竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第36話 上鳴の向上心

「俺やっぱ機動力課題だわ」

「情報収集をして先に動くか即応するしか無いな」

「それだと後手に回るし俺らそういうのも不得手だからな。お前とか瀬呂が羨ましいわ」

「わりぃね。結構汎用性高いのよ」

 

 いししっと自慢げな言葉を特に嫌味を感じさせずに言う瀬呂だが、それを隣で聞いていた尾白が突っ込む。

 

「でも百竜に追いつかれてただろ?」

「いやごもっとも」

 

 それは瀬呂も承知するところだったので特に反目する事無く認める。

 すると、それを聞いた尾白が隣で着替えていた百竜に話しかける。百竜は上半身を隠すようにして着替えていた。傷だらけのその体を見せないように心がけているのだ。

 

「百竜、今日の放課後は屋内の方じゃなくて今日のとこ借りないか?」

「借りれるのか? 出来るなら俺もそうしたいが」

「放課後相澤先生に聞いてみるよ。障子もそれで良い?」

「望むところだ」

 

 ん、じゃあそういうことで、と3人で話がついたところで、反対側の壁で聞いていた切島が尋ねてくる。

 

「お前ら何の話してんだ?」

「ああ、放課後に3人で組手とかトレーニングをしてるんだ。けど今日ので機動力も課題だってわかったから、今日はそっちにしたいと思って」

「まじか! 男らしいぜお前ら!」

「それで3人とも組手強いんだな。武道やってる尾白はともかく、百竜と障子も最近強いし」

 

 切島と砂藤が感心する中、峰田の歓喜の叫び声が更衣室に響く。

 

「おい緑谷! やべえもん見つけたぞ! こっち来い!」

 

 呼びかけた緑谷どころか全員に届く声で叫んだために、全員の視線が峰田に注目する。当の彼は、壁に貼られたプリントが少しだけ剥がれている部分を示して狂気すら感じさせる表情で喜んでいた。

 

「見ろよこれ! 多分先輩方が頑張ったんだぜ! こっちに何があるか!? 女子更衣室だろ!」

 

 そう言った緑谷は、全員がぽかんとする中そのプリントの裏側に明けられていた穴を覗き込もうとする。

 

「八百万のヤオヨロオッパイ! 芦戸のエロい腰! 葉隠の浮く下着! 麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱ―――」

 

 鬼気迫る様子で穴を覗き込もうとした瞬間、その峰田の頭を両側からガシッとつかんだ飯田が峰田を壁から引き離した。同時、壁の穴から普段上鳴を恐怖させているあのイヤホンジャックの先端が飛び出してくる。

 

「む、耳郎君か。耳郎君、聞こえているならそちらから穴を塞ぐ手段を講じておいてくれないか。先生にも後で報告しておく」

「な、なんだよ委員長! 男の夢を邪魔しようってのか!?」

 

 そう叫ぶ峰田に、飯田は厳しい表情を向ける。

 

「普段の発言はまだグレーゾーンな部分が多いから見逃しているが、覗きは法に定められた犯罪行為だ。俺が見ている前でやらせるわけにはいかないだろう。未遂だから相澤先生には報告しないが、君のそれは犯罪行為なのだと十分に理解してくれ」

「うおおおおっ! このムッツリめー!」

 

 峰田が全力で叫んでいるが、飯田は静かに剥がされたプリントを丸めて壁の穴を塞ぐように突っ込んでいる。いつものただ言葉だけの突っ込みではなく、友人が犯罪行為を犯そうとしたために実力行使に出たのだ。リーダーたるものは、ときに毅然としていなければならない。特に規律に背くことに対しては。

 

 

******

 

 

 ひと悶着あったものの全員着替えて教室へと戻る最中、演習についての反省会を実施している尾白達に、上鳴が声をかけてきた。

 

「なあ、さっきの放課後訓練してるって言ってたやつ、俺もいかせてくれねえか?」

「え?」

「俺もなんかしないといけねえとは思ってんだけど、何すりゃあ良いかわからねえから結局USJの後も何もほとんどしてねえんだ。だからなんかやってるなら俺も一緒にやってみたい」

 

 上鳴のその言葉に3人が目を見合わせる。と、以前の上鳴との会話を思い出した呼人が口を開く。

 

「そう言えば、以前相澤先生にあの布の扱い方を学ぶと言っていたのはどうなったんだ?」

「あーそれなー、なんかあれは俺の個性にはあってないって言われてよ。そんでそのうちサポート科のところで新しいサポートアイテムの相談する機会があるからそれまで待てって言われたんだよ」

「なるほど。まあそんな気はしてたけどな」

「なんだよ百竜わかってたのかよ」

 

 そりゃああの武器は、個性が無くても敵を捕縛するための武器だからな、と呼人があの相談を受けた時に考えた事を伝える。彼にスタンガン機能のある警棒などを見せたのは、それは彼の個性が無くても出来ることであるし、逆に個性が無くても十分に戦力となりうるものであって個性を活かそうと考えるならもっと電気の性質を利用すべきだと考えたからである。

 

 と、それを呼人が説明し終えた所でずっと黙っていた障子が口を開いた。

 

「それは、先生に試されたのでは無いのか?」

「試された、って、俺が?」

 

 自分を指差す上鳴に頷いて、障子は自分の思った事を説明する。

 

「強くなりたい、という生徒が来たから、そうしようとする強い意思があるのか試したのではないか? 自分に断られても自ら強くなろうと努力を重ねるのか、それともそこでやめてしまうのか」

「……まじ?」

「あながちありえない話でも無い気がするね。サポート科の話も今すぐ行ってみろ、じゃなくて『そのうち』って言ってるのがひっかかる。普通に考えれば自分は教えられないけどサポート科で相談してみろっていうだろうからね。そうしなかったと考えると、強くなる事を急いでるか、そのうちで良いって思ってるのか、試されてるのかもしれない」

 

 尾白と障子の話を聞いた上鳴の顔色が青くなっていく中、呼人がその肩を叩く。

 

「とりあえず上鳴はサポート科に行ってきたらどうだ? 放課後の訓練は屋内演習場にしろ運動場にしろ、来るならいつでも良いから」

「お、おう。そうする。まじか……きついぜ相澤先生……」

 

 自分の行動を振り返って顔色を悪くする上鳴を励ましながら、4人は教室へと戻った。

 

 

******

 

 

「そろそろ夏休みが近いわけだが、当然ヒーローを目指すお前らが30日間きっちり休めるわけじゃない。夏休み、林間合宿をやるぞ」

『合宿だー! やったー!!』

 

 肝試し、花火、風呂、風呂、カレー、etc。相澤の言葉にそれぞれが歓喜の声を上げて楽しみなことを口にする。ヒーロー科の合宿だから当然楽しいだけですむわけはないのだが、とはいえ彼らのも高校生である。楽しい事は欠かせない。

 

「ただし」

 

 相澤の言葉でシンと静まり返った教室の中の、数名の生徒に目を向けながら相澤はもう一つ大切な事を口にする。

 

「期末テストで合格点に満たなかったやつは、残念ながら補習地獄だ」

「ひ―!!」

「みんな頑張ろうぜ!」

 

 数名悲鳴を上げる中、林間合宿参加の条件が告げられたのだった。

 

 

******

 

 

 林間合宿の用件発表から3日後。

 

「あ、上鳴。今日は来れるのか?」

「まあな。サポート科の方もまだ完全じゃないけど検討してくれることになった。とりあえず向こうも考えたいからまた数日空けて来てくれってよ」

 

 先日の救助レースの後、ようやく運動場γの使用許可が降りた尾白、呼人、障子が運動場に向かっていると、後ろからコスチュームを持った上鳴が追いついてきた。

 

 屋内演習場と違って各屋外運動場はそれぞれに対応する施設や自然を持ち、当然ながら訓練には危険が伴うので特に条件無しで解放されている屋内演習場と違って特別な許可が必要となる。そのため先日の救助レースの日の放課後すぐに相澤に相談したものの、活動内容をまとめた書類を提出しその承認と必要な安全対策の確認などに時間がかかって今日ようやく使用の許可が降りたのだ。その際上鳴が参加する可能性があったので、上鳴も利用希望者の1人として名前を書いておいた。

 

「どういうサポートアイテムを作ってもらうんだ?」

「まだ完全に方針が決まったわけじゃねーけど、避雷針みたいなもんが作れねえかなと思って」

「避雷針か。それは確かに面白いかもな」

「ちゃんとお前に言われてから電気とか雷のことについて勉強したんだぜ」

 

 相澤に断られて特に訓練はしていなかった上鳴だが、呼人のアドバイスどおりに電気の性質などの知識や自然現象としての雷の性質などについての学習は、あまり自分でも優れているとは思っていない頭を必死に使って頑張っていたのだ。

 結果としてだが、細かい理論的なことについてはむしろサポート科が要望に合わせて考えてくれることであり、細かい原理についての理解は不十分なものの、見かけ上の電気の引き起こす現象についての知識がある程度身についたために、割と的確な要望を出すことが出来たのだ。

 

「やっぱりみんなそれぞれがんばってるんだな。俺も頑張らないと」

「そう、かはわかんねえよ。俺だって百竜に相談に乗ってもらってなかったらやってたかわかんねえし」

 

 意気込みを新たにする尾白の言葉に、みんなやってんのかなあ、と上鳴はクラスメイトの事を思い浮かべる。ヒーロー科では他の科と違って、普段の授業でもヒーローとしての訓練の他に組手の訓練や、体育の授業も体力トレーニングなど訓練じみたものが多い。

 その他に何もしていないとは言わないが、大半がせいぜい筋トレやジョギングといった体力面のトレーニングであり、この3人のように実力を高めるような訓練をしているとは思えない。

 

「まあ学年が上がったらやるんだろうけど、まだみんなそこまでやってねえんじゃねえかな。それに家じゃあ個性なんて使えないってやつも多いだろうし」

「確かに……今の所演習場を使っていても1年生と当たったことは無い。上級生がいたとしても大概どこかのブロックは空いてるからそれほど熱心な者が多いわけでも無さそうだ」

「ヒーロー科って言うからもっとがんがん訓練してるかと思ってたんだけどな」

 

 あまり上級生と交流のないメンバーだけに、ヒーロー科の生徒が例年どれぐらい努力をしてどれぐらい訓練をしているのかは把握出来ていない。そのため、自分たちの訓練の仕方が普通よりはかなりしっかりしたものだとわかっていないのだ。

 また上級生に関しては、学年が上がるごとに訓練の内容も濃くなっていくために、個人のトレーニングをしなくてもかなり疲れるということもあってあまり自主訓練を大々的にしているものはいないのである。

 

 やがて、運動場の更衣室に到着しコスチュームに着替え始める。校舎内にも更衣室はあるのだが、放課後などの訓練においてはこうしてそれぞれの運動場などの更衣室を利用する事もできるのだ。

 

「そう言えば、上鳴は期末試験は大丈夫そうなのか?」

「う……」

「上鳴?」

「全然大丈夫じゃないです……勉強まじでわからねえよ……林間学校行けるかな俺……」

 

 痛いところをつかれたと泣きそうな顔になる上鳴。何を隠そう、彼はクラスでも1、2を争う勉強ができない人間なのである。期末試験もやばいのはわかっているのだが、わかっているだけに目を逸していたのだ。だが、そこに尾白が救いの手を差し伸べる。

 

「なら、訓練の後勉強してるんだけど上鳴も来る?」

「まじ? 俺もいいなら行きてえけど、全く出来ねえから教えてもらうことしか出来ないんだけど」

「それなら大丈夫だ。どうせ尾白にも俺が教えてるし」

 

 話に参加していなかった呼人がさらっと言った言葉に、尾白が恥ずかしそうに顔を振り向ける。

 

「俺は全部聞いてるわけじゃないだろ!? そりゃ百竜の方が頭良いけどさ……」

「俺もところどころ聞いている。百竜も、問題ないだろう?」

「まあな」

「そういうことだ。上鳴もちゃんとするなら来ると良い」

「お、お願いします! まじ助かる!」

 

 地面に頭を打ち付けるぐらいの勢いで頭を下げる上鳴。勉強を特に苦手とする彼にとって、教えてくる相手は文字通りの救世主なのだ。

 

 

******

 

 

「上鳴……お前……やばくないか?」

「そんなの俺もわかってるよぉぉ!」

 

 上鳴の悲鳴が響く。そしてそのまま、助けてくれよぉぉぉ! と言いながら机に突っ伏してしまった。

 

 今現在4人がいるのは1年A組の教室である。機動力を高めるための訓練をした後、制服に着替えて戻ってきたのだ。上鳴を除いた3人は先日からここで勉強している。雄英の最終下校時刻はかなり遅く、訓練を2時間ほどした後でも勉強する時間が十分にある。そして最終下校時刻になればちょうど高校生が帰るには少し遅い程度の良い時間なので、ちょうどよく利用しているのだ。

 ちなみにこの時間に教室に残っている生徒は基本的にいない。

 

 機動力強化のための実践訓練以前に体力が全く足りないことが露見した上鳴は、今度は学力がまったく足りないことを露見させていた。応用出来ないどころか、基礎的な知識が頭にろくに入っていないのである。

 

「よし、お前は一から勉強し直しだな。それと!」

「は、はい!」

「わからないなら授業中に爆睡するな!」

「はい! いや、わかってるけどよ。眠くなっちまうんだよな」

「俺も眠たくはなるよ。けど、そしたらその分のノートも取れないし置いてかれちゃうんだよね」

 

 むう。と呼人は腕を組んでうなる。呼人自身は子供の頃からの生活の結果とんでもないショートスリーパーな上に眠気をかなりコントロールでき、更に体力も化け物じみているので授業中に眠気に襲われた事は無い。だが、普通授業中に眠気に襲われないような高校生はほとんどいないのだ。

 

「なら……仕方ないからわからなくなったところは後で他のやつにノート見せてもらうとかしたほうが良いな。わからないままに放置するのは駄目だ」

「気をつける……」

「よし、なら全教科最初からやってやる」

「サンキュー百竜!」

「帰ってからも遊ぶなとは言わないけどちょっとはやる癖つけろよ」

「うん!」

 

 満面の笑みで頷く上鳴に呼人は小さくため息をつく。あまりにも元気が良すぎて、むしろわかっているのか心配だ。

 

 そうして、確認した所本当に基礎的なところからわかっていない様子の上鳴に少しずつ教えることにする。と言っても一時間半ぐらいしかないので、今日は英語だけ、明日は数学だけといった風にするしかない。

 

 そんな勉強を苦しむ上鳴に教えていると、障子と尾白が勉強の手を休めて2人でスマホを覗き込んでいた。

 

「何見てんの……?」

 

 文法を叩き込まれて半分グロッキーになってた上鳴が、半分キャパシティオーバーのアホ面になりかけている顔をゆっくりと上げる。

 

「改めてパルクールって凄いよなって思って。俺みたいにパワーのある尻尾があるわけでもないのに、凄い自由に動き回るからさ」

「うむ。参考になるのもそうだが、見ているだけで楽しいものだ」

「あー……俺にも、見せて」

 

 ふらりと立ち上がった上鳴が2人の座っている席へと近づいていく。尾白と障子がちらりと呼人の方を見るが、これ以上を今詰め込むとパンクしかねないと判断した呼人は軽く頷いた。家に帰ってから完璧に覚えて貰う予定で、覚える前に知識をノートにまとめながら叩き込んだのだ。

 

 その後、帰るまでの時間も少ないということで4人で揃ってネットに上がっている動画を参照することにする。

 

「こういう人らってあんまムキムキに見えないけど、結構スルスル登ったり跳んだりするよな」

「これは筋肉でやってるっていうよりは瞬発力と技術だからな。お前は体も軽いし、少し鍛えれば筋力的には十分だろ」

「むしろ鍛えすぎてない方が有利かもね」

「……俺はむしろ大変だ」

 

 4人の中でも特に大柄で個性の関係もあって体重が重たい障子のボヤキに、他の3人が明るく笑う。その後の鑑賞会は、相澤が戸締まりをしにくるまで続いた。

 

 

****** 

 

 

「おい、お前らもう下校時刻だぞ」

「やべっ時間見てなかった」

「……もうそんな時間か」

 

 教室の入口から呆れた表情で告げる相澤に、4人は慌てて勉強道具を鞄に詰め込む。雄英の夜が遅いとはいえ、生徒はよほどの理由がない限り定められた下校時刻までに帰らないといけない。この場合のよほどの理由というのは、教師であるプロヒーローとの特別な訓練や、学内施設を用いた長時間演習の場合のみを指すため、ただ4人で教室に残っていた彼らはそのうちに入らないのだ。

 

「お疲れさまでした」

「……さようなら」

「はいさようなら。気いつけて帰れよ」

「はーい」

 

 やがて教室の入り口で待っていた相澤の隣をそれぞれに挨拶した4人が通り抜ける、と、最後になった上鳴を相澤が呼び止めた。

 

「上鳴」

「は、はい!」

「もしまだこれを習得したいと思っているなら―――」

 

 そう言いながら相澤は、自分の首の捕縛布を軽く掴む。

 

「努力と論理的な理由で俺を納得させてみろ。今のお前に時間を割くのは時間の無駄だ」

「う、っす。がんばります」

 

 始めはとんでもない罵倒をされたと思ったが、上鳴は先刻の障子や尾白の指摘を思い出した。ただ捕縛布が自分の個性に不適切だというだけでなく、多分自分の中途半端なやる気は、相澤に自ら教えるには不十分なものでしかないと判断されたのだ。だから『今のお前には』『時間の無駄』だと言われた。

 

 自分が、毎日ああして訓練している百竜達や、それをしてないまでもトレーニングをちゃんとしている切島や爆豪、砂藤らほど熱意があるとは思っていない。今日は一緒に訓練をしたが、それも先日の演習での悔しさがあったからで、積極的に出来ない事を埋めようとしているわけではない。

 多分相澤にとっては、その程度のやる気の相手に自らの時間を割くのは無駄なことなのだ。

 

(見せつけられんな……色々と)

 

 また、先をいく者達との差を見せつけられたような気分になる。それも仕方の無いことかも知れないとわかるぐらいには、今日の放課後の訓練と勉強は新鮮だった。

 

「じゃあ、気をつけて帰れ」

「はいっす!」

 

 先程より元気に返事した上鳴は、少し離れたところで待ってくれている3人の後を追う。めちゃくちゃなやる気を今すぐに出せる気はしないが、とりあえずやらないといけない環境に自分をおいてみれば、少しは変わることが出来るだろうか。

 

 一方教室の戸締まりを終えた相澤は、先程の上鳴との会話を思い出していた。

 

(案外時間の無駄じゃない、かもしれない……いや、まだわからないか)

 

 現状自分は、彼よりも遥かにやる気のある教え子を1人抱えている。教師としての相澤なら複数人を同時に見ることも出来るが、自らが作り出した捕縛布の扱いを教えるなら、尽きっきりになる必要がある。生徒に序列をつけるわけではないが、その教え子と上鳴を比較した時に、自分が教えるべきはその教え子の方だと断言できる。

 

 だが一方で、上鳴も少し変化を見せているように思う。

 サポート科の担当であるパワーローダーから聞いたところによると、先日上鳴がサポート科の開発室を尋ねてきたらしい。その時室内にいた熱心なサポート科の一年生が喜々として相談に応じ、上鳴の要望に合わせたサポートアイテムを開発しているそうだ。

 話が通ったら、というかサポート科に開発を依頼するということを担任教師である自分に報告しておけとは思うが、それはサポートアイテムが完成し次第手続きの書類を提出させる際に注意すればいい。生徒たちのコスチュームの情報に関しては、全て学校側が把握しておく必要があるのだ。

 

 ただ今はそれよりも、彼が、自分の『そのうち』という言葉を待ちきれずに行動を始めたということの方が重要だろう。以前相談を受けたときには積極的なやる気があるようには見えなかったが、一応待たずに行動を起こすぐらいのやる気はあったようである。あるいは先程一緒にいた、クラス内でも唯一積極的に施設利用をしている3人に触発されたのかもしれないが、それこそ学校という空間のいいところだ。

 

(さて、これで勉強の方もやる気を見せてくれると嬉しいんだけどな)

 

 だが、彼の悲惨な成績を思い出すとまた微妙な表情にならざるを得ない。まだまだ、上鳴には成長が必要なのだ。

 

 とはいえ、相澤は今年は特に例年と違って生徒の成長が早いように感じていた。ヒーロー科の生徒とはいえ高校生。例年は1年の間は学校の授業の範疇で演習を行う程度で自らの成長を全力で図ろうとする者は少なく、大抵の生徒は高校生活を謳歌している。それが変化するのは大抵2年にはいって、外に出ての実習が増えてからだ。

 

 だが、今年は少なくとも既に4人、自らを変え始めている。なかなかに有望な生徒達だと、少しばかり誇らしく感じる相澤であった。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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