竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第23話 雄英体育祭・8 百竜VS常闇 百竜VS爆豪

 飯田と尾白の試合は白熱したものとなったが、最終的に尾白の場外で飯田の勝利となった。尾白は尻尾を積極的に生かして近接戦で対抗したものの、飯田を捕らえた尾をそのまま掴んで場外まで投げ出されてしまった。ダメージ的には尾白が勝っていただけに、飯田が上手く勝ち筋を見つけ出したと言える。

 

 そして第2回戦第3試合。

 

『次の試合はこいつらお互いにモンスターを飼う2人の対決だ!! 常闇踏陰VS百竜呼人!!』

 

 俺それまだほとんどのクラスメイトにもまだはっきりとは言ってないんだけどな……と呼人はぼやくが、プレゼント・マイクは当然知っているわけだし、オドガロンとトビカガチの全容は学校への個性届けで提出されている。それを放送で使わないわけがない。

 

「お前も、獣を宿すものか……」

「まあ、な。そっちの影ほど便利じゃないが」

 

 2人が短く言葉を交わした直後。

 

『試合開始!!』

 

 ミッドナイトの合図によって、試合が始める。

 

 最初に動き出したのは呼人だったが、攻撃が到達するのは常闇の方が早い。常闇の個性は、その体に宿した伸縮自在の影のようなモンスターだ。それを自在にあやつって、遠距離から近距離まで攻撃や防御、移動などあらゆることに活用してくる。

 

 それを見た呼人は接近を諦め、常闇の攻撃の回避に専念する。見極めるのはその性能。

 いくら常闇の個性が万能に近いとはいえ、その能力に限界値は存在するはずだ。それがどこか。射程距離はオドガロンの力を使っても一足以上、パワーは高い。更に耐久力は未知数。少なくとも人間状態のオドガロンで壊せるものではないようだ。というかそもそも物理的存在なのかが不明。

 

 2分ほどかけての結論、常闇の個性の撃破は現状では不可能。

 

 だが、距離をある程度とっての調査でわかった穴もいくつかある。まずモンスターだが、動きは非常に良いとは言え百発百中ではない。当然ながら呼人の動きについてこれず避けられたり、見てから避けることも可能であったりする。

 

 そしてその伸びる速度も、一瞬ではない。少なからず伸び切るのに時間がかかる。

 ならば後は、時間との勝負。

 

「よし、行くか」

 

 極力オドガロンとしての出力を温存して人間の身体能力で交戦していた呼人は、常闇の個性『黒影(ダークシャドウ)』が正面から攻撃を仕掛けてくるのにタイミングを合わせて全身を人間の形状を保ったままオドガロンのそれへと作り変える。

 

 そして正面からの攻撃に合わせて、一気に姿勢を下げてスライディングで黒影の下をすり抜ける。そしてその低い姿勢のまま四足歩行へ移行。黒影が追いつけない速度で走り、回避しようとする常闇の首元を捕まえ、そのまま引きずって二足歩行でダッシュする。

 

「ぐ、おお……! 場外を狙う気か……!」

「壊せないものわざわざ相手にするか!」

 

 だが、常闇の事を捕まえ二足歩行に移行したことで当然の如く呼人の速度は低下し、黒影に追いつかれる。追いついてきた黒影は呼人に体当たりをしたりその腕に噛み付いたりして常闇から呼人を引き離そうとするが、幾度も体勢を崩され進路を変えられながらも、呼人はその腕を離さなかった。

 

 そして、場外付近。

 

「行って来い!!」

 

 常闇の首元を掴んだままの呼人は、掴んだままの左手でスローイングをするように常闇を場外に向かってぶん投げる。怪我しないように丁寧に投げるなどという発想はない。そんななまっちょろい投げ方では、常闇は簡単に復帰してくる。

 そして自らは場外へと引きずり出されないようにと、大きく変化させた右腕を地面に突き立てた。

 

「クッ! つかめダークシャドウ!」

 

 その呼人の体を、常闇から伸びたダークシャドウが掴む。が、常闇が黒影を引っ張ることはあっても、その逆は起こらない。かといって相当距離ぶん投げられた状態では、黒影に自分を弾かせて復帰することも困難である。

 

 結果、黒影が呼人の体を掴んで引っ張り呼人の爪がステージの地面を大きくえぐることになるが、放り出された常闇の体が先に場外の地面へと接触した。

 

『常闇くん、場外! よって勝者は百竜くんよ!』

 

『ヒャッハア!! すげえなイレイザーお前の生徒は!! どっちもすげえ!! どういう教え方してんだ!?』

『俺は何もしてない。あいつらが互いに学んで成長してるだけだ』

 

 相澤は、生徒への過度な干渉はほとんどしない。むしろ少し干渉が少なすぎるぐらいである。それはただ、生徒の自らの成長を願っており、また信じているからであった。

 

 そんな中、ステージの中央に常闇と呼人が戻ってくる。

 

「まさか……そんな攻略法があるとは……不覚」

「伸び切ったあとの動きから、追いかける癖が強いんじゃないかと思ったんだ。突破した俺を追いかけるんじゃなくて、一旦縮めてまた迎撃し直したらまだ手こずってたかもしれないな」

「むう……精進せねばな。ダークシャドウ」

 

 負けてしまって意気消沈していた黒影が常闇の言葉に答え、力強く頷く。

 

「百竜、お前の中には、どんな獣が?」

「……次の演習か何かでみんなにも紹介する。流石にいつまでも隠しておくわけにもいかないからな」

「……そうか。楽しみだ。我が獣との対面も……」

 

 2人がそんな会話を交わしている一方、観客席のプロヒーローは百竜の個性について意見を交わしていた。

 

「あいつの個性はいったいなんなんだ? 増強系なのか?」

「増強系なら障害物競走や騎馬戦での戦果と目立たなかったことの説明もつくが……」

「それで入試1位が取れるものなのか? 轟や爆豪がいる中で」

「どちらにしろ、あいつが一番得体が知れないな。他の生徒はサイドキックにほしい奴ばかりだが……」

 

 そしてまた、2人と同じA組の中でも、今の試合の感想が飛び交っていた。

 

「常闇くんが光も無いのに負けるなんて……」

「うん。百竜くんめっっちゃやばいね!」

「だが百竜くんは、常闇くんのダークシャドウを無視したのではないか?」

「ケロ――常闇ちゃんの個性が、強すぎたからかしら」

「う、うん。多分そうだと思う。常闇くんの個性の強みは―――」

 

 治療から戻った緑谷、麗日、飯田、蛙吹は、騎馬戦で常闇の味方として、あるいは敵として戦ったために、その能力の万能性と強さが身にしみていた。

 だが飯田の言葉に冷静さを取り戻した緑谷が、いつもの勢いで分析を始める。

 

 一方八百万、障子ら比較的呼人と親しい者達や、芦戸、上鳴は呼人の見せた実力に見いっていた。

 

「あれが、百竜さんの言う体術……」

「あれ、百竜が最初個性使ってないってほんと?」

「多分ほんとだ。百竜は、なんて言うか……」

「……非常にうまい」

「そんな感じだ。強いというか、うまい」

 

 そんな話をしている耳郎らの隣で、さっき呼人の話しを聞いた芦戸は一人だけ彼の話を知っている優越感にニヤニヤしていた。

 

「芦戸、なんでそんなにニヤニヤしてんの?」

「ほんとだ! 三奈ちゃんなんかニヤニヤしてる!」

「えー、別にニヤニヤしてるけど!」

 

 してるんかいと、突っ込んだのは耳郎だけではない。

 

「とても楽しそうです。何かあるのですか?」

 

 八百万がそう尋ねると、芦戸は呼人から聞いた話をあんまりばらさないようにしようと思いながら、自分の知っている中で一番みんなが驚くであろうことを伝えた。

 

「百竜、個性で変身しちゃうと服が破れちゃうから全力は出せないんだって!」

「変身すると服が破れる、ってあのいっつも手とか顔とか赤黒っぽくなるのは?」

「あれはそのモンスターの力を、こう、なんか制御してるって言ってた!!」

 

 それを聞いた障子と尾白は顔を見合わせると、どちらからともなく頷く。

 

「芦戸さん、そのとき百竜はなんて言ってた?」

「なんか『変身したら服が破れて大変なことになる』とか『周りを壊さないように力を抑えてる』って言ってたよ!!」

 

 最初は呼人の話を秘密にしておこうと思っていた芦戸だが、どんどん話すのでどんどん呼人の考えていることが皆にばれていく。

 

「それ、多分本気が出せないって言ってるんじゃないね。だってあいつ、『人間気絶させるぐらいなら人間の力で十分』って言うようなやつだから。多分、その場で出せる力の中で全力になろうとしてるんだと思う」

 

 流石にあれはね、と。尾白は障子と目を合わせて苦笑いをする。あの獣は、モンスターは、規格外だった。多分あれを出してしまうと、人を殺してしまう。だから呼人は、人間のまま力を発揮できるように訓練しているのだと。

 

「えー! 2人は百竜の変身したの見たことあるの!?」

 

 百竜が言ってたのはすっごく強そうだったんだから! と芦戸は不満げだ。

 

「……恐らく、体育祭が終わったら皆にも見せるのではないか? 見せる場面が無い、と言っていたから、体育祭の後に皆が聞けば見せてくれるだろう」

「あー、言ってた! 次の演習かなんかのときにみんなにも見せるって!」

「ほんとに!? 百竜くんの個性、また見れるんだやったー!」

「葉隠そんな良く見えてないでしょ。あのときめっちゃ速かったし」

 

 ワイワイと、みんなに尋ねられた葉隠と耳郎が入試の時のことを話していると、切島と爆豪の試合が始まった。

 

 

******

 

 

 その後試合の消化が進み、準決勝。呼人の相手は、切島を倒した爆豪だ。

 

「てめえ、なめプしてやがんのか?」

 

 ステージに上った呼人に爆豪がかけたその一言目がこれである。この体育祭において爆轟は緑谷と轟に徹底的に煮え湯を飲まされており、警戒すると言えばそちらの方が強かった。だが、当然体力テストや実戦演習での呼人の見せた片鱗も覚えている。

 

「してない。個性を開放してはないが、それはお前もだろ。それぞれがそれぞれにセーブをかけて個性を使う。当たり前の話だ」

「……けっ。お高く止まりやがって。ぶっ潰す。てめえも半分野郎も、見る相手がちげえんだよ!!」

 

 苛立たしげに言う爆豪の言いたいことに、呼人は気づく。轟は、緑谷と呼人に声をかけたが、爆豪に声をかけることは無かった。

 

「俺は自分しか見てねえよ」

 

 あ゛? と不機嫌そうな声を出す爆豪に呼人はそれ以上は教えない。だが、そう、たしかに対戦相手の動きは見るし、対処もする。だが、爆豪が言っている意味の見る、すなわち意識している、と言えば、呼人の場合はそれは自分に、あるいは自分の中のモンスター達に、あるいはモンスターと戦ったハンター達になるだろう。

 

「お前も、対戦相手じゃなくて勝つ自分の事しか見てないだろ」

「はんっ。ならてめえも半分野郎もぶっ殺して優勝してやるよ」

「殺すはやめろ犯罪だから」

 

 揚げ足を獲るかのような呼人の言葉に爆豪が何やら言い返そうとした、瞬間。

 

『試合開始!』

 

 ミッドナイトの開始の合図が響いた。

 

 直後、何やら言い返そうとしていたにも関わらず、その隙を一切感じさせない動きで爆豪が呼人へと飛びかかる。爆発を利用しての加速。ただ強大な個性をぶっ放すのではなく、その個性の特性を把握し出来る事を考える。他のクラスメイトには、まだ少し足りない考え方。

 そんな道は、呼人もすでに通ってきた道だ。

 

 正面から突っ込んでくる爆豪に答えるように、呼人もまた正面から突っ込んで行く。

 

 そして接触。攻撃は、爆風を利用できる爆豪の方が速い。だが、その爆風はせいぜいが人間を吹き飛ばす程度に抑えられたもの。

 惨爪竜の皮膚と鱗には、通用しない。

 

 爆煙(爆炎にあらず)をぶち抜いて飛び出した呼人は、小手調べに綺麗なモーションの上段蹴りを放つ。

 呼人の戦い方にはパターンがあって、例えば筋肉や体表をモンスターに変えているけれど、形状は完全に人間になっているため人間の格闘術を多用する形態。他には、人間の形態なのだが、爪や牙を発達させることで、より獣に近い攻撃を繰り出す形態。エトセトラエトセトラ。

 

 そんな色々な形態の中でもやはり、小手調べに、そして自分側の動きを悟らせないためには最も多彩に行動可能で人間の常識が通用する人間形態が都合がいい。

 

 その攻撃を予想していたのかあるいは見てから避けたのか、爆豪は再び手のひらから爆発を起こして上げた方、左へと回り込む。

 

(上に飛ぶのは距離を開けることに繋がる。かと言って後ろに回り込むのは自分から視界を潰すようなものだ。だからこその側面)

 

 ―――わかりやすい。

 

 が。まだ判断するのは早い。呼人は更に、左足を思い切り踏み降ろして右足の回し蹴りを放つ。それを爆豪は、小さな爆発の反動で地面を這うようにして回避した。回し蹴りが頭部を掠めるが、爆豪は一切ひるまない。そして返すかのような爆発。それを呼人は跳び下がって避けた。

 

 それで、わかる。

 

(避けてるのは完全に反射神経。読まれてるわけじゃない。というか向こうもこっちを見定め中か)

 

 呼人が爆豪のスタイルを見定めようとしているように、爆豪もまた、彼にとっては得体の知れない呼人を見定めようとしている。違いと言えば、その中での攻撃意志。

 

 回避して下がる呼人に追いすがり、爆豪は更に複数の爆風を叩き込む。一方の呼人は、蹴りや拳の風圧で爆煙を払いつつも攻撃はしかけない。やがて、呼人がいくらか払って散っているとは言え、ステージの上が煙に包まれて見えなくなっていった。

 

 現在の、およそ30%オドガロンの呼人の攻撃には、緑谷のそれのように風圧でこのステージの全ての煙を打ち払うような出力はない。いや、恐らくオドガロンの筋肉では、100%の人間形態でも一撃では無理。

 だからと言って、人間相手に不十分なわけではない。

 

 煙幕の中風の匂いではなく音と風から爆豪の位置を悟った呼人は、爆豪の仕掛けたであろう罠へと自分から飛び込んだ。

 それは、爆豪の体操服の上着。奇しくも、麗日が爆豪にしかけたトラップと同じ、いる場所を錯覚させるという狙いをもった罠だった。そして呼人がそれに接近した瞬間。側面から爆風が放たれる。その威力は先程までの小手調べの比ではなく、ステージに散っていた煙が一瞬で吹き散らされた。

 

「はっ、ちったあ効いたか獣野郎!」

 

 どうやら爆豪の中では、呼人の呼び名は獣に決まっていたようだ。まあ轟の半分なんかよりはマシだろうか。男子の中では小柄な方ではあるが、チビにならなかったのは峰田がいたからだ。

 

 一方爆風をもろに受けた呼人は、体勢を低くしていたこともあって地面に爪を突き立てるのが間に合い、5メートルほど吹き飛ばされた位置で堪えていた。当然人間に堪えきれるものではなかったので、全身の筋肉と体表はオドガロンのものへと変化させている。

 それでも、大きな衝撃波と熱風でそれなりに傷を追っていた。

 

 だが、モンスターというのは得てして人間よりも遥かに強い。それはこの世界でも同じ。人間は、同じサイズの動物相手には個性以外の身体能力ではとても敵わない。筋力、敏捷性、生命力。

 

 人間にとっては大怪我であっても、モンスターの体を持つ呼人にとっては動くには損傷のない、せいぜいがちょっと深い切り傷擦り傷程度の怪我でしか無い。当然痛いのは痛いし、その傷を修復するにはエネルギーを相当量消費してしまうのだが。

 だが、野生では動かなくなったものから死ぬ。足を、止めるな。

 

 地面から爪、というよりは吹き飛ばされる勢いにたえる内にめり込んでいた腕を引き抜き、爆煙から飛び出す。

 それを爆豪もまた当然の如く予想していて、爆風の両手でもって迎え撃った。

 しかし、その顔が好戦的に笑っていながらも、腕の出が遅いのと手が震えているのを呼人は見逃さない。

 

(おそらく、いまのが爆豪の最大火力。近場か掴まれて撃たれてたらまずかったが――!)

 

 爆発する爆豪の手のひらを、真っ向から掴む。流石の爆轟もそれには虚を突かれた顔を見せる。そして呼人は手のひらに爆発をくらいながらも爆豪の脇腹を横向きに蹴飛ばした。

 

 それと同時に手を離す。連続的に爆発を受けたことで、手のひらの鱗と皮膚がズタボロになっているが、この手のひらも人間のそれとは比にならないぐらい皮が厚い。元来前足であるからだ。

 

 吹き飛んでいった爆豪は、よろめきながらも手をついて立ち上がる。流石に頑丈、か。体力テストの頃から思っていたが、かなり体が鍛えられている。あれだけの自尊心、才を持ちながら、努力を怠らない。

 化け物だ。

 

「調子に―――乗ってんじゃねえぞこらあ!!」

 

 凶暴な笑みを浮かべた爆豪は、雄叫びを上げて腕を大きく振りかぶる。やつの最大火力は先程受けきったそれのはず。あれ以上の攻撃は―――

 

(身を削れば簡単に出来る――!)

 

 爆豪は振り上げた腕を振り下ろすと、爆発の反動で呼人の方へと飛来する。そして、空中で爆風を利用して回転を始めた。恐らく、彼最大の一撃となるはず。

 

 それに対して呼人は、逃げるのではなく耐え抜く道を選ぶ。大きく変化させた爪で靴を履いた足が引っかかる場所を作るとそこに両足を突き込み、腕を大きく広げて爆豪に背中を見せた。

 

 ―――榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)

 

 爆発を放った爆豪自身もまたその爆風で吹き飛び、はるか後方で起き上がる。

 あの瞬間、百竜は背中を向けたが逃げる姿勢は取らなかった。

 

 そしてその爆風の中から―――呼人は現れた。

 爆風から庇った体の前面や、すでに人間のそれに戻している顔は無事。だが腕を広げていたために両腕の外側や、爆風をもろにくらった背中は大きく損壊し、堅牢であるはずの背中の鱗と皮膚を一部貫いたか血が流れ出している。

 

 だが、呼人は立っていた。爆豪の全力を受け止めてなお、よろめくことすらなく。

 

「まだ――生きてやがんのか……!」

 

 そして、起き上がろうとする爆豪へと四足歩行でダッシュ。爆発の衝撃やそれまでのダメージで動きの鈍い爆豪の服の首筋を咥えると、場外へと走り出した。

 

「お前、待てこの野郎! 逃げんじゃねえ!」

 

 爆豪はそう言って、ほとんど自由に動かない左腕を上げて爆風を呼人の傷口である背中へと放つが、位置関係上その距離は先程の大爆発と背中の距離よりも更に遠い。先程の爆風に呼人が堪えられたのも、近かったとは言え完全な接触状態での攻撃ではなかったからだ。その攻撃にはまだ爆豪自身が耐えることが出来ないし、また勢いをつけているために距離感を見誤った。

 

 そして呼人はそのまま、爆豪を場外へと放り出した。爆豪は爆発を使って戻ろうとするが、腕が思うように動かずに失敗、場外へと落ちる。

 

『爆豪くん場外!! よって勝者!! 百竜君!』

 

 爆豪が顔を上げると、百竜が自分の方を見つめながら天に拳を掲げていた。その赤黒い腕を、血が僅かに伝っている。

 

「歩けるわくそが!」

 

 近くに救急ロボットが近づいてきたが、爆豪は怒りの声をあげて立ち上がる。

 真正面から全力を叩きつけて、勝てなかった。相手は回避したのでも、爆豪に全力を出させなかったのでもない。

 出させた上で、凌ぎきった。

 

 それでも自分の方が強いと胸を張れるほど、爆豪は弱くはなかった。

 だが、それと腹が立つのとは別の話。徒歩で退場した爆豪は、一暴れして発散した後はいつもの爆豪へと戻っていた。

 

 一方の呼人。救護を断って歩いて退場すると、予備の体操服を受け取ってから、用意してあった大量のカロリーメイトやゼリーを貪っていた。

 

 会場では赤黒い皮膚に血が目立たないのを良いことに平気なふりをしていたが、少なくとも人間のサイズで扱っていた部分には大きな怪我を負った。オドガロン本体にしてみればそれは小さな怪我に過ぎないのだが、それでも大きな怪我の直後にはかなりのエネルギーを消費する。そのためにひたすらに、次の試合まで食っては飲んでを繰り返し、消費したカロリーメイトは20箱以上、ゼリーは30を越えていた。しかもそれで修復がされるのではなく、怪我直後に個性によって消費されてしまうエネルギーを補ったに過ぎない。

 

 オドガロンは甲殻を持たないため、内部へのダメージが大きい。すなわち皮膚が傷つきやすく、更には攻撃を受ける瞬間だけ人間大に制御したそれではなく、オドガロン本体のそれを展開した。厚さ、硬さともに人間形態を遥かに凌ぐ。それで、あのダメージ。

 

 オドガロンを相手にした場合に確実に致命傷になるとは言えないが、小さくはない傷を与えたことになる。

 

「化けもんかよあいつは」

 

 火竜種の火球を一発ぐらい食らっても、ここまでの傷の大きさにはならない。勿論堪えきろうとした呼人もまた悪いのではあるが。吹き飛ばされていれば、ここまでの傷にはならなかった。

 

 だが、あいつには堪えてやろうと思っていた。お前が全力を叩き込んでも吹き飛ばない相手もいるのだと。




個人的にめでたいので前から3日空いてませんが投稿。

ようやく!!!

超常解放戦線編書き終えました!!!

そしてネタバレになるかもしれませんが!

そこから先は完全オリジナルストーリー!!!
オリキャラたくさん! オリジナル設定たくさん! 

書いてて楽しいですが読んでくださってる皆様に呆れられないかなと、少しばかり心配ですが。取り敢えず、しばらくは番外編とか学校生活とかのんびり書きながら考えを練ろうかなと思ってます。

書き上がってるなら投稿ペース上げろ! とか思ってる方いますか?

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

  • 欲しい
  • 勝手にニヤつくからいらない
  • あまり興味がない
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