竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
一方、一組目以外の者は大型モニターの前で観戦しながらそれぞれの予想を言い合っていた。
「クラスでも機動力良いのが固まったね。2人はどう思う?」
「強いて言うなら緑谷さんが少し不利でしょうか。後百竜さんはどうなさるのかわかりませんわ。あの大きな状態だと確実に通れる場所が限られるでしょうし、かといってあの大きさで上を走るというのも……」
「百竜君あれで走ったら絶対壊しちゃうよね! どうするんだろ?」
「あーやっぱその2人がよくわかんないよね。緑谷はいつも何かするたびに怪我してるし百竜は何が出来るのかわかんないし」
そう、八百万と耳郎、葉隠が腰を落として話していると、その後ろを先程まで呼人と話していた障子が横切る。それに気付いた耳郎が声をかけた。
「あ、障子。百竜と何か話してたけど、何か作戦とか言ってた?」
その問いに、障子は少し沈黙した後複製した口で答える。
「あいつは個性を使わねえって言ってたぜ、ケケケ」
本体の口と複製した口の性格が全く違うのも彼の特徴である。が、そんな事は気にならないぐらいその答えが衝撃的なものだった。
「まじ? 個性使わないって……まあいっつも全力出してる感じじゃないけどさ」
「どうなさるんでしょうか。他の方の個性を使った速度にはとても敵わないと思いますが……」
「あ、ねえ、あの百竜くんが持ってるの何!?」
葉隠の大きな声に、そこにいた4人だけでなく他のクラスメイトもそちらに目を向ける。全員の概ねの予想はテープを使って立体的な機動力のある瀬呂か飯田か、結局はこういう訓練をしていないためにこれまで見てきた姿から判断する事しか出来ないのだ。
皆が視線を向けると、画面の向こう側では百竜が手に手のひらと同じぐらいの大きさの何かを持っていた。その後ろから伸びる紐は、呼人の腕に巻き付いているように見える。
「なんでしょうか……あ、もしかして」
「何、ヤオモモ何か心当たりあるの?」
「あの形ははじめて見た気がしますが、この訓練で使うことを考えると鉤縄かもしれません」
鉤縄を知らない生徒に八百万が説明している中、呼人の映像を見つめていた障子は、彼の口元が先程と変わらず楽しそうに持ち上がっているのに気付いた。
(お前も、ちゃんと好きなことがあるじゃないか)
いつものクラスメイトとの関わりの中で彼が見せる友に向けた笑顔ではなく、己の好きなことに向ける笑顔というのを、障子ははじめて見た。妙に達観した普段の呼人を知っているだけに、それが新鮮に思えて、少しばかり微笑ましかったのだ。
そうこうしている内に、オールマイトが開始の合図を叫ぶ。
『スタァァァトォォ!』
同時、それぞれの位置についていた一組目のメンバーがスタートする。
やはり一番に全員が注目するのはスタート直後に足のエンジンで急加速した飯田と、テープをとばして一気に空中へ舞い上がった瀬呂である。
「こんなゴチャついたところはやっぱ上行くのが定石だよな!」
「やっぱ対空能力のたけえ瀬呂が強えよ」
空中に飛び上がった瀬呂は次の足場を探すこと無く、更にテープをとばして先へと進んでいく。
「ちょーっとこのレース俺に有利すぎや―――」
だが、断続的に大きな踏み切る音が響く。
ダンッ、ダンッ、ダンッ
後ろから響くその音に瀬呂が振り向こうとした瞬間、その横を高速で何かが通り抜けていった。慌てて視線をそっちに向けると見えたのは、先を凄まじい速度で跳躍を繰り返して進んでいく緑色の背中。
新しく会得した『フルカウル』の状態で上を駆け抜けていく緑谷の姿だった。
「うおおマジか緑谷!?」
「そんな動き出来たのかよ!?」
全員がどよめく中、工業施設の一番上の部分を次々と手や足で弾いて跳躍を繰り返す緑谷は止まること無く先に進んでいき、そしておっこちた。クラスメイトは驚いていたが、自分のルートを走っている呼人がそれを見ていれば『当たり前だ』と言っていただろう。
緑谷の速度、跳躍力には目を瞠るものがあるが、その動きはまだ未熟で不安定なものだったからだ。身体能力が高まった所で、事こういう動きに関しては経験と技術がものを言う部分が多い。緑谷にはそれがまだ足りていないのだ。
「綺麗におっこちたね」
「ええ、大丈夫でしょうか……」
圧倒的先頭を進んでいた緑谷が落ち、やはり機動力においては瀬呂か飯田だろうと全員がそちらの映像に目を向ける中、一人呼人の動きを気にしていた障子が耳郎達に声をかける。
「百竜が面白いぞ。……こういうことか」
「え? そう言えば百竜……は?」
「速い、ですわね……」
映像の中では、呼人が緑谷ほどのぶっ飛び具合ではないものの、パイプからパイプ、そして建物や露出した通路、手すりへと飛び移り、止まること無く建物や工場の屋上部分や、中腹あたりを走り抜けていく。
「え、あいつあれで個性使ってないの? わっ、手すりの上に着地してる」
入り組んだパイプを半ば跳び箱のように手をついて飛び越えた呼人は、その勢いのまま少し離れたところの手すりの上にビタッと着地すると、今度は通路ぞいに走り出し、適当な位置にある壁や手すり、パイプを蹴って建物と建物の隙間をものともせず前へ前へと進んでいく。その速度は、テープを利用して地形をほとんど無視している瀬呂にすら並ぶ程のものだった。
「うわ、百竜やべえ! ってかあいつパルクールやってんのか!?」
その百竜の動きと似たものを見たことのある上鳴が思わずと言ったように叫ぶと、それを聞いた切島や峰田が彼に迫る。
「パルクールってなんだ?」
「教えろ上鳴ィ! あんな、あんなモテそうなの……!」
くだらない事を言いそうになった峰田はまた蛙吹の制裁を受けていたが、それを無視して耳郎たちも映像を見ながら上鳴の説明に耳を傾ける。
「街の中みたいな壁とか段差とかがあるところを跳んだり登ったり走ったりして進んでくパフォーマンスみたいなもんなんだけどよ。壁とかパイプ蹴る動きがなんか似てんだよ百竜の」
「ふーん、てか上鳴もできんの? あれ」
次郎の質問に上鳴は慌てたように首を振る。
「む、無理だってあんなの! そりゃちょっと真似してみようってやったことはあるけどよ。あいつ、さっきから狭い足場から狭い足場にばんばん跳んでくし、それなのに全然スピードが落ちてないんだぜ? 緑谷もやばかったけど、あいつのあれもだいぶやべえよ。それに個性で身体能力上がってるんだろあいつ。緑谷とか砂藤なら出来るかも知れねえけど俺には無理だ
上鳴の言葉に、耳郎と障子は顔を見合わせる。すると、2人の目線での会話をガン無視した葉隠が先程聞いた事を思い切りよく口にした。
「でも百竜くん個性使ってないらしいよ!」
「え? どういうことだよ葉隠」
「ねえ障子君!」
「……職場体験で思うところがムッ!? 飛ぶつもりか!?」
説明の途中で珍しく口調を荒げた障子に、他の者も映像に視線を戻す。その中では、瀬呂を追い抜いた呼人が工場地帯全体の中でもかなり高い位置にあるパイプの上を全力疾走していた。その向こう側には同じ高さのパイプや建物は無く、飛び出してしまっては落ちるしか無い。
だが、全員が見守る中呼人は止まらない。そして勢いよく、胸の高さにあるパイプを飛び越え空に向かって飛び出した。その先にあるのはかなり低い位置に工場の屋根が1つ。そこに向かって綺麗な幅跳びのごときフォームで飛び降りた呼人は、空中で一回転した後足で着地すると前転して衝撃を殺し、そのまま立ち上がって走り続ける。
「まじか、百竜すげえ……!」
「あれで個性使ってないって絶対ウソだろ!?」
「……本人が言っていたことだ。俺に言われても困る」
「そりゃ、そうだけどよ……」
上鳴や切島、障子がその動きに感嘆の声を上げる中、それをじっと注視していた轟や爆豪、八百万の目は険しい。それぞれに高い自尊心を持っていたり、他の生徒とは違ってこれまでの人生もヒーローを目指しての鍛錬に費やし、推薦入試という、ヒーロー科の普通入試よりも遥かに狭く厳しい門をくぐって来たりしている彼らにとって、例え個性が無くともこの程度は出来るのだと誇示するかのような呼人の行動は理解し難く、まるで見せつけられているかのように感じるものなのだ。
実際呼人は見せつけているわけだが、人生の殆どを神王寺以外の人間と深く関わらずに生きてきた呼人やモンスター達は、嫉妬や妬み、あるいは傲慢、奢りといった人間の負の感情に対して知識として以上に何も知らないため、自分がそういうものをこうも簡単に生み出してしまっているとは考えていないのだ。
モンスター達の中にはそうしたことに気付いている敏い者もいるのだが、呼人の人間としての成長の為にあえて口にしていない。それが、この3人を始めとした一部のクラスメイトの心に良くない影響を与えていた。
「あ、でも瀬呂くんが追いついてきたよ!」
呼人が水平方向への移動能力に長けている一方で、瀬呂は垂直方向の移動能力、特に上方向への機動力に長けている。そのため、高低差が激しくなってきたオールマイト近辺に到達したあたりで壁の小さな出っ張りを掴んだり蹴ったりして登っている呼人に追いついたのだ。
結局、そのまま僅差で瀬呂がリードしたままゴールした。呼人も健闘はしたが、最後のオールマイトがいる地点を登る所で大きく差をつけられてしまった。最後の壁は高くうまく使えそうな出っ張りが見当たらなかったために鉤縄を使ったのだが、結果としてその時間が瀬呂に敗れる原因となってしまった。
続いて、地面の複雑な細道で若干迷ってしまった飯田が到着し、尾白、芦戸と続く。尾白は尻尾を利用して適度に高い位置を移動しようとしていたものの、緑谷、呼人、瀬呂ほどの機動力は無く遅れを取ることとなった。芦戸も個性をうまく使って登ることは上手く出来たのだが、その先を上手く出来ずに最下位となり悔しがっている。
「ふわー、うちあんなに早く動ける気がせん……」
「ウチも。ってか移動向きの個性じゃない人は辛いよね」
「……ええ、そうですわね」
頭を抱えて悲鳴を上げる麗日に耳郎と少し表情の固い八百万が賛同し、周りの者達も頷く。特に上鳴、切島などは本当に移動への活用が難しいために、どうすればいいかと頭を悩ませている様子だ。
******
呼人がオールマイトのもとに到達すると、先に到達していた瀬呂が話しかけてきた。
「百竜、お前速くね?」
「まあ、ここは結構剥き出しの通路とか手すりとかパイプとか、足場にしやすいものが多かったからな。職場体験じゃあビルの中でこんなことするわけにもいかなくて走ることしか出来なかった」
「あー、たしかにビルとかになるとお前のやり方は掴みどころが無くてきついわな。じゃあ結構本領発揮だった感じ? てか個性使ってたか?」
「個性は使ってないぞ。個性使っての練習は結構出来ているしあっちは本当に思う通りに体が動いてくれるからな。これ以上頑張ってもあんま意味が無いんだ」
呼人の言葉に瀬呂は目を軽く見開いた後、眉をひそめる。
「うお、お前それあんま他のやつに言うなよ?」
「ん、なんでだ?」
「お前悪意無さそうだけど、自慢してるみたいになっちまってる気がするからな。上手く出来ないやつがそれ聞いたらい良い気がしないだろ?」
「そういう、もんか? 俺としては『個性が無くてもこんくらい出来るんだから個性を言い訳にしてないでがんばれよ』ってつもりで個性を使わなかったりしてるんだけどな」
「まあ言いたいことはわかるけどさ。人間そんなに前向きな向上意欲ばっかりじゃないってことよ。下手に煽って自信がへし折れちゃっても問題だろ? ってか俺がもう折れそうなんだわ」
そうすこしふざけ気味に言う瀬呂に、呼人は少し困ったという表情を見せるが頷いた。
「気をつける」
「おう、気をつけてくれな」
「人とほとんど関わって生きてこなかったからそのあたりかなり疎いんだ。なんかあったらまた教えてくれると助かる」
「お、そうなの? わかった俺に任せとけって。けどお前普段障子とか尾白と一緒にいるだろ? 2人に言われたりしないのか?」
「いや……2人にはちゃんと俺の考えてる事説明してるからかもしれないな。何でこういう個性のいらない方法を鍛えてるか、とかどう考えて色んな事を鍛えてるのかとか。後実際の組手とかもやってるし……」
その説明に、瀬呂も少し興味深そうな表情をする。
「ふーん。それは結構大きいかもな。見せつけられるだけ見せつけられてもどうしたら良いかわかんねえってことも多いし。ちゃんと説明してもらえれば好感度も上がるかもな。てか組手とかいつしてるんだ?」
「毎日放課後とか、時間があったら昼休みにちょこっととかだな」
「マジか放課後もやってんのか。そりゃあ個性を使わなくてもとかそういう話が出来るわけだよな」
あーあー俺も遊んでないでそろそろちゃんとしねーとな、と瀬呂がぼやくので、呼人は以前切島にもした話をする。
「前切島とも話したんだが、俺あんまり楽しいこととか知らないんだよ。それでずっと鍛えたり知識頭に入れたりばっかりしてたから、それが当たり前っていうか鍛えるのが当然っていうか……だから自分がやってることが普通じゃないのはわかってるんだけど、別にそれで俺が凄いとかそういう話では無いと思うんだ。だって遊ぶこと知ってたらそれをするだろ? 俺が知ってるのは鍛えたり学んだりってことしかないから、それをずっとやってるってだけで」
「かー、なんか随分と複雑そうな人生送ってんね?」
「まあ、否定はしない」
ははっ、と明るく笑う瀬呂に呼人も笑っていると、遅れて飯田が上がってくる。呼人はわざわざ鉤縄を使って壁を登ったが、反対側には階段があったようだ。
「む、2人とも早いな!」
「おつかれ委員長」
「お疲れ様」
いやこの内容なら勝てると思ったのだがな、後述のために君たちがどういう方法で突破したか教えてもらえないか、という飯田に、瀬呂と呼人それぞれに自分たちの突破方法を伝える。どこからか取り出したメモ用紙にそれをまとめていた飯田は、その内容を再確認した顔を上げる。
「瀬呂君の方法はともかく、百竜君のやり方は俺も少し参考に出来るかもしれないな。百竜君はどうやってその方法を身に付けたんだ?」
「パルクールっていうパフォーマンスみたいな歩行術みたいなのがあってな。それを動画で繰り返し見て1つ1つどういう動きをしているのか分析した」
「パルクールか、なるほど俺も調べてみよう。ありがとう」
飯田がメモ帳をしまったところで、気になっていたことがあると瀬呂が口を開く。
「飯田、インゲニウムのことなんだけどさ」
「ああ。兄がどうかしたのか?」
「いや、大怪我って聞いてたけど、ちゃんと復帰できたんだな」
その質問を聞いた飯田は、特に表情を変えずに事情を説明する。
「ああ、個性で治療してもらったようだ。本当はまだ療養のはずだったんだが、あの時の事件でたまらず飛び出してきたらしい。体を大事にしてほしいが、兄らしいと思ったよ」
「そうか。それなら良かった。やっぱショックがでかいのかなと思ったけど、割と委員長も立ち直れてんだな」
「……難しいところだな。確かにショックは受けたし怖かったさ。ただ、兄はヒーローだし、俺もヒーローを目指してる身だ。職場体験の間も、それこそヒーロー殺しと対峙してからも幾度も頭をよぎったが、それを表に出しすぎるのは良くない。悩んだら兄や母と話して、前を向き直そうと考えてる」
その飯田の言葉に、呼人も瀬呂も少しどころではない驚きを覚える。
高校に入学したばかりの事の飯田は四角四面、非常に真面目な、そしてかなり堅い人物で、今言っていたような柔軟な発想が出来るとは思えない人物だったのだ。それこそ、非常によろしくない方向に思いつめているのではないかと他のクラスメイトも心配していたのだが、どうやら自分で気持ちを整理しようと努力していたらしい。
「そっか。ならなんかあったら俺らにも言ってくれよな。相談に乗るぜ?」
「ん、いや、しかし……」
「なんか言えない事情があるのか?」
「いや、そういうわけではないんだが……」
と言い辛そうにしていた飯田だが、やがて腹をくくって話し始める。
「その、俺は委員長なんだ」
「そりゃ、委員長は委員長だろ?」
「だから皆の前ではリーダーでありたい、というか……あまり弱いところを見せたくない、と思っていて、兄や母に話を聞いてもらっているんだ」
共にヒーロー殺しと戦った轟や緑谷にも言っていない事だ。リーダーであろうとする飯田の心が、クラスメイトの前では強く、頼れるリーダーでありたいと考えてそうしようとしているのである。
それはただ飯田が考えただけでなく、兄と話す中で、強く皆を導く兄ですら悩み、恐れ、足がすくむことすらあると兄自身から聞かされたからである。悩みを弱いものとして切り捨てようとしていた自分に、それは当然のもので、1人ではなく助けてくれるものとともに向き合えば良いと尊敬する兄でありヒーローであるインゲニウムが教えてくれたのである。
ただ、心配してくれている以上はその事を正直に言ったほうが不要に心配をかけないと考えた飯田だが、とは言えそれを言っている時点で結局は心が弱っていると告白しているので心配されることには変わりない。
「そんなこと言うなよな。確かに委員長は委員長だけどよ、俺達はクラスメイトで仲間だろ? 委員長がリーダーにこだわってんのはわかるけど、俺達も仲間のことは心配ぐらいするし相談には乗るぜ?」
「何も、強く引っ張り続けるだけがリーダーじゃないぞ。俺達は全員未熟だ。だからこそ皆とともに成長するという形も取れる」
「……君が言っても説得力が無い気がするよ。だが……そうだな。今度からは、もっと皆を頼ることにする。そして皆に頼ってもらえるようなリーダーを目指す」
違いない、と瀬呂が呼人の脇をつっつく。そう言われてしまうと少し困る呼人だが、2人とも真剣に指摘しているわけでなくふざけているだけだとわかったので一緒になって笑った。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない