竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第54話 自主訓練

「百竜ー!」

 

 圧縮訓練が始まって数日。呼人がいつものように走り込みに出ようとしていると、上鳴に声をかけられた。

 

「どうした?」

「あ、もしかして今から走りに行く予定だった?」

 

 近くまで来てようやく呼人の服装に気付いた上鳴が申し訳無さそうにそう言ってくる。

 

「まあそうだが。用事があるなら聞くぞ?」

「あー、えっと手が空いてるなら訓練付き合ってくんねえかなって思って。悪い忙しかったよな」

 

 他の人に頼んでみるかーと上鳴が離れていこうとするので、呼人はそれを引き止める。

 

「良いぞ。別に」

「うぇー、え? 良いの?」

「訓練だろ? 走り込み以外に鍛える方法が無いわけじゃないからな」

「マジか助かる! んじゃTDLに集合な!」

「使用許可はもらってるのか?」

 

 現在の時刻は午後5時。A組のTDLでの訓練は基本午前中であり、午後はB組が使っている。ただ午前が5時間程度の使用と考えると、午後のB組ももうそろそろ終わるのだろうということは予想できた。

 

「バッチリ! 模擬戦は駄目だって言われたけど個性の訓練ならありだってよ」

「そうか。ならコスチューム持っていって向こうで着替えるか」

「俺もそうする!」

 

 その後一旦それぞれ部屋に戻り、寮の入り口で合流して外に出る。自主訓練も午後の間に終えた他のクラスメイトは談話スペースなどでだべっていた。圧縮訓練というだけあって体力も個性もかなり酷使するものであり、皆疲労を感じているようだ。

 

「訓練なら、他のやつも誘った方が良かったんじゃないか?」

「あー、いやー、驚かせてえなって思ってよ」

 

 まだ戦闘演習でもまともにサポートアイテム使ったこと無いし、と上鳴は言う。確かに彼が新しいサポートアイテムを開発してもらってから学校は3週間も無く、その間救助演習や個性なしでの戦闘訓練、あるいは様々な状況に合わせた演習が多かったため、サポートアイテムを万全の状態で使うことはなかったのだ。

 

「なるほど。それならまあ知ってる俺達だけになるか」

「それにお前なら放電くらってもダウンしねえだろ?」

「確かにターゲットにするにはいい相手だわな。てことは狙う練習か?」

「そゆこと」

 

 他の奴に放電当てたらしびれるし疲れさせちまうからなあ。そう言う上鳴は、やはりいつもどおりのおちゃらけた様子ながらも、クラスメイトのことをよく考えている。

 

「そう言えば、あっちの方は? やってるんだろ?」

 

 あっち、相澤先生の方、と呼人が尋ねると、上鳴は自慢げに頷く。

 

「へへっ、そっちも練習中。でも相澤先生に『どっちを優先すべきかは自分で考えろ』って言われてたからこっち優先。あっちはあくまで、+アルファ枠だからな」

「まあ、たしかに個性を生かした戦闘力で言えばサポートアイテムを使えるようになるのが先か」

「そゆこと!」

 

 TDLについた2人は、TDLの更衣室で着替えた後TDLにはいる。B組は午後に訓練を行っているためか、まだ半数以上が残っており教師陣も訓練を手伝っている。

 

「おお、まだいっぱいいんね」

「巻き込むなよ」

「あたりめーよ。そんためのサポートアイテム」

 

 セメントスに一言声をかけて、適当にちょっとした障害物から高い壁までが乱立したエリアを作ってもらう。

 

「よし、んじゃ百竜、とにかく避けてくれよな。俺が当てる練習すっから。それに見てから意見ももらいてえしよ」

「了解」

 

 ヨーイ始メ、とエクトプラズムの分身が言うと同時に、上鳴は左右に動きながら複数のType-Bを右手から打ち出す。そのうちの1つに向かって指向性の放電を放ち、呼人がそれを回避すると更に連続で放電して行く先行く先を狙ってき、呼人をそれを回避し続ける。そして呼人が回避に移って目線が切れたと同時に、左手のType-Aを打ち出して隙を狙ってきた。

 

 呼人は基本的に、上鳴の右腕が示す先から逃げるように動いている。そこで左手の、『腕を向けなくても誘導する』という性能を利用しようとしたわけだが。

 

「やっぱ当たらんね」

「精密な狙いはまだきつい感じか?」

「そうなんだよなあ。後やっぱバレてる相手には、手を向けるだけで警戒されるからBの方は避けられるわ」

「そもそも右手の方、直進するって時点で突っ立ってる相手に当てれないよな?」

「ああ、それ。それ俺も思ってた。だから最初も動きながらばらまいたんだしさ」

「勢い殺して曲射出来るようにしてもらうか、自力で投げるかするか?」

「ちょっと相談してみるつもり。自力で投げるのは練習がいるよな」

「まあ打ち出すよりは難しいわな。でも投げれるようになったら、フリスビーみたいに曲げて投げて空中にある間に放電して狙うみたいな―――」

「俺にそんな曲芸は無理じゃ!」

 

 難しいことを言っているのはわかるが、1人で当てに行くとするとそれしかないのではないだろうか。放物線を描くように飛ばせればある程度は出来るだろうが、やはり相手の後ろに自力で設置できないと話にならないし、普通危険だと考えれば相手は避けてしまうだろう。

 

「後は、殴り合いしながらうまいこと設置したやつを使って戦うとか?」

「だよな、設置しといて俺が移動するってのも考えた方が良い気がする」

「じゃあ結局近接戦か?」

「うーん……」

「まあ『人間スタンガン』から追撃ってのは結構ありな気がするけど、相手が増強系とかだと痺れさせる前にお前がぶっ飛ばされるよな」

「うぇー……攻めが苦手だな結局」

「あのBの方で狙う先を勘違いさせてくるのは結構ありだとは思ったぞ」

「だろ! あれは結構自信あったんだよ! お前ならAだと手の動きで逃げると思ったしさ」

 

 その後、見ていたエクトプラズムも含めて少しの間動きの確認や狙う方針の確認などをして。気がつけばB組の生徒に注目されていた。

 

「なんか、見られてね?」

「さあな。そろそろ次やるぞ」

「うぇーい」

 

 2回目も、呼人が被弾したら終わりというルールで行うこととなる。そして今度は上鳴は、適当に3個ほどType-Aを設置した後、呼人に向かって突っ込んでくる。そしてほとんど周囲に向かわない小規模な放電。呼人はトビカガチの体毛を全身にめぐらして電気は一切効かない状態にはなっているが、被弾したら負けなので回避する。上鳴は放電の扱いになれたのか突き出した右手や蹴った足などだけから的確に放電してくる。放課後の訓練に加えて相澤との訓練で体をよく動かしているからか、近接戦での立ち回りのも以前の比にならないほど速い。

 

 そして呼人の背中に悪寒。咄嗟に勢いよくしゃがみ込むと、体は全く違う方向を向いたまま右手を肩越しに呼人の方に向けた上鳴の手から放たれた電撃が髪の毛を掠めていく。

 

「当た、った?」

「掠った」

「やりい!」

 

 掠めたと言っても、しっかり呼人の体毛には蓄電が行われている。当たっていたのだ。直前に伸ばされた左手によって、ターゲットとの直線上まで誘導されていたらしい。

 

「体を向けてこないのは上手かったな」

「だろ!? 肘から先で狙えるからよー、それ狙ってみた!」

「やっぱり踏み込んできた方が何かとめんどくさいかもな」

「うーん、だよな……よし!」

 

 何か決意を秘めた表情で上鳴が拳を握る。

 

「どした?」

「やっぱり捕縛布の練習ちゃんとしてくる」

「おお、頑張れ」

「あっさり! もうちょっとなんかねーの!? なんで? とかさ!」

「だいたいわかる」

「頑張るよ!」

 

 ともあれ、上鳴が厄介な相手になったことに変わりはない。非接触でダメージを出せる上に、爆豪のそれとも違って本人には反動が無いので好きな位置から狙ってくる。更に捕縛布を使えるようになり、捕縛布を通しての放電や捕縛布にくっつけたターゲットを狙っての放電を自由に使えるようになられると、半径10メートルほどのテリトリーを完全に支配されてしまう。まあその領域に至るにはかなりの時間がかかるのだろうが。

 そんな茶番騒ぎをしていると、上鳴と多少仲の良いB組のクラス委員長が話かけてきた。

 

「上鳴、あんたも自主練?」

「お、拳藤。そそ、自主練自主練。必殺技の開発中よ」

 

 B組の委員長の拳藤一佳。個性は手を大きくすること。他にも彼女と一緒に自主練をしていた鉄哲やB組の女子陣も興味深そうに2人の方を見ている。

 

「熱心だね」

「まーなー。そっちももう全体での訓練は終わってるんだろ?」

「うん。こっちは全体の後そのまま自主練が出来るからね。先生たちも付き合ってくれるし」

 

 2人の会話が弾んでいるようなので、呼人は少し離れた所で1人上鳴の戦法について考えていた。呼人の想定であれば、上鳴の戦い方は非常に厄介かつ一方的ものになる。自分にも似たことが出来るだろうか、と。

 放電を誘導するという意味で言えば、一部モンスター、例えば針纏竜の辿異個体なんかが、その特性を持つ針を有しており呼人も扱うことが出来る。ただそれは『飛ばす』というのが精一杯で、捕縛布を使ってターゲットを振り回す上鳴のように自由に扱えるわけではない。他の使い方で言えば風や竜巻を操ってそれに針をのせ周囲を飛ばすということも出来るだろうが、それはそれでまどろっこしい。風そのもので打倒すればいいからだ。まあ室内であれば複数針の設置は有効であるし、周囲への影響を考慮するという意味であれば十分検討に値する。

 

(今度試してみよう)

 

 せっかく思いついたことなので、それも試してみようと呼人は頭の中にメモをしておく。針纏竜の針に、鋼龍その他の風、そして雷撃を操る竜の電気。それらを自在に組み合わせることが出来るのも呼人の強みだ。

 

 そんなことを考えていると、上鳴に呼ばれたので意識を現実に戻す。

 

「百竜ちょいこっち来て」

「ん、ああ」

 

 言われるままに行くと、拳藤と対峙させられる。

 

「拳藤、こいつが百竜呼人、うちで一番のやつね」

「何の話だ?」

「で、こっちがB組の拳藤一佳ね」

「よろしくね」

「ああ、よろしく」

 

 突然紹介されて困惑する呼人に対して拳藤は朗らかに握手を求めてくる。それに応じながらも呼人が上鳴の方に目を向けると、ぐっと親指を立ててサムズアップされた。いや、何なのかを教えてほしい。

 

「ごめんごめん。私が百竜くん? と話してみたかったからさ」

「そう言うことなら、別に呼び捨てで良いぞ」

「ありがとね。改めてよろしく、百竜」

「よろしく」

 

 彼女が話しかけてきた理由は100%好奇心というか興味である。この場で話しかけてきたのも周りのクラスメイトにせっつかれたからであり、半ばクラスを代表しているようなものだ。

 爆豪は、良くも悪くも粗暴な様子が人目をひき、ヒーロー科どころか一年全体で有名である。轟も、その強個性とイケメンっぷりで話題によく上がる。そんな中呼人は、体育祭では優勝したし入試でも一番だったわけだが、なぜか全然話題に上がらない。個性に派手さが無いから、あるいは轟、爆豪のような容姿、言動に特筆すべきところが無いから。

 

 どちらにしろ、同じヒーロー科として興味を持つB組にとっては、むしろ興味を掻き立てられるものだった。特に、騒がしい生徒やB組と親しい生徒から『凄い』という伝聞が伝わっていれば。

 

「なるほど。そんなことが」

「そんなことがってお前のことだからな」

「俺にどうしろと」

「この機会にお話したら?」

 

 残念ながらなんとなくの雑談は苦手である。戦い方とか、勉強とか、話題が無いとそれほどしゃべれないのだがそこはヒーロー科。共通の話す話題なんて山ほどある。

 

 特に当たり障りのない話し、例えば体育祭の話とか、職場体験の話とか。そんなことをチラチラと話した後、話はコスチュームの話へと移る。

 

「そのコスチュームは、どういう目的で作ってるの? なんか、不思議なデザインしてるけど」

「見た目はどうでも良かったから昔見たことのあるデザインをそのまま持ってきたんだけどな。若干浮いてて後悔してる」

「え、お前そんな事思ってたの?」

「流石にデザインの方向性がなんか違うなってのはわかるぞ。まあ一応ヒーローとはわかる? から良いが。わかるよな?」

「流石に私服でそれ着てるやつは居ないだろ」

「うん、いないと思う」

 

 そう言って笑う拳藤のコスチュームは、武術家というか拳法家のようなコスチュームである。尾白が和だとすれば、中と言ったところだ。

 

「まあ、素材さえ同じなら何でも良いから今度デザイン引きなおして事務所依頼しとく」

「自分でデザインしてるんだ?」

「知り合いが懇意にしてる事務所があってそこに依頼してるんだ。でもそうか、絶対欲しいところだけ箇条書きにしてデザインは押し付ければ良いのか」

「まあ『こんな感じの見た目』とかはみんな書いてると思うけど。でも全部自分で決めてるって珍しいよね」

「見た目はほんと何でも良かったしこれがちょうどポーチとか含めて都合が良かったから全部真似したんだよ」

「ちなみにお前が絶対欲しいものってなんなの?」

「ポーチは一式ほしいな。容量的にも今のでちょうど良いし。後はあちこちのホルダーとか……そう考えると、上鳴とか拳藤みたいにシンプルな見た目だと多分困るんだよな」

 

 なんだかんだ適当に決めたコスチュームのデザインだが、もともとの用途が様々な小道具を付けての探索などとあってかなり呼人の嗜好に合致しているのだ。

 

「使いやすいならそれで良いんじゃない?」

「そうだな。まだしばらくはそのまま使うか」

 

 個性を使うという観点であれば、普段ランニングしている半袖半ズボンでも何も問題はない。ただコスチュームになりえないよねという話で。

 

「ところでさ」

 

 そこで拳藤が話題を変えるように切り出す。

 

「模擬戦やってみない?」

「は?」

「いやみんながA組一の実力者とやってみたいって言ってさ。私も結構興味あるしどうかなって」

 

 どうと言われてもと。呼人は視線を上鳴に向ける。その上鳴は、B組の可愛い女子たちに興味津々の様子でそっちに行ってしまっていた。

 

「一応この時間での模擬戦は見れないからやめておけって相澤先生に言われてる」

「他の先生方に見てもらったら良いんでしょ?」

「……多分、良いんじゃないか? まあ突発的にやったりすると相澤先生に怒られそうな気がするけど」

 

 そんなことを言っていると、ちょうど良く相澤がやってくる。プレゼント・マイクと一緒に自主練の様子を見に来たらしいが、上鳴が用事があったようで話しかけていた。

 

 と。拳藤と呼人の会話を見守っていたB組の1人、取蔭が相澤に声をかけた。

 

「相澤せんせーい、百竜と模擬戦してもいいですか?」

「……俺はすぐに戻るから見れない」

「デハ私ガ見テオコウ」

「俺が開始の合図シてやるぜ―!」

 

 取蔭ににっと笑われマイクに大声で言われてしまえば、断る道理も無い。

 

「まあそういうことなら」

 

 よっしゃとガッツポーズする取蔭を呆れ半分微笑み半分で拳藤が見る。と、相澤と話し終えた上鳴がやってきた。

 

「なに、百竜模擬戦すんの? 俺駄目って言われたのに!」

「見てくれる相手がいないからってことじゃないか?」

「でも他の先生がいるけど百竜とって言ったら駄目って言われたぜ?」

「んー……わからん。まあなんかあるんだろ」

「えー。まあ相手になれるとは思えねえけどさ」

「相澤先生とは何話してたんだ?」

「訓練の話。また後で話すわ」

 

 大方相澤と話していたということは捕縛布関係の話なのだろう。

 

「ごめんね百竜、こっちの都合で」

 

 一方クラスメイトの世話を見るタイプの姉御肌な拳藤は、クラスメイトのちょっとした暴走に申し訳無さそうに笑う。

 

「俺も試したいことがあるから別に良いよ」

「そう言ってくれると助かる。っても、どう模擬戦する? ここだと運動場とかみたいに障害物ないし……」

「何でも。任せるよ」

 

 かくして、臨時ではあるがB組との交流会が始まる。

 

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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