竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
翌日、上鳴は放課後の訓練に参加できない事をいつもの3人に断りを入れて相澤のもとを訪れていた。
「相澤先生、これサポートアイテムのレポートっす。後前先生の言ってた話なんすけど……」
「……ついてこい」
上鳴から提出された書類を受け取って軽く目を通した相澤は、続く上鳴の言葉とその表情に席を立ち、空いていた面談室に移動する。
「それで、どうするつもりだ?」
「俺に、先生の武器を教えて欲しいっす」
席についてそうそう、雑談も無く尋ねた相澤に、間髪入れずに上鳴も答える。
その言葉に答えず、相澤は上鳴が提出したレポートに目を通した。拙いながらもどのようにサポートアイテムを使おうとし、どういう問題があったか、またどういう結果をもたらしたか、今後使うとすればどうするか、などがまとめられている。
「これを見る限りは、触らないとどうにも出来ないっていうお前の欠点は改善されてるように思えるけどな」
案に、『別にもう俺の武器を使う必要もないだろ?』と問いかける相澤に、軽く頷いて上鳴は話す。ここからは、上鳴が相澤を納得させる番だ。
「サポートアイテムで電気を届かせることは出来るようになったんすけど、それ以外が何も変わってないんですよ。電気のきかない相手には相変わらず無力なまんまだし、機動力も全然で……。それで素手の体術を鍛えるのと相澤先生の武器を使えるようになるの考えたら、相澤先生の武器の方が機動力も上だと思うし、室内とかだったらあるもの振り回せるし、拘束も早くて使い勝手が良いと思って。あとあれっす、ミッドナイト先生とかそれこそ俺自身みたいに、近づけない、触れない相手が出てきた時にもちょっと離れて戦えるなって。これは百竜と尾白と障子と話してる時に聞いたんすけど……あの3人は近づかないと戦えないんで」
相澤の武器を使う利点を上鳴は自分の言葉で説明した。相澤自身は当然自分の武器の特性を理解しており上鳴の言ったことも全て理解していたのだが、それを上鳴がしっかりと説明したことを見てひとまず考えている事を理解した。『なんとなくすごいから』などと言われた日にはどうしようかと思っていたが、しっかりと考えているらしい。
「確かに、そういう事ならこいつはうってつけかもしれないな。だが、前も言った通り、真剣に取り組めないならこいつは教えられない。俺もそんな暇じゃないからな」
どうだ? と視線を向ける相澤に上鳴は深呼吸すると、はっきりと答える。
「夏休み返上の覚悟っす」
その言葉に、相澤は表情は変えなかったものの思わず口元を緩めそうになり、慌てて口元に力を込める。
『最高のヒーローになる』とか『一番になってみせる』とかではなく、『夏休み返上』という、なんとも現実じみた回答に、思わず彼らしいと思ってしまった。だが、それゆえに彼の頑張ろうという決意もわかった。
何より、言葉を聞く前から彼の表情が変わっているのには気付いていた。今日の演習でも、動きがいきなり変わるというわけではないが、いつもより頭を使おうとし、また他の生徒の動きも真剣に見ているのが見て取れた。
「……わかった。この後他に教えてるやつのところに行くから、お前もついてこい。それと、この事は特に親しいクラスの奴にまで隠せとは言わないが積極的に喧伝するな。俺が教えている相手のことは特にだ」
「う、うす」
「それと、夏休みの全てを返上する必要はない。勿論訓練の時間は作らせるが、高校生らしく夏休みは楽しんでおけ。守るべきものがなんなのか、知らずにヒーローにはなれん」
その説明に上鳴が首を傾げているが、相澤は構わず席を立って部屋を出る。
ヒーローが守るのは何か。普通に生きている人々か、あるいは平和という抽象的なものか。相澤は、『何気ない日常』だと考えている。だからこそ、高校生である上鳴には高校生らしい楽しみはしてもらわなければならない。その楽しさ、素晴らしさを知るからこそ、守ろうと努力することが出来る。
それを知らない者達がヴィランとなる。ヒーローは誰よりも、日常の素晴らしさを知っておかなければならない。だからこそ何事にも合理性を標榜する相澤が、放課後の訓練や昼休みの映像の閲覧をしない生徒にも何も言わないのだ。
******
「あれ、えっと……体育祭で緑谷と戦った普通科の人だよな?」
「そういうあんたは……A組の――」
「上鳴電気。なあ、このあたりにヒーロー科の生徒が来てなかった?」
相澤に言われて校舎裏の林のあたりに上鳴が行くと、そこには一人の生徒が居た。紫の髪をした背の高い男子生徒が体操服を着ており、首元には白く細長い布を巻いている。
心操人使。以前体育祭の騎馬戦では呼人、尾白と共闘し、トーナメントでは緑谷と戦って一回戦で敗退した普通科の生徒だ。
彼もまた、相澤先生ことイレイザーヘッドと約束があってここに来ていた。約束の時間からは少し遅れているが、イレイザーヘッドは教員でありながらヒーローであるため、そちらの緊急の用事で
「いや……見てないな。何かあったのか?」
「相澤先生がここに先生が直接教えてる人がいるって言っててさ。その人のところに行っとけって言われたんだけど見当たんないんだよな」
上鳴の説明を聞いて心当たりのあった心操だが、自分は彼の言った条件には当てはまらない。ちょっとした悪戯心もあって、黙っていることにして違う話題を振る。
「そのイレイザーは何をしてるんだ?」
「イレイザー、って相澤先生のことか。なんか道具取ってくるって言ってたからすぐ来ると思うけど……」
なんで気になるの? と首を傾げる上鳴になんでも無いと首を振って心操は話を続ける。
「確か、あんた放電する個性じゃなかったか? イレイザーに何を教えてもらうんだ?」
「詳しいのな。俺ってただ放電する『だけ』だからさ。味方がいたら巻き込んじゃうし離れた相手にも対して届かないのよ。そりゃ騎馬戦のときみたいにぶっ放せるけどあれだとキャパシティーオーバーになっちゃうの。だから出来る事増やしたいと思って」
そしたら相澤先生の戦い方が個性使わないで出来る凄いやり方でさ、見たことないだろうけど。と上鳴が続けるのを聞きながら、心操はこころの中で呟く。
そうだ。だから自分は彼に学んでいるのだと。
会話が途切れた中で上鳴がもう一度探しに行こうかと足を動かそうとしたところで、待ち人がやってくる。
「上鳴、と心操もいるな」
「心操、って?」
自分ともうひとりの名前に上鳴が首を傾げる中、ベンチから立ち上がった心操は相澤に勝手知ったる仲のように話しかける。
「待ちましたよイレイザー」
「悪いな。急用が入った。こいつが以前言ってたもう一人だ。上鳴」
「は、はい! 何がどう……」
「こいつが俺が教えているもう一人だ。積極的に喧伝しないように」
え、え? と上鳴が戸惑う中、相澤が予備の武器、捕縛布を上鳴へと渡す。戸惑っている時間や説明している時間は無駄。情報収集をしたければ後でしろ、と。
見れば、心操と呼ばれた普通科の生徒も首に相澤同様捕縛布を巻いている。ここに至ってようやく、上鳴は『普通科の生徒が相澤に個別の教えを受けている』ということに気付いた。
想像しなかった状況に戸惑いながらも、上鳴の新しい技術を身に付ける訓練は始まった。
******
「だから葉隠さんなんで裸なの!? 俺来るなら体操服でって言ったよね!?」
「えーだってみんなコスチュームなんでしょ? だったら私もコスチュームじゃないと!」
放課後、今日はいつもの動きの確認や移動の練習ではなく、本気で組手、すなわち殴り合いをしてみようと呼人たちは屋内演習場に来ていた。これまではどちらかというと動きを反省するための確認だったり、文字通りの組手であって試合はしてこなかった。それを今日はやってみようという話しになっている。
理由は単純に、昨日の呼人の話で尾白が触発されて本気の仕合をしたいと言い出したからだ。障子も2人の普段のやり合いから格闘戦の強さはわかっているものの、本気になったところはまだ見たことがないので是非見たいと言って見に来ることになった。本気の仕合と言っても何時間もやり合うことはないので、訓練する時間も十分にある。
そこに、昨日、模擬戦を見学していた2人が組手の練習をしたいと言って参加したいと申し出てきたのである。というより、葉隠が尾白との雑談の中で思いついて言い始め、それに耳郎ものる形になった。もともと自分たちも何か始めようと考えていた2人だが、特別にこれといった訓練を考えているわけではなく、それなら既にしている呼人達と一緒にしようと考えたのだ。
そして現状に至るわけだが。
「耳郎、何故止めなかったんだ」
「いやーウチも気付いたら脱いでてさ。授業の演習とか模擬戦とかならともかく、流石にまずいかなとは思ったんだけどさ。葉隠の言うことにも一理あるわけだし」
「一理あるのは認めるが……」
男女それぞれに更衣室で着替えて演習場で集合することになったのだが、演習場にやってきた葉隠が、いつものコスチューム、すなわち靴と手袋だけで後は素っ裸という、あまり組手をするには好ましくない格好でやってきたのである。
まあ耳郎が相手をすればいいだけの話ではあるのだが、残念ながら尾白はそこまで頭が回っていない。
「尾白、気になるなら俺達が相手しなきゃ良いんじゃないか? 耳郎なら同じ女子なわけだし」
「組手に関してはそうだけどさ……だってこの格好でここまで来てるんだよ?」
「それは……うん、たしかにまずい気はするな」
「えー!? だって私ぶつかったりしないよ!? 見えてないし良いでしょ!」
「いや、でも―――」
と、ずっとこの調子である。ワチャワチャやっている2人は、尾白は必死ではあるものの葉隠は楽しそうで、峰田あたりが見たら血涙を流しそうなものではあるのだが残念ながらここにいるメンバーでそれを楽しんでいるものはいない。
「透ー、今度からここに来るまでは体操服着るようにしなよ」
「むー……移動するときだけだよ! だってヒーローになっても私はこれなんだから!」
「尾白もそれなら納得でしょ?」
「……うん、それなら」
「もー、尾白くんのスケベさん!」
「ちょっ、違っ――」
とりあえず耳郎の介入で一応の決着はついた。ちなみにこの間、口を挟めない障子と呼人は空気になっていた。特に呼人に関しては、葉隠の状態がまずいらしいのは知っているのだが呼人自身はどうとも思っていないのでなんとも口を挟まなかったのである。
女子だと男と違ってむき出しの急所がぶら下がってないから良いな、などとデリカシーの欠片もないことを考えていたりもする。
その後、尾白を落ち着かせて最初に本気の対戦を行う2人が部屋の中央で向かい合った。他の3人はそれを見学しておくことになった。
個性の使用は呼人は禁止。禁じ手は急所を狙う一撃。骨折ぐらいの怪我ならさせてOK。まあ要するに、リカバリーガールの力で復帰させる程度の怪我に抑えれば何をしても良いというルールだ。リカバリーガールのおかげで多少の怪我を気にせず訓練を出来るのもこの学校の優れたところである。呼人ら3人もこれまでの訓練で幾度もお世話になっていた。
「では、俺の合図で開始で良いな?」
「おう」
「ああ」
相対した2人が向かい合い、離れたところに他の3人が集まってそれを見学する。
「……始め」
合図とともに呼人が動き始める。身を低くして突っ込む呼人に対して、尾白は待ちの体勢だ。様々な武道を学んで基本的な動きを身に着けている尾白に対して、呼人が戦う術を身に付けたのは何百何千にも及ぶモンスター達との殴り合いの中。丁寧な立ち回りよりも思うままの殴り合いを得意とする。
呼人が目の前まで踏み込み、下からえぐるように拳を放とうとした所で尾白も動き始める。拳を放とうとした呼人に向かって自分の方から踏み込み、拳を弾いてそらすとともに呼人の胸に向かって掌底を放つ。
それを手で受け止めた呼人は、足払いからの追撃を狙うものの尻尾に体重をかけて後退した尾白は上から強力な踵落としを放つ。
以前呼人に『動きがわかりやすい』と評価された尾白だが、ここ数ヶ月は放課後の組手や授業での演習などの中でそれを改善し、より実戦的な動きに近づけるように努力していた。
中学時代のように好きに打ち合える相手がいるわけではなかったが、イメージトレーニングによってそれを補っていた。何より、日を重ねるごとに進歩する尾白の組手に合わせるように少しずつ強くなっていく相手が今は居た。
四肢の扱い、あるいはパワーに関しては呼人が上回るが、そこを尾白は尻尾を使ってうまくカバーする。時に死角を尾によってカバーし、時に蹴りの威力を尻尾を使った踏ん張りや尻尾を振り子のように使って強化する。
十数分の打ち合いの末に、互いに大きな怪我はないものの顔も含めて青あざや切り傷だらけになった所でどちらからともなく距離を取って仕合は終わりとなった。
「終わりか」
障子が声をかけると、尾白は頷いて3人のところに戻ってくるが呼人がその場に立ち尽くしている。
「百竜?」
「ん、ああ、悪い、ちょっと考えてた」
耳郎が再度呼びかけてようやく気を取り直したように動き始めた。
「予想外だった?」
「ああ……仕留めきれるかと思ってたのに上手く躱された……」
呼人との差に気付いていた尾白は、積極的な攻撃を選ぶのではなく防御を主体にした動きをしていた。そのため呼人も攻めきることが出来ず、むしろカウンターに良いのをもらってしまっていた。周りで見ていた3人がそれに気づくことが出来なかったのは、尾白が下がらなかったからだ。呼人の攻撃に押されて下がること無く、その場に立ち止まって攻撃を捌き切っていた。
「全く、何をしているのかわからなかったぞ」
「凄かった! なんか尾白くんも尾白くんなのに普通じゃない感じだったね!」
「それは褒められてるの……?」
褒めてるよ! と鼻息を荒くする葉隠に尾白が苦笑している一方で、呼人は耳郎に話しかけられていた。
「すご……百竜、あんた全然本気じゃなかったんだね今まで」
「そりゃあまあ、本気出したら殺しかねないから。ちゃんと目的達成のための技術は費やしてるぞ」
「まあ、そうなんだけどさ。なんか複雑っていうか……」
そういう耳郎に、呼人は以前瀬呂に言われたことを思い出す。呼人が意図して、侮る意図ではなく示す為に行ったことでも、ただ見ているだけでは馬鹿にされているようにしか感じない。人は、それほど強くはなれない、と。
「いつもの俺がしてることなら、誰でも訓練次第で出来るんだってことを示したかったんだけどな。瀬呂にも『馬鹿にされてる』みたいに見えるって怒られた」
「まあ、そこまでは言わないけどさ。なんか差を見せつけられてるみたいで頑張らなきゃって気持ちと嫌味かっ、って気持ちがしてなんか変な感じだよ」
「……気をつける」
「良い目標にはなるんだけどさ」
2人がそんな会話をしているところに、そう言えば、と尾白が声をかけてくる。
「百竜、一発良いのが入ったと思ったけど、大丈夫か?」
尾白が言っているのは、呼人の攻撃にカウンターをした時の事だ。呼人が顔を狙った掌底を放った時に、尾白はそれを頬にかすらせつつ正拳を呼人の胴にねじ込んだのだ。
「ん、肋骨が2本折れてるぐらいだな。そのうち治る」
「いや、だからそのうちじゃないからねその傷。行くよ保健室」
尾白の言葉に呼人はめんどくさそうな表情をするが、尾白は無視してその腕をひく。3人で訓練をしているときからそうだが、呼人は他の人の怪我を気にする割に自分の怪我を軽視しがちなのだ。腕が折れた時には流石に動かないと保健室に行っていたが、指の骨折ぐらいなら無視して訓練を続けるのである。
それに気付いた障子と尾白は、呼人の様子を注視して少しでもおかしいところがあれば保健室に連れて行くようになったのだ。
個性で簡単に治るというのなら放っておくが、呼人の説明によれば回復速度は上げられるものの怪我は怪我に変わりないと言うので無理をしようとするのを止めているのである。
「え、骨折れてんの? 保健室行きなよ」
「……俺が連れて行こう。尾白、お前は……2人と先に訓練しておけ」
「あ、うん。わかった」
呼人の怪我を気にしながらも、ワクワクと言いたげな表情(多分)で自分の方を見ている葉隠に気付いている尾白は障子の言葉に素直に頷いた。
タイトルを考えるのが苦手……
とにかく話が先に進むようになんとなく書いているので各話テーマがあるというわけでもなくタイトルに困ります。
投稿遅れてごめんなさい。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない