竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第31話 職場体験・4

「ミルコさん人気凄かったですね」

「あっちこっち行ってるから行ったことない場所だとめっちゃ人が集まんだよな。でも、応援してくれる人と話すと元気になるだろ?」

「まあ、多少は」

 

 結局集まった人を捌き切るのに30分近くの時間がかかった。パトロール中ではあるが、人が集まろうが集まらなかろうが事件が起きたときには駆けつければ良いし、例え順調にパトロールを出来たとしても少し見回しただけで犯罪を起こすであろうヴィランを見抜けるようなものでもない。

 そのため、街中にヒーローが散らばってどこで事件が起きてもすぐに向かえるようにする、あるいはヒーローがいると見せつけることで犯罪を抑制するという意味ではヒーローが歩き回るのは意味があるのだが、今のミルコのように大勢の一般人に囲まれていても、人が集まりすぎて道を塞いでしまうという以上の問題は“あまり”無い。特にミルコは人が集まった所で上から飛び越えて移動が出来るのだ。

 

 そんな事を考えていると、ミルコの持っている端末が緊急を知らせた。

 

「おっ! 行くぞヒャクリュー!」

「だからノーマン……!」

「座標送るからお前は後から来い!」

 

 呼人の苦情には応えず、ミルコはメッセージアプリで場所を呼人に送信すると、すぐにビル群を飛び越えて事件のあった場所へと向かってしまった。『原則的に個性の無断使用は禁じられている』。すなわち、移動などへの個性の使用も禁止されている。

 

(これだけ建築物があれば……後で何か言われるのも嫌だから普通に行くか)

 

 一応個性を使わないでも街中を駆け回る方法もあるにはあるが、ビルなどの屋上その他を通過して後で不法侵入だなどと言われたくないのでおとなしく陸路を走っていくことにした。

 

 そして走って向かっている最中に、ミルコから連絡が入る。

 

『終わったからさっき指示した場所に来い』

 

「まあそうなるわな」

 

 ラビットヒーロー“ミルコ”。兎の特性を活かし、常人にはありえない機動力と戦闘力を持つヒーロー。

 

 先に行かれてしまっては、戦闘している場面すら目視出来ないのは当然だった。

 

 

******

 

 

「いや流石にこれはまずいんじゃないですか?」

「手え出してきたらぶっ飛ばすから心配すんな!」

 

 断じてそういう問題ではない。と、呼人は心の中で断言しながら大きなため息をついた。

 

 今呼人がいるのは、リューキュウ事務所の仮眠室。そこが今晩の呼人の宿泊場所である。そしてそこには、呼人と同じく寝袋を広げたミルコもいた。

 

「ミルコさんいっつもこんな感じですか?」

「おう! ホテルなんて泊まるのも探すのも面倒くせえしな」

 

 リューキュウのところは泊まらせてくれるってわかってたから来たんだぜ、と一応事前の確認もしている事は教えてくれたが、それにしても凄い毎日を送っているものだと呼人は感心した。

 

 通常、事務所に所属するヒーローですら事務所の外に自宅や、あるいは短期の所属であればホテルを利用する。だが、より短期、それこそ短いときでは1日2日で拠点を移動するミルコにとってはそれすらが手間であり、こうして他所の事務所の仮眠室や休憩室を借りて宿泊するのだ。

 

 そしてどこの事務所も仮眠室が2つも3つもあるようなものではないため、同じくリューキュウ事務所に泊まることになったミルコと呼人は同じ部屋で寝ることになった。

 

「走り込み行った後ここでトレーニングしても良いですか?」

「あ? 今からか?」

「今からです」

 

 17時にパトロールを終えて撤収し、夕食をしながらの簡単な反省会兼確認作業を終えシャワーもリューキュウ事務所のものを借りた現在は20時半である。ミルコ個人であれば17時でパトロールをやめるようなことはないが、慣れていない呼人の体力を気遣ってくれたものであるのはわかっている。

 だが、その程度で体力を消耗するようなやわな鍛え方はしていないのだ。なんなら3日3晩走り続けるぐらいの事は出来るし、もっと長時間不眠で活動する事も可能なぐらいである。

 

「無理すんなよ?」

「日課だしまだあんま体力使ってないので行ってこようかなと」

「なら良いけどよ。体力余ってるなら明日からはもっと長くパトロールするぜ?」

「おまかせします」

「よし、絶対やる! お前可愛くねえな!」

 

 淡々と返す呼人にミルコは不満げな様子だが、いちいち驚いたり嫌な表情を見せるような性格ではない。色々と普段から予想を立てながら行動しているだけに、大抵のことが起きても『そういうパターンか』としか感じないのだ。

 

「じゃあ走りに行ってきます」

「個性使うなよ!」

「……ばれない程度に」

 

 呼人の答えに、ミルコは何も言わない。個性の無断使用の基準は非常に難しい。例えば耳郎のイヤホンジャックは個性ではあるのだが動かすぐらいでは罪に問われない。更に異形系であれば存在そのものが個性のようなものだ。

 そして呼人の場合は、基本的に体内器官に限定していると本人が説明しているため、使っていたとしても証明の手段が無い。そして体内を公共の場とするかという問題もある。そのため、だめ、とも言い切れないのだ。

 

 ミルコが許可を出すと、呼人は外へと出ていった。ヒーロー事務所は基本的に年中誰かがいるため、扉が閉まっていることはないし明かりは灯っている。問題はないはずだ。

 

「さーて報告書か、面倒くせえなあ」

 

 一人室内に取り残されたミルコは、携帯している小さなパソコンを開く。普段は報告書なども近くのヒーローにまかせてあまり書かない彼女だが、呼人を教える立場上この期間ぐらいはちゃんとしておくかという気になっていた。だが。

 

(あいつが見てねえなら私がやらなくても良いんじゃねえのか? けどもうやるって言っちまったし……あーくそヒャクリューのやつ好き勝手しやがって!)

 

 本当なら、ヒーローの活動の1つとして重要な報告書について呼人に説明しながら作ろうと思っていたのだが、彼は出ていってしまった。そして走り込みをした上にトレーニングをすると言うからには、体力が余っているというのは本当なのだろう。

 

 ヒーローの卵に色々教えてやろうと思いきや、来たのはヒーローの卵というのは妙に老成した奴で。実力、体力面など、事務手続きや心構えなどヒーローとしての活動に足りないことはあれど実働面ではミルコも『今すぐでもまあやれるんじゃねえのか』と思えるぐらいには優秀である。

 優秀過ぎて面白く無いと言うべきか。

 

 彼の担任である相澤から言われた情報収集を怠る癖というのも、相澤自身やミルコがある程度指摘したためかこの地域の他ヒーローについて調べているようではあるし、事件現場で合流したヒーローなどとのコミュニケーションも積極的に取っているように見える。

 つまり、何も言わなくてもどんどん1人で吸収してしまうのだ。

 

「強くなるなーあいつ」

 

 リューキュウに止められて少ししか戦えなかった演習での呼人の動きを思い出しながら書類作成をしているミルコのところに呼人が戻ってきたのは、1時間以上が経過した後のことだった。

 

 

******

 

 

『ヒーロー……ハンター達とは、なんか違う感じがするな』

『――――――』

『――――――』

『――――――』

『確かに、ハンターは別に目立つことが仕事でもなんでもない、か……』

 

 人通りの少ない道を選んで走り抜けながら、呼人はモンスターたちと対話する。話しているのは、今日体験したヒーローとしての活動と、そこでさらされたヒーローに対する民衆の期待、態度、視線。それらから、モンスター達の知る英雄達と、ヒーロー達との違いを強く感じていた。

 

 もともとは、彼らが何をもってモンスター達に立ち向かったのか。何をもって英雄となったのか。そんなことを知り、あるいは体験したかった。だが、ヒーロー目指し、この世界のヒーローというものに触れる内に、英雄とは、ヒーローとは一体何なのかという疑問が強まってきていた。

 

『――――――』 

『ヒーローはちゃんと目指すぞ』

 

 ごちゃごちゃと考える呼人が今することを忘れないかと言ってくれるが、流石にそれを忘れることはない。今はヒーローを目指している。だからそれを全力でやるのだ。だが、考えることは止まらない。

 

 

******

 

 

 走り込みを終えて部屋に戻った呼人は、そのままトレーニングを始める。ミルコは呼人が戻ってきてもまだ報告書を作成していた。今日は小さな事件ばかりではあるが複数件飛び回って解決したために、それぞれで作成する必要があるのだ。

 

「うお! どうしたヒャクリュー急に脱いで。ミルコさんに欲情しちまったか?」

「高校生にそういうこと言わないでください。違いますよ。トレーニングです」

 

 ミルコの問いかけにそう答えると、呼人は上半身を大きく変化させ、岩状の甲殻を持ったものへと変化させる。その重量は人間どころかオドガロンのそれを遥かに越えて、凄まじい重量を呼人の体に与えてくる。呼人の提供した素材で作成したシャツなら脱がなくても良いのだが、あいにくと今着ているものはそうではなかった。

 

 その様子を見たミルコが驚いたように近づいてくる。

 

「それ、何してんだ?」

「体の一部を変化させておもりにしてるんです」

 

 その総重量は、恐らく1トンはいかないまでも、500キロは確実に越えていた。その状態で呼人はスクワットを行う。それは人間の出せる力を確実に越えていた。その状態でスクワットと、そして体勢を変えて腕立て伏せ、腹筋など様々なトレーニングを行っていく。

 

「あ、でもお前の個性で変身できんのってあの二匹じゃねえのか?」

「はっきりとわかってるのが二匹っていうだけで、まだまだいますよ。ただ詳細が調べられてないのでああ言う書き方になってるんです」

 

 そうだっけ? とオドガロンとトビカガチの全体図ぐらいしか見ていなかったミルコは首をかしげるが、彼女が受け取っていた百竜呼人のデータにも確かに、呼人の個性に関する補足が記載されていた。

 

「それ何キロあんだ?」

「600キロぐらいのはずです」

 

 正確な数字はちょっと……という呼人に、ミルコは驚いて目を見開く。

 

「それを人間の状態でスクワットしてんのか」

「そうです。モンスターの状態は鍛えても成長するものじゃないので」

 

 普通の人間は、ミルコのように脚力を強化する個性でもなければそんな重量はとてもではないが持ち上げることが出来ない。呼人は人間の限界とは言うが、彼の体は既にその域を飛び出しているのだ。

 

「無理すんなよ。それと手が空いたらこっち来い。報告書の書き方教えてやるから」

「ありがとうございます」

 

 ミルコの指示に答えながらも、呼人はトレーニングをやめない。明らかに過負荷に思える負荷をかけながら、トレーニングを続けている。

 

「あーあと、お前のケータイがブーブー言ってたから連絡何か見とけよ。というか走んのにケータイ置いていくな」

 

 ヒーローは連絡があったらいつでも出動するもんなんだからな、とミルコは続ける。そのために、トレーニング中も、あるいはデート中も、映画館で映画鑑賞中も、連絡出来る端末の電源を切ったりマナーモードにすることは出来ないのである。

 

「ありがとうございます」

 

 トレーニングを切り上げた呼人は、汗をタオルで拭いながらスマホを確認する。すると、障子、尾白、そして3人がなにかしていることに気付いて混ぜて欲しいと言ってきた葉隠の4人で作ったグループに皆からのメッセージが届いていた。届いたのは一時間以上前、恐らくちょうど呼人が走りに出た後のことだろう。

 

 呼人を除く3人で話しており葉隠が何やら尾白に絡んでいるようであったが、呼人が返信しない時間が長くなっていることに少しばかり心配してくれているところのようだった。

 そこで呼人も、話を断ち切る形にはなるがトレーニングをしていて気づかなかった旨を送信する。

 

『みんなお疲れ様。走り込みに行っててメッセージに気づかなかった』

 

 呼人がそう返すと、それぞれがそれぞれにねぎらいの言葉をかけてくれる。

 

『お疲れ様ー! こんな日にまで走ってたの!?』

『あまり疲れてないようだな』

『お疲れ様。ちゃんと連絡がいつ来ても反応できるようにスマホ持っていきなよ』

『ミルコにも怒られた』

『百竜君はどうだった? 今日の職場体験!』

 

 葉隠に尋ねられ、呼人は3人が話していたメッセージの履歴をたどる。それによると、どこもミルコ同様にヒーローの基本的仕事形態など重要な事の説明をしていたようだ。

 

『だいたいみんなと一緒だな。説明されてその後ミルコとちょっとだけ手合わせしてパトロールに出た』

『手合わせ? ミルコとやりあったのか。どうだった?』

『ミルコと言えば、強力な脚力を使った足技か……』

『ええー!? 百竜君戦ったの!? 大丈夫だった!?』

『強いな。脚力が凄まじいから速度も速い。手加減してもらっていたが、本気で蹴られてたらオドガロンの腕でもへし折れそうだった』

 

 恐らく最初は完全に小手調べで、その後の少しは多少は本気を出してくれていたようだが、技術はともかくパワーの差は明らかだったように思う。

 

『ランキング入りヒーローの実力は生半可なものではない、か』

『それに対抗する百竜もすごいよ』

『でも尾白君も褒められたんでしょ?』

『いやだからあれは―――』

 

 葉隠が尾白に絡んで尾白が慌てるというのはここ最近学校でも見られるようになった光景だ。それを呼人が少しほほえみながら見ていると、トレーニングは終わったのに一向に来ない呼人に痺れを切らしたミルコが彼を呼ぶ。

 

「おいヒャクリュー。なにやってんだ?」

「同級生と今日の感想を交換してました」

 

 ミルコに答えながらも、ミルコに呼ばれているので今日はこれで連絡は終わりにする旨を送信して、皆のおやすみという言葉に返してアプリを閉じる。

 

「すいません、おまたせしました」

「遅い! けどまあ良いぜ。仲良い奴と話すのも大事だからな。そんじゃあ報告書の書き方、つってもあんまこまけえことは教えねえけど教えてやる」

 

 そう言って呼人を招いたミルコは、明かりの下に出てきた呼人の上半身の傷を見て思わずと言った風に言葉を漏らす。

 

「お前、その傷……なにやったんだ?」

「あーこれは昔色々無茶やったときの傷です。肘から先は露出するから傷が目立たないように整形してもらったんですけど、他はそのまんまで」

 

 剥き出しになった呼人の体には、火傷の跡や切り傷、抉れた跡、その他何でついた傷かわからないような傷跡が大量に残されていた。全て個性を活用したり自分を鍛えようとするうちについた傷だ。今でこそそんなミスはしないが、例えば体表の温度が100度に近いようなモンスターに体の一部をなんの対策もなしに変化させれば当然周囲の皮膚や器官は火傷を負う。そんな事を試したり失敗して引き起こしたりした結果の傷跡が、呼人の体にはたくさん残っているのだ。

 

「お前、ヒーローは怪我する仕事だが怪我しちゃあ駄目なの知ってるか?人を怖がらせちゃいけねえんだぞ」

「気をつけます」

「はあ。まあ良い。それじゃあ説明するぞ―――」

 

 まだ職場体験は始まったばかり。この後に大きな事件が待ち受けているのだが、呼人はまだそれを知らない。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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