竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第30話 職場体験・3

 応接室に案内された呼人は、ねじれに質問攻めにされながらもミルコに今後のことについて尋ねていた。

 

「パトロールとかは行かなくて良いんですか?」

「私は一応フリーだからな! 基本自由だ!」

「なるほど。そのあたりも自由なんですね」

「その代わりなんかあったらすぐに跳んでくぞ」

 

 行った先の偵察もそうだが、ミルコはその跳躍力を生かした機動力で即座に事件の発生した場所に到達しそれを解決する事を得意としていた。そのため、こうやってどこかの事務所で待機しておくこともそれなりにあるのだ。

 そして何かがあると、文字通り跳んでいく。個人での機動力がトップクラスに高い彼女だからこそ出来る方法である。

 

「もう少ししたら届くわ。それとミルコ、人参よ」

「サンキューリューキュー!」

 

 応接室に入ってきたリューキュウは、何故か皿にに切った生の人参を盛ったものを持っていた。それを受け取ったミルコは、満面の笑みで人参をかじっている。

 呼人がその様子をポカンと見つめていると、リューキュウが説明してくれた。『なんで人参だけ食べてるの?』というねじれの疑問への答えでもある。

 

「ミルコの個性は『兎』だから、人参が大好きなのよ。連絡があった時に買っておいたの」

「……俺こんな凶暴な兎知らないんですけど。なんかライオンでも蹴り殺しそうな感じが」

 

 その少しとぼけた呼人の感想に、リューキュウはおかしそうに笑う。

 

「そうね。ミルコの強さは飛び抜けてるから。でもあなたもちゃんと戦えてたわね。誰かに師事してるのかしら」

 

 実際はミルコは呼人に怪我をさせないように手加減をしていたのだが、それを指摘するほどリューキュウは野暮ではない。それを教えるのはミルコの役目であり、雄英の教師の役割だ。

 

「……育ての親がプロヒーローだったので戦い方を教えてもらいました」

「なんていうヒーローなの? 親じゃないプロヒーローに育ててもらうのって不思議だね!」

 

 好奇心を隠そうとしつつも答えを待っているリューキュウともはや隠すつもりが一切ないねじれに、呼人は内心苦笑する。節度を保っているリューキュウはともかくねじれは人によっては嫌がりそうな勢いなのだが、呼人にとっては別に嫌な気分がするというわけではないので素直に答えることにする。モンスター達の人格の中には彼女と少し似た子がいるので慣れているのだ。

 

「ジ・アドベンチャーって言うんですけど、半年ぐらい前までずっと海外にいたのであんま有名じゃないと思います」

「……確かに、聞いたことないわね」

「私も聞いたことないかも! ねえねえ、そのヒーローさんってどんなヒーロー?」

「ヒーロー活動の方は俺も詳しくは……ただ色々と器用な人ですね」

 

 そのヒーローのことが気になったリューキュウは、ヒーロー独自の情報網を使ってそれを検索してみる。ミルコが手を使うこと無く手加減していたとは言え、呼人はそれに対抗してみせた。高校1年制の段階でそれだけの実力をつけさせたヒーローに興味が湧いたのだ。

 

「ねえねえ、ヒャクリューくんはなんでその人に戦い方を教えてもらったの? 小さい頃から? 不思議、ずっとヒーローになりたかったの?」

 

 ねじれの質問攻めは、終わる様子が無かった。

 

 

******

 

 

「食事、ありがとうございました」

 

 食事を終えた呼人とミルコは、リューキュウとねじれに事務所の入り口まで見送られていた。2人は今日はそれぞれ事務作業と一応の休暇で合ったため、見回りに出る必要はないのだ。

 

「パトロール頑張ってねヒャクリューくん!」

「がんばります。先輩も……」

「私は今日はほんとはお休みなの!」

「また明日から頑張ってください」

 

 なかなか話が噛み合いづらい不思議ちゃんのねじれだが本人に悪意は無く、呼人もそれがわかったので振り回されながらも普通に話していた。。

 

 ねじれと呼人が話している少し離れた場所でリューキュウとミルコも話していた。

 

「保須ってあれだろ、インゲニウムがやられた」

「ええ。そこから見回りの応援要請が来ているの。あなたは職業体験生を抱えているけど、一応知らせておこうと思って」

 

 2人が話しているのは、ミルコの活動先の話。自由に動けるミルコに、リューキュウは他の街からの応援要請の話を伝えていた。自分たちも動こうと思えば動けるものの拠点としている街の見回りもしなければならないため、彼女にそれを依頼していたのだ。

 

「……行くなら明日以降だな。まだヒャクリューがどれぐらいやれるかわかってねえ」

「そうね。それが良いと思うわ。私達も手が空けば向かうけど……」

 

 近隣の保須市で有力なヒーローがやられたためか、ここ最近リューキュウ事務所のある街でもヴィランの活動が活発化している傾向にある。大きな事件が起きているわけではないが、それでも見回りの手は抜けないのが現状だ。

 

「また夜帰ってきたら教えてくれよな!」

「そうするわ」

「よし! 行くぞヒャクリュー!」

「ヒーロー名は“ノーマン”なんで外ではノーマンって呼んでもらえます?」

 

 結局、中途半端に敬語を抜いた話し方をするよりも適当に敬語を使うほうが良いと気づいた呼人はその話し方をミルコに対して使っていた。

 

「わかったわかった。ノーマンな」

「あ、そう言えばミルコ」

「ん?」

 

 ミルコが入り口付近で話していた呼人の方へと行こうとしたところで、リューキュウが待ったをかける。

 

「なんでさっきの組手で手を使わなかったの?」

 

 それにミルコは少し考えると、ニヤリと笑って答える。

 

「手じゃあ負けると思ったから、って言ったら驚くか?」

「……驚くわね」

 

 足技が主体であるミルコだが、逆に言えば足技は強力すぎて並のヴィラン相手だと下手すると殺してしまう可能性が高い。そのためミルコは、腕で拘束する、あるいは組み討ちをする技術も高いレベルで身につけていた。

 そんな彼女が、ただのヒーロー科の学生に負ける気がした、と言っている。兎の危機察知能力ゆえか彼女のそういう勘は非常によく当たる。

 

「戦うことに関してはあいつは結構強いと思うぜ」

「わかってると思うけど、職場体験生の個性の使用は―――」

「原則禁止、だろ。けど市民の保護とか万一の場合には認められる」

「わかってるなら良いわ。楽しむのもいいけど、そういうところもちゃんと教えてあげて」

「おう! ノーマン、準備出来たか!」

「もう出来てますよ」

 

 ミルコと呼人は今晩はここに滞在することになっており、コスチュームとヒーロー活動に必要なもの以外の荷物は全て置いてきている。

 

「行ってらっしゃい! 頑張ってねヒャクリューくん!」

「がんばります」

 

 リューキュウとねじれに見送られ、呼人とミルコは事務所を出発した。本来なら1つの事務所でしか面倒を見てもらえないものだが、ミルコのもとで職場体験をしているおかげで呼人は2人のトップヒーローと交流が持つことが出来ていた。

 

「今日はとりあえず見回りだからな! 勝手に個性使うなよヒャ、ノーマン! まあお前はずっと使ってるけど!」

「名前覚えてくれてありがとうございます。正当防衛だったら使って良いんですよね?」

 

 確かそんな法律があったはず、と神王寺から教えられた話を呼人は思い出す。

 

「今は職場体験だから市民に危険が迫ってるときと正当防衛なら許されるぜ。けど、正当防衛にするためにヴィランに突っ込んでいくのは駄目だからな。私が怒られる」

「わかりました。なるべく手を出さないようにします」

「私の活躍を見とけよな」

 

 職場体験に来ているとは言え、まだ学生でありヒーロー免許や仮免許、その他個性の使用を可能とする免許類を持っていない1年生は、基本的には個性の公共の場での使用が許可されていない。だが正当防衛のための個性使用は限度を考えなければならないものの一応許可されており、また職場体験という状況下であるため民間人の保護のための個性使用も許可されていた。

 

 とはいえ、呼人の追従しているのはトップヒーローの中でも高い戦闘力を持つミルコである。例えヴィランが出現したとしても彼女が倒してしまうだろうし、呼人のすることは避難誘導ぐらいなものになりそうだ。

 

 

******

 

 

 いつもは事件を探し求めて飛び回ることが多いミルコだが、今日はまだそうした事件の報告が無く、また呼人を連れているために普通に道を歩いていた。

 そのためか、道行く人々の注目を集めることになる。

 

「ねえ、あの人ミルコじゃない?」

「え? あ、ほんとだ。今ミルコこっちに来てるの!?」

「うさぎさんだ!」

 

 遠巻きにミルコを見て騒ぐものや、彼女の姿を写真に撮るもの、そしてミルコの耳を見て兎だとはしゃぐ子供など様々いるが、それぞれが好意的な反応で受け入れている。あちこちを飛び回る彼女はヒーローの中でも神出鬼没な存在であり、ひと目見ようという人間は結構多い。

 

「凄い人気ですね」

「おーそうか? でも応援してもらうと元気でるんだぜ!」

 

 ミルコの名前を呼ぶ子どもたちに、ミルコもまた笑顔で手を振っている。ヒーローは、ただ実力だけでなくこのように人気も必要となり、あるいは人々の心の拠り所として存在する。

 

(ヒーロー……やっぱり何か違うな。人々を助けるという意味では同じかもしれないが……すがっているのか? いや、考えるのは後にしよう)

 

 パトロール中だということが見てわかっているためかサインを求めてくる人は少ないものの、ミルコを遠巻きにしている一般人の数はどんどん増えていく。そのため、比率的に少ないとはいえサインを求める人の数は結局は多く、パトロールの足がほとんど止まってしまっている。

 

「ミルコさん! サインください!」

「良いぜ!」

「ウサギさん、写真撮ってくれますか?」

「おう! こうやって手を上げろ。そう、そんでぴょんぴょんって」

「ありがとうございます!」

 

 凄い人数に囲まれているはずなのだが、ミルコは一切拒むことなく快く対応していく。ただサインをするだけでなく、子どもたちにはしゃがんて応えてやったりと相手の事を考えた、非常に丁寧な対応だ。

 

(こういうの……アイドル?)

 

 そんなミルコを少し離れた場所からぼんやりと見守っていると、呼人の足をツンツンとつつく者がいた。そちらを振り返ると、まだ小学校低学年ぐらいの男の子が3人立っており、。

 

「どうした?」

「……お兄ちゃん、ゆーえーの1年生の人?」

「お前地味だったやつだろ! 地味なのにずるしてゆーしょーしたやつ!」

「けんちゃん、そんな言い方したらだめだよ……」

 

 どうやら3人は友達同士であり、呼人が体育祭1年生の部で優勝した事を覚えていて呼人に声をかけてくれているようだ。爆豪や轟と違って目立つ個性も目立つ見た目もしていないのでどうせ誰も覚えていないだろうと思っていたのだが、以外と覚えてくれているものだ。

 

「ああ。俺が体育祭で優勝した奴だよ。ヒーロー名はノーマンっていうんだ。まだヒーローじゃないけどな」

 

 子供達の目線の高さに合わせた呼人がそう答えると、悪口を言った子以外の2人の表情が輝く。悪口を言った子はつまらなそうだ。

 

「絶対氷の奴とか爆発の奴とかの方がかっこいいのに」

「けんちゃん、だめだってばそんな事言ったら! しょうちゃん、何か聞きたい事あるんじゃないの?」

 

 3人のリーダー格というか、一番大人びているメガネの子が促すと、おどおどしていた子が恥ずかしそうに顔を上げる。

 

「あの、僕もヒーローになれますか?」

「しょうちゃんの個性じゃ無理に決まってるって」

「けんちゃん!」

 

 どうも3人の仲は悪くはないようだが、口の悪い子は人を傷つける事を躊躇なく口にする子のようだ。

 

「まず、俺は君の個性は知らない。だから絶対になれる、とか絶対になれない、とかは言えない。でも、何個か良いことを教えてやる」

 

 呼人がそう言うと、3人が興味あるように顔を上げる。呼人はその3人に腰の後ろに吊るしている大きな本(中は救護、サバイバル関係の知識が書かれていたり白紙になっている)を取り出すと、その白紙のページに手早く書き込みながら説明する。

 

「まずな、ヒーローって言ってもいろんな人がいるんだ。例えばオールマイトとか、あそこのうさぎさんとか―――」

「お前がうさぎさんって言うな! 恥ずかしいじゃねえか!」

「そういうヒーロー達は、とにかく悪い人を倒すんだ。戦うのが強いからな」

 

 まだまだサインや握手、撮影を求める人並みが途切れ無さそうなミルコの突っ込みを無視して呼人は子どもたちへの説明を続ける。

 

「でもヒーローっていう仕事はそれだけじゃないんだ。例えば、地震とか火事の時に怪我した人たちを助けたり、悪い奴らが何かしようとしてないか探して見つけたり、色々あるんだ。だからオールマイトみたいに強くなれなくても、出来ることがあればヒーローにはなれる」

「でも一番強いやつがかっこいいじゃん!」

「違うぞ。一番かっこいい奴はな――」

 

 ―――困ってる時に笑顔で助けてくれるやつだ。

 

 呼人の言葉に、子どもたちはポカンとした顔になる。

 

「例えば、しょうちゃんが何か凄い怖い目にあってるとする。例えばヴィランに追いかけられたりとかな」

「う、うん」

「そのときに助けてくれて、『もう大丈夫だ』って笑ってくれる人がいたら、その人はしょうちゃんにとってはすごくかっこよくて、最高のヒーローだと思わないか?」

 

 呼人がそう問いかけると、しょうちゃんは少しうつむいた後顔を赤くしながら応えてくれる。

 

「多分、かっこ良いと思う……」

「ヒーローは、強い人のことじゃないんだ。ヒーローは『助けてくれる人達』なんだ。そんなヒーローなら、人に優しくして、困ってる人に『大丈夫ですか?』って言ってるだけでなれるんだよ」

 

 小難しい話はまだわからないという顔の子どもたちに、呼人はにこりと笑って3人の頭を順番に撫でる。

 

「つまり、友達と仲良くして、困ってる人を助けて上げてたらその人はもうヒーローなんだ」

 

 そして最後に、と呼人は続ける。

 

「例えば個性が戦うのに向いてなくても、体を鍛えて戦う練習をしたら強くなれる。俺は、個性を使わなくても一番になれた自信があるよ」

「えー! ほんとかよ!」

「ほんとだよ。俺の腕、触ってみるか?」

 

 そう言って呼人は、二の腕の内側を示す。そこを触った子どもたちは、その盛り上がりみっしりと引き締まった筋肉に目を見開いた。

 

「すげー筋肉!」

「ムキムキだ……!」

「小さい頃から、たくさん体に良いもの食べて、たくさん走って、たくさんトレーニングしてるんだ。そして、どうやったら強くなれるかってずっと考えてる。そうやって鍛えたら、結構強くなれるんだぞ」

 

 もちろん、個性を全く使わないで、それぞれに個性を成長させた轟や爆豪、緑谷などに勝てるとは呼人も思っていない。だが、だからといって最初から無理だというわけではないし、全員が轟のように強力な個性を持つわけでも、呼人のように鍛錬をひたすら重ねているというわけでもないのだ。

 

「だから、まずは頑張ってみろ。たくさん体に良いもの食べて、たくさん走れ。そして高学年か中学生になったら、筋トレもするんだ。個性も使ってるとどんどん鍛えられて強くなるしうまく使えるようになるから、使えるなら家の中で練習しろ。たくさん、頑張れ。むちゃくちゃにやるんじゃないぞ。どう筋トレしたら良いかとか、どうやって個性を強くするかとか、ちゃんと考えたり調べたりするんだ」

 

 呼人がそう言って立ち上がると、子どもたちはそれぞれに恥ずかしそうにはにかみながら、あるいは嬉しそうにしながらも不機嫌を装って、その言葉に大きく頷いた。

 

「の、ノーマンさんも頑張ってね!」

「おう。任せとけ。お前らも頑張れよ。あと勉強もちゃんとして本もたくさん読めよ。ヒーローは馬鹿だとなれないぞ」

 

 呼人の言葉に元気よく返事をすると、3人はペコリと頭を下げて走っていく。

 

 楽しそうに3人で走って行って、離れたところからまた手を振る3人を見送って、さあ自分も頑張らなければと、呼人はミルコのいる方を振り返る。そしてまだ子どもたちと記念撮影をしているミルコを見て、しばらくは動け無さそうだとため息をついた。

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