竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第22話 雄英体育祭・7

 気絶している芦戸を空きの控室へと運んできた。予備の控室であるため、ここには誰もいない。

 

「おいてったらまずいよな」

 

 流石に気絶した相手を置いていくほど呼人も鬼ではない。ただ、いつも何らか携行している本を置いてきてしまったため手持ち無沙汰ではある。

 そのため、普段はそれなりの感覚で続けている訓練を高速で行うことにする。

 

 それは、体の一部をモンスターのものへと変化させては戻す訓練。ただ一種類だけでなく、例えば足の骨はオドガロン、腕の骨はイャンガルルガ、背骨はまた別のモンスター、と言ったように、様々なモンスターの力を同時に、そして好きな量だけ制御できるように訓練し続けているのだ。

 人間に戻せば全て元通りになるという個性の特性上やっていられる修行でもある。ただ、昔は骨を変化させた時に足の筋肉を傷つけたり、内臓を変化させた時に接続が崩れたりと大変なことになっていた。それをモンスター達の協力を受けて、出来るようにならしているのだ。

 普段は命に関わるような場所は避けているものの、ある意味命がけな訓練であることに間違いはない。だが、それだけ呼人は、モンスター達の力を制御しきろうと努力していた。

 

 と。しばらくしたところで芦戸の息遣いが変わったことに気づく。だが、彼女は目を閉じたままだ。そこで呼人は、わざとらしい口調で独り言を言う。

 

「電気流してみるか。そしたら目覚ましそうだし」

 

 そう言って音を立てて立ち上がると、芦戸が大慌てで立ち上がった。

 

「起きてる起きてる、百竜起きてるから!」

「寝た振りは感心しないぞ」

「あはは、何してるのか気になったからつい聞き耳立ててた!」

 

 いつもよりも更に明るい芦戸だ。

 

「何か、気になってるのか?」

「え?」

 

 静かに聞いた百竜の言葉に、芦戸は素で疑問の声を出していた。

 

「いや、いつもよりも明るいからな。何か考えてるんだろうと思ったんだ」

 

 それだけではなく、匂いや動悸、他色々。それで人を探ってしまうのは、呼人のあまりよろしくない癖だ。

 

「あー、まーそうだね。……うん。気になってる」

 

 そう言って深呼吸をすると、芦戸は話し始めた。

 

「百竜は、さっきの試合本気出してた?」

「……いや」

「だよね。絶対本気じゃなかったもん。でも……私は、歯が立たなかった」

 

 そう言う芦戸の表情は、いつもの底抜けに明るいそれではない。

 今にも泣き出しそうな、少女の顔だった。

 

 それを見た百竜は、ガシガシと頭をかく。確かに自分の個性や過去は秘密にはしておきたいものである。だが、人を、友人を泣かせてまで全てを隠し通すべきだとは、思わない。

 

「あー、芦戸?」

「……何?」

「俺の個性の話なんだけどな。昔は今みたいに人間の形にしたり、自分の好きな部分だけ変化させたりとか出来なかったんだ」

 

 悔しいと。そう泣きそうになる芦戸に、呼人は自分の言葉で説明する。こういうときに限ってモンスター達はだんまりを決め込んでいた。

 

 呼人は腕を、まだ溶けた跡の残っている赤黒いものへと変化させる。

 

「うすうす気付いてると思うけど、これは普通の動物じゃない」

「うん。だってそんな動物、私知らないもん」

「で、昔一回、個性が出たばっかりの頃に制御できもせずに変身して、色んな物を壊したんだ」

「色んな物、って?」

「それはまだ秘密だな」

 

 何でよ、という顔で芦戸が見てくる、というか実際に口に出しているが、呼人は続きを口にする。

 

「その後、多分3歳ぐらいの頃から日本のプロヒーローやってた人に手伝ってもらって、自分の個性で出来ること把握したり、個性の制御したりする練習をずっとしてる。今も、この瞬間もやってる」

