竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第59話 計画

『ちょっと思ってたのと状況が違うことになった。お前、週末出てこれるか?』

 

 呼人がそんな連絡を受けたのは、インターンの説明会があった夜だった。

 

 夏休み、『全てを見る』個性の持ち主と出会って話した呼人は、神王寺やモンスター達と激しい議論を躱していくつかの今後の方針と、当面の活動について話し合っていた。その中のいくらかについて早速というのはなんだが方針が狂い始めていた。

 

 そして週末、外出許可を取った呼人は、久々に実家とも言えるかわからないマンションを訪れていた。

 

「まず一個目は例の組長だが……どうも再起不能になってるらしい」

「まだ歳は大丈夫じゃなかったのか?」

「いや俺もそう思ってたんだが、『星詠み』に見させたところ、どうも何回やっても目的の人間が見えないってことでおかしな話しだと思ってたんだが、潜って探ってみたところ姿が変わってた。後は植物状態だな。裏であの状態で生きてるってことはまだ権力は持ってるみたいだが」

「実質動けない、と。いきなり詰まったな」

 

 神王寺の前に置かれたタブレットに移っているのは初老の男性の写真。古くからの神王寺の縁故のある人間であり、神王寺曰くかなりの実力者。今回の件でちょうど良いと連絡を取ろうとしていたのだが、どうもそうでは無かったようだ。

 

「後は周辺の人間を締め上げて吐かせたんだが、どうも後継者と方針の違いで揉めてたらしい。で、この後継者が先日ヴィラン連合と接触した」

「……方針が逆ってことは、ヴィラン連合と手を組むってことか?」

「そんなところだ。一応揉めて一旦別れたみたいだが。で、後はそこを怪しんだヒーロー事務所が調査してる。言っても裏の組織だからな。やくざ者なんてのは」

「……」

「そいつらとコンタクトを取れないわけじゃねえが、どうする?」

「いや……ヴィラン連合ともめて大丈夫なぐらいの勢力があるなら何しようとしてるか探っておいてくれ。後はできればそれを当のヒーロー事務所に垂れ込ん、でおくともう使えなくなる可能性が高いんだよな……」

 

 困ったもんだと呼人は頭を悩ませる。ここに至ってはモンスター達も頭の中で議論を始めるが、いきなり名案というものは浮かばない。

 

「その後継者に関する情報は? 何かあるか?」

「組長もそいつを大切にしてたし、そいつも相当慕ってたらしい。揉めたと言ってもそいつが手を出した感じじゃなさそうだ。後は個性だが、どうも触れるだけで相手を殺したり、後はよくわからないことが出来るらしい。このあたりは多分深いところまで踏み込まないと駄目だな。今『星詠み』にそいつの過去を見てもらってる」

『――――――』

「組長を慕ってたからこそ、ってのはありえないか? カタギに迷惑かけないタイプの人なら、もめたのはカタギと組織の拡大の天秤な可能性がある」

 

 モンスターからのアイデアを伝えると、神王寺は難しそうな顔を一瞬するが、タブレットを机の上に投げ出して椅子にもたれかかる。

 

「どっちにしろ、見た情報がねえとどうしようもねえ。あいつあんな山奥なんかに住みやがって。もうちょっと行きやすい場所に住んで欲しいぜ全く」

「人の存在がうるさくてたまらないんだろう? 仕方ないだろ」

「お前と違って俺は足回りもよくねえんだわ。あ、でもよ」

 

 そう言って今度は神王寺は机の上に乗り出す。

 

「取り敢えず何人か呼べた。モーメントとリザード、後はモーメントの連れ子でまだ8歳のやつだが、その3人がもう日本入りしてて、後はまだ準備中だけど前向きなやつが何人か。あ一応メンバーこれな」

「なんで子供を連れてくるんだ」

「モーメントが知り合いで母親の虐待から助けたらしい。結構個性が使えるみたいでな。それを母親に良いように利用されてたんだとよ。放っておけないんだと」

 

 そう言ってタブレットのページを切り替えると、そこに一人分のデータが表示される。それを読み込んだ呼人は全てを記憶すると、神王寺に突き返した。

 アメリカはヒーローの活動こそ日本よりも更に活発であるが同時にヴィランの活動も活発であり、更にその社会性故か落ちぶれたものに救いの手があまり差し伸べられない環境にあるらしく、そこに小さな子供を身寄りなしに放ってということだろう。

 

「絶対表にいさせたほうが良い人間だな」

「けどモーメントから離れたがらないらしくてよ。俺に恩義があるってんでしばらくは手伝ってくれるが妹は裏に引き込まないで、なるべくなら光の当たる場所に出してやりたいと言ってたな」

「妹って……まあそういう関係性か。となるとやっぱ、前言ってた表側の教育出来る人間がいるよな……」

「俺じゃ駄目か?」

「お前は俺の計画に乗ってる時点でだめ。特に表に帰すことを考えれば、環境も環境になるだろうし相当なヒーローに来てほしいんだけどな……」

「ヒーローさらって来いってか」

「いや、事情話したら見せてくれそうな奴。なんなら『エネルギー理論』まで教えても良い」

「お前それ理解じゃなくて脅しじゃねえか。『手貸さなかったらどうなっても知らないぜ』ってなもんで」

「まだ俺がそっち側に入り込むとは決めて無いからな。まあ、最悪お前が治したヒーローからその恩にひっかけてまともなやつを……インゲニウムとか確か人格者だったよな。てか死体になった後に盗めば良いんじゃねえのか」

 

 呼人がそう言うと、神王寺はこれまた嫌そうな顔をする。

 

「あのな、俺が協力するって言っても個性の安売りはしねえからな? それにどっちにしろ現役のヒーロー勧誘するのは上手くねえって。まだ記憶弄れるやつも来てないしよ。逃げられて調査されたらことだって」

「目処は? ドリームイーターかナイトメアが勧誘できそうなんじゃなかったか?」

「どっちも今の組織との関係がまだ断ち切れないらしくてなあ。俺がちょっと行ってくることになりそ。下手に揉めると向こうで立ち上げ時に苦労しそうだしよ」

「アメリカのアンチルーラーズと後はスペインのレーバテイン、エジプトのアッラー・アクバルとは一応連絡は取れてんだよな?」

「他にも何箇所か。連絡自体は取れてるがどこもそんな慈善事業に手を出せるほど余裕はねえって話ばっかだな。結局はヴィランであることに変わりはねえし。今お前が言ったところはこっちから手さえ貸せば前向きだけどよ。アクバルなんて半どころか全宗教団体だぜ」

 

 裏側にいる人間というのは誰もがそれぞれに目的を抱えているわけで。中には目的なんて大層なものはなくただ暴力を解放したいという相手も多いが、当然ながらうまく使うのなんてそうそうは出来ない。

 

「後は……あれだな。ビルドメイクはまだ情報収集するからつってしばらく手が離せないらしい。とっとと潰されてくれねえかなあの組織」

「確か、異能解放軍だったな、そいつがいるのは」

「そ。正直ヴィラン連合より大事だぜあっちは」

「そこまで膨れた根気と努力に敬意を評したいけど思想がな」

「お前とは真逆、ってな。困った話だ」

 

 はあ、と2人は揃ってため息を吐く。

 

「お前、暇なら裏闘技場に潜っていい人材探してくりゃあ良いじゃねえか」

「んー……お前は?」

「万が一殺された時に生き返ると事だ」

「それも1つの手ではあるが、歩兵にしかならねえだろそれじゃあ」

「手が足りてない人間の言うことじゃねえな。俺のつてが無けりゃあそもそも勧誘だって出来てねえぜ?」

「それは素直に感謝している」

 

 呼人が考えていることを話した後。色々な方針や社会に存在する様々な組織のこと。それらを教えてくれたのはずっと海外や日本で裏に潜っていた神王寺だった。呼人もそこで初めて知らされたのだが、特に海外においては神王寺のヴィラン名というのは影響力が高いらしい。それこそオール・フォー・ワンと比べれば小さいが、それでも名前を聞けば動いてくれる人間はいるぐらいの。ヴィランと言っても実際はそういう人間と交流があっただけで本人が悪事を積極的に働いていたわけではないのだが。それでもヒーローとしての知己よりも暗い部分の知己の方が多いそうだ。

 だから計画を立てた後も、実際に動き続けてくれているのは神王寺なのである。 

 

「まあ、後は他の奴らの返事待ちだな。何人かは答えてくれるとは思うが」

「まあ方針が完全に固まるまでの時間稼ぎは任せる」

「お前もやるってんならいつまでもそっちにいないでこっちに来いや」

 

 そう言われてはじめて、呼人は罰の悪そうな顔をした。

 

「せめて今年までは、行っておきたいな。結構楽しいんだよ今」

「知っとるわ。ったく、こんな馬鹿みたいこと考えねえで普通にヒーローになっとけば良いのによ」

「それで救われない人間も、救われたのに恨む人間もいるってのはどうしても気持ち悪いんだよ。だからこれは、ちゃんと俺の意思だ」

「そうかよ」

 

 自分が楽しいことよりも、自己に課した指名を優先する。基本的に自己中心的なはずの百竜呼人という男は、何故かそう出来ているのだ。

 

「あーそれと個性特異点の方はどうにかできそうか?」

「理論的には、出来るらしい。ただまだ俺が扱いきれないな。やるにしてもルーツの力を借りないといけないし場所を考えないとな」

「そーか」

 

 しばし沈黙が降りた後、どちらからともなく席を立って料理を始める。適当に野菜を切って肉と炒め、そこに米を放り込む。炒飯を作りながら、神王寺はもう一つの件についても話し始めた。

 

「後ヴィラン連合の方だが、こっちで繋がってた奴が切られた。多分あの義爛って名のブローカーの仕業だとは思うが……あいつぶっ殺しときゃ良かったかな」

「短気か。結局まだヴィラン連合は存続してるんだろ?」

「今も裏での影響力は上がり続ける一方だ。名前ばっかり先行してる状態だけどな。オール・フォー・ワンが死んだ後にここまで成長するとは正直思ってなかったわ」

「お前ももうちょっと日本に寄り付いとけばよかったのにな」

「こっちの裏にはずっとあいつがいたからなあ。どこに手を出しても追手が来やがるし、めんどくさくなって逃げちまった」

「『星詠み』さんには迷惑をかけるな」

「あいつの容量も小せえからなあ。あんまり情報収集がはかどらねえのが辛いとこだ」

「俺からもよろしく言っておいてくれ」

「お前が来てくれれば喜ぶぜ。見ようとしても見えない相手は初めてだっていつも言ってるよ」

「そうだな」

 

 軽口のように交わされるのは、ヒーロー達が血眼になって追い求めている情報だ。だが彼らは、それを明かすつもりは今はない。裏側にも、道理があるとわかっているから。

 

 救われなかった人間がそれを恨むのは当然の権利であるし、救おうと活動したところで救いきれないものも、人の世界で行きていけないものも現実に存在する。

 それらをすべて打倒し、一般の人たちに幸せと平和を享受させようというのが、オールマイト、そして現代のヒーロー達のやり方だ。

 

 だが、残念ながら呼人はそれには賛同出来なかった。確かに、人がこの数で社会を形成して生きていくためには制限されなければいけないものは多々ある。例えば人を傷つけることを趣味として楽しんでいるとか、そういうのは呼人も叩きのめせば良いと思う。

 

 だが例えば。多くの人間が夢をいだき、大切にするという恋心。それが歪んでしまい、それを持つこと自体が罪になる人間が居たとき、彼女は一生自分を抑え込んで生きなければならないのだろうか。社会一般の常識で言えばイエスだ。

 

 だが呼人から言わせれば、ノーだ。だってそれは、公平じゃない。人の抱く感情を制限されなければいけないというのは。

 

 あるいは、誰も助けてくれない中救われて、色々と教えられた相手を大切にするというのは? 

 

 そんなの、人間であれば当然のことだ。

 

 だが同時に、過去のオール・フォー・ワンのようにヒーローすら及ばないほど強力で大規模な被害を及ぼす存在が出てこられては困る。

 

 ただ力を持て余したヴィランは適度な脅威として暴れさせ、本来はそちらに染まらなくても済んだ子どもたちを救い出して光の当たる場所へ返す。そして人の世界ではみ出す者達は、ヴィランとして生きていく。そして生きる人々は、今よりも生きることに価値を見出すように、なってくれると嬉しい。方針もぐちゃぐちゃで、何より根底から矛盾しているような計画が、呼人の理想なのだ。




このあたりから独自展開全開で参ります。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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