竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
その晩、事件は起き、そして夜が明ける前に終わった。そして1つの時代も終わり、新しい時代が訪れる。
『――――――』
『ありがとう。それも候補にあげとく』
『――――――』
『いや、それは無い。そっちは違う。そもそも、何故ここまですがらないといけなくなったかの方が―――』
『――――――』
『……なるほど。確かにその可能性はあるか。社会が大きすぎるから―――』
『――――――』
『その可能性もあるから断言は出来ないな』
『――――――』
『――――――』
『――――――』
『ありがとうみんな』
茫洋と、救助活動の行われている映像をスマホで見ながらモンスター達との思索にふけっていた呼人の肩が軽く叩かれた。神王寺だ。
「どうした珍しいな。飯を食いかけなんて」
「……考え事してた」
「そうか。ま相当にでかい事件だったからな。そりゃ仕方ねえよ」
「神王寺は、呼ばれなかったのか?」
「俺は裏方だからな。それに俺の本当の個性なんて知ってんのは公安の一部の人間と外国の裏社会のやつらぐらいだ。呼ばれることはまずねえよ」
「そうか」
そう答えた呼人が相変わらず茫洋とした瞳のまま考え事にふけっているので、神王寺は呼人の目の前から唐揚げを一欠取ろうとする。と、その瞬間呼人が勢いよく顔を上げたので神王寺はビクリと肩を揺らした。
「神王寺」
「唐揚げの一欠ぐらい良いだろ」
「ああ、いや、それは
食事をどうでも良いと言い切り、凪いだ目で自分を見つめる呼人に神王寺も表情を引き締める。
「会うのはわけはねえが、力を借りたいなら相応の時間がかかる。まずは聞きたいことを伝えて見る時間を空けねえと。見るってのはそんな簡単なことじゃないんだぜ」
「わかった。すぐに紙に出力して渡す」
「んなにあるのかよ」
「ああ」
そう言って呼人は、今度こそスマホをスリープモードにして机に置き、食事を再開した。
「心境の変化、ってとこか?」
「気になることが出来たぐらいだがな。今すぐぶっ壊したいとかそういう話じゃない」
そう。今すぐ、という話ではない。ただ―――そう。
多分自分はヒーローにはならないのだろうな、というぐらいの心づもりは、出来ていた。
******
あの事件。オールマイトを始めとするプロヒーロー達がヴィランの拠点を襲撃し、そこからヴィランの親玉らしき人物との戦闘によってオールマイトの現状が明るみに出た事件、通称“神野事件”から一週間ほど。
呼人と神王寺のすんでいるアパートには、相澤とオールマイトが訪問していた。ヴィランによる相次ぐ襲撃に対抗するための寮制移行に関する説明のための家庭訪問である。
型通りの挨拶、というほどの挨拶も無く、2人を部屋に招き入れる。
そして寮制に関する細かい説明を受けた神王寺は一言。
「特に異論は無いですよ。そもそも俺がこいつの保護者になってんのは法手続き上の問題だけなんで」
「ありがとうございます。信頼に応えられるように努めていきます」
そう相澤が丁寧に頭を下げる横で、オールマイトはニコニコと笑っている。実は神王寺とオールマイト、友人というほどではないが、まだ神王寺が呼人を拾う以前、日本でヒーロー兼研究者をしていた頃に縁があるのだ。
「にしても、オールマイトはそんなことになっても変わらんな」
「そういう君こそ、年の割には若いよほんとに」
「個性の都合上、老いるのが止まってるみたいでな」
「……オールマイト、お知り合いですか?」
その2人の会話に、相澤が思わず尋ねた。そんな話は聞いていない。
「本当に知り合い程度だよ。共にヒーローとして活動したものとしてね。もっとも彼は表に出てこなかったし、研究者としての成果の方が大きかったと思うけど」
「まあ、あんま公に個性を使いたくも無かったんでね」
「今もそんな感じかい?」
オールマイトに尋ねられて神王寺はかぶりを振る。
「今は研究もあの頃ほど熱心ではないね。まあ各地から声がかかったら行ったりするぐらいで。ヒーローの方はぼちぼち、むちゃしすぎないようにしてる」
そう答えた神王寺に、オールマイトは表情から笑顔を消して真剣な口調で尋ねる。
「まだ個性を使うのは、嫌かい?」
何のことだと相澤がオールマイトの方をちらりと見るが、オールマイトはじっと神王寺の方をじっと見てる。
「そーだな。一般人に使うのは、嫌だな。今は公安の一部の部署から依頼されて、ヒーロー専門で治してる。もっともよっぽど優秀なヒーロー相手でなおかつ再起不能レベルの大怪我をしてるときぐらいだけどな」
「一般人にも使わないのは、と聞くのは野暮かな。確かあのときも聞いた気がするね」
「流石に便利なもの扱いされるのはきついわ。それにヒーローを選りすぐりしてんのも、ここで終わるのはもったいないと思える相手にだけしか使わないってつもりなだけだ。傷や死を忘れるのは、絶対にやっちゃいけねえことなんだよ」
「……変わらないな、君も」
「あんたもな」
2人だけで、呼人と相澤がついていけない会話をする2人。十年以上前に、ともにヒーローとして生きた2人だけの会話。
「失礼ながら、ジ・アドベンチャーの個性はなんでしょうか。気になって調べたのですがどうもはっきりとしませんでした」
相澤が神王寺に尋ね、オールマイトが神王寺の方をちらりと見る。神王寺はご自由にと言いたげな表情で肩をすくめた。それを見たオールマイトは、自分に説明して良いと言っているのだと判断して説明する。
「彼の個性は、のこぎりや斧など、サバイバル用の道具を体から作り出したり、体をそれに変形させる個性、
「どういうことです?」
「彼の個性は『サバイバル』と名付けられてるんだけど、実は公表されてた個性の他にもう一つの能力があるんだ」
そこまで言って、神王寺が口を挟んでくるかとオールマイトはためを作るが、神王寺は口を閉じたままである。
「その能力の名前は『適応再生』。自分についた傷とその原因に適応してすぐに再生し、そして血を媒介にして人にもその能力を与える。もっとも人に使う時には効果は一度きりだしデメリットもあるようだけどね」
サバイバルと言って、これほど『生き残る』ための個性も無いよ、とオールマイトは続ける。
「それは……デメリットとは?」
そこで初めて神王寺が口を開く。
「個性の成長限界の引き下げと、老衰寿命の減少。老衰が若干早まるのと、個性がそれ以上成長しなくなる、ってとこだ」
「彼は、その個性のせいで一時期は事情を知るヒーロー全員に自分のところに来て欲しいと声をかけられていたんだよ」
「怪我の治療、ですか。どれぐらいの怪我が対象ですか?」
「『どんな怪我、病気でも』だったよね?」
オールマイトに尋ねられて、神王寺は首を横にふる。
「駄目なときがあったのかい?」
どんな怪我人でも、助けようと思えば助けることが出来る。それが神王寺が引く手あまただった理由。
神王寺は、オールマイトの言葉に再度首を振った。
「……死者も、だ」
「え……?」
神王寺の言葉に、オールマイトと相澤、そしてそこまでは聞いていなかった呼人も目を剥く。
死者を治す? そんな禁忌に両手を突っ込んだような能力があるのか、と。
「以前外国の災害救助やってるときに、明らかに事切れてる人間に使ったことがある。つっても胸から下がすり潰されて無くなってたが。ばっちり生き返ったぜ。そんかわり60ぐらいの爺さんだったせいか5年後に老衰で死んだっつう連絡が来たがな」
もともとは、そばに倒れていたもうひとりの大怪我を負った人間に使うつもりだった血が、斧で手首から先を落として血を流そうとした時に飛び散り、その明らかに死んでいた人間にかかった。結果、両名とも復活した。使おうと意識しなければ効果は発揮されないが、その時は別の怪我人を見ていたため『治そう』と意識して流した血が死者にもかかることになった。
「死後は聞いたところによると恐らく3時間ぐらい。それで老衰寿命は最低15年か? それぐらい持ってかれてるってのはわかった。その後は流石にそんなことが二度と無いように最新の注意を払ってたが」
「それは……私も素直に喜べないね」
「だから、みだりに使わねえって決めてるし、特に日本で使う時は必ず他言無用の誓約書も書かせてる。そんなことが出来るってわかったら、世界中のやつが押し寄せてくるだろうしな。あれだ、雄英の飯田って子も知ってるが、そんな話は一度もしてねえだろ?」
「飯田が? いえ、話してないと思いますが……どういう縁が?」
「インゲニウムが怪我のせいで再起不能らしかったから治した。その時に立ち会ったのが飯田天哉だった」
俺もそんな話は聞いていないんだが、と首を振る呼人を相澤はちらりと見た後、神王寺の方を見る。
「ま、オールマイトもイレイザーヘッドも、これは秘密に、な」
「私はまだ、納得してないんだけどね」
オールマイトは自身を平和の象徴として人生を費やすほど人々の平和に心を砕いている。そのため、ヴィラン達の怪我ならまだしも、災害に巻き込まれた怪我人や重傷者、そしてヴィランの被害にあった人すら治そうとしなくなっていったジ・アドベンチャーの態度にはずっと不満を抱いていた。
だが、神王寺にも言い分がある。まず、自分はヒーローを仕事としているが本職は研究職だと思っており、ヒーローの資格は1つの手段に過ぎない。そしてもう一つ、自分の人生全てを他人に吸い取られるつもりはない。その2つの理由と、もう一つ実益などではなく完全に信条由来の理由から、神王寺は以前日本に居たころも個性を隠して活動していた。
「こればっかりは、変えるつもりはない。人が傷も死も恐れなくなったら、人は人じゃなくなる。それに恐らく、人間は死者が生き返ることには耐えられない。だから俺は、これからもその覚悟を持って見殺しにしていくぜ。お前が人々の柱となり、人々の平和を願うように、俺は人々がただ強く生きることを願ってる。嫌だったら、ヒーロー達で守ると良い」
「……そうだね。そうさせてもらうよ」
その後、取り留めもない会話を交わし、とある連絡事項を呼人に伝えて確認を取った後相澤とオールマイトは呼人と神王寺の家を出る。
「彼の、あの『見殺しにする』というのは、以前からですか?」
「ずっと、だよ。私も何回か説得しようとしたんだけどね。『人間は傷ついて生きていくものだ』って。彼はあるいは、自分の個性を嫌ってるようにすら思えた。当時からうまく折り合いをつけて使おうとしてたんだけどね。個性に関する実験なんかは、基本的に自分の体を研究材料に個性を使わせて記録するってことを繰り返してたよ」
「それは……難しい、話です」
目の前の命が救えるなら、救おうとするのが人の常だ。それを神王寺はあえて見捨てようとする。何故なら自分が救おうとすれば、『全てを救うしか無い』のだから。そしてそんな個性を、気分で使い分けたりしてはならない。だから、『優秀なヒーローだけ』という縛りを設けた。実際、交通事故にあった友人を彼は―――救わなかった。
オールマイトもそれを知っているからこそ、強く言えないのだ。
******
「神王寺、さっきの話だが」
「本当だぜ? 俺は死者もいけるらしい。お前の両親も助けようと思えば出来たがしなかった」
「いや、そっちの話じゃない。人が傷や死を忘れてはならない、っていう方だが」
その言葉が、呼人には気になっていた。傷や、死なんて無いほうが良いというのは誰もが思うことで。呼人すら、それらが無いのであればヴィランも気にならないし皆が文字通り自由に生きられる可能性もあるのではないかと、考えていた。
「傷や死を忘れると、命が軽くなる。そして命が軽くなると、今度は精神的な傷すらが軽視され始める。『だってどうやっても死なないのだろう?』ってな。どんだけ辛くても死で終わらない。そして、楽しい時は永遠に続くなんて思いはじめて、大切なものがどうでもいいものに変わる。失われる可能性があるから美しいんだよ。大切に思えるんだ」
―――当たり前に存在し続けるとわかっているものをありがたがるように、人間は出来てない。
それほど長くない、神王寺の言葉。だがそれは、呼人にとっては新しい観点で。死と、傷、命というものにそんな価値があるとは思ったことがない。社会構造や政治などの話ばかりで、人間の精神に関わる内容を軽視していた。
また1つ、呼人の道の鍵が開いた。
別のヒロアカ小説も書いているので僕の作者ページから是非御覧ください!
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない