竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
呼人のためのしばしの休息兼互いにぶっ壊しまくったステージの修理のための時間を経て、最終戦。
「百竜、あいつ怪我は治ったのかな」
「でも退場するときの百竜くんピンピンしてたよ!」
「私の酸も全然効いてなかったし!」
「ええ。あれほどの爆発、正直信じられませんが……」
女子陣が大丈夫だと話している一方で、障子は難しそうな顔をしている。
「(何か気になることが?)」
「(……百竜だが、爆豪の最後の一撃をあえて受け止めた後、あちこちから出血していたように見える)」
「(……何か違和感があると思ったらわざと受け止めてたのか。でも保健室には行ってないよな?)」
「(おそらくは。獣化と言えど体が傷つけば修復が必要となるはずだが……)」
女子陣を不安がらせないように小さな声で話している尾白の隣に、荒々しく一人の生徒が座り込む。個性の使用でイカれかけてた腕と、呼人の蹴りで一本持っていかれていた肋骨をリカバリーガールに治癒してもらった爆豪だ。
「おつかれ爆豪」
「……はんっ」
不機嫌さを声に出した爆豪は、まだ修復途中の会場を睨みつけていた。そして、少しして口を開く。
「……尻尾。獣野郎の個性はなんだ」
その爆豪の問いに、尾白と障子だけでなく耳郎達も驚いて振り返るが、爆豪はステージを睨みつけたまま目を合わせない。普段一切周りを顧みない彼が、周囲を気にした。
そんな爆豪に、尾白と障子は頷き合うと、障子がスマホを操作して手渡す。
「詳しくは知らないが、その写真に映ってるものだ」
その写真を見た爆豪が、苛立たしげに顔を上げる。
「てめーの写真じゃねえか」
「後ろに立っているのがいるだろう」
そう言われた爆豪は、改めて写真を見る。写真に映っているのは、わずかに目尻が緩んでいる障子と、大きな怪獣の模型か何か。
「なんの話ししてんだ」
「これだよこれ」
そう言いながら尾白が指差したのは、人間の数倍はある、怪獣の模型。
「あ゛? 何言ってやがる」
ふざけているのかと、爆豪は更に不機嫌さを増していく。一方障子は、それを覗き込みに来ようとする芦戸や葉隠をせき止めていた。2人がぶうぶうと不満をたれていたが、それが呼人との約束だった。
『対戦後によほど知りたがっているやつか、俺の個性とか戦い方で凹んでるやつだけにしてくれ。後は自分で見せたい。まあ別に絶対じゃ無いけどな。そのへんは任せる』
そう言われているので、元気一杯、に障子には見える彼女らには我慢してもらっている。涙の1つでも見せれば違ったかも知れないが。
「障子、動画はあるか?」
「……ああ、探して良い」
障子の許可を取った尾白が爆豪の持っているスマホを操作すると、先程の怪獣が動き出し、カメラの方を睥睨しながら歩くと、大きく足を踏ん張って口を開く。音量を0にしているので音は聞こえないが、さぞ不気味な鳴き声で鳴いているのだろう。
「……化けもんじゃねえか」
思っていた系統と全く違うその個性に、爆豪は怒りをそがれてつい呟く。
「百竜いわく、人を平気で食う化け物だ。だから個性を制御してる。だってさ」
その大きさは、とても人間のそれとは思えないもので。それを百竜は人間の大きさに抑え込み、さらに形状を人間のそれに完全に合わせていた。
戦闘中に見えた顔も腕も、その怪獣の凶悪なそれとは全く違っていた。
「……化けもんかよクソが」
爆豪にとっては、非常に相性が悪かった。というより、モンスターを出現させた呼人の強みは、そのモンスター由来の生命力。人間の形状のパワーでは当然緑谷の爆発的なものには大きく劣っているし、爆豪のようは攻撃性も轟のような広範囲制圧力も、モンスターによってまちまちではあるがあそこまで自由に操るのは容易いことではない。
だが、生命としての頑丈さはピカイチだ。きっちり負傷させて止めるなら、人間相手であれば軽く殺してしまうぐらいの攻撃を加えなければピンピンしている。なんなら内臓も多少持ってかれたぐらいでは、しばらくは割と元気に動く。
「尾白ー! 私達にも見せてよー!」
「そうだそうだ! 爆豪くんだけずるいんだ!」
「……百竜にそう頼まれた。後は自分で見せたい、と言っていたぞ」
そう、百竜自身の思いを言われてしまっては、芦戸達も強行に言うことが出来ない。だがそこで引き下がる芦戸ではない。ならば自分が聞いた事をばらしてやろうと。どうせ言っちゃ駄目とは言われてないし、と。
なぜそうなった。
「ふ、ふーん! 良いもん、私百竜から秘密聞いたからねー!」
「秘密って何? 芦戸がさっきニヤニヤしてたの?」
「そー!」
「あの、芦戸さん、流石に人の秘密を勝手に話すのは駄目ではありませんか?」
「でも百竜秘密とは言ってなかったよ!」
それでねあのね、と、芦戸は八百万の制止を聞かずに先程呼人から聞いた話をする。
「百竜、昔個性で暴れちゃって色々壊しちゃったらしくて、それで3才ぐらいからずっと個性を制御する訓練してるんだって」
「制御する訓練?」
「そうそう。なんか、百竜って獣になれるでしょ? いつもこうやってるの」
そう言って芦戸は、いつも呼人がやるように左腕を前に掲げる。不機嫌そうな爆豪含めて、そこにいたみんながそれに聞き入っていた。
「獣って言っても生き物でしょ? だから血管とか骨とか、筋とか、そういうのがあるんだって。だから授業中とかもずっと、外から見てばれないように右腕は骨、左足は筋肉、左手は血管、みたいな感じで、ずっと獣化させ続けてるって言ってた」
「ずっと……?」
「うん。寝てる時は無理って言ってたけどそれ以外はずっとだと思う。後ね、それから強くもなりたかったから、その個性の訓練をしてくれる人に教えてもらったり調べたりして、3才の頃からずっと戦う練習もしてるんだって。家に帰ってからもするし、授業中とか本読んでるときとかも、時間があったらイメージトレーニングしてるみたい」
芦戸の言葉に、そこにいた者達はそれぞれの反応を見せる。尾白と障子は納得したように、耳郎、葉隠、八百万は驚愕したように、そして爆豪は不機嫌そうに。
「だから私が負けても仕方ない、って慰めるふりして酷いこと言うんだよ!」
百竜慰めるの下手くそだ! と、結局そこに行き着くのかと言いたくなる芦戸の言葉。それを聞いた爆豪は、不機嫌そうに立ち上がると去っていった。
「百竜、そんなこと……」
「……それならあの強さも納得だよ」
「……ああ。常にこちらの改善点を指摘してくるかと思えば、すでに通った道、か」
すでに放課後訓練で呼人の強さの一端に触れた2人は納得した表情をしているが、一方の女子たちはまだ理解が追いつかない様子である。
3才の頃から、文字通りずっと、など、英才教育とかそういうレベルの話ではない。それこそ文字通り、ただ個性を使いこなすためだけに、戦うためだけに生き続けているようなもの。
有り体に言えば、常軌を逸していた。
「強さの求道者、いや、愚かなる道をいく者、か……」
突然響いたその言葉に、全員がそちらを慌てて振り返る。すると、爆豪が置いていったスマホを手にした常闇が立っていた。
「常闇か」
なら良かった、と言いたげな尾白に、芦戸が不満げな顔で叫ぶ。
「あー! 私達には見せてくれないのにー! 差別だー!」
大声で叫んでいる芦戸は先程から周囲の注目を集め始めている。尾白と障子は互いに顔を見合わせると、どちらからともなくため息をついた。
******
爆豪と百竜の試合直後。
「はいもしもし神王寺です。……はい、あ、いや今日は仕事じゃないんで仕事用のは家に置いてきてるんで……。はあ。……わかりました。すぐに行きます。あ、今雄英高校です。体育祭見てたんですよ。……あいあい。了解しました。すぐ行きますー」
どこかからの連絡を受けた神王寺は、席を立つ。呼人には伝えていない仕事。ヒーローを救うための役割。
それが神王寺の個性の使い方。
彼は、煙に覆われたステージを一瞥するとその場を後にした。
「氷の相手はちとつらいだろうが、まあ頑張れコールマン」
異なる世界のモンスター達を、呼ぶ男。それが神王寺の呼人に対するあだ名だった。
******
『待ちかねたぜ!! リスナー諸君準備は良いか!! 雄英一年の頂点を決める戦いもいよいよラスト!! 決勝戦はこの2人―――轟焦凍VS百竜呼人!!』
プレゼント・マイクの放送に大きな歓声が上がる。それを聞きながら呼人は、正面に立っている轟に話しかけた。
「轟」
「なんだ?」
「お前が個性でどれだけ悩んでるかなんて俺は知らないし、それを言えば俺も個性に悩んでもいる。ただそんなもんは関係なくて、戦った以上は後で言い訳をしてくれるなよ?」
「……どういうことだ」
「左側の何か。何かは知らないが、それを使おうが使うまいが、お前の決めた中での全力で来い。俺もお前と一緒で個性を全開放はしてねえよ」
個性でどう悩もうが、どんな個性であろうが、関係ない。自分の意志で戦うならば、自分の好きな力を使って戦え。そして戦った以上、結果が全て。後で出来るのは反省と後悔だけで。
言い訳などもってのほか。
「……お前も緑谷も、人の中にどんどん踏み込んでくるな」
「悪いな。長いこと人間と接してなかったから距離感がわからないんだ。なんならもう少し土足で踏み込んでやろうか?」
「……やめてくれ。これは、俺が自分で向き合うもんだ。けど――」
―――お前の言う通り、今の俺が出来る全力で、お前に勝つ。
戦闘前にも関わらず、その体から冷気が溢れ出す。
(まじか本気になってんなー。しかも使うのか使わないのか余計にわからなくなった)
何を隠そう、オドガロンは氷に弱い。モンスター達によると物理的な氷以上に『属性エネルギー』なるものの方が更に効果的らしいのだが、とは言え氷、すなわち冷たさに弱いことに変わりはない。
そのため左の何か、の方がまだましだとは思えるのだ。
会場にいる全ての人間はその左が何なのかを知っていたのだが、ただ芦戸と話してすぐに一人控室に戻った呼人だけが、誰からもそれを聞いていなかった。
戦闘開始のコールの前に、呼人は轟から距離を取る。氷を出す轟の個性は、範囲などなどで言えば呼人にとっても驚異的だ。
『試合開始!!』
そしてミッドナイトの合図とともに、試合が始まる。
直後。早速轟がぶっ放した。放つのは氷。瀬呂を氷漬けにしたのよりは規模の小さいそれが呼人の方へと伸びる。
それに対して呼人は、四足形態になると成長中の氷とすでに成長しきった氷を見極め、足をとらわれることが無いようにその上を飛んで氷の成長とともに上へと登っていく。
以前跳んで避けられた経験や体育祭序盤で大勢に回避された経験から、氷の中に成長の差を作って一度の跳躍での回避を不可能にした轟だが、これは呼人が一枚上手である。
だが、恐らく回避されるだろうと轟はわかっていた。わかっていたからこそ、手を緩めない。更に氷を放ち呼人のを追い詰めていく。
一方呼人は、地面から生えた多数の氷をまるでそこが無数の木が生えている大森林を飛び回るかのごとく飛び回り、所々では氷の柱をその掴む力と蹴る力で砕いている。それでも、轟が大量に放つ氷は巨大な塔を形成し始めていた。
『こいつは凄え!! 何がどうなってやがるイレイザー!!』
『轟の氷だ。百竜を捕まえようとしているな』
その高さは、すでに最低10メートルラインを越えて、もはや氷河である。
そしてその上層で伸びてくる氷と鬼ごっこをしていた呼人の頭上と四方を、一気に氷が囲い込んだ。
呼人に氷の成長を見切られている事に気付いた轟が、更に外側から氷をめぐらして囲い込んだのだ。
それで四方が完全に封鎖され、呼人の動きが観客から見えなくなる。そして少しの間。呼人が氷によって戦闘不能になったと判断したミッドナイトが声をかけようとした直後、一部の観客がどよめいた。
呼人が、轟とは反対側の氷壁から出現したのだ。
氷を避けるように飛び回っていた呼人は、その中で脱出口を作っておくために飛び回りながらも数箇所選んだ場所に対して、幾度も攻撃をして氷を削ったりもろくしておいたりしたのだ。
普段の轟の氷なら呼人でも削って脱出するしかないのだが、呼人を狙って断続的に生じさせた氷だけにその耐久力はかなり低くなっていた。
ド派手にぶっ壊すでもなく、いっそ大きめの石をゴロンと押し出すぐらいの弱い勢いで氷から脱出した呼人は、少しの間そこにぶら下がっていた。何も休憩がほしいわけではない。いや、確かに氷は辛いのだがその分動き回っていたので体も冷え切ってはおらず、むしろそういう意味ではここで止まっていることがまずい。
それよりも確かめたかったのは、安地。轟の攻撃が視認外のここや氷の上層まで届きうるのか。届くとしてそれは適当か正確か。また轟は適当だったとして盲撃ちしてくるタイプか。
だが、しばらくしても轟からの攻撃は無い。わずかな氷がパキパキと溶ける音と、崩れるような音。
直後。わずかな匂いと背筋に走る悪寒に、手を離して壁面を上へと駆け上がる。足は靴を履いているために解放できていないが、両腕があるのであれば登るのは苦ではない。
逃げたのは正解で、塞いだ穴から飛び出した氷がその穴を塞ぎ、外まで侵食していた。
こうも氷を自由に放出されると、その能力的にはモンスター、それも竜ではなく龍に近いものがあるのではないかと感じる。勿論出力的には差があるのだろうが、こいつも天変地異みたいなものに変わりはない。
だが、氷はあくまで生成できるだけで生成した氷を操ることは出来ないようだ。
氷の上側に脱出し、上に飛び出した呼人を見た観客がどよめくが、呼人は索敵に集中していた。先程は轟の索敵ではなく攻撃の察知に気を張っていたため、轟が動いていることに気づかなかった。だが今の穴から攻撃が来たということは、轟が中に入ってきた事を意味する。とは言え、中に入ってしまえばそこは轟の庭だ。
だからこそ、突っ込む。
比較的層の薄い氷で出来ている側面をぶち破って突入すると、今正にそのエリアから出ようとしていた轟を見つける。轟の方もまさかそのエリアに入ってくるとは思っていなかったようで、少し反応が遅れ、突っ込んでくる呼人に対して氷を伸ばしてくる。
が。
最初の攻防ずっと見ていたが、轟は氷を放出できるものの、その制御が甘い。あるいは、あえてぶっ放しているのかもしれないが、とにかく、規模が小さいものであれば避けるのは容易い。
下だけでなく上や横も足場として利用して氷を避けながら轟へと接近する。
そして、接触。轟の右側。氷を放ってくる側を掴み、そのまま轟ごと氷の薄い部分をぶち抜いてステージに飛び出す。もう半分以上が氷に覆われていて立つところに困るぐらいだが。
そのまま轟を場外へと投げ出そうとするが、案の定というべきか左側を掴んだ自分の腕から左半身が凍らされていた。投げようにも腕が曲がらない。体全体を使って放り出すが、自分の背後に氷壁を作られて場外を回避された。
『百竜くん、動ける?』
「問題なし!」
ミッドナイトの言葉にそう答えると、左腕から左半身にかけてを意図的に膨張させる。人間の形で受けた氷は当然人間の形にしか穴が空いていないわけで。そこに内側から倍以上の体積に腕を膨張すれば、例え筋肉の圧縮があるとは言え圧に耐えかねた氷が瓦解する。
バガッ バガラ
と小気味いい音とともに氷が剥がれ落ちる。すでに膨らんだ体は元に戻しているが、何をしたかがわからないゆえにかそれを見た轟の表情は険しい。
一方呼人は、いい球が出来たとばかりに地面に落ちた複数の氷の塊を持ち上げて、連続して轟に向かって投げる。
ただ当てるように投げるのではなく、いくらか時間差、角度差をつけて、呼人が轟のところに到達するころに襲いかかる数が多くなるように投げ分け、呼人自身もその氷の中を駆け出した。
ぶん投げた氷の下を走りながらも、呼人は轟の動きを注視していた。氷が多数飛んでくるのを見た轟は、左手を上へと上げると、何故かそこで戸惑った素振りを見せる。
まるで、なぜ自分が左腕を上げたのかがわからない、というように。
そしてそのまま轟にぶつかった呼人の体が、彼をステージから押し出した。
『轟くん場外! よって勝者、百竜くん!』
怒涛のごとき歓声が会場を包む。プレゼント・マイクが何やらいつも以上のテンションで叫んでいた。
そんな中呼人は轟を見る。
場外に押し出された轟だがその表情はいつもどおりの無表情で。負けた悔しさなど感じさせない。ただ、何故か自分の左腕をじっと見つめ、やがて両手を見つめている。
轟がステージ上に上がってこないので一方的に轟の所へ歩いていく、彼の前に手を差し出した。
それを見た彼は、少しの間の後自分で立ち上がった。
「結局、お前の左側は何が出来るんだ?」
「―――エンデヴァーって知ってるか?」
退場しながら問いかけると逆にそう返され、呼人は記憶を一瞬漁る。
「確か有名なヒーローで火を使う、だよな?」
「……」
そう少しの間の後、知ってる限りの情報で答えた呼人に轟は珍しく笑った。
轟にとってエンデヴァーというのは、まずもって父親失格な人間であり、そしてそれにも関わらず常に自分と話す相手が出す相手でもあり。
とにかく、色々な意味で、轟の心中に占める割合の大きな相手だった。
それを、百竜はまるで知らないと言うように話す。何か、少し迷いが晴れた気分だった。
「俺はそいつの息子なんだ。こっち側……左側はそいつの力が入ってる」
「……個性って左半身と右半身とで別れたりするようなもんだったか?」
「右は……母さんの個性を引き継いだ。こっちはエンデヴァー。だから左は……使いたくなかった」
だが、それを緑谷に叩き壊された。全部お前の力だからと。それを使う事がお前の全力じゃないのかと。
「ま、使わないのはお前の勝手だろ。俺だって……使えるようにはしてるが、積極的には使おうとは思ってない力もある」
「……お前のこだわりとは違うだろ。俺のは……」
「こだわりとはまた別に意味で使いたくない力もあるんだよ。トラウマってわけじゃないが……」
使おうとするとモンスター達に気を使われるし、当モンスターがめちゃくちゃ謝ってくるし、何より幼かった自分へのいらだちが募る。
少しの沈黙の後、呼人は以前の轟の言葉に答えるように話し始める。
「お前、まともな両親が、って言ってたと思うが、どれだけいなくなって欲しい両親でもいてくれた方が良いと思うぞ。別にいたって、距離を取ろうと思えば取れるからな」
―――俺はもう、会いたくても会えねえ。会いたいとも思えないけどな。
「……どういう、意味だ?」
「まだ思考が確立出来てない子供の頃に、家と周辺の自然ごと消し飛ばしたらしい。まあ、それも覚えてないんだけどな」
生まれて始めて個性を使ったのは、モンスターになったのは、彼らから伝えられるには呼人が2才の頃。初めて変身したのは砕竜。
そして、モンスターの中でも早まった彼の伝えてきたイメージのままに、良くもわからぬまま周りの全てを消し炭にした。
その言葉に、轟は息を飲んだあと申し訳なさそうな顔になる。
「……わりい。お前の事を知らねえで」
「俺もお前の事を知らないで好き勝手言ってるからおあいこだ。人によっては傷つくかもしれないから、気をつけたほうが良い話題ではあるけどな。まあお前は、もう少し周りに目を向けておけ」
世界は、お前とその家族だけで出来てるわけじゃねえんだから。
モンスター達から、広大な世界の、その圧倒的な広さについて聞いていた呼人だからこその言葉。ただでさえ、轟は自分の世界に囚われている。だが、世界はとても広い。轟が臨んで引きこもっているならまだしも、外を知らないだけならば、知っておいた方が絶対に成長できる。
「……そうだな」
その言葉に、轟は納得半分、それは出来ないという思い半分。
確かに、自分が辛いなら呼人の言うように離れれば良い。だが、自分が傷つけてしまった大切な人がいるのなら。
だから、自分は彼が言うように逃げる事は出来ない。だが、少しは。外を、今いる仲間達を見なければならない。いや。見てみたい。そう、思えるようになった気がする。
「お前らは……人の大事にしてたもん簡単にぶち壊しに来るな」
「気に入らないものはぶっ壊すに限る。ちなみに緑谷には、何を言われたんだ?」
2人の話は、表彰式のアナウンスがあるまで続いた。
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表彰式は比較的穏やかに終了した。1位百竜呼人、2位轟焦凍、3位爆豪勝己、飯田天哉。
何故か飯田が表彰式には出席していなかったが、それ以外はつつがなく。そう、本当につつがなく。爆豪が暴れるかと危惧したものもいたが、不機嫌そうに何かオールマイトに言っただけで暴れる事無く済ませ、無事に終了した。
その後相澤からちょっとした言葉があり下校となった後、いつもどおり訓練室に行こうとしていた呼人は障子と尾白、そして耳郎達に声をかけられた。
「百竜、この後ご飯食べに行かないか?」
「ご飯……何かの店か?」
「え? まあファミレスだけど」
ファミレスか、マクドか、カフェか。そういう聞き方ならわかるのだが、呼人の聞き方は奇妙なものであり、皆が首を傾げる。
「ありがとう。ずっと外国……というか人里離れたところにいたから全くそういうのがわからないからな。変な疑問だったか?」
「人里離れたところっていうのは?」
「尾白、それこそ行ってから話せば良いのではないか?」
障子に言われて、芦戸はそれもそうだと頷く。実は今日の集まりは、体育祭の反省会もあるのだが芦戸の口から少し明らかになった呼人のことについて聞いてみたいという者達の集まりなのだ。
呼人は学校でのコミュニケーションに問題が無いとは言え、その大部分は勉強の内容や訓練方法、あるいは個性の話であり、呼人自身のこと、つまり雑談を全くと言っていいほどしない。むしろその時間さえあれば本をめくっていることが多く、一日で数冊の本を読破していることもザラにあるほどだ。
「じゃあ、俺も一緒に行かせてもらいたいな」
その言葉に全員が笑顔で頷き、総勢7名でのお疲れ様会が決まった。
呼人自身が参加を決めた理由は、彼もまた、こういう機会があれば良いなと考えていたからだ。こういう機会、というよりはつまり、人間的な、『楽しむ』機会。それは呼人自身の意志だけでなくむしろモンスター達の総意でもあり、モンスター達の、特に人格を得る以前の行動原理や思考にかなり染まってしまっている呼人を、人間の社会に戻すための1つの手段でもある。
呼人はまだ、モンスター達とイメージを交わしたり戦って過ごした時間が、人間との関わりのそれを遥かに越えているのだ。
番外編のネタを活動報告で募集するので何かある人は適当に投げてください。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない