竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第28話 職場体験・1

 日は流れて職場体験の日がやってくる。

 

 これまでと特に変わらずに学習と訓練の日々を過ごしていた呼人だが、職場体験に向けて少しばかりヒーローについても調べていた。主に自分を指名してきた事務所とその事務所の有力なヒーローの経歴や活動について調べたり、ヒーローのランキングを調べたりと、相澤に言われたとおりに情報収集を。

 

 これに関してはインターネットの利用に長けていない呼人よりもそういう分野をかなり得意とする神王寺が詳しく、たまに帰ってくる神王寺に調べ方について尋ねることでインターネットを利用した情報収集の仕方を教えてくれた。

 

 

******

 

 

「お、なんだヒーローに興味が出てきたのか?」

 

 自分でも少しばかりヒーローについて調べてみた呼人は、あまり思っているほど詳細な情報が手に入らない、というよりは呼人の求めている戦い方などよりも所謂スキャンダルのような内容ばかりであったため、少しでも詳しい人間に尋ねようと神王寺にどのように情報を収集すれば良いかを尋ねてみた。

 

「もともと興味はある。ただ、実際にどういうヒーローがどういう場面で活動してるからは知らなかったからな」

「そりゃ言いたいことはわかるが急な話だな。なんかあったか?」

 

 普段は己を極めることにしか興味が無い呼人の珍しい質問に、神王寺は興味深げな反応を見せた。それだけ、呼人が外の具体的な個人に興味を向けるというのは珍しいことなのだ。

 

「神王寺はドラフト指名って知ってるか?」

「ドラフト? いや、知らないが……なんかを選ぶのか?」

 

 全く知らないといった様子の神王寺に、呼人はプロからのドラフト指名と職場体験について質問する。

 

「なんだ、そんなおもしろそうなものがあんのか。俺も誰か指名してみりゃあ良かったかな」

 

 そう言う神王寺は、体育祭を見に来ていて最後の方だけ用事で抜けていたらしい。そのため、一応指名を出来る程度には一年生の動きを見てはいた。とはいえ、である。

 

「あんた教えられるほど今のヒーロー業界に精通してないだろ?」

「まあな。まだ戻ってから半年も立ってないし。けどずっと情報は拾ってはいたんだぜ?」

「あんた普通じゃ考えられない無茶するだろ」

 

 呼人のじとっとした視線に、神王寺は心外だと言いたげに肩をすくめる。

 

「一応普通の常識も知ってるからな。教える相手によってはちゃんと常識を使い分けるさ。お前にも一応最初は常識通りにやろうとしただろ?」

「覚えてないな」

 

 今度は呼人が首をすくめる番である。神王寺は最初呼人を拾った時、普通の常識を教えながら育てようとしていたし、なんなら日本の孤児院にでも入れてやろうとはしてくれた。

 ただ呼人がモンスター達と対話することが出来たために、普通の孤児院で手に負えるとは思えず自分の手で育ててくれたのだ。多分に呼人の個性に対する興味もありはしたが。

 

「まあ良いや、そういうことならネットの使い方を教えてやるよ」

 

 そう言って神王寺は自分のノートPCを持ってくると、合法的な情報収集の方法を呼人に教えてくれた。ちなみに呼人にはそういう技術があること自体教えていないが、神王寺は非合法的なネットを用いた情報収集、すなわちハッキングなども得手としている。自分の個性が直接戦闘向けにも偵察向けにもならない事を知っていた学生時代の神王寺は、自分に出来ることを、と情報収集の方法を模索したのである。

 現代社会においてはそれらも個性を用いて行う者が多いのだが、神王寺はただ己の鍛えたハッキングスキルでそれを達成していた。

 

「お前はどこに行くのか決めてるのか?」

「いや……一応先生には一箇所進められたからそこを第一希望にしてみようと思ってる」

「お前の担任誰だっけ?」

「イレイザーヘッドっていうヒーローらしい」

 

 そんな会話をしながらも、神王寺の手は止まらない。サクサクネットのサイトやページを巡って、情報収集に良さそうな場所を探していく。

 

「ちなみにその第一希望は?」

「ああ、第一希望は―――」

 

 

******

 

 

 職場体験当日には、それぞれが行く先が違っており、近場のヒーロー事務所で職場体験をする者もいれば、遠方の、それこそ九州地方まで行く者もいるため、一度朝に駅に集合してからそれぞれに出発することになっていた。

 

 いつもどおり早めに、とはいえ自転車を止めておくことが出来ないため神王寺に車で送ってもらった呼人は、数日分の着替えや自前の本などが入った鞄とコスチュームの入ったケースを持って駅へと到着する。職場体験を申し込んだヒーローから、移動を繰り返すので荷物は小さくまとめておくようにしろとの連絡をもらっていたので、それに合わせてスーツケースなどは使用せずにリュックサックだけを使っている。

 

「お! 百竜早いな来るの! おはよう! 俺一番のりかと思ってきたのに」

 

 集合場所らしきところに最初に到着したのが呼人であり、次に来たのが切島だった。

 

「おはよう。遅れるのは嫌だから早めに来ておきたかったんだ。別にここに来ても本読んでればいいからな」

 

 そう言って呼人は、鞄から出した本を示す。

 

「お前、ほんとに真面目だな。学校でもずっと本読んでるし、結構訓練も頑張ってるだろ? あんまこう言うの聞かない方が良いのかもしれねえけど、なんでそんな頑張れるんだ?」

 

 切島とはあまり会話をしたことが無かっただけに、ちょうど良いとばかりに切島は疑問に思っていた事を呼人に尋ねる。高校からヒーローを目指そうと

 

「ん、いや……なんていうんだろうな。訓練も読書とか勉強で知識を蓄えるのも、自分を高めるのが普通というか……好き、なのかな。まあ他の楽しい事をほとんど知らないってのもあるんだろうけど」

「楽しい事をほとんど知らない、ってどういう事だ? 映画とアニメ見たり、漫画読んだりゲームしたりはしないのか?」

 

 切島の、ある意味当然とも言える質問に呼人は苦笑する。それは障子や尾白にも言われたことのある言葉だ。

 

「生まれてからずっと、自分を高めることばっかりしてきたからあんまりそう言うのに詳しく無いんだ。時間が出来たらいつかやってみたいと思ってるんだけどな」

「生まれてからずっと、って……」

 

 ひかれたかな、と思って切島の顔を見ると、目を輝かせていた。

 

「凄いなお前!」

「お、おう?」

「俺も強くならないといけないとは思うんだけどよ。どうしても友達と遊ぶのとか楽しくてそっちに行ってしまうんだよな」

「ああ、そういうことか。楽しいことがあるならやっておいた方が良いだろ。自分で言うのもなんだが、俺みたいにひたすら強くなる事しか考えないってのも異常なもんだと思うぞ。なんにしろ、適度さが必要だと思う」

 

 自分でも、呼人は自分が少しばかり人間として普通では無いのはわかっている。だが、普通に戻ることも出来ないのだ。自分はそうあってはいけないのだと。多くのことを知った自分は、ただただ己を鍛え続けなければいけないのだと。

 それが、呼人が自分に無意識のうちに課してしまった鎖である。

 

 モンスター達もそれを懸念しているのだが、そもそも考えの前提からそれがある呼人に、普通の人間としての楽しみを、と言った所で上手く理解することが出来ないのだ。

 だが。

 

「まあ、たしかにそうだけどよ。お前も強くなるのとか本を読むのが楽しくてやってるんじゃないのか?」

 

 切島の言葉に、呼人は目をまたたかせる。

 

「そう、なのかな。楽しい……よく分からないけど……やってて嫌な気はしないけど、もうやってて当たり前っていう感じはあるんだよな」

 

 でも楽しい、楽しいか。どうなんだろ。

 そう言って首を捻る呼人に切島は奇妙なものを感じながらも、それなら、と笑う。

 

「なら、これから楽しいこと色々やろうな! 学校の行事とかクラスのみんなで遊んだりとか!」

「……ああ、そうだな。俺も、楽しいことをやってみたい」

 

 呼人がそう言って笑うと、切島も満面の笑みを見せる。

 

「おう!」

 

 まだまだ人間としての普通を知らない呼人だが、それはクラスメイト達との、仲間たちとの交わりの中で育まれていくのだ。

 

「そう言えば、百竜は職場体験どこ行くんだ? 俺は仙台のフォースカインドのところに行かせてもらうんだけど」

「どこというか……ミルコの所で職場体験させてもらうんだけど、事務所持ってないから拾いに来るって言われてるんだ」

 

 呼人の言ったミルコという名前に、切島は目を見開いて驚く。

 

「まじかよ百竜! 凄いなお前!」

「相澤先生が、俺は一度一人で活動するミルコの活動を見ておいた方が良いって言ってくれたんだ」

「やっぱ優勝するとすげえヒーローから指名が入るんだな」

「数は轟にも爆轟にも負けてたけどな」

「いやそれでもすげえよ!」

 

 呼人の職場体験先であるミルコというヒーローは、ビルボード・チャートにおいてトップ10に入る有力なヒーローでありながら事務所やサイドキックを一切持たず、日本中を駆け回ってはヴィランを退治するという一風変わった活動形態を持つヒーローだ。その実力は相当に高く、また女性ヒーローの中で最高順位を持つという特徴もある。

 スタイルは完全な武闘派でありながら個性をうまく活用して偵察や救助でも高い実績を持つ、言ってみれば1人で全ての事を出来るという、稀有なヒーローでもある。

 

「せっかく声をかけてもらえたんだから、ちゃんと勉強してこないとな」

「うおー! 俺も負けねえ!」

「切島声が大きい。場所を考えろ」

 

 熱く決意を新たにする切島の叫びに、いつもどおりの静かな声が注意する。

 

「あ、相澤先生はざーす!」

「おはようございます」

「おはよう。早く来るのは良いが、周りの迷惑にならないようにな。集まった人間が道のど真ん中に立ってると邪魔なもんだ」

「はいっす!」

 

 元気よく答える切島を一瞥すると、相澤は近くの柱にもたれかかって静かになる。時間を見ると、集合時刻まであと30分となっていた。

 

「それにしても楽しみだな!」

「……そうだな。これも楽しみ、だな」

 

 こういうのも楽しみになるのだなと、呼人はまた1つ学んでいた。

 

 

******

 

 

 クラスメイトが全員集まった所で、相澤が話し始める。

 

「コスチュームはちゃんと持ってるな。こういう機会じゃなけりゃあ公共の場では使用禁止だ。落とすなよ」

「はーい!!」

「伸ばすな芦戸。くれぐれも失礼のないようにな。――よし、じゃあ行って来い」

 

 それぞれがそれぞれの職場体験先へと向かうために教師である相澤が同伴することは出来ない。そのため、ここから先は生徒だけで行くのだ。

 

 尾白らと軽く言葉を交わした呼人は、新幹線や電車に乗らず、ミルコに指定された場所へと移動する。指定された場所といっても集合場所のすぐ近くの改札の前だ。ここから先どこに行くかは連絡されておらず、ただ『ここに集合!』とだけ言われていた。相澤が深くため息を付いていたのは、きっとそれが普通では無かったからだろう。

 

 そこに移動して少し待っていると、人間の中に異質な気配を感じる。まるで野生動物のような、けれど獣性は感じず、ただただ強力な何かの気配。呼人自身も初めて感じる矛盾だらけの気配に戸惑っていると、その気配の主はまっすぐ呼人のところへと近づいてきた。

 

「よう! お前が百竜だな!」

「あなたがミルコさんですか?」

 

 呼人のところへとやってきたのは、ボーイッシュな服装をした女性。上は白のTシャツに黒系統のジャケット。下にはフレアパンツという裾の拾いパンツを履いており、その頭にはベースボールキャップを被っている。そしてそのベースボールキャップの上の部分からは、長いウサ耳が飛び出していた。

 

「そんな丁寧に話さなくて良いぜ。かたっ苦しいのは好きじゃねえ」

「じゃあ適度にするけど。あなたがミルコさん?」

「おう! お前が百竜だよな」

「雄英高校1年A組百竜呼人です。よろしくお願いします」

「おう、よろしく! それじゃあ早速行くぞ!」

 

 ついてこい、とばかりに、ミルコは改札へと歩いていく。この数日の間に電車の使い方を学習した呼人もそれについていく。

 

「あの、どこに行くかまだ聞いてないんですけど?」

「あ? そういや言ってなかったっけ。 私はあちこっち行ってるだけだからな。どこに、とかは特に決まってねえんだ。とりあえず今からは、リューキュウの事務所に行く」

「なるほど」

 

 リューキュウ。ビルボード・チャートのランキングトップ10にいたヒーローであり呼人も覚えているが、改めて後で調べておこうと呼人はミルコの隣に並んで立つ。そんな彼の方をちらりとミルコは見た。一応はランキング上位のヒーローである自分を前に特に萎縮することも興奮することもなく、至って自然体でいる様子だ。

 

「なんで行くのか、とかは聞かねえのか?」

「行けばわかるかなと。作戦行動っていうわけでもないみたいですし」

「ほう。鋭いなお前」

「ミルコさんもヒーロースーツは着てないみたいだから、まずは移動してから何かするんだろうと思ってます」

「あたりだ。そんじゃああたりついでに、説明しとかなきゃいけないこと説明しとくぞ」

 

 そう言うとミルコは、電車を待っている間に説明を始めた。それは、職場体験を受け入れる事務所、ヒーローに説明が義務付けられているヒーローの仕事としての基礎である。

 

 ヒーローは派手なコスチュームを着てそれぞれに活動しているようだが一応は国から給料をもらっているために公務員扱いではある。ただ完全時給制ではなく成果に応じて給料が変化するため、他の公務員と比べて全く同じかと言われるとそうでもなく、かなり独特のものであるということだ。

 更に、ヒーローが人気を重要視する職業である以上CMやテレビ出演といった副業も認められている。

 

 ちなみにミルコは絶えず移動するため、連絡を受けてからのちょっとした取材ならともかく、積極的にCMに出たりテレビに出演したりはしていないようだ。調べた所本当に数日で地域を変えるためにそういうことは出来ないのだろう。

 

「後は、私の活動形態だな。私のとこに来たからには知ってると思うけど、他のヒーローと違って私は事務所を持ってない。あちこちを移動しながら行った先行った先で活動してる。そういうときは大体行く先のヒーロー事務所にとめてもらうことが多い。だからそういうときは事前に連絡するようにしている」

 

 ミルコは相澤からもらった呼人のデータにおいて、職場体験に対する備考として『百竜呼人は自己の強さ以外の周囲への興味が薄く、特に直接接触する人物以外の様々な情報収集を怠る癖があるため、ヒーロー活動において『1人であっても独りではない』事を学ばせる必要がある』ということを伝えられていた。すなわち、それを教えてくれということだとミルコは受け取っていた。

 ちなみに事前に連絡をしているとは言っていたが、今から行くリューキュウのところなど比較的気心の知れた相手にはアポ無しか『行く』という連絡だけで行くことの方が多い。それこそ全く知らない相手ぐらいにしか丁寧な事前連絡はしてはいない。

 

「1人であちこち行くっつっても、行った先ではそこのヒーローの話を聞いて足りない部分を埋めたりしてるから、全部1人でやってるんじゃないんだぜ」

「なるほど」

「いくら興味が無いっつっても、それぐらいはちゃんと気を回せよ」

 

 ミルコとて、あまり他のヒーローに興味がある方ではない。それでも実力の高いヒーローに関してはある程度の情報を集めているし、移動先で連携する可能性のある事務所のことぐらいは調べるようにはしている。好みと、最低限しなければならないことはちゃんとわけているのだ。

 

「気をつけます。1人で活動しててもあなたは独りじゃない、ということでしょ?」

「お前鋭いな。ご褒美に人参をやろう」

 

 いや、結構です、と、人参を取り出そうとするミルコに伝えてそれを固辞し、相澤に言われたことを話す。

 

「強さを求めるのは良いが、ヒーローになるならちゃんと情報も集めておけ。1人ではヒーローは出来ないと相澤先生に言われました。その後あなたのことを『1人で活動しているヒーロー』と言っていたから、俺に言ったのは人数の1人ってことじゃなくて周りと関わらない孤独っていう意味での独りだったんだと思います」

「よし、乗るぞ!」

 

 話の途中で電車が来たために、ミルコは呼人の言葉に反応を見せることなく電車に向かっていった。だが、言葉ちゃんと聞いていた。

 

(教師の言うことをきっちりわかってくれる優等生じゃねえか。てか、わかりすぎじゃねえか? ま、強そうだからいっか)

 

 職場体験はまだ始まったばかりである。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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