竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
ヒーロー名決めから週が明けて月曜日。久方ぶりのヒーロー基礎学の演習が行われる日である。今日の演習は登攀、つまり崖登りの訓練であり、コスチュームの着用が義務付けられていた。
「壁登りか……今日個性を見せるのか?」
「そのつもりだ。まあ一応見せろって言ってくる相手にはだいたい見られてるんだけど。ずっと見せないまんまってのも今後の授業で困るだろうし」
コスチュームに着替えて移動している最中に障子が声をかけてきた。
「ふむ……確かにそうだが……」
「というかそうでもしないとどう見せるのかがわからんままずるずるいく可能性が高い」
「確かに一理ある、か。お前はあまり雑談したがるようなタイプではないからな」
「なんだろうな。自分から自分の事を話すのは不得手なんだ。聞かれればいくらでも答えるんだけど」
「そうか」
その後はちょっとしたトレーニングの話や組手の話をしながら歩いていると、目的の崖を模した訓練施設、というか天然の崖を利用した訓練施設に到着する。広大な敷地面積を持つ雄英高校はその敷地内に森林や山などの自然すら内包しており、こうした訓練施設の一部には自然をそのまま利用したものも存在している。
「障子はどう登るんだ?」
「……腕を複製してリーチを伸ばしながら登るだろうな。複製した腕は腕力も高い」
「なるほど。そうなるか」
ヒーロー基礎学ではさすが雄英のヒーロー科だけあってか、一般人なら全く知らないような知識もどんどん教えられる。例えば今回の登攀の技術もそうで、大抵の生徒はそれぞれの個性を活用した登り方を考えるように言われており、それが難しい生徒も通常の登攀方法を映像つきで教えられていた。
今後どんどん基礎訓練が入っていくのだが、演習の場では最初の戦闘訓練のようにあえて実戦に近い形を最初にぶつけて、その後そこから基礎的な部分に戻るという形を取って講義が行われている。
「HAHAHA! 私が来た!!」
生徒が全員揃った所で、オールマイトがド派手に空から落ちてくる。いや、着地してくる。教室ではただ入り口から元気よく入ってくるだけだが、こういう彼の力が発揮できる場所になると派手な登場の仕方を好むようだ。
また、先日のヴィラン襲撃以降の警戒態勢もあって、イレイザーヘッドも授業を見に来ていた。
降ってきたオールマイトのかっこいい着地姿勢に生徒が湧く中、オールマイトは早速授業を始める。
「今日は先日も言った通り登攀の訓練をするぞ! と言っても初めての登攀訓練だから無理はしないでくれ! 無事に登って降りてくる事を第一に考えてほしい! 最初に私がお手本をするから見ていろ少年少女!」
そう言うとオールマイトは軽くしゃがみ込み、そこからぴょーんと、ほんとにぴょーんと言いたくなるぐらい軽いノリで、しかし勢いは ドンッ という音が聞こえるぐらいのもので崖の上へと飛び上がっていった。
そして崖の奥で何かを拾って、再び飛び降りてくる。
「このように崖の奥に棒を置いてるから、登った後はそれを確保して降りてきてくれ!」
生徒達の反応はポカンと言ったものだ。崖の高さは20メートルほどあるのだが、オールマイトはのぼるというか、軽くジャンプして上がって軽くジャンプして降りてくるという、まるでそこにあるのは壁ではなくただの石ころであるかのような動きをするのだ。
参考にならない、というか、それを言葉で説明すればそれで十分なのではないかと思いたくなるようなお手本である。真似できるのは爆風を利用できる爆豪と、足を壊す覚悟であれば緑谷ぐらいなものだ。
その後、生徒がそれぞれに分かれて、アドバイスや確認をしあいながら壁を登ってみる。といっても本当にいきなり難しい課題をぶつけているので、今回はオールマイトもいきなり成功させることは求めていないのだ。そのため、競争させるような形も取らない。
「落ちたらどうなるものかと思ってたけど、一応下にショック吸収用の装置があるんだな」
「……流石にいきなり下に何もない崖は、使わないのではないか?」
「俺の常識はずれてるしヒーロー科の常識もわからんから気になってた」
オールマイトの説明では、落ちそうになったときには彼かイレイザーヘッドが必ず救出すると言っていた。その代わり全員一気にではなく、最大4箇所までしか同時に登ってはいけないと指示されている。
「下のマットは念の為ぐらいの扱いだろうね。オールマイト先生も相澤先生もスタンバイしてくれているし」
「尾白はどういうアプローチで?」
「俺? 俺は普通に登ってくるよ。これぐらいの崖なら登れるように鍛えてる」
武道を嗜んでいる尾白は、クラスの中でも特に体を鍛えるとともにその扱い方にも習熟している方である。そのため、壁を登るぐらいのことなら特に問題なく出来るのだ。
「呼人は?」
「前言った通りオドガロンで駆け上ってトビカガチで飛び降りてくる」
「あのぐらいの壁じゃあ役不足なんじゃないか?」
「……このまま見せないでいるとそのままずるずる引きずって放置する自信がある」
「……自慢気に関係ない時に見せたくはないが、見せ所がわからないということだな」
「ヘタレだね」
「ずっと一緒にいた奴としかコミュニケーションしてない人間に期待しないでくれよ」
呼人だって見せびらかしたくはないが、今後もずっと演習や基礎訓練などで個性を使った連携なども行っていくのだ。そのときに何が出来るのかがまったくわからないというのは問題である。あまり頼られるのは困るが、相手からすれば最悪こう言う暴れる手段もあるのだと警戒する必要が出てくるので訓練にもなる。
だから、全部を見せることは出来なくても使うつもりであるオドガロンとトビカガチの能力は見せておくべきなのだ。
そんな雑談をしていると、やがて順番が回ってきたので最初に尾白が登ることにして壁に取り付く。
他の生徒も同時に登っており、他生徒の中ではやはり爆風による飛行が出来る爆豪や、足場を作れる轟、黒影の力を借りて体を支えることが可能な常闇に、蛙さながらに壁を登ることの出来る蛙吹などが秀でているようだ。
そんな中尾白だが、轟や爆豪、常闇のような派手さと見た目の凄さは無いながらも、尻尾を重心移動や支えに活用してスルスルと岩壁を登っていく。鍛えた体の能力が十二分に発揮されているようだ。以前呼人は彼の手足を貧弱と言ったがあくまでそれは呼人と比較しての話であり、様々な活動をする事を考えると、大きすぎず弱すぎず、柔軟で十分な筋力であった。
「……器用だな」
「ああ。体の使い方がうまいな」
障子もまた尾白の登り方に感心していた。しばらくの間呼人たちとともに組手や訓練をしたことで、体を動かすことへの感覚ができ始めていた障子には尾白の凄さが理解できたのだ。
やがてまともに登れないクラスメイトが多い中ちゃんと登りきることに成功した尾白は、尻尾で棒を捕まえると壁を下ってくる。
その動きも登りと比べると遅いが、それでも着実に下まで棒を持って降りてきた。棒の長さは80センチほどでとても手に保持したまま壁に手をかけれるようなものではなく、尾白の尻尾という5つ目の四肢が上手く機能していた。
「障子もあの手の使い方は参考になるんじゃないか?」
「……そうだな。四肢に加えて使えるパーツの多い俺達の利点だろう」
そう会話しながらも、尾白は触腕の先に腕を複製して尾白の動きを再現しようとしていた。体の動かし方に関しては先達を模倣した方が効率的な場合が多いのだと、呼人と尾白との組手や訓練を通して障子は学んでいた。
「ん、じゃあ次俺登ってくる」
戻ってくる尾白と入れ替わりに呼人は障子の元を離れて、壁から少し離れた位置に立った。
壁に取り付いている人がちょうど途切れるタイミングを確認すると、瞬間的にオドガロンに変身して崖の上へと飛び上がる。20メートルの壁は人間にとっては大きな壁にはなるが、全長13メートルを誇るオドガロンにとっては少しばかり大きめの段差に過ぎない。
オールマイトほど力強くというわけではないが、ストッとかるく崖の上に跳び乗ると、トビカガチへと変身して地面に立っている棒のうち一本を口にくわえ、崖から身を躍らせる。
そして地面直前で手足の間にある皮膜を広げて勢いを完全に殺し、人間に戻って手に棒を持ち着地する。
その一連の動作には、わずか10秒ほどの時間しかかかっていなかったが、クラスメイトは気付いたものからそれに目を釘付けにされていた。
一方周囲の目を集めた呼人は居心地悪そうに障子と尾白のところへと戻ってくる。
「……やっぱり目立つの好きじゃねえ。ワフッ」
居心地悪そうに戻ってきた呼人をねぎらうように、尾白が尻尾のもふもふの部分で顔をなでてきた。
「お疲れ様。やっぱりでかいな。この壁があの大きさの前じゃあ大した壁に見えなくなる」
「……次は俺の番だ」
「いってらっしゃい」
入れ替わるように障子が壁に向かっていき、呼人と尾白はそれを見守りながら2匹のモンスターについて話す。周囲では呼人に注意を持っていかれた他のクラスメイトがオールマイトと相澤から注意を受けていた。
「黒い方、トビカガチだっけ? 皮膜みたいなのがあると思ったらムササビに近いんだな」
「ん、気付いてたのか。そうだな。あれで滑空して木の間を飛び回る感じだ。大きさを人間に調整すれば街中でも使える」
そういう意味でも街中での機動力を考えて、トビカガチを常用しようと選んだのだ。自由に、というほどではないが、障害物が大きく多いほどトビカガチの移動力は高くなる。直線の無い路地なんかで言えば、オドガロンのそれを越えていくかもしれない。戦闘力に関してはそれほど高い方ではないモンスターだが、力の使い方を考えれば活躍する場所は十分にあるのだ。
「また背中に乗せてもらいたいな」
「……また、な」
USJの件では、尾白を乗せた状態でかなりの速度でダッシュした。あれが完全にフルスロットルというわけではないが、それでも生身で、またモンスターの躍動感を受けながらの移動は心地よかったのだ。
「お前は尻尾で支えられるから良いとして、他の奴に催促されると下手に乗せづらいからな。鞍が必要になる」
「一緒に個性を鍛えてくれた人がいるなら持ってるんじゃないのか?」
「家にはある。ただ持ってくるのが大変だろ」
大型のモンスターに乗せるための鞍ともなれば鞍単体の大きさが3メートル以上の巨大なものになってくる。そんなものを持ってくるのは大変だし、何より持ってきても置いておく場所が無い。
「モンスターに変身しているときはコスチュームはどうなってるんだ? 体育祭じゃあ本来の大きさには変身できなかったんだろ?」
「コスチュームは全部俺が作った素材で出来てるんだ。モンスターの皮とか毛とかでな。だから変身するときには、俺の中に取り込んで、変身を解除するときにまた外に出すことが出来るように訓練してる」
「それも訓練したのか」
「最初は一回取り込んだらまた素材に逆戻りだったからな……」
何回も外に出したものを少し加工しては戻して、また出すという事を練習し続けたものだ。コスチュームもそうなのだが、カナダで個性の検証や訓練をしている頃にはいちいち変身するのに素っ裸になる必要があり、日本に来るに当たってはそれを克服するために神王寺の親しい企業で呼人の提供した素材を元にコスチュームだけでなく普段の服なども作成してもらっている。
特に下着は基本的にそうした繊維から作ったものばかりだ。続いて優先しているのがズボン。シャツは最悪ふっとばしたとしても上半身裸になるだけでそれほど問題はないため、市販のものと専用のものが半々ぐらいだ。
「……ずいぶん注目されてるみたいだけど?」
「……こうなりそうだからあんまり見せたくないんだ。見せる度にこんなことになるとしんどい」
「そういう意味ではその2匹に制限してるのは良いのかもね」
憂鬱そうな表情を見せる呼人をよそに、尾白はおかしそうに笑う。強力な個性と高い実力を持つ呼人だが、その感性は割と普通の少年なのだ。たまにずれてることがあるので完全に、とは言えないのだが。
「障子は、2人ぐらい背負っても上り下りできそうだな」
「パワーが凄いからね。体も大きいし。後は技術さえ身につければ……」
モンスターの話の次に話題に上がる障子は、触腕を上手く使おうとしているものの登るのに苦労していた。確かに四肢が他のものより多く上手く活用しようとはしているのだが、好きなところに手を伸ばすことが出来ない登攀に合わせることが出来ていないのだ。そのため、増えた四肢を持て余しているとも言える。
「……あの個性なら、もっと良い登り方があると思うか?」
「……どうだろう。爆豪みたいに飛んだりは出来ないだろうし……。むしろ障子はあれだけ手が増やせるんだから道具を持ってもいいと思うんだけどな、盾とかロープとかピッケルとか。同時に使える数も多いし」
「確かに。それはありかもしれないな」
障子の苦労する姿を見ながら、2人はその個性の活用法について考察していた。個性にはそれぞれの特性があるため他人の個性について考えても直接的な意味はないのだが、思考を柔軟に広げる練習という意味ではかなり効果的だ。また敵の個性で何が出来るのかという想定を立てる際にも必要となる能力なのだ。
「相澤先生はどうやって登るんだろう」
「……普通に登るんじゃないか? 木でも生えてたらもっと早いかも知れないが、流石に壁面は捕縛出来ない気がするが……」
