竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第34話 救助訓練レース・1

「オールマイトが出てくる前の時代が懐かしいぜ……あの時はもっと国全体に暴れたいっつう衝動が広まってたのによ」

「だから来たんだよ。まあ聞けよ」

 

 小さな丸眼鏡をかけた、いかにも悪そうな事をやってますと言いたげな男の言葉に、うなだれていた太った男が顔を上げる。

 

 と。そこにもう一つ声が響いた。

 

「その話、俺にも聞かせてくれよ」

 

 気配なく響いた男の言葉に、もともと部屋にいた2人の男が勢いよく立ち上がり入り口の扉に目を向ける。そこには、一人の男が影に溶け込むような黒いコートを纏って立っていた。

 視線を向けられた男は、影から薄暗い明かりの元へと歩み出てくる。

 

「あんた、なにもんだ?」

 

 腰から抜いた銃を向ける男に、男は端的に返す。

 

「ヒーローやってるもんだ」

 

 ――パァンッ

 

 コートの男の言葉の直後、発砲音が響く。丸眼鏡の男が躊躇いなく発砲したのだ。彼らの生業は完全に非合法の、ヒーローに見つかれば逮捕は免れないものである。

 放たれた弾丸はコートの男の頭を貫き、扉に直撃して落ちる。

 

 ()()()()()()()()コートの男は続ける。

 

「まあ聞けよ。何もヒーローとしてここに来たんじゃねえよ」

 

 確かに弾丸は頭を撃ち抜いた。男の顔の下半分や首元も、傷から流れた血で紅く染まっている。しかし、男は立っていた。そして笑っている。

 

「あんた、どうなってる?」

「そういう個性だ。俺は別にヒーローとしてここに来たわけじゃねえぜ。ヒーローになったのも一人で好き勝手やるのにフリーのヒーローってのが都合が良かったからだ」

 

 その言葉に、太った方が丸眼鏡の方をちらりと見る。これどうするんだよと言いたげな表情だ。丸眼鏡の男はそちらを見ること無く銃をおろして答える。

 

「わりいな、ヒーローは天敵なんだ。で、なら“ヒーローの資格を私用してる”つうあんたは何が目的なんだ?」

「単純な好奇心だな。どこでどういう組織が動いてるかってのは知ってて損はねえだろ? 外国はつてがあるんだが日本はしばらく留守にしてたもんでね」

 

 ニヤリと口角を上げたままのコートの男をしばらく睨んでいた丸眼鏡の男は、しばらくしてため息をついた。銃を持ち出しても泰然としているということは、目の前の正体不明の男には銃が通用しないのだ。ならば下手に抗うだけ危険なのである。

 

「良いぜ。ただし、見返りをくれ。最低限、俺達をとっ捕まえねえこと、この場の情報をヒーロー側に漏らして俺達の利益を阻むことはしないこと。これぐらいは約束してくれや。後はあんたの名だな。お互い首根っこを捕まえあうっつうことでヒーロー名だ。あんたが裏切れば俺達はあんたの今の言葉をバラす。あんたは俺達が裏切ればとっ捕まえる。対等だろ?」

「1つ目2つ目は約束してやる。けど3つ目は枷にはならんぞ。ヒーローには内偵っつうヴィランの内部に潜入する仕事もあるからな。そんかわり、何でもとは言わねえがあんたらの依頼を聞いてやろう」

 

 太った男を置き去りに、丸眼鏡の男とコートの男の間で取引が行われ、やがてどちらからともかく席につく。太った男も慌ててコートの男の隣に少し腰がひけた状態ではあるが座り込んだ。

 

「そんなビビらんでも手は出さんよ。下手に殺すよりも情報吐いてもらったほうが有意義だろ?」

「そうは言ってもなあ。こっちは長年裏稼業やってるから警戒するのは仕方ねえよ。俺達はまともに法の庇護を受けられねえからな」

「ま、そうだけどな」

 

 こちらの2人は、良くも悪くもそれぞれ裏側に詳しいために過度に警戒しすぎず親しみすぎず、適度な距離感の会話をする。ここに、当初2人で行われていた会話に3人目が参加することになった。

 

「この動画、見たことあるか? 今いっちばんアツい動画だ。“ヒーロー殺し”、知ってんだろ?」

 

 その2人に、丸眼鏡の男がスマホを見せる。そこには、あの日ヒーロー達を怯えさせた、“ヒーロー殺し”の姿が映っていた。

 

 

******

 

 

 職場体験活動は1週間で終わりを告げ、翌日からはまた学校で勉学に励むとともにヒーローへの道を歩む学校生活が再開される。

 

「おはよう百竜。今日も早いな」

「おはよう! 百竜くん!」

「おはよう」

「そっちはどうだった? ミルコのところに行ったんだろ?」

 

 席について本を読んでいると、後から登校してきた葉隠と尾白が席にやって来る。2人は登校時間が被っているのか、最近よく一緒に教室へと入ってくる。

 初日あたりはこの3人と尾白を加えたグループトークで情報交換をしていたのだが、それ以降はそれぞれに職場体験に合わせて日程が合わなくなったため、今後の話は学校で会った時にしようという話になっていた。

 

「結構有意義だったぞ。ミルコが事務所もサイドキックも持たないと言っても、他のヒーローや事務所との連携なんかは普通にする。そういうあたりが結構見れたな」

「なるほど……確かに、ヒーローの活動として大事な部分だね」

「ミルコも保須市の事件の時出動してたってニュースで見たけど、百竜くんもいたの?」

「いたぞ。あの人ありえない速度で突っ走っていくから置いてかれたけど」

 

 保須市の事件は全国的にもニュースになり、その中でヒーロー殺しと対峙した緑谷、轟、飯田の事は他のクラスメイトも知っていたが、その場に呼人もまたいたといことは皆知らなかった。呼人はそれをわざわざ言うような人間ではないし、後から駆けつけただけの彼は話題にはならなかったのだ。

 

「ミルコの戦いはどんな感じだった?」

 

 自らも武術、体術を使う尾白は、近接戦を得意とするミルコの様子を尋ねてくる。

 

「強いけど、脚力ありきだから真似しづらい戦い方だったな。軽く手合わせもしてもらったけど、無茶苦茶なスピードで跳び回って蹴りを入れてくる感じだった」

「百竜くんミルコとの戦ったの!? 怪我しなかった!?」

「やられてない、だろ?」

「手加減してもらえたからな」

 

 ミルコというトップヒーローと戦ったという話に葉隠が驚いて声を上げるが、呼人との手合わせをかなり繰り返している尾白はそう簡単にやられていないだろうと楽観的だ。

 

「でも本気で蹴られてたら、いつもの人間のサイズに収めた状態じゃ手足は軽く折れるだろうな」

「そんなに、だったんだね」

「まあ、な」

「そう言えば、百竜くんリューキュウのところにいたんでしょ? リューキュウとは何か話した?」

「体育祭で本来の姿を見せてたら指名してたって言ってもらえた」

「良いな―。私のところはね―――」

 

 今度は自分の話の代わりに葉隠や尾白の経験話を聞いているとやがて障子も登校してきて、入れ替わるように葉隠が他の女子のところへと向かっていく。そちらを軽く見やると、何やら今までとは空気の変わっている麗日が力強い突きを披露していた。

 

「おはよう障子」

「おはよう2人とも」

「おはよ。障子はどうだった?」

「……格闘術は、奥が深いな」

「そりゃあね。生涯かけても1つの武術を極めることすら難しいって言われてるぐらいだよ」

 

 障子は、当初は偵察、索敵などを主とする事務所を選ぼうとしていたのだが、呼人、尾白と相談して武闘派ヒーローの事務所へと希望を変更していた。

 彼の個性の場合偵察、索敵というのはこれから当然の如く関わっていくものであって、むしろそのままいけば関わりそうにない戦闘に関して経験しておいたほうが今後の幅が広がると判断したのだ。

 

 と、そこに上鳴の声が響く。

 

「けどやっぱ一番はお前ら3人だよな! “ヒーロー殺し”!」

 

 その言葉は、3人で机を囲んでいた飯田、緑谷、轟に向けられていた。

 話題は当然、“ヒーロー殺し”のことである。

 

「心配しましたわ」

「ほんと、あんなの送ってきて心配したぜ。生命あって何よりだ」

 

 皆もそれは当然の如く気になっていたようで、話がそちらへと向かう。

 

「俺もニュースとかで見たけど、ヒーロー殺しって敵連合の仲間だったんだろ? USJに来て無くてよかったよ」

「でも確かに怖かったけど、動画見たらなんかかっこいいと思っちまうよな」

「か、上鳴くん!」

「え、あっ、わり!」

 

 身内を怪我させられている飯田の前での配慮の足りない言葉であったが、とうの飯田は気にした様子を見せずに首を振っている。

 

「確かに、彼は信念の男であったように思う。究極的に言えば、どのような思想を持つことも自由なんだと思う。だが彼は、その結果人を傷つけ、法を犯すという間違った道に走った。それはしてはいけないことなんだ」

「お、おう。わりいな、なんも考えねえで」

「飯田君……」

 

 身内を傷つけた相手と対面して、飯田は最初怒りを感じた。だがすぐに、ただ感情を吐き出すことは、リーダーとしても、そして1ヒーローとしてもあってはいけないことだと思い直した。

 飯田が学び、身につけ始めている冷静な考え方が、ヒーロー殺しに対する自分の考えを確かなものとしていた。

 

 兄を傷つけた。だがそれは他のヴィランも一緒であり、兄もその覚悟をしている。それを怒りに駆られて否定するのは、してはいけないことなのだと思う。

 それに、幸いなことに兄は謎の人物の個性によって再度ヒーローとして立ち上がる事ができた。あの時兄が、インゲニウムがあの場に現れたことで、感情の高ぶりをまだ抑えきれずにいた飯田は落ち着くことが出来たのだ。

 

 こうしてヒーロー殺しと対面していないクラスメイトもヒーロー殺しの言動について知っているわけだが、それは今現在、社会はヒーロー殺しの話題でもちきりになっていることに起因する。ニュースで取り上げられたのはあくまでヒーロー殺しがエンデヴァーによって捉えられたというカモフラージュの内容だけなのだが、そうした努力を1つの動画が全てひっくり返していた。

 

 その動画は、あの時、肋骨が肺に刺さりながらも唯一人だれよりも速く動き、脳無もどきを殺害したヒーロー殺しの述べた、彼の信念を切り取り、拡散され、警察が動画の削除を行っているものの削除とアップロードのイタチごっこになっている。そのため、日本中の人間が、今となっては彼の言葉を知っているのだ。

 

「けど、あれは敵連合とは別物に思えたけどな」

「え?」

「何か、気になることがあるのか?」

 

 盛り上がる他のクラスメイトを置いて、呼人の言葉を聞いた2人が振り返る。

 

「敵連合とヒーロー殺しは、毛色が全く違う気がする。むしろ敵連合なんて、ヒーロー殺しの抹殺対象に思えたんだけどな……そんな気がした程度でしか無いが」

「……信念の違い、ということか?」

「ああ。特にヒーロー殺しは強烈な信念を持ってた」

「だからこそ信念と対立する相手と手を組む可能性は低い、ってことだね」

「うん―――」

 

 そこで相澤が教室に入ってきて会話は途切れたが、呼人はただ一人、ヒーロー殺しから得た考えや情報に思いを馳せていた。

 

 

******

 

 

「私が来た、ってことでやっていくよヒーロー基礎学!」

「静かに入ったな」

「久々なのにね」

「パターンが尽きたのかしら」

 

 いつもの勢いの良さと騒がしさの無いオールマイトの言葉に、生徒たちはかなり辛辣な感想を述べる。『HAHAHA! 私のネタは無尽蔵だよ!』というオールマイトの言葉が強がりだろうということはほとんどの生徒がわかっていたが、あえて指摘もしない。

 気を取り直してオールマイトは横に広がるエリアを指し示す。そこには、通常の街並みではなく工業地帯らしいパイプやタンク、剥き出しの鉄骨などで構成された建物群が広がっていた。

 

(お、これは丁度いいな)

 

「職場体験直後だから、今回は遊びの要素を含めたレースをやろうかなと思ってね。名付けて『救助訓練レース』!」

「救助訓練ならUSJでするべきではないんですか?」

「あそこはあくまで『救助』が主体の訓練をする場所だからね。今からするのは文字通り『レース』だよ」

 

 今彼らがいる場所は『運動場γ』という、雄英高校の有する施設の1つである。コンセプトは『街以上に入り組んだ密集地帯』であり、複雑に入り組んだ細道がまるで迷路のように広がっている工場地帯を再現している。

 

「4組に分けて訓練を行う。つまり一組5人! 最初の組だけ6人になるね。私がエリア内のどこかで救難信号を出すから、そうしたら一斉にスタート! 誰が私のところに一番にたどり着くか、つまり、誰が『要救助者のところに一番に助けに行けるか』の競争だ! もちろん建物の被害は最小限にな! 被害者に被害がないからって障害物全部ぶっ壊したら駄目だぜ!」

 

 誰とは言わないけどね! と言いながらオールマイトの指は爆豪の方を指差している。確かにこのメンバーの中だと一番大規模な破壊を引き起こしそうなのが彼であり、また障害物は薙ぎ払いそうなぐらいの粗野さを外に出しているのも彼ぐらいだ。実際にやるかどうかは別にして。

 

 その後組決めが行われ、呼人は緑谷、尾白、芦戸、瀬呂、飯田とともに一組目に決まった。

 

 珍しく少しばかり訓練を楽しみだと感じている呼人が、こういう場で使うために用意していた道具を装備していると、それを見つけた障子が近づいてくる。

 

「何か、珍しくワクワクしているようだな」

「見てわかるもんか?」

「口角が少し上がっている」

 

 そんなもんかね、と呼人が自分の口元を触ると、おかしそうに障子が笑う。

 

「何か楽しみな事があるのか?」

「職場体験の時は個性使えずに地面走ってちょっとフラストレーション溜まったからな。久しぶりに個性なしでも走れそうな場所に当たってちょっと楽しみなんだ」

「む……個性を使わずにやるのか」

「個性使ってならいくらでも練習してるからな。それこそカナダとかアマゾンとかの森の方がもっとごちゃごちゃしてるよ」

「……どういう動きをするか楽しみにしているぞ。それを見ればある程度はわかるというものだが」

 

 呼人が腕に巻き付けているものと、ポーチから出して腰のフックにぶら下げているいくつかの道具を見て障子は言う。それは彼も映画などで幾度も見たことがあるものだ。

 

「場所によっては、登るのが一番鬼門になるからな」

「移動ではなく、か?」

「ま、見とけよ」

 

 やがてオールマイトが救助される位置へと移動し、それぞれの生徒もスタート位置へとつく。ある程度は自由にスタート地点を選べるものの結局全員近いスタート位置を選び、その中で呼人は頂上に手すりのついたタンクの前からスタートする事を決める。その向こうにはいくつもパイプや鉄骨が続いていておあつらえ向きだ。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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