竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第45話 ヒーローと社会

 昼食は適当に中華鍋で大量の野菜と肉を炒めて炒め物を作った。呼人自身は料理の味は美味しい方が良いものの、それほど作り方にこだわるわけではないので、大体が炒めるか煮るかで済ませていた。その例にもれず今日も適当に炒めただけだったが、意外と好評であった。

 

 食事を終え、全員分の食事の後を片付けた後手持ち無沙汰になった呼人は、森を歩いてきて良いかと相澤に尋ねに行った。洸汰とマンダレイに呼ばれた子供が呼人のことを事あるごとに睨み、食事もマンダレイに言われていやいや食べていた事が非常に気にかかったが、いつの間にか居なくなってしまっている。森の奥へと行ったのはわかっているので訓練ついでに後を追ってみようかと考えたのだ。

 

「相澤先生、森歩いてきても良いですか?」 

「……迷うな。それと大きな怪我はするな。今日は基本自由だ。夕方までには戻れ」

 

 スタートした地点からこの宿泊所まではピクシーボブの個性と地形で誘導されるようになっているが、勝手に森に入るとなるとその限りではない。通常であれば迷う可能性もあって許可はそう簡単に出せないが、今日のこの後の予定はなく呼人が完全に手隙であるということもあって許可を出した。

 

 許可を受けた呼人は、先程は樹上を一気に駆け抜けたことでほとんど確認できてないない地面の様子を確認しながら森を歩く。地面の凹凸はそれなりにあるものの、下生えが多すぎて通ることすら困難という森ではないようだった。

 

(にしても……あの子供、キツい目してたな)

 

 森を歩きながら思い出すのは、今まさにいる場所へと辿っている少年の表情だ。ああいう表情をする人間を見たことは、実を言えばある。と言っても現実世界で出会ったわけではない。モンスター達の生きた世界で、彼らにあんな目を向ける人間が何人もいたのだ。

 呼人がモンスター達の記憶をたどるとき、その場面の全てをイメージとして伝えられる。匂い、視覚、音から、空気といったモンスター達が感知できるのが怪しいものまで。つまりは、その場を再体験出来るのだ。その記憶を掘り起こせば、確かに思い当たる節がある。

 

 少し森を行き、小高い崖のような丘のような場所を一飛びで登ると、目の前にあの少年が居た。突然登ってきた呼人に一瞬目を見開くが、直後に表情を険しくする。

 

「何のつもりだ」

「話を聞きたいと思ってな」

「お前に話すことなんてない」

「あっそ。でも俺は聞きたいから」

 

 そう言って呼人が隣に座ろうとすると、洸汰は勢いよく立ち上がる。

 

「俺に関わるな……!」

「じゃあ、お前は一体何をなんで恨んでんのかだけ教えてくれよ。まあ何を、って言っても多分ヒーローだろうとは思うんだが」

 

 核心をついた呼人の問いに、背を向けようとしていた洸汰の動きが止まる。

 

「誰に聞いた」

「いや、状況的に。別に俺はそれが悪いとかヒーローは素晴らしいとか言ってんじゃねえぞ。俺もヒーローって存在に疑問を持ってるから興味があるだけだ」

 

 これまでかけられてきた無数の言葉とは全く違う呼人の言葉に少し目を丸くした洸汰は、続いて拒絶を口にする。

 

「ヒーローに憧れてるなんてやつと話す気はねえよ」

「ん、じゃあ俺とは話せるな。だって俺ヒーローに憧れてなんてないし」

 

 次々と、呼人の口からは信じられない言葉が飛び出す。現代の社会は、ヒーローの存在を肯定する者達ばかりで、否定するのは一部のヴィランぐらいなものだ。特にヒーロー科の人間とあっては、当然ながらヒーロー全肯定であろう。そう考えていた。

 

「嘘つくな。お前、ヒーローの学校に行ってるんだろ」

「あーそれは簡単な話なんだが……」

 

 そう言った呼人は、洸汰の方を向けている顔を位置の起点として成体のオドガロンへと体を進化させる。一瞬の後には、凶悪なモンスターの顔の先と相対していた洸汰は息をのんだ。

 その様子に満足した呼人は、人間の状態に戻ってもう一度座り直す。

 

「こんな人間が、皆に褒められるヒーローにならないで普通に生きていけると思うか? 俺だったら、絶対にビビって逃げるね。それに、俺がもともと人間の良いこと悪い事の常識がわからないから、下手に放っとくとヴィランになりそうだったんだよ。だから今はヒーローの学校に通ってる。興味が無くなるか別のことがしたくなったらやめるさ」

「ヴィラン……!」

「別に俺がヴィランになりたいってわけじゃないぞ。ただ、今の学校に行く前の俺は、『ヒーローでもヴィランでもどっちでもいい』って考えてたんだ。んで、ヴィランになられたら困るからってヒーローにされた」

 

 そこまで言い切ると、呼人は洸汰の反応を待つ。ここに至って、背を向けかけていた洸汰の体は完全に呼人の方を向いていた。

 そして、呼人の新しい言葉にさらされた洸汰は、自分の思いの欠片を口にする。

 

「……ヒーローなんてくそだ」

「……あー、お前ステインと似てるんだ」

「……ステイン?」

 

 どこかで感じたことある感情だと呼人が相槌をうつと、その存在を知らない洸汰はオウム返しに尋ねる。まだ幼い洸汰は、世間に出回っているヒーロー殺しの映像を見たことが無かった。

 

「ヒーロー殺しってニュースになったのは知ってるか?」

「……」

「あれの本人が名乗ってた偽名がステイン。本名は別だけどな。そいつの主張が、まあ、結構刺さるもんでな。ステインが言うには、この社会には『ヒーロー』とは名ばかりの偽物が多すぎるんだと。本物のヒーローはオールマイトみたいに、『金も名声も求めず、ただ人の為に命を賭して戦う者』だけで、他の金や名声のために戦う奴らは偽物でしかない。だから自分が偽物を殺して回って社会に気づかせる、って主張だ」

 

 若干呼人の脚色が混ざっているものの、彼の主張から呼人が理解した内容である。何事も全力な呼人にとって、『命を賭して頑張る』と『頑張る』の間に差はないのだ。

 

「……何が言いたい」

「お前も、今のヒーローのあり方に納得が行ってないんだろ? そういう感じがする。だからもし思ってるところがあるなら俺に教えてくれ」

 

 呼人の言葉に、マンダレイにすら心を開いていない洸汰は素直に話し始めた。

 初めてだったのだ。ヒーローを『おかしい』と言ってくれる相手は。自分を置いて逝った両親を、はっきりおかしいと言ってくれる相手は。

 

「……俺の親は、ヒーローで、2人とも死んだ……! 周りのやつも、テレビに出てるやつも、ヒーローとしての誇らしい死だとか言いやがって……!」

 

 こみ上げる激情に、思わず滴が頬をつたいそうになり洸汰は顔を背ける。その姿が呼人には、さみしげに、そして痛ましく思えた。

 社会にとってヒーローで、命をかけるのが当然でその死が美しいものとして讃えられる2人は、洸汰にとっては、決して死んでほしくない、なんとしても生きていてほしかった両親で。

 

 馬鹿げているなと。呼人は思った。

 

「そう、か……。悪いな嫌な事聞いて。でも1つだけ言わせてくれ」

「……なんだよ」

「人が、自分の勝手に生きるのは当然だ。そして死ぬのもな。だからお前が嫌わなければいけないのは、お前の両親じゃなくて、この社会全部だと思うぞ」

「……え……?」

「後は自分で考えろ。答えを全部もらって――ってほどガキじゃないだろ」

 

 洸汰の誰にも語らなかった胸の内を聞いた割には短い問答の後、じゃあな、と来た時を巻き戻すように、呼人は洸汰の方を向いたまま崖際に立ち、背中から倒れ込むようにして崖下へと落下する。慌てて洸汰が覗き込むが、既に呼人の姿は無く、ただ木のなる音だけが響いていた。

 

「名前……あいつ」

 

 聞きたいことを聞くだけ聞いて消えた呼人に、必ず名乗らせると洸汰は決意した。

 

 

******

 

 

『社会が、ヒーローに変な期待を抱いてる。これはなんだ?』

『――――――』

『――――――』

『弱いん、だろうな。多分』

 

 洸汰と会話した直後の呼人は、森の中を歩きながらも先程の会話について考えていた。呼人が求めていたのが、この世界の人間の考え方という情報であり、彼に答えを与えることではない。だから1人で、いや、こうしてモンスター達と対話している。

 

『――――――』

『これは……社会形態とか心理学とかの方向からアプローチしないとまずそうだな』

『――――――』

『リストアップでき次第教えてくれ』

 

 頭の中に放り込んでおいた情報の中から有益なものを探しておいてくれるようにモンスター達に伝え、呼人はまた1人思考にふける。たとえ心に別の人格がいるとしても、1人で考える事のできる時間は必要だ。

 

 呼人は、洸汰の両親の選択を責めようとは思わない。単純に自分のしたいことをしただけだ。ただ、洸汰のためと自分のしたいことを比較してしたいことを選ばれてしまったのは、洸汰にとって辛い事かもしれないとは思うが。だが基本的にそれは、彼彼女の勝手である。だから捨てられた本人ではない呼人がどうこう思うわけではない。

 

 ただ、それを讃える社会が、何か気持ち悪いと思った。

 大敵に、モンスター達に立ち向かったハンター達が、英雄が死んだとき。人々は嘆き悲しむという。時には、モンスターがまだ生きているにも関わらず、新たにやってきた人間は戦おうとせずに彼らの遺骸を回収し、あるいはその地に弔う。

 

 絶対に、その死を称えたりしない。彼らも、生きたかったのだ。それが奪われたのは、絶対に喜ばしいことではない。

 

(歪みはそこか)

 

 

******

 

 

「お昼は抜くってレベルじゃ無かったねえ」

 

 夕刻になって、相澤に言われていた集合時間になる前にと呼人が宿泊所に戻ると、ちょうど他のクラスメイトが到着していた。なんというか、全員ズタボロである。かくいう呼人も洸汰のところを離れた後森の中を走り回っていたのでそれなりに汚れているが、全員そういうレベルではない汚れ方をしている。

 

「『3時間』とか冗談じゃないすか……」

「腹減った……」

「私たちなら、って意味よ、あれ。悪いわね」

「実力自慢とかきついっす……」

 

 正に疲労困憊といった様子で言う生徒を微笑ましげに見ながら、個性を使って妨害活動を行っていたピクシーボブが見ていた感想を伝える。

 

「けど正直、もっとかかると思ってたよ。私の土魔獣が思ったよりすぐに攻略されちゃった。いいよ君たち。特に……そっちの4人と、尻尾の子と手がたくさんの2人。躊躇の無さは経験によるものかしら? 3年後が楽しみね」

「……あの化け物になれるやつはどこに行った?」

 

 プロヒーローたちと生徒が話していると、洸汰が生徒達にそう尋ねた。化け物になれるやつ、で思い当たった生徒は居なかったが、それが誰を指しているのか気付いたマンダレイが森から顔を出したばかりの呼人の方に視線を向ける。

 

「帰ってきたわね」

「え……?」

 

 クラスメイトが視線を向けると、ちょうど呼人が戻ってくるところである。

 

「あいつ……」

 

 その姿を認めてそうポツりと呟いた洸汰が不機嫌そうに表情を歪めたのを見て、思い切って緑谷が彼は一体誰なのかと尋ねた。

 

「ああ、この子は私の従甥。洸汰! ほら挨拶しな! 一週間一緒に過ごすんだよ」

「あ、えと僕は緑谷よろしくね」

 

 マンダレイに紹介された緑谷も、洸汰に向かって握手を求めて手を差し出した。それを不機嫌そうに睨んだ洸汰は、背を向けながら心を漏らす。

 

「ヒーローに憧れるなんて連中とつるむ気はねえよ」

 

 ポカンと、緑谷を始めとするクラスメイトが見守る中、背を向けた彼は建物の中に入っていった。

 そこでパンパンと相澤が手を叩く。

 

「バスから荷物降ろして部屋まで運んだら食堂で夕食。その後入浴してから就寝だ。本格的なスタートは明日から。早くしろよ」

 

 女子部屋の方にはマンダレイが案内していき、男子の大部屋へは先に到着していた呼人が案内する。

 

「ひゃ、百竜くん!」

「ん?」

 

 声をかけられて振り返ると、緑谷と飯田、轟といったいつもの三人組とも言えるメンバーがすぐ後ろに来ていた。

 

「百竜くんはどれぐらいでついたのか、聞きたくて」

「……多分一時間ぐらいか」

「はは、相変わらず百竜君は桁違いだな! 俺も精進せねば!」

「……速いどころじゃねえぞ。何したらそんな早く着くんだ」

 

 あまりに早いタイムに3人がそれぞれに驚きを示し、轟がそう尋ねてくる。緑谷に至っては足を止めて期待の眼差しで見つめつつ、『百竜くんの個性であれば考えられるのは―――』なんていつもみたいにぶつぶつ言い始めようとしているので慌てて止めた。

 

「職場体験直後の救助訓練レースでの緑谷の動きは覚えてるか?」

「むっ、それはあの『落ちた』ときの話か?」

「は、はは、僕ももちろん覚えてるよ。あれがどうかしたの?」

「あれを、木の幹と枝でやって魔獣とか妨害を全部無視してここまで直行した」

 

 足場が多いからやりやすかった、と事も無げに言った呼人に、緑谷はそのパターンを考えていなかったと振り返る。魔獣を倒す事はそれなりに容易かったものの、如何せん数と攻めてくるタイミングがいやらしかった。それに対応し、翻弄されているうちに時間がかかりすぎて居た。

 

 戦うことが出来ないなら、避ける。期末試験を経たはずなのに、まだそれが定着していないのだ。

 

「ここが男子の泊まる大部屋だ」

 

 そう言って大部屋につづくふすまを明けると、『おおおーーー!』と数名の歓声が聞こえる。

 

「やっべー! これすげー広いぞ!」

「こういうのテンション上がんね」

 

「道場の合宿がこんなだったな」

「……中学まで行っていたという道場か」

 

「みんな、荷物は端に寄せて並べておくんだ! 散らかしては行けないぞ!」

 

 飯田が張り切って指示を出し、全員荷物を端へと寄せていく。どうせ食事の後は風呂に入ることになるので、食事は着替えずに参加することになっている。

 

 大部屋から食堂へと移動中、今度は尾白が声をかけてくる。

 

「百竜、どれくらいでついた?」

「一時間ぐらいだ」

「早い、な。相変わらず。流石に個性を使ったか」

「飯抜くとちょっとやばかったからな。どうしてもそれは避けたかった」

 

 まあ最悪の場合になれば、モンスターに変身して森の木を食べるか、あるいはエネルギーを無限に増幅できる虫を操るモンスターに変身してエネルギーを直接取り込んでいただろうが。なるべくならそれらはしたくなかったので移動を急いでいた。

 

「そっちはどうだったんだ?」

「……俺は、あまりこういうのは得意ではなかった」

「俺は木の上からいけるかと思ったんだけどね。よっぽど上を行かせたくないみたいで凄い数の魔獣が来ちゃって」

 

 ああ、それ多分俺のせいだと心当たりがありまくりの呼人だったが、そんな事はお首にも出さない。

 

「なるほど。樹上からってのは尻尾を使って、ってことか?」

「そうそう。森の中は俺の得意なフィールドだからね」

 

 互いに一言も言わないが、恐らく一部の猿のように尻尾を器用に移動に使うことが出来るのだろう。その片鱗は呼人も運動場γでの放課後訓練で気付いていた。建物から建物に飛び移る動きに比べて、パイプを登ったり伝ったりする動きの慣れが高かったのだ。

 

「障子は……」

「正直……何が出来ただろうかという思いはある。おまえたちのような劇的な解決策ではなく、一つ一つの判断を早く、そして正確に、見通しを持って動かなければいけないのだろう」

「難しいね」

「だがこれについては俺だけの課題でもない。同じ課題を持つ皆と協力できれば……」

 

 そんな話をしていると、食堂に到着する。食堂では既に食事が並べられていた。大量の食事に大きな土鍋。ほとんど時を同じくして、恐らく別ルートから到着したB組も食堂にやってくる。彼らもA組の面々と同じく森で汚れた姿をしていた。

 

「百竜だけ楽そうな格好で浮いてるね」

「うっせ。半袖長ズボンで汚れてるってところは変わらんだろうが」

「赤など着てくるからだ」

「素直に後悔してる」

 

 上に真っ赤な速乾シャツを着ているために、呼人はクラスメイトの中で非常に目立っている。それがB組からも見えていたようで、チラチラと視線を向けられた。

  

 やがて、全員が食卓について食事が始まる。

 

 昼食抜きで一日中森の中をさまよったクラスメイトもそうだが、それと同じ以上に腹ペコな呼人もまた凄い勢いで食べ物を口に放り込んでいく。

 

 やがてある程度腹が満ちた所で、障子が先に到着した呼人は他の皆が到着するまで何をしていたのかと尋ねる。

 

「百竜は、先について何をしていたんだ?」

「着替えて昼食作って食べてから森でトレーニングかな」

「トレーニングならそのまま制服でしとけば汚れなかったんじゃないか?」

「いや、最初の移動で制服はボロボロになった。木の枝に引っ掛けまくってもうボロ布ぐらいの形しかない。流石にパンツじゃあ他の人の手前まずいから着替えてこいって先生に言われた」

「ああ、なるほど……そう言えば俺達の方はみんな汚れてるけど意外と服は残ってるね」

「飯田がズボンを破ったぐらいか……」

「まあ、普通の人間の耐久力だと布が貫通される威力を受けるとそのまま肌までいかれることが多いからな。その点俺は、速度も耐久力も布がついてこれないレベルにあるから必然全力で突っ走ってれば服がぶっ壊れるわな」

 

 そう会話しながらも、食事を詰め込む呼人の手は止まらない。

 

「そう言えば、いつも普通に弁当いっぱい食べてるだけだから気にしてなかったけど、何か食べないとまずい事情ってなんなの?」

「ん、そうだな……。俺がモンスターに変えた部分も、当然損傷……まあ簡単に言えば怪我はする。で、それは怪我してない人間の体を表に出しておけば動くのには問題はないけど、怪我自体は残る。それを修復するのにエネルギーを取られるんだ。んで、今は複数のモンスターの内蔵を損傷しているから、特にエネルギーの補給を怠ってると全部回復に吸われてぶっ倒れる可能性が高い」

「それは、また……思ってた以上に切羽詰まってるね」

「そもそも内蔵を損傷することなどめったにないと思うのだが……」

「まあそこは個性の都合上ってところだな」

「またすぐ秘密にする」

「まだ見せてないのも関わってんだから別に良いだろ。概要だけ説明するなら、例えばオドガロンの肉体にトビカガチのとある器官を合わせて発現させた時に、その器官に他の内蔵が耐えきれなくて損傷する、って感じだ」

 

 例えば。氷属性を苦手とするオドガロンの肉体は、氷を操るモンスターと同時に発現させるのは相性がよろしくない。それを突き詰めてしまうと、発現させるだけで自傷するような組み合わせもある。当然ながらそれだと使い物にならないので、最近はそれを試そうと夜の度に実験を繰り返しているのだが、特に強力な竜や古龍の力には根本的にオドガロンやトビカガチの体が耐えきれない。

 そうなってくると今度はどこが下限になってるのかという実験をして、損傷しては記録を取りまた損傷してとラインを探っていくしかない。その結果が、現状の複数のモンスターの体を損傷した状態で抱えている状況だ。

 

「それ、痛かったりはしないのか? 内蔵なんてちょっと痛いどころじゃない気がするんだけど……」

「……痛みには慣れてる」

「だからそういう問題じゃあ……はあ。ほんと、無理するよね」

「まあ……否定はしない」

 

 ほんと。とんでもないところを見据えている。障子と尾白がそう思いを共有して前を向いた所で、自分たちの座っている机の上が非常に寂しくなっていることに気づく。

 呼人の方を見ると、まだまだ満足していないという表情で大きく膨らんだ口を動かしていた。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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