竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第52話 入寮

 その後時は立って8月中旬。まだ学校は始まっていないが、ヒーロー科の生徒が雄英敷地内の寮に入寮する日がやってきた。

 

 これまでの間、呼人は新しく開いた個性の扱い方への習熟と、神王寺とモンスター達との議論、そして『すべてを見る』人物に会いに行ったり、プッシーキャッツの面々と会って礼を言われたりと忙しくしていた。

 ちなみに相澤に家庭訪問の際に言われた用事というのが、このプッシーキャッツの件である。雄英を通す以外の呼人との連絡手段を持たなかった彼女らだが、ラグドールが呼人に救われたということで直接礼を言いたいと言っていたのだ。ただ本人はまだ怪我と、そして何らかの薬物を使われていてその効果が抜けきっていないとかで来れなかったが、残りの3人が礼を言いに来てくれた。

 

 そのため時間を設定して会ったのである。礼や、勝手をしたことへのちょっとしたお説教、それと呼人の個性に関してなど改めて聞かれた。個性に関しては、一応お世話になったということで相澤に渡したのと同じ映像を彼女らにも渡した。こうしてヒーローの中に呼人の個性を浸透させる、というのも、呼人が人間社会で生きていくための当初の方針ではあった。それが今なお意味を持っているかは甚だ怪しいところではあるが。

 

「とりあえず、1年A組。無事に集まれて何よりだ」

「それは先生もだと思うわ。会見を見た時はいなくなってしまうと思って悲しかったもの」

「ま、色々あるんだろう」

 

 しんみりとした空気が漂いかけるが、相澤が軽く手を叩いて空気を変える。

 

「さて。寮について説明する前にまずは。当面の予定だが、合宿で取る予定だった仮免の取得を目指す」

「そういやそんな話だったな!」

「完全に忘れてたわ」

「それと」

 

 短く言ってから黙る相澤に、自然に生徒も黙っていく。

 

「轟、切島、緑谷、八百万。この4人はあの晩、百竜と爆豪救出のためにあの場所へ赴こうとした」

 

 相澤の言葉に、クラスメイトの表情が強張る。『まさか』と。皆がそう思っていたそれは、現実になっていた。自分たちが知らない間に。

 飯田の名前が無いのは、彼があの場に完全に止めるつもりでいたからだ。事更に主張したわけではなくむしろ他の4人を庇おうともしていたのだが、『殴り倒してでも止めるつもりだった』という飯田の短い説明をしっかり覚えていたマイクが相澤に伝えていたのである。

 

「その様子だと、行く素振りは皆も把握していたわけだ。直前でマイクが止めたおかげで未遂ですんだが、もし行っていた場合」

 

 ―――耳郎、葉隠、百竜、爆豪を除く全員を俺は除籍処分にしていた。

 

「直前まで止められなかった13人も含めて、俺達の信頼を裏切っていたことに変わりはない。正規の手続きを踏んだ上で正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい」

 

 そう言って相澤がじろりとクラスを見渡すと、ほとんどのものがうつむいている。マイクが呼人を迎えに行き、そして病院に立ち寄るという気まぐれを起こさなければ。彼らは行ってしまっていた。実際は飯田が殴り倒してでも止める覚悟でその場にいたわけだが、その4人相手では一人で止めきれたかどうか。

 

「そして爆豪、百竜」

 

 これまでの話では当事者ではなかった2人に話が飛び、クラスの目がそちらに向く。

 

「お前らがいなくなったことで、心配してこういうことをしようとするやつがいるわけだ。他の者も、自分が危ない目に陥ることで仲間まで危険に晒すということをもう一度認識して、以降努力しろ」

 

 その言葉に、爆豪、呼人ともに苦い表情である。爆豪自身は抵抗出来ずにさらわれてしまったわけだし、呼人も何も言わずに姿をくらましていたことになっている。それがクラスメイトに与えた心配は、想像に難くない。呼人においてはさらわれたということは当初は認識されておらず、捜査の結果発見されなかったことから恐らくさらわれたのではないかという結論に至っていたが、まあ同じである。

 

「以上! さっ、寮の説明に移るぞ元気に行こう」

 

 空気を変えるように相澤は明るく言うが、生徒は動くことが出来ない。相澤の言葉が、全員に重くのしかかっていた。

 と。爆豪が手近にいた上鳴を引きずって植木の影に消える。そしてすぐに放電の光が走り、今度はアホになった上鳴だけが植木の影から放り出される。クラスメイトは最初はポカンとした様子であったが、そのアホ面に数名が口元を緩め、上鳴がウェイウェイ言いながら何か始めた時には多くの者が笑っていた。

 

 そして植木の影から出てきた爆豪は、切島を爆破する。

 

「おまっ、何すん!?」

「いつもみてーに馬鹿晒せや。礼は言わねえぞ」

 

 爆豪だけは、ミッドナイトと一緒にいる段階で4人の行動を聞いていた。そして思った通り切島が爆豪いわくクソみてえにシケた面をしていたので、爆破するという凶行に至ったのである。

 

 やがて、上鳴から広がった笑いがクラスを飲み込む。少なくともこの茶番で、暗い雰囲気は払拭された。

 

 

******

 

 

「1クラス一棟。A組は右が女子棟左が男子棟だ。ただし一階は共有スペース。食堂、風呂、洗濯なんかは基本ここだ」

「おおおおお!」

「ソファすごってかめっちゃ広いしキレー!!!」

「中庭もあんのね、良いじゃん」

 

 なかなかに豪華なその内装に、生徒はそれぞれ感嘆の声を上げる。その後『共用』と聞いた峰田が暴走しかけて相澤にストップをかけられたり、あまりの豪華さに麗日が卒倒しそうになりながらも、説明は2階以上の個室スペースに移っていく。

 

「個人部屋は1フロアに男女各4部屋の5階建て。男子側と女子側はつながってない。エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きだ」

 

 かなりの贅沢空間である。呼人には自前のキッチンが無いのが少しばかり気がかりであったが、恐らくそれに関しては下を使えばいいだろう。見たところコンロも複数あるようであったし、流石に四六時中埋まっているということはあるまい。

 

「部屋割りはこちらで決めた通りだ。各自、事前に送ってもらった荷物が届いてるから部屋へ運んどけ。取り敢えず今日は部屋作り。今後の説明はまた明日だ。以上解散」

 

 そう言って相澤は去っていこうとする。クラスメイトはそれぞれ自分の部屋へと移動していくが、呼人は相澤に声をかけた。

 

「なんだ」

「ランニングをしたいんですけど、外出ってどこまで許可されてるんですか。雄英敷地内なら自由でしょうか」

「そのあたりの説明を書いた紙が室内に置いてある。昼間は基本自由、21時以降は外出許可証を提出する必要がある」

「わかりました」

 

 相変わらず呼人が考えているのは、如何に鍛えられるかというのと、食事のことばかりであった。

 

 

******

 

 

 部屋に移動した呼人は、早速用意を始める。運び込んだもので主なものと言えば、本とファイル、本棚。パソコン、そしてスピーカー。それと音楽を外に出すために利用しているシンセサイザーが一台。後は大きなクッション。それに薄い板と筋トレ用の道具。後は細々とした日常品ぐらいで。それが呼人の部屋に置く全てで、実はベッドも布団も無い。

 

 まずは部屋の床に、机やクローゼットの下も含めて板をしいていく。この板は表面は若干スポンジのような柔らかい素材になっているのだが中に芯が通っており、上からかかった圧を部屋全体の床に逃してくれるものになっている。以前個性を使って筋トレをしていた呼人がカナダで床をぶち抜いた為に神王寺が考案したものだ。これのおかげで普通の筋トレも、そして持ってきた筋トレ器具も心置きなく使うことが出来る。

 

 次に本棚を並べる。これでも本は減らしてきているしそもそも頭に入っているものばかりなのだが。それでも他のクラスメイトに読ませる可能性もあるということで全部置いていこうとした呼人を神王寺が制して本をもたせた。本だけで棚1つ分はある。

 

 本と同じぐらいに多いのがファイルだ。こっちには呼人の書いてきた絵が入っている。一枚一枚クリアフィルムに入れるタイプのファイルだ。がっつり業務用である。呼人がこれまで書いてきた絵は、正直とてつもなく多い。最初は時間もかかっていたし下手くそだったし、それにモンスター達の絵ばっかりだったが。やがて彼らの見てきた大自然の絵や、そこに生きる彼らの絵、そして彼らの目から見た人間など、様々なものを描いている。当然モンスター達の姿も単体のただ立っている姿ではなく、寝ている絵や捕食中の絵など様々だ。それこそ、外から見れば絵が大好きなのだと思うぐらいには描いている。

 

 そして神王寺が以前用意してくれた額縁に、ファイルから適当に数枚の絵を選んで入れ、壁や勉強机の上に展示しておく。インテリアだかなんだかと言っていたが、要するに部屋を飾るものらしい。そのために、今まで描いた中でも飛び抜けて巨大な、縦1メートル、横3メートルある絵も持ってきている。こっちは額縁には入れられないので、そのまま壁一面に貼っておいた。

 正直呼人も、この絵を壁に展示するというのは好きである。確かに頭の中に潜り込んでモンスター達を見たり、彼らにイメージを見せてもらえば見れる景色ばかりだが。それでもそれがふと視界に入るというのは、何か気分が良い。

 

 続いてケーブルを壁伝いに伸ばし、部屋の四隅にスピーカーを設置する。これも自然を感じるため、と言えば聞こえは良いが、要するにモンスター達と一緒に作った彼らの世界を表現する音楽のうち穏やかなものを常に流して聞いていたりするものだ。BGMとも言う。実は呼人、この音楽がかなり好きなのである。

 

 楽しいことを知らない、と以前呼人は言ったが、『楽しいことである』ということを知らないだけで、好きなことと言うのはあるのである。たとえもとがモンスター達をこっちの世界に表現するための手段であったとしても、である。そしてシンセサイザーは棚の一角に布をかけて。

 

 後は衣類をタンスとクローゼットにわけて放り込んで完成である。クローゼットには、以前上鳴と一緒に買いにでかけた私服を丁寧に入れておく。ちなみに出番はまだ数回程度だ。

 

「ん、こんなもんか」

 

 ベッドや布団の類は、家では全く使っていなかった。いつも何らかのモンスター。例えばウルグやアイルー、あるいはジャギィなどに変身して、適当にクッションや床の上で寝ていた。そのため寝具は基本使っていなかったので、実家に置いてきたのである。ついでに人間に戻る際に回収すれば毛などは残らないので、部屋を汚す心配もない。板も敷いているので、床を傷つける心配もだ。人間の体で同じことをすると体の節々が痛んで仕方ない。つくづく人間は、もろい生き物である。

 

 ちなみに呼人の部屋は4階の端、隣は爆豪である。爆豪には興味無さそうな目をされた。

 

「後は……あれか、細かい話が書いているのは」

 

 机の上に置かれた寮生活のマニュアルに目を通す。日中の外出は雄英敷地内に限っては自由。学外に出る場合には出る先の申請が必要である。また夜間、21時以降の外出は学外は禁止。学内においては申請があった場合は許可するが、最大24時まで。また学外への外出に許可がいるということで学内には小規模なコンビニ寄りの売店が設置されている。ちなみに生の食材は売っていないのでそれらは学外に買いにいかなければいけない。

 また朝、夕食が和食洋食から選べる。また理由付きで申請すれば量の相談にも乗るということであった。

 

(先に言ってくれ)

 

 そんな相談であれば是非させてもらいたい。早速ランチラッシュに連絡しようと決意した呼人であった。

 

 その他確認。連絡を終えた所で時刻は午後5時。まだ門限にはなっていないが、それでも走り込みは1時間程度で終わるものではないので動ける服装に着替えた呼人は外に出る。このあたりの規則もあって、学校関係の行事であれば体操服か制服だが、休日、あるいは放課後などは自由であるらしい。

 

 

******

 

 

 走り込み、更に森で個性の訓練と終えて寮に戻る頃には門限ギリギリとなっていた。新しい個性の使い方は、体を別の部位に変化させる方はある程度習熟してきた。一方で新しく部位を生やす方については、まだほとんど上手くいかない。いずれにしろまだまだ訓練が必要だ。

 

 夕食の時間は午後10時までにということだったので、一旦部屋に戻って着替えてから食事を取りに行くことにする。と。4階に上がった所で何故かクラスメイトが集まっているところに遭遇する。

 

「あ、百竜、どこにいたんだ? 今みんなで部屋のお披露目大会してるんだけど」

「走ってた。見るなら見ていいけど、俺夕飯まだ食べてないから一緒に行く時間はないぞ」

「あ、じゃあ先に見せてもらっても良い?」

「え、なに!? 百竜君の部屋!? 見たい!」

「なんだ百竜いたのか。ノックしても返事無いから寝てんのかと」

 

 そう言って、ちょうど4階の切島、障子の部屋も見終えたということで全員で呼人の部屋へと移動する。呼人と切島の部屋の間に爆豪の部屋があるが、彼は始まる前に寝ると言っていなくなっていたらしい。

 

 扉を開けると、あまり物の無い部屋に郷愁を感じさせる音楽が流れている。今流れている曲のタイトルは、日本語で言えば『星に駆られて』というものであり、かなり珍しい、もともとモンスター達の世界で演奏されていた曲である。新大陸という、人の住まなかった地に息づき、モンスター達の生態を調査したハンターの一団と、彼らの出会ったモンスター達を描いた曲だ。

 

「音楽……」

「あれ、あれなんだっけ耳郎、お前音楽詳しかったよな?」

「あーあれはシンセサイザーだね。え、シンセって、百竜音楽やんの?」

「演奏するんじゃなくて作る方だけどな。今流れてるのも俺が出力した曲だ。もともと外国で聞いたことのある曲を再現しただけだけどな」

「かっこいいぜ百竜!」

 

 そんな話をしていると、障子がとんとんと呼人の肩を叩いてくる。

 

「……あの絵は、モンスターを描いたものか?」

「ああ、そうだな」

「……いつか見れるのを楽しみにしている」

「興味があるなら棚のファイル見てて良いぞ。昔から描いてるから絵は大量にあるんだ」

 

 ほとんど表情を変えない障子の目の色が少し変わったように見えた。

 

「……後で見せてもらいたい」

「ん。了解」

「ねー百竜君! このおっきい絵何!?」

「それは新大陸を一枚の絵に集めて書いたもんだな」

「新大陸って何?」

「秘密だ」

「むー! なんでそこで秘密なの!」

「ファンタジーのイラストとか興味あったんだね百竜も」

「まあそんなとこだ」

 

 わちゃわちゃと物珍しそうに見学しているクラスメイトを良い所で追い出して、ササッと着替えて食事に降りる。昼間に申請しておいたおかげで、料理は取り敢えず3人前の量を届けてもらうことが出来た。多少物足りないが、今は怪我している部分も無いので明日食べれば保つだろう。

 

 食事を手早く済ませた後は共用の浴場で汗を流して部屋に戻る。途中で部屋の見学を終えたクラスメイトが何やら投票をしているのが見えたが、呼人はそれに参加するわけでもないので一足先に部屋に戻る。

 と、部屋に戻ってすぐに障子が尋ねてきた。

 

「……今、時間はあるか?」

「見に来たのか。良いぞ、特に忙しくもしてない」

「……ありがとう」

 

 出せる茶などがあるわけでもないので冷蔵庫から2Lの茶を出して紙コップとともに障子に手渡すが、小さな机すらもない。そのことを障子に断り、呼人は椅子に座る。

 

「そう言えば、ベッドや布団の類が無いが……」

「使ってないからな」

「眠れるのか?」

「いや、寝る時はモンスターになって寝てる。あれなら岩の上だろうが眠れるからな」

 

 呼人がそう言って、実際に小さなトビカガチに変身して床の上で寝る姿勢を作ると障子は納得したといった表情を見せる。

 

「なるほど。それならベッドは必要ないのか」

「そういうことだ」

「だが、折りたたみの机ぐらいはあっても良いのではないか?」

「そうだな。人が遊びに来るとは思ってなかったから考えてなかったけど今度買っておく」

 

 その後呼人はしばらくパソコンやタブレットで音楽を編集したり、神王寺から言われていつか作ってみようと思っていたMADやMVについて調べたりしており、障子は絵を見ては目を輝かせていた。

 MADやMVについて神王寺が触れたのは、呼人が絵に続いて3DCGで動くモンスター達を映像にしようかと考えていたからである。そんな手間なことをするぐらいなら、山奥などの場所を使ってモンスターになって映像を撮り、それを編集すれば良いのではないかと言われたのだ。それも1つのアイデアとして呼人は調べてみているのである。

 

 やがて夜も遅くなって障子は自分の部屋へと帰っていった。じっくり見ていたからか、ほとんど見れていないようでまた来るということを言っていた。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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