竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第49話 逃避行

「しっかし、知らない街はどんな自然より魔境だな」

 

 なんとか爆豪とラグドールを救出することが出来たわけだが、この男、思い切り迷子になっていた。なんとか大通りに出ることは出来たのだが、ラグドールは裸だったので布を巻いてしまって顔も髪もほとんど見えない謎の塊と化しているせいで、時折通り過ぎていく車ですら止まってくれない。そもそも現代の人間は困っていそうな人間がいたからといってそうそう止まってくれはしないしそもそも車から見ただけで困っているかなどわかりようも無いのだが。

 

 結局、少し酔った中年男性に道を聞き、病院と警察署の場所が判明するまで30分ほどさまようことになってしまった。

 

 病院にたどり着いた呼人を見て、事務員の女性は怪訝そうに表情をひそめる。

 

「すいません、ちょっと手伝ってもらえませんか。布の中に怪我人がいます。一応こっちの男の方は大丈夫なので」

 

 そう声をかけると、一応手を貸そうかと近づいてきた事務員は、本当に布の中に人間が包まれていたことにぎょっとし、更にその女性が全裸であることにぎょっとした表情を見せる。

 

「彼女の治療お願いします。治療費は絶対お払いします。後何でも良いので電話貸してもらえますか」

「わ、わかりました。あ、こっちこっち!」

 

 ぎょっとしていた事務員たちだが、医師に連絡してストレッチャーを用意してくれていたようでその上に布ごとラグドールを横たえる。

 

「そっちの少年は?」

「こっちは寝てるだけです。椅子借ります」

 

 爆豪の方は、怪我をしている様子は無かったので待合室の長椅子の上に寝かせておく。ここに来るまでも時間がかかったが、このガスを受けた場合大きな刺激がなければ1時間以上寝続ける。もっと強力にすると意識に障害が残る可能性が高いため強力には出来なかったので、恐らく爆豪もしばらくすれば目をさますはずであるが、それでもまだ起きはしない。この場合の大きな刺激とは骨折とか切り傷とか、それなりに痛い状態を指すので無理やり起こすことも出来ない。

 

 そのため、その間に連絡を取っておこうと呼人は事務室の電話を借りれるように頼み込む。

 

「すいません、電話借りれますか」

「あ、はい、何かわけがありそうなのでどうぞ。携帯で良いですか?」

「大丈夫です、ありがとうございます」

 

 呼人は受付に置いてある電話を借りれるかと思ったのだが、親切な事務員の一人が携帯を貸してくれた。更に紙コップに水を注いだものまで用意してくれた。礼を言ってからそれを飲み干し、暗記していた雄英の番号を打ち込んで電話をかける。相澤にかけなかったのは、現在避難や生徒の救助で忙しいであろう彼が知らない番号からの連絡に出るとは思えなかったからだ。ちなみに実際は知らない相手から電話がかかってくること自体が彼にとってはありえないので、電話には出てくれるのだが。

 

 しかし、流石に雄英も夜なせいか電話には出なかった。スマホを森に紛失してきたのが惜しまれるが、愚痴は言っていられない。

 

(となると……そうか、こういうときは確か警察に頼れば良いのか)

 

 どうしたものかと思案していた呼人は、神王寺の適当な言葉を思い出す。『困った時は警察に電話しとけ』なんて、困ったとき常に使えるわけでもないだろうに。だが、今はその言葉がありがたかった。

 

『お電話ありがとうございます。こちら警察です。事故ですか、事件ですか?』

「俺は雄英高校の学生です。今多分事件になっていると思うんですが、そこで行方不明になってる生徒です。ヴィランの個性で転移させられたところを脱出して今病院に身を寄せています。高校への連絡手段が無いのと、こういう時は警察に連絡しろと言われたので連絡しました」

『何県のなんという病院でしょうか』

 

 そう尋ねられた呼人は、自分がとんちんかんなことを言っていたと理解する。病院とは、施設の名前だ。それこそ、学校、とかそういうレベルの大きな区分である。学校、と言っても場所はわからない。雄英高校とちゃんと名前を言わなければいけないのだ。

 

「すいません、ここ何県のなんて病院ですか!」

「あ、えっと〇〇県〇〇市の△△病院です!」

「ありがとうございます!」

 

 業務に戻っていた事務員さんに尋ねて、それを再度警察に伝える。

 

『わかりました。すぐに警察官が向かいます。現在危険はありますか?』

「いや、危険は無いです。病院にいるので」

『ヴィランから逃げたと聞いていますが、追われていたりはしませんか?』

「大丈夫です」

『わかりました。他にどなたかいらっしゃますか?』

「プロヒーローが一人怪我をしていて今治療中です。後生徒がもう一人、眠っているので意識はないです。怪我はしてません」

『わかりました。すぐに伺いますので、落ち着いてお待ち下さい』

「ありがとうございます」

『では失礼します』

「あ、失礼しました」

 

 ペコリと、呼人は見えない相手に頭を下げる。敬語を使う練習はしているが、こんな風に相手に使われるというのは初めてである。何か酷くむずがゆい気がした。

 

「すいません、携帯ありがとうございました」

 

 ひとまずの連絡を終えた呼人は、携帯を返しに事務員のところに行った。

 

「連絡がついて良かったですね。何があったんですか?」

「あー、ヴィランの攻撃でワープさせられちゃって、気がついたらここにいたんですよ。なのでどうしようもなくて」

「そうだったんですね」

 

 椅子は自由に使ってください、と言う事務員にペコリと頭を下げて、呼人はそこに座り込む。ヴィランが隙を見せてくれたのは幸運としか言いようが無い。だが行動を鑑みるに、彼らは壊しに来たのではなくあえてそういう風に見せつけるように行動していたようにも思う。でなければ死者も出ていたのでは無いだろうか。つまり彼らの信条故に隙が出来たのであって、幸運だけとは言えない可能性もある。

 

「ワープ……ワープか。そればっかりはな」

 

 何が厄介と言って、あのワープという個性だ。それ以外の個性は、正直戦うのであれば遠距離から殺せる。Mr.コンプレスを狙撃した攻撃は高圧縮した水を細く吐き出しただけだが、本気で吐き出せば、人間の大きさでは困難だが半獣状態であれば石すら切断するような水圧を出すことが出来る。人間の首などころりと落ちる。

 

 そもそもが、森という場もやりづらい場であったのは確かだ。着火を避けるという発想が働いてしまった。実際呼人はこうして飛ばされているので消火は出来なかったわけではあるが、それでも『つけた分全部消す』という覚悟をした上で火を使うことも出来たはずだ。その時は相手を殺していた可能性もあるが……。

 

 とにかく何につけても、殺さないというのが足かせとなる。遠距離に届く攻撃は当然威力が上がるし、速度が高い攻撃もまたしかりだ。他にも足を止めるためには体の一部だけ骨折させたり気絶させることが必要となるが、基本的には『速さ=重さ』の関係が成り立つ。相手に捉えられない速度で制圧しようとすると、殺す可能性が高い。

 これはモンスター達の力というより、やはり呼人自身の技術が原因だ。寸止めという概念がこれまでは無かった。常に殺す気でモンスター達と戦闘を行ってきた。だからそれに慣れていない。そして慣れというのはそうそう覆されるものでもない。

 

『――――――』

「いや、お前たちは悪くないんだけどな。まあラージャンあたりは荒っぽすぎるからそれもどうかとは思うけど」

『――――――』

「ああ。また今度付き合ってくれ」

 

「あの圧縮、玉に閉じ込める個性か? よく分からないが……ああいう個性もあるんだな」

 

 そして、Mr.コンプレスの個性。改めて個性とは、モンスター達ともまた違う、文字通りの超常の力なのだと再確認した。何でもあり得るのだ。あるいは、目を合わせただけで、見ただけで人を殺してしまうような個性が存在する可能性すらある。昏倒、麻痺あたりならば対応出来ると思うが、即死と閉じ込めはどうか。即死に関しては完全に人間の体が消されたとき俺がどうなるのかがわからない。閉じ込めは、内部からぶち破れるかが謎だ。

 

 ひたすらに呼人は考えを巡らせる。より強くなるために。次会った時に殲滅する為に。自分では自覚していないが、このとき呼人は怒っていた。友人を傷つけられたことに。そして上手く対応しきれなかった自分に。

 

 

******

 

 

 少し座ったまま待っていると、病院の入口が空いて警察官が3名走り込んできた。それを見て呼人が立ち上がると、足早で近づいて来る。

 

「君が、通報した少年か?」

「そうです」

「名前と所属を改めて教えてくれますか?」

「雄英高校ヒーロー科1年A組百竜呼人です」

 

 呼人が答えると、警察はそれをメモに取ってから呼人の方を向き直る。

 

「ありがとうございます。とりあえず……学生証なんかは無いね。一旦署まで来てもらいます。保護も兼ねてですので、ついてきてください」

「ありがとうございます。後プロヒーローが一人負傷して今治療を受けてます」

「そ、っか。そう来たか。待兼、容態確認してきて。とりあえず俺と迅影はこの2人を一旦署まで連れて行くから。そっちも行けそうなら来てもらおう」

「ラジャっす」

 

 2人の警官のうち若い方がぴしっと敬礼をして走っていった。

 

「そっちの子、起こしてもらえるかな?」

「あ、えっと個性で眠ってるので」

「個性? 大丈夫なのか?」

「大丈夫です寝てるだけです」

 

 そんな話をしていると、ラグドールの容態を確認しに行った待兼が戻ってくる。

 

「東城さん、まだ目を覚まさないそうで今手術中らしいです」

「わかった。迅影、先にクルマまで連れて行っとけ」

「ラジャっす」

「お前は詳しい容態を聞けるようにここにいろ。状況が変わったらすぐに俺に報告。それと――」

 

 警察官達が短く打ち合わせを済ませる中、爆豪を再び背負った呼人は警官の一人に案内されてパトカーまで連れて行かれた。パトカーは2台で来ていたようで、そのうち一台の後部座席に乗り込む。そこで呼人は、伝えそこねていたことを思い出して警官に伝える。

 

「電話で『転移させられた』って言ったんですけど、そこ建物の中で他のヴィランも転移してきてました。病院までかなり迷ったので徒歩20分ぐらいの距離で南南西の方角ってことぐらいしかわからないんですけど」

「建物の特徴は? 外に出たなら見てませんか?」

「紙と鉛筆を貰えれば絵を描けます。ちょっと言葉でなんといえば良い建物なのかわかりません。奇妙な建物だったとかじゃなくて自分の語彙力の問題です」

 

 呼人がそう伝えると、若い警官は少し頷いた後無線でどこかに連絡を取る。それを聞いたのは3人の警官の年長者である最初に話していた人物で、急いだ様子でパトカーに飛び乗ってきた。

 

「詳しい話は署で聞きます。疲れてるでしょうが、もう少しお付き合いください」

「大丈夫です。割と元気なので」

「ありがとうございます」

 

 そう短く話した後、年長の警官は今度は別のところへと連絡する。途切れ途切れにしか聞こえ無かったが、『捜査』『本部』『動く用意』という言葉が聞こえた。おそらくは、呼人が言った場所が見つかればすぐにそこに踏み込む用意を固めろと話を通しているのだろう。

 

 

******

 

 

「……あ?」

 

 警察署につき、呼人が爆豪をパトカーから降ろそうとしたところで爆豪が目を覚ました。

 

「あ、起きたか」

「何だ? お前……なんでいる? ここはどこだ」

「警察署。〇〇県〇〇市ってとこ」

「は? 警察? クソヴィランどもはどーした」

「俺がお前を連れて逃げて、今は警察に保護してもらった」

 

 腑に落ちない様子の爆豪に取り敢えず立ってもらって、呼人は警官の若い方に彼のことを任し年長の警官についていく。

 

「百竜君は、こういうのに慣れているのか? 随分と聞き分けが良いように思うが」

「いえ、慣れているわけではないですが……ただ恐らくこういう流れになるだろうなという予想があったのと、話を聞いておけば困ったことにはならないだろうと思っているので」

「なるほど。助かるよ。ああ、それと一応本人確認の為に2人とも後で写真を取らせてもらいたい。恐らく雄英も襲撃の件で忙しくてすぐに人を送ってこれるかわからないから」

「了解です」

 

 一室に案内された呼人は、そこでペンと紙を手渡されて紙にサラサラと自分が脱出した建物の外形を描く。ちらっと見ただけだが、それほど特徴のある建物にも見えなかった。普通の、マンションではなくアパートというのだろうか。改めて絵にしてもそのように思える。

 

「ふむ……ありがとう。捜査への協力感謝します」

「いえ。あ、あのお願いがあるんですけど」

「何か?」

「雄英の迎えが明日朝までに来れなかった場合なんですけど、俺個性の都合上食事を大量に取らないとエネルギー不足で倒れるので朝食とか大量に用意してもらえませんか?」

 

 呼人がそうお願いすると、警官はサラサラとメモにそれを書きつける。

 

「わかった。担当のものに回しておく。私はこれから出るので来れないだろうが……せっかく逃げてきた被害者が、警察署内で倒れたとあっては笑い事ではすまないからね」

「俺もそれは避けたいです」

「では最後に写真を」

 

 そう言って、座っている状態で良いと正面から、そして色々な方向から写真を撮られた。その後呼びに来るまでここで待っていて欲しいと言われて座っていると、ほんの数分で呼びにやってくる。

 

「おまたせ百竜君。取り敢えずうちには仮眠室ぐらいしか無いけど、そこに案内するからついてきて」

「ありがとうございます。爆豪って暴れてたりします?」

「いや、そんなことは無いけど。何故だい?」

「いえ、なんとなく暴れるかなって気がしてたので」

 

 意外と、本当に普段の言動からは考えられないのだが、爆豪は冷静な男である。いや、冷静と言うのとは違うのだが、状況はしっかり見えている、というべきか。突っ走りもするし、他のクラスメイトが予想もしないような言動もする。ただそれは無鉄砲なのではなく、見えた上で無視しているだけのことなのだ。そして現在いる場所はれっきとした警察署であり、流石にここで暴れるのは違うとわかっているのだろう。

 

 案内された呼人を置いて、何か飲み物買ってくるから、と警官は去っていく。そして室内には、呼人と爆豪だけが残された。

 

「……状況を説明しやがれ」

「あいよ」

 

 いつになく不機嫌そうな爆豪に、呼人は簡潔に状況を説明する。ゲートが閉じる寸前に自分も飛び込んで、突入直後にヴィランを全部眠らし、爆豪とラグドールを担いで逃げたこと。

 

「……来んなつったろうが」

「……悪い、遠距離から高速で飛び込んだから直前の会話とか一切聞こえてない」

「……クソが。眠らせるってなんだ。全員叩きのめしたっつーことか」

「いや、睡眠ガスで眠らせた。お前もそれに巻き込んだせいで今まで眠ってたんだけどな」

 

 呼人の答えに、爆豪は怪訝そうな表情をする。

 

「睡眠ガス? んなもん持ってたのか?」

「いや、個性で」

「てめーの個性は赤いのと黒いのだろうが」

「俺の個性は、『モンスターの体を操る』だからな。それが2種類だけなんて言ってないし、当然3種類だけでもねえよ」

「……んだその個性は。あるなら普段から使えや」

 

 舐めプ野郎より舐めプかお前は、と爆豪は吐き出す。

 

「確かに使いわければ便利だけどな」

 

 そう言って呼人は、右手の人差指だけを伸ばし、それを変質させる。その瞬間、爆豪は押しつぶすようなプレッシャーを感じた。プレッシャーというよりは、あるいは存在感とも呼べる。何かやばい。百竜の指から放たれているだろうそれが、室内を覆い尽くしているかのような錯覚を覚える。

 

 それを元に戻した呼人は静かに話始める。

 

「こういうモンスターにも俺はなれる。今は指先だけ変化しただけなんだけどな。基本的に、個性を全部外に出そうとは思ってない。適度にヒーローになれればそれで十分だと俺は思ってる」

 

 例えば、モンスター達の力を全て使えば全員が救えていたとか。そうすれば犠牲を減らせていたとか。そこまでヒーローというものに熱意はなく、人を救うということにやる気はない。むしろそういう意味で言えば、今日の方が、本気を出していたように思う。

 

「舐めプだと言うなら結構だが、俺は自分で決めた力の中でヒーローになる。それ以外の力は自分が使うと決めた時にしか使わない」

「……はっ。勝手にしやがれ」

「勝手にするさ」

 

 不機嫌そうな爆豪は、壁にもたれて目を閉じる。仮眠室で休んでいていいとはいえ、出来る事はほとんどない。スマホも森に捨ててきたし、手元には本も無い。こういうときこそモンスター達との訓練をしておこうと、呼人は深く自分の思考の中に沈んでいった。




警察って実際どんな応対するんですかね。そういうニュースとかドラマとかすら見ないもので……

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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