竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第48話 宙を舞うは黒き翼

 翌朝。いつものごとく3時に目を覚ました呼人が宿泊所の周りを走り込みをしていると、宿泊所の入り口のあたりで相澤に声をかけられた。時刻は午前3時30分。恐らくあの後も話し合いは紛糾しただろうにいつ寝ているのだろうか、と疑問が浮かんだものの、相澤が自分の体調を管理できないはずもないと呼人はそれを口にしない。

 

「百竜、昨日の件だが」

「はい」

「他言無用だ。そもそもヴィランなのか迷い人なのかすらわかっていない。お前が警戒してくれているのはわかっているが」

「いえ、どのみち確定してないし言えるもんじゃないのはわかっていたので」

 

 呼人がそう言うと、その反応を予想していた相澤は話を続ける。

 

「それと、昼間は俺達が見える範囲に全員いるから良いが、今日の夜は肝試しがある」

「あーそうですね。確か。肝試しってなんですか?」

「度胸を試すために、脅かされたりしながら一定のルートを歩く、という、まあ催し物だ。その時は当然ながら、生徒だけになって森の中を歩くことになるし、脅かす側は予め森の中に潜む」

「なるほど」

「その時だけで良いから、昨晩の能力を使っておいてくれるか?」

「あ、それはもちろん。というか別に体力を使う話じゃないのでずっと展開したままです。角もしまってはいますけど感知の為にここに畳んでるだけなので」

 

 そう言って呼人は自分の頭の前側をコンコンと叩く。元の黒蝕竜の生態だが、角があるモンスターであるにも関わらず、普段は角を畳んでいるという不思議な生態を持つのだ。まあそもそも黒蝕竜の存在も生態も飛び抜けて異様なのであるが。

 

「そうか。悪いな。だがお前の話がほんとなら、この場にお前以上の感知要員はいない」

「はい。大丈夫です。もともとそういう時の為に鍛錬してきたので」

「携帯は持ってるか?」

「部屋に置いてます」

「なら持ってきてくれ。お前と連絡先を登録しておく。何か感じたらすぐに連絡してくれていい。日中ならすぐ来れる距離だけどな」

「わかりました。ちょっと待ってください」

 

 そう告げると、呼人は軽い足取りで宿泊所の中へと入って行った。その背中を見送った相澤は、小さく息を吐く。百竜がどこか他の生徒達と違うというのは普段の授業でも見ているし、ジ・アドベンチャーからの説明でもある程度はわかっている。ただ、それにしてもここまでやるものかという思いが強い。

 昨晩呼人が眠ったのは、早くても午前0時過ぎ。だが午前3時半現在にはもう起きて走り込みを、それも、尋常ならざるペースで、ランニングどころか全力疾走と言っても過言ではないような速度でずっと走っている。本当はもっと早く宿泊所の外には出てきていたものの、呼人の走りを見ていて声をかけそこねたのだ。残念ながら個人面談などはしていないし、2学期にならないとその予定も無い。

 

 やがて戻ってきた呼人とトークアプリの連絡先と電話番号を交換した後、相澤はなんとなしにそのことを尋ねてみた。

 

「強くなりたかったからですね。勿論戦いもですし、それこそただ戦うだけじゃなくて岸壁をよじ登って大海を泳いで渡って山脈を駆け抜けて。とにかく『出来るようになりたい』ってのが強いです」

「何故、そう感じたんだ? やはりモンスター達か?」

 

 原点を尋ねる相澤に、呼人は以前オールマイトにも返した答えを返す。

 

「俺の個性の元になってるモンスター達が普通に生きてた世界があるのは知ってると思うんですけど」

「ああ」

「その世界にも当然人間はいたわけで、その人間たちの中に、ハンターっていう、大自然を巡って生きていくっていう人たちがいたんです。その人達って薬草とかの採取もするんですけど、あの世界ってこっちみたいな科学技術とか個性がないかわりに、色んな特徴を持つモンスターの素材を利用するっていう発展をしてたらしくて。そのためのモンスターを狩るのを、そのハンター達がしてたわけなんですよ。それも化学兵器なんて無いんで、剣とか斧とかハンマーとか、そういう武器と身一つで」

 

 淡々と語る呼人だが、その口調にわずかに興奮が滲んでいる。

 

「素直に憧れました。正直、俺はこんな個性だからモンスターが相手でも戦えると思いますけど、一般的なレベルの個性だったら絶対戦おうと思わないです。多分。でも、それに個性なしで挑んで、それも少数とか、時には1人で勝つんですよ。俺もそんぐらい出来るんだって証明されてるし、ならその領域に到達したいなと思って」

「……そうか」

「まあ正直、憧れ先行というか、自分の中でハンターの存在がでかくなりすぎて追えば追うほど遠く感じる状態なのはわかってるんですけど。それでも、出来る限り強くなり続けたいと思ってます」

 

 そういう呼人の目は、ヒーローを目指すというクラスメイトの目よりも更に真っ直ぐで。彼が強さを追い求めているというのは正に真実なのだろう。そう、相澤は理解した。

 

「……わかっているとは思うが、強いだけじゃあヒーローにはなれない」

「はい」

「まあ、お前はそのあたりも優秀だが……あまり根を詰めすぎるなよ」

「気をつけます。まあ昼間は他のやつよりは体力は取られないことしてるので」

「ああ、そっちは順調そうだな」

「まだ出来るってことが実証出来たレベルですけど。でもどっちも、鍛え続ければ身に付けれそうです」

「……改めて言うが、根を詰めすぎないように。それと、周りをしっかり見渡せよ」

「ありがとうございます」

 

 頷く呼人を見て、相澤は僅かな休息のために宿泊所に戻る。外では再び呼人が走っている足音がかすかに響いていた。

 

 

******

 

 

 日中はいつもどおりの訓練を終え、夕食、そして肝試しの時間となる。

 

「というわけで先攻はB組。君たちA組は後攻、つまり脅かされる側ってことね。A組は2人一組で3分おきに出発して、ルートの真ん中の名前を書いた御札を持って帰ること。脅かす側は直接接触は禁止だけど個性を使って脅かしてくるからね」

 

 マンダレイの説明を受けてクラスメイトの中でくじ引きを行いペアが決まる。残念ながら補習組は肝試しの時間を削って補習のため、16人でペアを作って8組。呼人のペアは緑谷となった。。

 

「よろしく、百竜君!」

「よろしく、と言ってもいまいちどんなもんか理解してないけど」

  

「なんだよ百竜、お前実は怖いの駄目なのか!?」

 

 呼人が緑谷に肩をすくめて見せていると、緑谷目当てで近づいてきた峰田が声をかけてくる。

 

「駄目というか……全然こういう経験が無いからどうなのかわからん。暗闇とかは全然行けるんだけどな」

「そもそも百竜が個性で索敵してたら脅かされる前に大体気づけるんじゃあ……」

「な、それは駄目だろお前! 無しだ!」

 

 わかってるよ。流石につまらんくするような事はしないって、などと話しているうちにどんどんペアは進み、やがて5組目が出発していった。

 

「ここまで悲鳴が聞こえてくるって、結構怖いのかな……」

「すぐ近くって感じじゃないから、真ん中、それこそカードの直前か直後ぐらいに怖いの仕掛けてそうだよね」

「バッカお前ら、脅かされたらむしろ好機だろ!? そんなときことラッキースケベの―――」

 

 峰田がまた変態な発言をしようとしている最中。呼人の背中を悪寒が走った。

 呼人は凄まじい速度でポケットからスマホを取り出す。その動きを3人はぽかんとした様子で見ていた。

 3人を尻目に、呼人は“指示通り”相澤に電話をかけると相澤はツーコールで出た。

  

『どうした』

「急に人間の反応が、9個出現しました。多分ワープです」

『生徒との距離と位置関係は』

「多分接触してます。あ、今しました」

『くそっ、マンダレイにプランBですと伝えろ』

「了解です」

 

 呼人が電話を切ろうとした所で、すぐ近くからも悲鳴が上がる。見ると、ピクシーボブが地に伏せていた。そしてその直ぐ側には、2人の見知らぬ人物。ヴィランだ。

 

 全員が呆然とする中、呼人はマンダレイに叫ぶ。

 

「マンダレイ、相澤先生がプランBですと言ってます!」

「Bね!? わかった!」

 

 直後、クラスメイト全員の脳内に彼女の個性、テレパスの声が響く。

 

『ヒーロー科生徒全員へ! ヴィランの襲撃あり! 全員プロヒーローイレイザーヘッドとブラドキングの責任で戦闘を許可する! ただし積極的な交戦は避け宿泊所まで撤退しなさい!』

 

 そのテレパスはヴィランには届いていないようで、ヴィランの前では虎が問答をしているようであった。

 

 さてクラスメイトと一緒に逃げるかと考えた呼人だが、当然ながらそんな事は状況が許さない。まずこの場にいるクラスメイトの大半は、固まってしまっている。それに、ここにいるヴィランの数は2で、残りの7は全て肝試しをしている方から反応がある。そちら側にはB組の生徒もいて現状30近い生徒が森に散らばっている。数の上では勝っているが、ピクシーボブをたやすく制圧した以上相手はかなり気合の入ったヴィランであろう。4対1で制圧できるかどうか。

 というより。もう既に森の上を黒煙が多い始めていて、あまり良い状況では――。

 

 そこでまた携帯で相澤に連絡を取る。

 

「先生宿泊所の直前に反応が! 10人目です!」

 

 気づかないうちに現れていた10人目の反応がいつのまにか宿泊所の前に現れていた。何故か、反応が薄く感知はしていたのに気づくのが遅れてしまった。しかしその反応はすぐに消滅してしまう。

 

『ああブラド、片付いた。だが……個性で作られた人形だろう。俺は生徒達の救助に向かう。百竜、状況は!』

「ピクシーボブが昏倒、現在肝試し開始地点にヴィラン2名、生徒6名、マンダレイと虎―――今緑谷が跳び出していきました。多分洸汰の救出です。森の方はごちゃごちゃしてますが……恐らく以上のことが言えません。後多分森に火が放たれてます。あるいは火を使える個性」

『わかった。お前らはすぐに避難しろ』

「いえ、こういう状況こそ個性を使ってなんぼなので」

『ッ! おいひゃく――!』

 

 相澤とつながっている電話を切る。相澤の足では、間に合わない可能性が高い。それに、こういう使いたい時に使わずして何が力か。幸い交戦は一応は許可されている。

 

「尾白、ちょっと行ってくる」

「ちょ、行ってくるってどこに!?」

「森」

 

 短く返すと、オドガロンの健脚で走り始めた呼人はすぐに地を蹴る。その直後、腕が皮膜を持った翼へと変化し、羽ばたくうちに頭や銅の形状も流線型のものへと変わっていく。そのまま木々の間を突っ切ると、樹上へと跳び出した。おおよその場所は把握している。行ってみてヴィランなら殴り倒す、生徒なら回収する。そう決めた呼人は、エリアの上をまずは火事になっているエリアへと飛んだ。

 

 

******

 

 

 最初に到達したのは、つい先程出発したばかりの麗日、蛙吹のいる場所である。というより、樹上からの索敵しながらの移動が困難だったために結局地表に戻ったのだ。火が回っているあたりや、後は変な場所が2箇所ほど、何故か鱗粉が回っていないのが感知が届かなくなっている。というよりなんの影響が、エリア全体の鱗粉が揺らがされて状況がつかめなくなってしまった。2度ほど再度散布したが駄目である。その中で一瞬だけうまく感知できたのが、順路上にいる蛙吹と麗日と、“誰か”。

 

 だが、呼人が現着する直前に再度散布した鱗粉の中で、一人分の反応が離れていくのを感じる。

 2人の姿を確認すると、確かに蛙吹と麗日がいた。

 

「一応無事みたいだな」

「百竜ちゃん、どうしてここに?」

「救助。森に散らばっている生徒は30、それに対してヴィランが7、相澤先生がどう急いでも時間がかかる。歩けそうなら宿泊所を目指してくれ。多分ルート上にヴィランはいないは―――」

 

 その直後、反応を感じて呼人が振り返ると同時にその人物たちが声をかけてきた。

 

「麗日さん! と百竜くんとあ、梅雨ちゃんも!」

 

 障子の背中に背負われた緑谷である。木々の間から順路に出てきた彼らの隣には、轟とその背中に背負われた恐らくB組の生徒がいる。

 

 それを見て麗日が明らかにほっとした表情をして駆け寄り、蛙吹も駆け寄ろうとするが呼人がそれよりも早く行動を起こす。

 

「ひゃ、百竜くん!?」

 

 頭部を闇色に変化かせると、口から鱗粉の塊、もはや砲弾とも言えそうなものを吐き出した。それは直進すると、木の上に居た何者かを掠める。相手はその攻撃を躱して別の枝に飛び移り、トントンとかかとを杖で叩いた。。

 

「お前、ヴィランだな?」

 

 そう問いかける呼人に、男は洒落たつもりかシルクハットの縁を持って軽く帽子を持ち上げて話し始める。

 

「いやいや、君いい動きするね。両手が埋まってなかったら君も閉じ込めちゃいたかったよ。まあでも、()()()()()()()()()()()()()()、それで十分かな?」

 

 楽しげに言った仮面の男の言葉に、障子と緑谷の背中に悪寒が走る。慌てて周囲を見た2人は、今更ながらに爆豪がいなくなっていることに気づいた。

 

「かっちゃ――返せ!」

 

 緑谷の言葉に、飄々とした男は呼人から距離を取るように木の上にぴょんと跳び乗る。

 

「いやいや。彼はどう見てもそちら側の人間じゃないよ。むしろ完全にこっち側と言ってもいいぐらい――」

 

 言葉の途中で男は木の枝から枝へと飛び移る。轟が放った氷を避けたのだ。

 

「返せよ!」

「返せはおかしいだろ。彼は誰のものでもない。俺達は、価値観に道を選ばされてる哀れな少年に『もっと良い道があるよ』と、示したいだけだ」

 

 ひょうひょうと、いかにもらしい、けれどなんとも自分勝手な言葉を男は語る。

 

「後ろ2人だけって、こいつどういう個性だ……!」

「俺も閉じ込める、しかも手が空いてなかったってことは接触型の発動系だろう。下手に近づかない方が良さそうだな」

 

 呼人がそう返すと、轟が隣にいた麗日に背負っていた男子生徒を預けて踏み込む。今度は先程のような小手調べではない、大規模な氷壁で。けれど男はそれを避けた。

 更に、追撃として合わせた呼人の鱗粉の砲弾も躱してしまう。

 

「俺は逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ! まともに戦うつもりなんざこれっぽっちも無いのよ『開闢行動隊! 目標回収達成だ! これにて今日のお題おしまい!』」

 

 そう言うと、唖然とするクラスメイト達を尻目に木の上をかけて行方をくらます。

 

「だめだ! 逃がすな!」

 

 そう轟が声を上げた直後、全員がその後を追おうとする中、呼人だけがルートを外れた方向へと飛び上がった。

 

「百竜!?」

「そっちは任せる! 何人かぶっ倒れてるやつがいる! お前らなら追いつけるだろ!」

 

 そのまま返事を待たないまま、羽を広げた呼人は去っていってしまった。

 

 

******

 

 

 呼人がその場を離れた理由は単純で、それまで通らなかった鱗粉による索敵が通るようになったからだ。そしてその中に、先刻と全く位置が変わっていない反応を数名分見つけてしまった。動かない、ということは。

 

 ヴィランであれば潜伏しているだけですむのだが、それが生徒だった場合、大怪我をしているか、あるいは―――最悪の事態もありえる。だが、最悪を防げる可能性もある。だから呼人は、これまで使ってこなかった翼を使っている。しばらく飛んでたどり着いたそこには、口元を抑えてうずくまる青山と、ガスマスクをして倒れる耳郎と葉隠がいた。

 

「青山!」

「き、君は、僕は、何も――」

 

 いつものカッコつけの無い、動揺した様子の青山の肩を呼人は強く叩く。

 

「よく守った」

 

 ただ一言。その言葉を力強くぶつけると、2人の容態を見る。が、特別な器具があるわけではない。そこで手を銀色のものに変化させると、そこから塵のようなものを大量に放出して2人の様子を探る。幸い2人とも今すぐ命がどうこうというレベルのやられ方ではないようだ。

 

「青山、2人を宿泊所まで運んでくれ!」

「あ、うん……、わかったよ――」

「よし。頼む」

 

 もう一度肩を強く叩き、呼人は再び宙に舞い上がる。寄り道をしてしまったせいで、緑谷達の反応が他多数の反応に合流してしまっていた。

 

 このとき呼人は、2人の『生命力』だけを見ていた。だが、人間は『ガス』の影響を受けると、そのときは生命力万端のように見えても、その後一気に悪化する可能性がある。そこまで考慮に入っていなかったための、判断ミスだ。自分には通用しないという考えが、呼人の判断を誤らせていた。

 

 

******

 

 

 一方その頃の緑谷達、爆豪、そして後から判明したが常闇の救出を目指す組は、ヴィランに敵の方が一枚上手であることを見せつけられていた。

 

 Mr.コンプレスが見せつけるようにしていた2つの玉。それを障子がポケットからくすねたように見えたが、それはコンプレスのフェイクで、完全に騙された形になってしまう。そして自慢するようにコンプレスが慇懃無礼な一礼をワープゲートの中からした瞬間、その顔面を何かが遅い、仮面を大きく弾き飛ばした。

 結果、コンプレスが見せびらかすようにベロに載せてみせた2人を閉じ込めた何かが飛び出す。

 

 それに飛びついたのはそれぞれ障子と轟で。だが障子の手は2つのうち1つを掴んだものの、轟はすんでの所でヴィランのリーダーらしき1人にさらわれてしまう。

 

「確認だ、“解除”しろ」

「なんっだよ今の……水? 俺のショウが台無しじゃねえか!」

 

 そう言ったコンプレスが指をならすと、障子が掴んでいた玉から常闇が、そしてヴィランに奪われた玉からは爆豪が、それぞれ玉が弾けるようにして出現する。

 

「かっちゃん!!」

「来んな―――デク」

 

 連れ去られようとする爆豪と緑谷が言葉を交わした直後、ワープゲートが爆豪を飲み込み、閉じようとした。そしてその瞬間。後方から高速で飛来した何かが爆豪を押しのけるようにしてゲートの中に飛び込んでいき、ゲートは消滅する。

 

 後に残されたのは絶望に表情を染めた少年達だけだった。

 

 

******

 

 

 ワープゲートを通過し飛び出した呼人は、その勢いのまま壁に着地すると室内に向かって『睡眠属性の』ガスを吐き出した。

 

 耳郎と葉隠の容態の確認で時間を取られ、救出に間に合わないと思った呼人は、射角が取れる高度から高圧縮した水ブレスによって自慢気に持ってるものを見せびらかした自称エンターテイナーを狙撃し、更に爆豪を見せびらかすことで出来た隙間に飛び込んだのだ。

 

 結果。さして広くない室内には睡眠属性のガスが充満。耐性もガスマスクも無いヴィランたちはほとんどがダウンする。

 だが、効かないものもいた。

 

「脳無、かこいつは」

 

 あー、と、半開きの口から無意味な音を垂れ流している、奇怪な腕の組み合わせをした男。通常の腕だけでなく背中から複数の腕が生えており、更にそれぞれにドリルやチェーンソーと言った危険な器具がめり込むように生えている。

 

 睡眠が効かないなら麻痺入れるかと体を変化させた呼人だが、どうもその脳無は呼人の方を注目する気配が無い。なんというか、完全に眼中にないと言うかあるいは興味がない。そんな様子だ。

 

 ひとまず自分から手を出すのをやめた呼人は、部屋の中を見回し、外につながっていそうなドアが本当に外につながっているかと確認する。と、たしかに外につながっているようでアパートなどの外側についている階段が目に入った。

 

「よし。逃げられるな」

 

 ヴィラン達を全員締め上げたい呼人だが、そんなことをしていると下手すると逃げるチャンスを失う可能性がある。特に爆豪、常闇を閉じ込めていたやつは、どういう個性かわからない以上戦うべきではない。そして、負傷、あるいは殺すことは流石に許可されていない。

 

 また先程から、鱗粉を使っていたせいでしばらく使っていなかった鼻と耳に訴えかけてくる負傷者の存在がある。ヴィラン達ではない。隣の部屋に入ると、一人の人間が病院にあるような寝台の上に寝かされていた。

 

「確か、ラグドール、だったか」

 

 緑の髪に、片方取れてしまっているが猫のような手袋。そして頭の装置。2日ほどだが、世話になった一人である。何故かここにいる彼女は、見るからに傷が深い血だらけの状態だった。わずかに治療の跡があるのは、ヴィランの誰かが利用価値を見出してさらっていたためか。いずれにしろ、彼女も搬送しないと命に関わる可能性がある。

 

 それを見た時点で呼人の方針は決まった。室内の包帯を手にして元の部屋に戻ると、ヴィラン同様昏倒している爆豪を背負って手早く背中にくくりつける。そしてもう一度隣の部屋に行き、ラグドールをいわゆるお姫様抱っこ状態にする。ガスが隣室にも回ったようでラグドールも深い眠りについている。

 

 そして2人を背負ってアパートの外へと脱出した。

 

 こうして、ヴィラン達に勝利の女神が微笑んだかに見えた林間合宿襲撃事件は、双方痛み分けという結果に終わった。




なんかストーリーに合わせたらド派手な戦闘シーンにならなかったですね……残念。
というか基本呼人が強すぎてガチらせるってのが困難です。モンスターが本気で戦う小説はまた別で考えてみることにします(死力を尽くして、っていう状態が少ないって意味で戦闘シーンはあります)

ちなみに気づいた方は少ないと思いますが、呼人が飛び出した場面、力を使ったのはゴア・マガラではなくレイギエナです。読み返してみて自分がその想定で描写したのを思い出しました。レイギエナめっちゃ好きなんですよね。鳴き声とかフォルムとか。ワールドで武器がずっと弱かったのは今でも恨んでます。



モンハン×ヒロアカ小説がたくさん出てきてるのってすごく良いですよね、と思うと同時に差別化とか難しいなと思うこの頃。普通に書くと結局はそれぞれのオリジナルキャラクター(主人公とかモンスターの力を持つ連中)が普通に学校に行って成長する感じになるんですよね。なので自分はなるべくオリジナルの方向に走っていけたらなと思っています。

ヒロアカ二次創作の最初の難関って主人公がオール・フォー・ワンに抗しうるかだと思うんですよね。そこの力関係でどれぐらいオリジナルに持っていけるか、結局オール・フォー・ワン対ワン・フォー・オールの対決に話が収束してしまうかだと思ってます。

え、本作?

まあそりゃあもう……凄いことになりますよ。ええ。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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