それこそ木が少しでも生えていればその間を捕縛布で軽く飛び回って登っていくそうなものではあるが、ただの壁面というのは邪魔なものがない分頼れるものもない。
「……むう、厳しいな」
登攀の途中で登れずに降りてきた障子のもとに、呼人と尾白は近づいてアドバイスをする。
「先に登れるルートを考えるんだ。1つ1つ届く所しか考えてないとつまるから。あと障子は腕を複製すればリーチが長いからその射程を把握するか、別の触腕で目を複製して手をかけられそうなところを探したりしてみた方が良いと思う」
「! なるほど。……それは効果的かも知れないな」
登りながらの障子の様子を見てからのアドバイスを尾白が伝える。障子は触腕を複製して全部で6本の腕を複製して壁を登ろうとしていたのだが、体を支えるならば腕は触腕含めて3本もあれば十分であり、そのほかの触腕から常に腕を複製しておく必要はないのである。
それならばむしろ、視点を自由に移動できるという利点を活かして掴む先を確認した方が良かった。
「……もう一度登ってみよう」
「おう」
そう言って障子は再び壁に向き合った。まだ体を動かすことに慣れきったわけではないが、その片鱗は見せつつある。恐らくもう少しすれば、壁を登るような作業も簡単にこなすようになるだろう。
「百竜は、人間のままでも登れるよな?」
「登れる」
「だと思った」
それぐらいは当然鍛えてある。変身するのはまた今度にするか、全員に動画を見せればよかったかなと若干後悔する呼人であった。
******
授業終了後。案の定、と言うほどにはクラスメイトに質問攻めにされることなく、むしろ若干遠巻きにされる呼人のところに、苦笑交じりの尾白と障子がやってくる。。
「見事に怖がられたね」
「でかいからなー。それこそ犬ぐらいの大きさならああもならんかっただろうけど」
なにせ、人間が目にできる陸上生物の中で最大の種である象ですら、最大でも全長は4メートルほど。側面から見た時に正方形に近い体躯をしているために体高こそ近けれど、見た目の威圧感で言えばオドガロンやトビカガチの方が遥かに大きい。
「まあ、見せたし聞かれないなら聞かれないでそれも良しではあるんだけどな」
結局見せたものを聞かれたら答える
そうこう言っている内に、若干興奮気味の芦戸、葉隠と、それに引きずられるようにして耳郎が近づいてくる。いつも耳郎と一緒にいる八百万は、まだ授業の振り返りをしていて崖の近くに立っているようだ。
「百竜! あの大きいのってこの前見せてくれたの!? あんな大きいとは思わなかったよ!」
「芦戸には言ったと思うんだけど。全長13メートル、全高4メートル、って言わなかったっけ?」
「覚えてない!」
堂々と言い切る芦戸にため息をつく。あまりこんな事は言うべきではないと思うが、そりゃあ小テストで補習をくらいまくるわけだ。
「百竜くん! もう一回見せて!」
「今変身したら怒られるだろ。変身したらめちゃくちゃ目立つんだから」
「「えー!」」
芦戸と葉隠が揃って声を上げるが、見せれないものは見せれない。腕を変化させるぐらいならまだ許される、というか黙認してくれているのだろうが、実寸大のオドガロンになるとなると話が違ってくるのだ。絶対個性の無断使用で注意を受ける。
そんな中呼人は、いつも騒がしいというわけではないがそれでも話を傍観しているというわけではない耳郎が何も言わないことが気にかかったが、2人が更に尋ねてくるのでそちらに答えるために向き直る。
「じゃあじゃあ、黒い方の特徴説明してよ!」
「黒い方はトビカガチっていう名前のモンスターで、鱗と所々に体毛があるんだ。後は木を登るのが得意で―――」
一瞬しかトビカガチの姿を見せなかったために説明にはその特徴の説明も要求され、なかなかに話すのに時間がかかった。
更に放課後には上鳴や切島、瀬呂ら、他のクラスメイトにも障子が撮影した映像を見せながら紹介することになってしまった。映像もLINEを通してクラスに拡散されたため、よく見ていなかったものも全員がそれを見ることになったのである。
ついでに、ヒーローオタクの本領を発揮した緑谷にしつこく尋ねられた呼人が緑谷に食事をおごってもらいながら長いこと話し混んだたのはご愛嬌である。
なんか個人的にはこの話微妙かな……難しい
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない