竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
食事を終えたら風呂。なのだが。
「百竜、それ……」
「ん、古傷」
呼人が以前上鳴に見せたそれ。全身を覆い、時には交差している傷跡が、初めて見たクラスメイトの目についた。
「古傷という量なのか、それは」
「10年も無茶やってるとこうもなるよ。もう大体治ってるしな」
最初に気付いたのは尾白と障子で。それを見て気遣ってくれた。次に気付いたのは、もう一度それを見てみたいと思っていた上鳴だが、その事情を知っている上鳴は特に声をあげないものの、近づいて改めてそれの詳しい説明を聞きたいと呼人に尋ねてくる。
「どの怪我がどういう理由でしたとか、覚えてたりすんの?」
「ほとんど覚えてない。でかいのは……だいたい覚えてるけどろくでもないのばっかだな」
ことに大きな傷は、大部分が自傷だ。それ以外の理由で怪我する場合は、大抵がモンスターに変化することでしのげたりするのだが、その力を部分的に扱う練習をしている時に損傷するとどうしようもないのだ。
「うおっ、百竜お前どうしたんだその体!」
「え、まじその傷。ってかよく見ると筋肉やばいのね」
「俺より肩周りとか腕とかでかくないか?」
「ひゃ、百竜くん大丈夫!?」
そうこうしているうちに、それほど広くない着替え部屋のせいでそれを見た他のクラスメイトも集まってきた。
「全部昔の怪我だからな。新しい怪我は……まあ擦り傷ぐらいはあるけどそれだけだ」
「いやそれにしても何したらそうなんだよ……」
「まあ、訓練の為に色々やってたからな。自分の爪でえぐったり岩に打ち付けたり……後は熊にぶん殴られたりとか」
「どどど、どういうこと!?」
「昔は強くなりたくてずっと無茶苦茶やってたんだ。そんなことしてたら怪我もする。それより、早く風呂に入らないと時間無くなるぞ。ってか峰田を先にいかせたのはまずかったんじゃねえのか」
呼人の傷だらけの体を見てほとんどのクラスメイトが興味を示している中、何か最初から軽く鼻息を荒くしていた峰田だけが先に脱衣所から出ていった。
「え!? そう言えば峰田居ねえぞ! あと爆豪、はいつもどおりだけど!」
「待てよ、風呂であいつって……」
「「覗きだ!」」
やばいやばいと切島や上鳴、事情を緑谷に説明された飯田が温泉へと移動すると、今正に、壁の近くに峰田が立った所だった。
「峰田君! 何をしようとしているんだ!」
足を滑らせないように急ぎ足で移動した飯田がそう声をかける頃には、頭からもいだプニプニを使った峰田は既に塀の3分の2を登り終えていた。ちなみに慌てて浴場に移動した上鳴や切島は、じつは自分たちも多少惹かれていた側だったために積極的に止めようとはしていない。
「いるんすよ、この向こう側に。男女の入浴時間ずらさないなんて、絶対事故……そうこれは事故なんスよ……」
そんなことを言って、飯田が飛びつく前に塀を登りきろうとしていた峰田が、塀の上に頭を出した瞬間その頭を押されて体勢を崩した。
「お前はヒーロー以前に人間として大事なことを勉強しろ」
そう言って峰田を突き落としたのは、マンダレイから峰田対策として警戒を頼まれていた洸汰である。
落ちた峰田は、なんとか間に合った飯田がキャッチした。
これにて一件落着、かと思えたものの、直後、女子陣からお礼を言われて後ろを振り返った洸汰が、一切隠そうとしない数名の裸を見てしまい、大きな衝撃を受けて男子側に転落する。
「危ない!」
そして跳び出した緑谷が洸汰をキャッチして、今度こそ覗き騒動は完結した。
******
「百竜、ほんと筋肉凄いな。どうやって鍛えてるんだ?」
一方、覗き騒動は遠い出来事と普通に湯に浸かっていた呼人の隣には砂糖がやってきた。
「隣座ってもいいか?」
「ああ」
よいしょ、っと腰を降ろした彼が放った言葉が、最初の言葉である。
「傷跡も確かにやべえけど、それより筋肉の方が凄い、って思って」
砂藤もまた、パワーを5倍に高めるという個性の都合上もとの力が強ければ強いほど効力が増すため、積極的にトレーニングを行っているのだが、それでも呼人の発達した筋肉は見事なものだと感じていた。
「負荷かけて腹筋とか背筋とか、後はスクワットと腕立てと……ああ、あと俺しか出来ないのって言ったらこれだな」
「これ?」
腕を湯から出して水平に保った呼人は、それを曲げるように砂藤に言う。
「俺は何もしないから、この腕曲げてみてもらえるか?」
「曲げるって、普通に?」
「普通に」
「良いけど……え? 堅くねえか?」
手のひらを上にした呼人の腕を軽く押して肘を曲げさせようとした砂藤だが、その反発が思ってた何倍も強力で戸惑う。
「俺のモンスターに変化するのって、体の一部だけってことも出来るんだ。だから今は、腕の裏の筋肉だけモンスターの筋肉に変化させて、腕曲げるだけで負荷がめちゃくちゃかかるようにしてる。これなら授業中とか学校でもずっと出来るし」
「すご、いな。天然のギプスってことか」
「ギプスがよくわからんけど。後は普通の筋トレのときもバーベルとか使うんじゃなくて、例えばスクワットだったら上半身だけでかいモンスターの状態に変身して、その重量を負荷にしてスクワットとかもしてる」
「おー……筋トレに便利な個性なんだな」
「まあ、否定はできない」
実際人間の体に負荷をかけるにはモンスター達の体を利用するというのが都合がいい。ただ、小さい頃にはそれで幾分苦労もした。例えば、モンスターの筋肉に変化させるだけで体が動かせなくなる、とか、変化させた筋肉を大きくしすぎて他の骨とか筋肉を圧迫してめちゃくちゃ痛くなる、とか。
後は変化させた骨の大きさを失敗して内側から皮膚を貫通されたこともある。痕になっている傷の一部はそれだ。
「そりゃ、そんな体にもなるか」
「砂藤もかなり鍛えられてるとは思うけどな」
「俺は筋力が個性に直結するからな。鍛えとかないと」
「増幅する元が大きいと出力が大きくなるってことだな」
「そういうこと。もっと鍛えねえとなあ」
2人でそんな話をしていると、呼人の怪我に興味を持った切島がざぶざぶと湯船の中を歩いてくる。
「おーい百竜! 改めて聞くけどお前なんでそんな怪我してんだよ」
「子供の頃からの訓練の痕だよ」
「だから、どんな訓練すればそうなるのか気になると思って。話したくないなら無理には聞かねえよ」
「別にそういうわけじゃない。ただ覚えてないのも多いし説明がめんどくさいと思って」
まあそういうことなら、いくつかだけ説明する、と呼人は自分のしてきた訓練について説明する。
「例えばここの森みたいなところを全力疾走したり、木の上を止まらずに飛び移ってく訓練はよくしてた。そういうときは大体、途中ですっ転んで木に衝突するか、木の枝に正面から入ってざっくりいくって感じの怪我が多かったな。後は山の険しい斜面での訓練だと、足滑らせて滑落したりとか、斜面そのまま転がり落ちたりとか。流れの早い海で泳ぐ訓練して波にもまれて岩とぶつかったりもした。熊とも戦ったし後は鹿のでかいやつとか猪に角とか牙でやられたこともあるし、鮫とも戦った。他は個性を制御できなくて自傷したぐらいか」
指折り説明していった呼人に、切島と砂藤はぽかんとした顔をする。
「無茶苦茶にも程があるんじゃねえか?」
「まあ、体を怪我した所でモンスターと怪我したところ入れ替えておけば動くのには支障はないし、良い医者も近くにいたからな」
「え、百竜怪我しても問題ないのか? 変化する個性でも怪我したら影響はあるだろ?」
「いや、なんていうんだろうな、モンスターの体をストックしていてそれを好きなときに入れ替えながら使える感じだ。モンスターの体も怪我したら回復には時間もエネルギーもいるけどな」
「え、じゃあ怪我してもすぐに動けなくなるとかはねえのか?」
「まあ、そうだな。簡単に言えば体を元気なのと怪我したの入れ替えながら動けるわけだから、流石に死んだことはないけど死んでなければストックが切れるまで無茶が出来る」
こう言うのはなんだが、どうあがいても死にようがないのだ。以前神王寺が縁があると言っていた人間に昏倒させる個性をかけてもらったときには、呼人が昏倒し意識を失った代わりに、モンスター達が俺の体を使って動いたのでそういった個性を受けても基本的に問題ないということが判明した。
その時には呼人の意識自体もモンスター達のところに引っ込むのではなく完全に意識が無くなった状態だった。モンスターが表に意識として出ている状態だと、そのモンスターが昏倒して代わりに呼人が戻ることが出来た。一応その人の個性は人間が対象のようだったが、呼人に宿ったモンスターも人間という判定になるようであった。
またその他にも神王寺の付添で外国のヴィランというかならず者と戦う羽目になったときには、電気系の個性を生身に受けて大怪我をしたこともある。当然意識は失ったわけだが、そのときにもモンスター達が勝手に体を入れ替えて、電撃に耐性のあるモンスターの体を使ってくれたことで大して問題なく、人間の体も時間経過で回復した。
呼人は、呼人であって呼人だけではない。言ってみれば、呼人とモンスター達の意識、肉体が全て一箇所に集約されており、そのうち1つだけが表層へと出ている状態にある。その中で表層に出る力が強いのが呼人であり、また元来体の所有者が呼人であったためにモンスター達は呼人にその権利を与えてくれているわけで。以前のモンスター達複数による乗っ取りの件も、そんな特性に起因する。
だから、ノーマン。人ではない何か。そう呼人は自分を捉えていた。
「男らしいぜ百竜!」
「ん、え、何が?」
「そんな傷だらけになっても頑張ってるとことが!」
「ありがとう。まあお前は、どう頑張っても傷だらけにはならないだろうけどな」
「おう! まあ俺もそうそう怪我はしないけどよ。でも昔はちょっと硬くなれるぐらいだったし、今は岩とかコンクリート砕いても痣が出来ないぐらいには固くなったけどオールマイトとかにぶん殴られたら砕けると思うぜ」
「オールマイト級のパワーにぶん殴られるってよっぽどだろ」
「俺が殴ってもヒビ入るぐらいで割れないもんな」
「まあな。でもホントはヒビすら止めたいぜ」
その後、他のクラスメイトも時々交えて話をしつつ夜はふけていった。
******
翌朝、3時には目を覚まして宿泊所の周りでランニングを終えた呼人が4時半ごろに大部屋に戻ってくると、ちょうどクラスメイトが起き始めていた。ヒーロー科の林間合宿は当然ながら甘くはなく、朝もとてつもなく早いのだ。
「おはよう百竜。なんでそんな汗かいてんの?」
「走り込みしてきた」
尾白にそう答えながら呼人は絞ったタオルで汗を拭う。クラスの中では尾白や爆豪が特に朝には強いようで、他のクラスメイトが眠そうにしている中普通に起きて布団を畳んだりしている。
「この環境で走り込みって……体力どうなってるんだよ」
「追い込んでおかないとすぐにへたるからな」
そんな言葉を交わしながら呼人も着替えを終え、布団を畳んだ他のクラスメイトと合流して朝食を取る。朝食を取ったらすぐに外に集合だ。
「今日から本格的に強化合宿開始だ。この合宿の目的は、全員を強化し『仮免』取得に足る力をつけること。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための用意だ。心して臨め」
というわけで、と相澤はいつぞやのボールを取り出して爆豪の方へと放る。
「こいつを投げてみろ。前回の入学直後の記録は705.2メートル。どれだけ伸びているか」
聞いた爆豪はニヤリと笑うと、少し離れた位置でボールを投げる体勢を取る。
「おお、成長してんのか!」
「入学してから色々濃かったからな。1キロぐらい飛ぶんじゃねえの?」
そして爆発。爆豪の手から放たれたボールは、あのときのように爆風に乗ってはるか彼方まで飛んでいく。『くたばれ!』というとても掛け声に思えないものが聞こえたのは気のせいだと思いたい。
「『709.6メートル』」
だが、相澤の示した数値は以前とほとんど変わらないものだった。
「え……? 3メートルぐらい?」
「思ったより、伸びてねえな」
「入学してから約三ヶ月間。君等は確かに成長している。だがそれは、あくまで技術、あるいは精神、思考面、そして体力面。“個性”そのものは、鍛えていないのだから当然、今見た通り成長していない」
―――だから、今日から伸ばすのは個性だ。
相澤の言葉に、生徒の数人がはっとした表情をする。
「死ぬほどキツいが、くれぐれも死なないように、な」
いつかのように怖い顔で笑う相澤に、生徒達の背筋には冷たいものが走った。
******
「つまり、手とか足の先に顔を生やしたり、あるいは手を複数、尻尾を手から生やす、その他器官でそれが出来るか、ってことですか」
「そういうことだ。それが完全に不可能なようなら他を考える。だが少しでも出来るようなら、それをマスターしておけ。ブレスを使うたびに顔を変化させるのは手間だろう」
「確かに……ありがとうございます。やってみます」
相澤は呼人が理解したのを確認すると、他の生徒を確認するために去っていった。
林間合宿の目的は、個性のさらなる成長。発動型の生徒はひたすら個性を酷使することで、例えば上鳴であれば馬鹿になる限度を引き上げる。あるいは轟であれば熱や冷気をもっと大出力で操れるようになるなど様々だ。
そしてその他の異形系、あるいは複合系の個性の場合は、その個性由来の器官や部位の強化。例えば尾白であれば尻尾、障子なら複腕の強化などである。
そして、ここでその複合系だろうと考えられている呼人の訓練は、『より自由にモンスターの体を引き出す』というもの。
これまで呼人がモンスター達の力を使い、制御しようとしてきたのは、あくまで『体の一部を変化させるようにして』というもの。
尻尾とて、呼人の考え方としては尾骨の発展型と捉えて変化させていた。当然皮膚や毛、鱗、甲殻は人間の肌や産毛の変化であるし、爪なども人間の数、すなわち5本のままか、あるいはモンスターの形状そのものに変化させる。特に鍛錬しているオドガロンにおいてはその大きさも自由だが、制御する練習をしていないモンスターはそこまで自由にはいかないものも多い。
また以前入試でつかった刃も爪を変化させた延長線上で、あれはオドガロンの爪の特殊な構造からなんとか発展させられたもの。他のモンスターでやるとしたら、刃は作れるにしても手の甲から生やして便利な武器のように扱えるかはわからない。
そんな、あくまで『モンスターと自分を入れ替える』と考えていた呼人にとってはそれは全く新しい提案だった。
「出来る、か。わからんな。けど……よく考えれば形状変化すらモンスターの力としてはおかしい。それなら―――」
やってやれないこともないはずだ、と呼人は頷く。こういうところに、モンスター達はあまり力を貸してくれない。というより、彼らも知らないのでどうしようもないらしい。自分たちの体で武器として扱う部位や発達した部位、あるいは体内の特殊な器官と内臓の配置については知っているものの、その程度である。そして、彼らが知っている体の部位の説明については呼人は全て知っていた。
だから、今からする訓練は呼人1人でやるしかない。
「けど、電気袋とか水袋なんかを体内で複製できるとすれば、相当便利だな」
特に大変なのが、体表に出ている組織ではなく内部器官である。特に人間には、属性を扱うための器官なんて備わっていないので、その時は腎臓や肝臓などとにかく肺と心臓以外の部位を変化させてなんとか短い時間だが使えるようにしていた。
だが、『無い器官を作る』ことが出来るなら、その問題が一挙に解決する。USJで吐血したような怪我もしなくてすむ可能性が高い。
それに以前クラスメイトにも説明したことがあるが、人間の手というのは動物の様々な形の四肢と比べて非常に自由に扱いやすい。一方で非力さもあるわけだが。
ただ、例えば斬竜なんかは尻尾を振り回すには体ごと振り回すしか出来ないわけで、例えばそれを腕につけてしまえばより自由に扱うことが出来るのだ。
「よし、じゃあやってみるか」
他のクラスメイトから少し離れた岩山の横手で、呼人もその実験を始める。まずは、尻尾を“腕”を変化させて出現させる実験。段階としては、その後尻尾以外も試して、今度は『なにもないところから生やす』ことも試してみたい。
意識を集中し、腕がオドガロンの尻尾に変換することを想像する。すると、普段の変化よりも遥かに遅いものではあるが、尻尾が普段のオドガロンの皮膚ではなく、独特の構造を持つその尻尾に変化した。
と、同時にその重量に耐えかねて呼人は前に向かって膝をついた。
確かに、肘から先はオドガロンのものに変化している。しかし。
「サイズが……これ等倍だな。昔を思い出す」
変化した肘から先は人間の身長よりも長く、そして太いオドガロンの尻尾そのものになっていて。とてもではないがバランスが取れない。そのアンバランスさに、呼人は初めてモンスター達に部分的に変化する練習をしたときを思い出した。その時も、突然巨大化した足によって視界が急に高くなったり、あるいは自分の手に押しつぶされそうになったり。そんなことを繰り返して、使えるようになった。その時を思い出せば、今はまた辿っているだけなのだ。
そして、一分近くかかってようやく手の延長としてようやく使える大きさの尻尾になった。この感じであれば、尻尾が特に強力なモンスター、例えば斬竜や毒怪鳥の尻尾を手から変化させると使い勝手が良さそうである。あるいは、尻尾も含めての三刀流なんて出来るのだろうか。
久方ぶりに、自分の個性の可能性を探ることに、呼人は楽しさを覚えていた。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない