10メートル左に移動してからまっすぐ突入だ」

 

 心操の指示するままに、2人は横へと移動していき、ちょうど空白地帯になっているところへと突入する。

 

 それに対する反応は様々だ。その突入に気づかないか、あるいは目すら向けないもの。

 気付いて目を向けるものの気にする価値なしと目を外すもの。

 そして、その突入に反応し、距離を取るように動き始めるもの。

 

(流石に中から全部見るのはしんどいな)

 

 外から観察しているときと違って、内側へと突入したために視界が遮られ、心操の状況把握も困難になる。だが彼は、的確に移動ルート指示していった。突入する前にすでにルートは定められており、後は『動いた敵』に合わせて少しずつ変更するだけ。全体を見なくても大丈夫なのだ。

 

 そして残りハチマキ1枚で、どこにしかけるでも無くウロウロと戦場を動き回っている心操騎馬に目をつけたものが数名。

 

「障子、今なら百竜の騎馬取れるって! 後1枚しか無いぞあいつら!」

「あと1枚なら必死に守ろうとするんじゃないかしら」

「違えだろ!? あと1枚ってことは、爆豪や轟たちがこっちにいるのに取られてるってことだろ!?」

「しかし―――」

「それもそうね障子ちゃん。どうせ私達も残ってないし、狙ってみましょ」

 

 気づかぬ内にハチマキを失い、すでに失うものが無くなった障子、蛙吹、峰田の騎馬が、近づいてくる心操騎馬に狙いを定めて動き始める。

 

 だが、その前に心操騎馬に襲いかかる別の騎馬があった。

 

 

「3時から4時、回避!」

「オーケー」

「背を向けよう!」

 

 フラフラと中に侵入した心操騎馬に狙いを定めたのは、B組学級委員長拳藤の騎馬だ。

 

「チッ!」

 

 接近される直前に気づき、尾白の尻尾を守りに逃げに回ったものの何かが宙を飛んで遠距離攻撃をしかけてくる。更に、それをしゃがみ込んで腕ではねのけようとしていた心操の体が、何故かその場に止まって騎馬が動けなくなった。

 

「個性にはめられた。迎え撃つぞ」

「あいよ!」

 

 心操の指示のもと、騎馬を反転して相手を迎え撃つ。と。それを行動に移した瞬間。

 

 後方から伸びてきた何かに、最後のハチマキを持っていかれた。

 

「10時方向に進め」

 

 だが、ハチマキを取られても心操は動揺することなく次の指示を出す。そしてそれに、呼人も尾白も捨て台詞を吐きながら従う。

 

「くそったれ!」

「やられた……!」

 

 ハチマキを取ったのは、拳藤の騎馬に遅れて接近してきた障子らの騎馬。射程距離の長い蛙吹がいるため、距離が離れた位置からでもハチマキを狙うことが出来た。

 

「やったぜ! ハチマキゲット! 障子、早く囲んでくれ!」

「ん、ああ……」

 

 峰田の言う通り、障子が触腕を広げて背中に乗せた2人を囲う。騎馬1、騎手2。それが体格差を生かした障子達の騎馬の作戦だった。

 

「障子ちゃん、浮かない顔ね」

「……ああ。百竜が、何か狙っている」

「は!? あんな簡単に取られてるのにかよ!?」

「峰田ちゃん、この競技は最後にハチマキを持ってれば勝ちなのよ」

 

 どこを目指すでも無くフラフラと。まるで何かを“観察している”かのように。離れていく騎馬が、とても“負けそうな”騎馬には見えなかった。

 

「……もうあの騎馬には近づかない方が良い」

 

 

******

 

 

 心操騎馬がフラフラと観戦している頃、他の場所でも大きく動き始めていた。

 

『1000万に群がる騎馬を轟が一蹴! まるで取るのは俺だと言わんばかりの所業だ!!』

『上鳴の放電で動きを止めてから凍らせたな……障害物競走で避けられたのをきっちり活かしてる』

『ナイス解説!! さあ追い詰められたぞ緑谷チーム!!』

 

 プレゼント・マイクの言うように、1000万ポイントをまだ保持したままの緑谷の騎馬に群がる他騎馬を、轟の騎馬が一掃した。

 上鳴の放電で痺れさせてからの、轟の氷での固定。

 その間に緑谷の騎馬は逃げようとするが、先頭に飯田を据えて機動力を確保した轟の騎馬の方が速い。

 

 動きを止めた騎馬からハチマキを奪ったことで轟は十分なポイントを獲得していたが、狙う手を休めることはない。

 

「獲るぞ緑谷!」

「なんとしても1000万(これ)は守り切る! みんな行くよ!」

 

 

 一方、緑谷、轟騎馬同様1位を獲るために1000万を狙っていた爆豪騎馬だったが、途中で方向転換して厄介な相手とぶつかっていた。

 

「ぶっ殺す!」

「わお、怖い怖い。まるでヴィランに襲われてるみたいだ」

 

 爆豪の相手をしていたのは、B組物間の騎馬。漁夫の利を狙って1000万を取ろうとする騎馬のハチマキを奪って回っていた彼らだが、物間の煽りが爆豪にクリーンヒットしたために爆豪騎馬と相対することになっていた。

 

 だが、物間は余裕を崩さない。なぜなら、自分が個性で“負けることは”無い。

 

 

******

 

 

「よし、そろそろ行くぞ」

 

 残り時間は一分を切っていた。緑谷、轟騎馬は、轟の囲った氷の中で1対1のバトルを繰り広げており、観客の目もそこに釘付けだ。

 

 序盤にはまだ注意を集めていた百竜だが、存在感を消すことに徹していたおかげで完全に注目は他へとそれていた。もはや心操騎馬を見る相手はいない。

 

「大丈夫なのか?」

「ポイントが良い具合に集まってる。大丈夫だ」

 

 そして、心操の合図で騎馬が動き始める。すでに狙いは定めた。後はきっちりはめるのみ。

 

 足音を立てすぎないように、そして警戒されすぎないように、着実な足取りで側面から狙う騎馬へと接近する。

 

 そして心操が、声をかけた。

 

「なあ鉄っぽいあんた」

「あ?」

 

 躊躇なく心操の声に答えた目的の騎馬の騎手、鉄哲は、あっさりと心操の洗脳にかかる。

 

「かっこいい個性だな。そこの蔓っぽい個性のあんたも、良い個性だ」

「? ありがとうござい―――」

「先頭のあんたはものを柔らかくする個性か?」

「教えると思―――」

「後ろのあんたは、どういう個性だ?」

「お前、なんでそんなに話し―――」

 

 狙ってくる気配の無い心操騎馬に、警戒はするもののその問答に、騎馬の塩崎、目抜、泡瀬も答えてしまった。そして全員が心操の洗脳下に入り、動きを止める。

 

「よし、近づけ」

「ほんとに初見殺しだよ心操の個性は」

 

 説明を受けた時点で、そして自分が問答無用で洗脳下におかれていたために尾白は彼の個性の厄介さを認識していたが、改めて見るとその凄まじさを実感する。ほとんどのヴィランは、彼に声をかけられた時点で終わりなのだ。

 そんな彼が、普通科にいる。試験の形式仕方ないとは言え、それが尾白には不思議だった。

 

 そして、終了のホイッスル。

 

『TIME UP!! 試合終了だ!!』




最近投稿するのが何かこのあとがきに書いて皆さんに届けたくなってから、ってのが多いです。

今回は今書いているあたりで、『物理エネルギー』と『古龍の操る未知のエネルギー(生命エネルギーとも言うやつ)』と『属性エネルギー』が混ざってエネルギーのゲシュタルト崩壊になってきたのでぐちを。

自分で考えた設定だけど書くのが辛い! でもそういうの考えるの楽しいんだよねえ。

ということでどうでしたか最新話。なんというか、心操は鬱屈し過ぎだと思うのです。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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