「この瞬間、って、今話してるのも?」

「そう。基本的に常時、だな。寝る時は流石に出来ないけど。例えば今右腕、中の筋肉が半分ぐらい変化してる。左足は足の腱。右足は骨。で左腕は皮膚と血管。そんなのを、ずっと繰り返してきた。個性を少しでも自分のものにするために」

「そんなの、ずっとって一年が365日で一日寝るのが8時間ぐらいだから???」

 

 その飛び抜けた内容に、芦戸が混乱を来したので呼人は一旦落ち着かせた。

 

「それで、流石にこうやって人間の形に抑え込むと、完全に変化したときと比べるとどうやっても力が落ちる」

「それは、うん」

「だからただ強くなりたかった俺は、個性を調べるのを手伝ってもらい初めてすぐに、戦うのも鍛え始めた。体はどう鍛えると良いか、どんな技を使ってくる相手とはどう戦えば良いか、とかな。それは流石にずっと練習出来るわけじゃないけど、家に帰ったら毎日やってるし、本読んでる間とか暇な時間とかはずっと頭の中でイメージトレーニングしてる」

「ずっと……」

 

 まあだから、と、呼人は頭をかいて言いたかった事を伝える。

 

「これで負けてたら俺の10年以上は何だったんだって話だからな」

 

 お前が負けるのは仕方ない、と。とても慰めようとしているとは思えない呼人の言葉に、芦戸はつい吹き出してしまった。

 

「百竜、それ慰めるつもりあるの?」

「んや……正直なんて言えば良いかわからないし俺は相当鍛えてきた自信あるから『次やったら勝てるよ』とか言いたくはなかったし、なら素直に言ったほうが良いかなと思って」

 

 何も出来なかったと悔しがる相手に、俺はこれだけ鍛えたんだから実力差があって当然だ、とは、普通言えるものではない。

 

 だが、今回はちゃんと、芦戸に届いていた。

 

「でも、そっかー。百竜みたいな人って上鳴が言うみたいに『才能マン』なのかと思ってたけど、めっちゃ『努力マン』だったんだね」

「大体、個性を使わなくても生半可な相手には負けたくない、って思って鍛えてるからな」

「個性無しで障害物競走4位と騎馬戦突破は馬鹿だと思う」

「そりゃひどすぎるだろ」

 

 だが実際、誰が聞いて信じるだろうか。雄英高校の体育祭で、個性を使用せずに上位に居座る。まるで、個性を忌避しているかのように―――。

 

 なぜ、個性を使わない?

 

「もう一個だけ聞いても良い?」

「答えられることならな」

「そこは良いぞ、っていうところなんだけどなー……。で、なんで百竜はそんなに個性を使わないことにこだわるの? 制御できてるんなら別に使っても良くない?」

「くだらないこだわりだぞ?」

「良いから早く」

 

 はあっ、と百竜はため息をついて話し始めた。

 

「俺のこれ、そのまんま変身したときは、全長13メートル、体高4メートルぐらいのモンスターになる。待てそんな見たそうな顔をするな。今変身すると体操着が悲惨なことになる。次の演習か何かでだ。……そんな化け物に、個性無しで、ただ剣とか弓で戦いを挑んで、倒してしまうような奴らがいたんだ」

「倒すって、百竜を? 百竜ここにいるじゃん」

「俺が変身できるモンスターのそのもとになったモンスターだ。で、まあそんな奴らがいるって知ったら、憧れるだろ?」

「……まあ、たしかに凄いような気はするけど」

「だから俺は、個性の訓練もいつでも使えるように続けるけど、人間としての自分も鍛え抜きたい。そんな凄い奴らみたいにはなれないかも知れないけどな。でも、自分の限界は自分で決めたくはない。まあこんなこと言ってたら、教えてくれてたヒーローにも『戦うことに重きを置きすぎだ』って言って怒られるんだけどな」

 

 そう言う百竜は珍しく、子供みたいに笑っていた。まるでその凄いものを自分のもののように自慢するかのように。

 

「なんか、百竜って凄いね」

「そうか?」

「うん。……私はヒーローになりたいんだ。でも、何で、って言われたら……はっきり答えられるかわかんない。でも百竜は、ちゃんとあるって言うか、なんか良くわかんないけど……」

 

 うまく言葉にできない。でも本当に、凄いと思った。何を考えたら、常時訓練し続けたり出来るのだろうか。何を考えたら、そんな強くなろうと頑張れるのだろうか。

 自分はきっと、ここに来ていなかったらこんな風にヒーローを目指して努力なんてしていない。

 でも百竜は、きっとどこにいたとしても、延々と自分を鍛え続けるんだろう。

 

「……私、頑張るからね」

「……ああ」

 

 百竜の慰めはとても不器用な言葉だったが、芦戸の悔しさは、たしかにやる気へと変わっていた。

 

 

******

 

 

 元気を取り戻した芦戸としばらく話した後に共に客席へと戻ると、皆が出迎えてくれた。主に芦戸を。女子陣が酷いことをされなかったかと。そう芦戸を取り巻いていた。

 

 会場へ目を向けるとちょうど轟VS緑谷の試合、すなわち第2回戦の一戦目が終わったところであり、すぐに次の試合が控えているために呼人はトンボ返りで控室に戻ることになった。その際、尾白と障子に一言二言言伝をしておく。すると、芦戸が後ろから声をかけてくる。

 

「百竜ー! 負けちゃ駄目だからね!」

「無茶を言う。まあ、できるだけやってくる」

 

 この格好じゃあ全力が出し切れない事は言っただろうに。それに、世の中には多分、10年分の、あるいはモンスター達との脳内組み手なんかを含めれば数十年分以上の修行なんか、軽く蹴散らすような奴もいる。轟や爆豪はきっと、その類だ。だからと言って負けるつもりはないが。

 

「芦戸、百竜となにかあったの?」

「んー、秘密!」

 

 耳郎の問いかけに芦戸はシシシッ、と、いつもの笑顔で笑う。

 

「あ、ほら試合始まるよー!」

 

 何を話していたのかと問い詰めたかった耳郎と葉隠だったが、芦戸がそう言って試合場に目を向けてしまっては無理に聞くことも出来ない。

 第2回戦の第2試合では、尾白と飯田が向かい合っていた。個性の能力と鍛えた蹴り技で高速戦闘をする飯田。尻尾を加えた5本の手足で近接戦を得意とする尾白。どちらにしろ、互いに近づいてからの攻撃が主体となる。

 

 そして、プレゼント・マイクの開始の合図。

 

 2人が、激突した。

 

 

******

 

 

 控室へと舞い戻った呼人は、そこで自分の左手をじっと見つめている轟を発見した。

 

「……百竜か」

「今やってるのの次、試合だからな」

 

 俺が来てもおかしくはないだろう。そう答える呼人に目を向けることなく、轟は何やら考え込んでいる。

 

「お前、負けたのか?」

「……見てなかったのか?」

「野暮用でな」

「……負けてはねえ」

 

 だが、勝ってもいない。いや、そんなことはどちらでも良い。そんな顔をしていた。

 

「まあ、どっちでも良いが」

 

 そう言うと呼人は、轟の前まで歩いていく。

 

「勝つ気がないなら、俺が優勝はもらっていくからな」

「――俺のセリフだそれは」

 

 そう答えた轟は、いつもの無表情に戻ると控室の出口へと向かう。と、わずかに振り返って話しかけてきた。

 

「……百竜」

「何だ?」

「俺は今お前より……緑谷が怖え」

「何も怖くなりたいと思ってやってねえよ」

 

 むしろ逆だ。なるべく力を抑え込んで、人間の社会でも生きていけるように。そのためになるべく低い力でなるべく上手く戦う。呼人の目的はどちらかというとそれだ。

 

「……そうか」

 

 轟が怖いと言ったのは、そういう意味ではない。ただ、全力で人を助けるためにと、内面にまで踏み込んでくるその様が。怖かった。

 それ以上何も言うことはなく、轟は控室から出ていった。

 

「あんな迷った顔で何が出来るんだ全く」

 

 その無表情がまるでどうすれば良いかわからない子供のように見えて、呼人は大きなため息を吐いた。




オリジナルキャラ群の名前を考えるのが大変……

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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