竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
B組と個人的な模擬戦をした翌日。今日も呼人は上鳴に呼び出されて夕方にTDLを訪れたのだが、今日は上鳴と一緒に轟も来ていた。上鳴が昨晩夕食後に呼人との自主練の話をした結果、轟も手伝って欲しいことがあると来たのだ。他にも毎晩のようにやってくる障子とともに自室に引きこもっていた呼人は知らないが、他のクラスメイトも一部訓練を手伝ってもらう話をしていたらしい。
ただ、一緒に訓練する、というよりは手伝ってもらうという形になるため、全員ためらっているそうだ。
「で、お前は飯を奢ってくれると」
「おう! 仮免試験の後の週末な!」
「俺も、空いてる日があれば」
「別に気にしないでも良いんだけどな」
「まあそう言うなって。世話になってんだから礼ぐらいさせろって」
そう言われては、呼人の側に断る理由は特にない。轟も言ってくれているが、彼に関しては手伝うだけになるのか戦うことになるのかわからないので今言われても困るのだが。
そして当の轟の手伝って欲しい内容だが。
「俺の攻撃を受けてくれ」
「是非奢られてやろうじゃないか」
「轟言い方!」
その後言葉足らずな轟に改めて説明してもらう。それによると、『火と氷をぶつける』必殺技については着々と開発が進んでいるものの、それが効かなそうな相手に対してはどうするかということについて悩んでいるそうだ。
「体育祭の時に、お前に氷から脱出されただろう? あれを思い出した。もしあれを出来るヴィランが現れたら氷じゃどうしようもねえ。それ考えると火でもどうしようもねえ相手もいるんじゃねえかって気がしてきた」
「なるほど。それで、効かなそうな俺相手に考えてみたいってことか」
「ああ。一方的に相談する形になっちまって悪い」
「いや、俺もお前の個性でただぶつけるだけはもったいないって思ってたしちょうど良い」
「そうなのか?」
「まあ、取り敢えずセメントスに攻撃の余波がもれないブロック作ってもらうか」
セメントス超過労働。そのためか入れ替わりに見てくれている他の教師陣とは違って早めに帰ってくれているが、それでも一番付き合ってくれていることに変わりはない。セメントスに礼を言って、3人でTDLの端の方の周囲を囲まれたエリアに入る。
「上鳴は良いのか?」
「待ってる間見学しとく。なんか参考になるかもしんねえし。個性が効かねえ相手って言ったら俺も百竜はそうなるしよ」
「悪い」
「言うなって。俺は昨日付き合ってもらったしよ」
残念ながら、A組で人間を超える耐久力を持つのは呼人だけである。砂藤は個性によってパワーは上がるが、物理以外の攻撃に対する耐久力はあまり高くない。そして常闇や八百万はそうしたものにも耐久性をあるものや個性を使えるが、本体の耐久力ではないので判断が難しいのだ。
「それで、体育祭の時はどうやって脱出したんだ?」
「凍結された腕を膨張させた」
そう言って呼人は、腕を人間大のままオドガロンのそれにした後、本来のサイズへと肥大させる。
「腕の体積の膨張で氷が中から圧迫されて割れるんだ。昔から岩とか砕くのに使われてきた技術だな」
「それでか。じゃああそこで全身拘束しても意味無かったってことか」
「いや、あれをされると最悪体操服が破れる羽目になってた。まあ足、手、顔あたりの末端からやってみようとは思ってたが。それにあの規模は試したことがないから実際どうなるか」
とはいえ、コスチュームを着ていれば通じない。
「そう言えば、お前火は効くのか?」
「火の方が得意だな。半端な火力じゃ継続的に焼かないと火傷しないし、そもそも人間よりも耐久力が高いからちょっと焼けたぐらいじゃ何も困らん。氷は実を言えばオドガロン、赤い方は冷えるとすぐに運動能力が低下する。黒い方もそれほど得意じゃない。まあと言っても人間よりは全然耐えるがな」
「そうか……。ならこっちも意味ねえか」
そう言って轟は左手を見る。体育祭の時にはまだ全然扱えなかったそちらがわだが、それでもあの時よりは使えるようになっている。と言っても拘束などは右手だよりな部分が多いのでまだまだ制御も練習時間も足りていないのだが。
「映像でエンデヴァーの戦闘を見たんだが、お前は真似はしないのか?」
「……まだ自分の心に整理がついてねえ部分がある。だからあんまり積極的に真似してえとは思ってねえ。けど他の全部で足りなくなったら真似するつもりだ」
「そうか。まあエンデヴァーのやってたことの更に応用ではあるけどやったら使えそうだと思う事があったんだが」
「……聞くだけ聞かせてくれねえか」
そう言う轟に、呼人はエンデヴァーのやっている事の中で見たことと、そこから発展させた自分のアイデアを説明する。
「俺が見た映像だと、エンデヴァーが足の裏から炎を噴出させて飛んでたんだよ。やってることはロケットなんかと同じなんだが。で、それが出来るなら何も足の裏からじゃなくても、それこそ飯田みたいにふくらはぎから踵にかけてとかむしろ脛から放出して高速で蹴り技はなったり、肘から放出して高速パンチみたいな事も出来るんじゃないかと思って」
エンデヴァーの扱い方を見るに、放出する炎を圧縮しながら放つことで推力を生み出しているのだろう。その生み出す被害故に地上付近では多用しかねるとは思うが、一瞬の噴射ですむ蹴り技やパンチであれば周囲への被害も抑えられる。
「前から思ってたけど、百竜って肉弾戦ってか物理戦結構好きだよな」
「これが俺の持ち物だからな。借り物だけに頼るのは好きじゃない」
「借り物って?」
「比喩だ。異形系なんかと違って完全に人間から変身出来るのがちょっと違和感があったってだけだ」
モンスター達の能力を使えば、それこそ轟のように接触しなくても相手を倒すことなんて容易い。ただ何故か、呼人は肉弾戦を好む傾向にあった。あるいは、鍛えているという実感がより湧くそっちの方が好みだからかもしれない。だから必然発想も、物理的に相手を殴り倒すという方向に傾きがちでなのである。
「……ちょっと試してみても良いか?」
「壁の方に向けとけよ。後いきなり足とかから使おうとするな。手のひらで良い」
「わかってる」
頷いた轟は、早速壁に向かってその左の手のひらを向ける。しばらくそのまま向けている様子を見て、嫌な予感がした呼人は捕縛布の扱いについて話していた上鳴を離れた位置まで避難させる。
「え、なんで?」
「良いから離れとけ。後B組のやつも近づけるな」
短い呼人の指示に首を傾げてながらも上鳴が離れていった直後。
轟の手のひらから放たれた炎が一気に拡散し、周囲の空気を大膨張させる。もはやそれは爆発とも言える、というより『圧力の急激な発生、もしくは解放によって生じる熱・光・音を伴う破壊現象』という爆発の定義からすれば、正に爆発とも言えるものであった。
いくら炎の扱いに長けてるとはいえ流石に轟がまずいと考えた呼人は、咄嗟に彼と壁の間に走り込む。そして半人半獣の状態へと体を巨大化し、跳ね返る爆風と熱を受け止める。かなり長時間ためていたから嫌な予感がしていたが当たっていたらしく、その熱量は相当なもので、膨張した空気によって巨大な破裂音が響きTDLの窓ガラスが吹き飛んだ。ちなみにこの窓ガラス、当然ながらただのそれではなく耐久性の高いものではあるが、特に轟がいた付近のものは跡形もなく吹き飛んでいる。
「大丈夫か?」
「いや……お前の方こそ大丈夫か? 俺は取り敢えず氷で防いだが」
呼人の後ろにいる轟の前後には氷の壁が築かれており、吹き飛ばされないように、そして爆風の直撃を受けないようになっている。のだが。
「お前熱風に氷なんてぶつけたらもっと取り返しつかないだろうが。水蒸気爆発って知ってるか?」
水蒸気爆発自体は、水がマグマなど高温の物質に接した際に水蒸気化し、その体積膨張によって発生する爆発現象である。だからこの場合は厳密に言えば違うし、氷が融点を越えて水に状態変化する際にもエネルギーを消費するのでそれほど大規模にならない可能性もあるが、それでも膨張する要素になるものを追加するのはどうかと思う。熱量を吸ってくれるという意味ではありなのだが、炎の熱量がわからない以上は空気が冷えて体積が小さくなる期待よりも『氷→水蒸気』の体積増加の方が怖い。
「どういうことだ?」
「氷が溶けて水蒸気まで状態変化すると余計体積が膨張して大変なことになるってことだ。出すならもっとばかでかい氷を複雑な形状で出して一気に熱量吸い取るぐらいしねえと」
呼人もそれで正解なのかはわからないが、自分が氷を出すなら絶対にそうする。つまり、水蒸気化させない。表面積を増やすのは、それだけ熱に同時に触れる面積を増やすためだ。
「そこまで考えが回らなかった。悪い。なんかお前、八百万みたいだな」
「あそこまで博識じゃないが、自然現象に関してはもともと興味があってな」
どちらかと言えばモンスター達の興味だが。彼らがモンスターだったころは彼らの出来ることを当然のこととして捉えていたのだが、人間になり、呼人の訓練を見ていてそれらをもう一度原理から見つめ直したのだという。その知識もまた、書物の知識と合わせて呼人の中に蓄積されているのだ。
「で、できそうなのか?」
慌ててやってきたセメントスら教師陣とB組生徒に頭を下げ、その後TDLの修理をすぐにしないといけないということでB組の生徒含めて追い出される羽目になった。そのためB組の生徒に再度3人で頭を下げ、寮までの道のりを歩く。上鳴にも簡単に事情は説明した。
「……出来ない事はないと思う。けどまだ溜めると威力がよくわからなくなる」
「それであの爆発ってことね。でもさ、それを調整できれば意外と使える感じなのな」
「ああ。調整できれば使えると思う」
「じゃあ後は、コスチュームの改良案でノズルとアーマーをつけてもらうぐらいか」
普通に今後の方針を確認するのりで呼人がそう言うと、2人が疑問符を頭の上に浮かべるので呼人も固まる。それぐらい考えているかと思ってなんとなく言ったのだが、思いついていなかったらしい。
「何ノズルって。後アーマー?」
「ノズルはロケットなんかの吹き出す部分についてる下に広がった筒みたいなやつだ」
「あーなんとなくわかる」
「それがいるのか?」
「その個性の使い方はやってることがロケットと同じだって言っただろ。だったら吹き出す時もその方向を調整するためのものがあったほうが良い。飯田だってふくらはぎの裏に筒付いてるだろ?」
筒という飯田からしてみれば不本意な言い方をしてしまったが、伝えるにはそれが一番早い。
「なるほど。それを百竜の言ってた肘の裏とか足につけておけば意識もしやすいし実際に吹き出す方向を調整してくれるってことか」
「そういうこと。まあ後は実際に試行錯誤してどこにどんな形状でつければ良いかは試すしか無い」
取り敢えずできそうだという事はわかったが、轟はそれを半身にしか使えない。だからバランスの調整なんかは使いながらしないと振り回されるだけになってしまうだろう。
「それで、アーマーって言ってたのはもしかして緑谷みたいなやつ?」
「正解。いくらロケットみたいに速いパンチが打てても、轟の腕がそれに耐えられない。だから拳をガードするのと後は肘とか肩の保護のためのサポーターも欲しい。後は素手よりもガントレットがついてたほうが殴った時の威力もあがるだろうし」
「また威力の話しとる」
「好きなんだそう言うの。でも実際緑谷だって、確かブーツのつま先が飛び出してショックを与える構造になってるんだろ? 発想は一緒だ。柔らかいものよりも堅いものでぶん殴ったほうが効くし、衝撃を増幅できればなお効く」
まあ相手次第では過剰な可能性もあるが、それこそ轟がそれを使うのは氷での拘束が通じない相手だろう。例えば、クラスで言えば切島や砂藤は期末試験の映像からすれば轟の氷も砕いてくる。後はもちろん呼人。このあたりは、素手で殴っても効果は0に等しい。
「緑谷と飯田にも聞いてみる。ありがとな、一緒に考えてくれて」
「戦い方を考えるのは好きなんだ。氷の方だって、格闘戦になってももっと上手く使えるはずだ」
「ああ。それも考えてみる」
「後いつも言ってるけど、普通の組手な」
「……百竜と話すと悩んでいる時間が馬鹿らしくなるな」
「ほんとそーだよな。自分もなんかしねえとって気がすげえしてくる」
轟と上鳴の言葉に、呼人は小さく笑う。
当たり前ではないか。人の寿命は、たった100年も無い。その中で元気に自分を高め続けられる時間なんて、せいぜい40年。悩んでいる時間など無いのだ。
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そして圧縮訓練の日々は過ぎ、仮免試験当日がやってくる。
「さて、特に話すことがあるわけじゃないが……仮免取ってこい。以上だ」
『短ッ!』
「今更どうのこうの言って変わるわけじゃない。だがこの試験に合格して仮免を取得できれば、お前たちはただのヒーロー志望者からヒーロー見習いに上がることが出来る。頑張ってこい」
相澤の短い激励に、ムードメーカーである切島らが中心となっていつもの『プルス・ウルトラ』を叫ぼうとしたところで、呼人は弾かれたように後ろを振り返る。クラスメイト達と、後何か他所から混ざり込んできた大柄な高校生が混ざった叫びが耳に響くが、それも気にならない。
以前、感じたことのある匂い。それをわずかに感じた呼人は、再度感覚器官を変化させてその元を確認した後相澤の所へと静かに近寄る。
「相澤先生」
「ん、なんだ」
「ちょっとお耳にいれたいことが」
いきなり騒いで揉め事になるのも嫌なので、取り敢えず相澤の耳を借りて報告をする。
「林間合宿に襲ってきたヴィランがいるかもしれません。あのとき蛙吹と麗日と戦ってたやつの匂いです。俺の感覚が正しければさっきうちと一緒に叫んでた坊主頭と同じ学校の長い金髪の女子生徒です」
「……わかった。お前はそれ以上動かず他の奴らと一緒に試験を受けてこい。そっちは俺で確認しておく」
そう言うと会場に向かって歩いていくクラスメイトを指し示すと、自分はおそらくはその高校の引率らしき教師のところへと歩いていった。呼人の言葉を全面的に信頼するわけではないが、懸念があるのであれば確認をしなければならない。教師として、そしてヒーローとしての行動だ。
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一方送り出された呼人は、他のクラスメイトと一緒にコスチュームに着替えて試験の説明を受けていた。非常に眠たそうな人物からの説明を要約すると、試験はたった100人の勝ち抜け。ルールは体に3つの的をそれぞれ取り付け、それに対して1人6個のボールを使って的を狙って当て合うというもの。
勝ち抜けの基準は、『2人倒す』こと。そしてボールを3つの的全てにぶつけられると失格となるため、実質1人で勝ち抜け目標を突破するにはボール6つ全てを使わなければいけない。ただしボール自体には個々人のものなんて判定はないので、他者のボールを奪うことも可能。そのあたりはボールと的それぞれに送受信機があって情報が逐一更新されているため、正確に判定することが出来るらしい。
「1500人中100人か。厳しいね」
「比率はな。うちのクラスは20しかいないし対して問題ないだろ」
ボールとターゲットを受け取ってあちこちへと散っていく、のは爆豪や轟、それに爆豪と一緒に行った上鳴や切島ぐらいで、敵が1480人、実際は1540人の受験者なので1520人だが、相手が多数でありクラスみんなで仮免試験を突破したいため残りの全員が一箇所に集合している。
「百竜は離れとか無くて良いのか? 1人で動いた方が動きやすいだろ?」
「どうせどこにいても的は集まってくるだろ」
一緒にいてもいなくても関係ないと事も無げに呼人は応える。ここの相手に、優しく手加減をしたり欠点を指摘するような親切心は持ち合わせていない。速攻で2人倒してクリアすると、そう決めていた。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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