竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第60話 異国の少女とモンスター

 休日に呼ばれてから更に数日後。インターン先を神王寺の所と決めた呼人は、日を空けずに彼のところに入り浸っては議論を重ねていた。

 

「あーそういやこの間の件取り敢えず『星詠み』に聞いてまとめといたぜ。一応これ資料な」

 

 実家とは別に新しく神王寺が借りた拠点で情報の整理と媒体への書き込みを行っていた呼人は、神王寺から手渡されたタブレットにすらすらと目を通す。そこには、当該ヤクザ組織『死穢八斎會』の幹部クラスの構成員と植物状態の組長に関する情報、そしてそれに関するヒーローの調査の状況、そして一人の少女について事細かに記録されていた。この量の情報を書き出してくれたのは『星詠み』も神王寺も努力してくれたのはわかるのだが。

 

 それに目を通すほどに、呼人の額に深い皺が刻まれていく。

 

「乗り込むか?」

「……いや。ナイトアイ事務所に匿名で情報回しておいてくれ。後モーメントは、今日合流出来るんだよな?」

「そろそろ来るはずだ」

 

 神王寺の答えに、呼人は大きく息を吐いて脳内を整理する。

 

「八斎會が制圧されたら鉄砲玉と若頭、組長を回収しておいてくれ。その後は組長を若頭に起こさせて処遇は組長次第、で良いか?」

「治崎が組長を助けなかったら?」

「ぶん殴って意地でも治させ―――」

 

 言葉の途中で弾かれたように呼人は壁の方を向く。突如としてそこに気配が3人分出現したのだ。

 

「治させ、がなんだって? 俺の妹のことなら聞きづてならんなあ」

 

 そのうち一人の、フードつきの長いコートを纏った男がそのフードを降ろしながらそう呟く。フードの下から現れたのは、陽気な外国人の顔で、とても“イイ”顔で笑っていた。

 

「お前の話じゃねえぞモーメント。お前の大事な妹が怖がってんじゃねえか」

 

 そう言われて慌てて彼は自分のズボンを掴んでいる少女の方を振り返る。

 

「『悪いアーニャ! 怖がらせちまった!』」

「『おじさん、もうそんな怒らないで。私なら大丈夫だから』」

 

 2人の会話に、呼人は無粋だと思いながらも割り込む。英語で話していた2人だが、呼人も簡単に話すぐらいはわけない。

 

「『大丈夫じゃないぞ』」

 

 そう言って少女の前にしゃがみ込むと、その閉じた目と視線を合わせる。

 

「『お前が望んでないのに、治せって言うのはおかしなことなんだ。嫌な事はちゃんと嫌だと言えばいい。俺は百竜っていう。よろしくな』」

「『よ、よろしくおねがいします』」

 

 良い子だ、と呼人がアーニャと呼ばれたモーメントの妹の頭を撫でるのをモーメントは険しい目つきで、そしてもうひとりの、何故か白のスーツを着た男は微笑ましそうな表情で見ていた。

 

「僕の新しいリーダーさんは、随分紳士なようだね」

「あんたがリザードか。あんたもよろしく頼む。それにしてもそのスーツはなんだ」

「美しい女性と出会う時はちゃんとした服装にしないと。『チャオ、かわいいお嬢さん』」

 

 しゃがみ込んだ呼人と違って、あくまでスマートに腰を曲げ、リザードはアーニャと顔を合わせる。スペイン人は情熱的な人間が多いと聞くが、彼はどちらかと言えばイタリア人よりであろうか。

 そしてそんなリザードを、モーメントは表情を険しくして睨んでいる。

 

 キャラの濃いクラスメイト達よりも更にキャラの濃い新メンバーに、呼人は深い深い溜め息を吐いた。

 

 

******

 

 

 ちょうど昼時ということでアーニャの好きなようにピザやハンバーガーなどをデリバリー注文した後、呼人がアーニャと別室で遊んでいる間に神王寺に細かいことを説明してもらうことになり、呼人は自分が考えた方針を細かく伝えた後、3人で議論してもらうようにとタブレットも残してきた。まだ、積極的に関われない自分が決めて良い段階ではない。それに人数も多くない。だから力を貸してくれるメンバーで、という判断だ。

 

 そして別室に移動した呼人は、並べられたソファーにアーニャと隣り合って座っていた。

 

「『何して遊ぶ? アーニャ』」

「『え、えっと、百竜、さん?』」

「『なんだ?』」

「『遊ぶって、何すれば良いの?』」

 

 その質問に、呼人は一瞬言葉を失う。だがすぐに、モンスター達の提案を受けて笑う。

 

「『じゃあ、そうだな。俺と、俺の仲間たちと一緒にまずは遊ぶってことを覚えようか。ほら、両手を出して』」

「『こう?』」

 

 アーニャが困惑しながらも差し出した両手を、呼人はそっと握る。モーメントから軽く知らされた話で、彼女の個性と、それ故に彼女が受けてきた扱いは知っていた。とても強力で、人の為になる個性。それでも、それを持っているために人に使われ、笑えない子供というのはいる。そんな子を助けるのもまた、呼人の望みだった。

 

「『ほら、じゃあおいで、俺の仲間達のいる世界へ。俺の手に集中して』」

 

 言われて、やり方がわからないのか眉を少ししかめていたアーニャの体から力が抜け、呼人の方へと倒れ込む。その手を呼人は、しっかりと握っていた。

 

 

******

 

 

「『ここはどこ?』」

「『ここは俺の心の中。そして、俺の仲間達がすんでる場所。』おーい、キリアとキリン、あとケルビと……とにかく小さい子と遊べる奴ら来て」

 

 呼人の呼びかけに応じて、心の奥底からモンスター達がそれぞれに姿を表す。その気配に怯えたのか、アーニャが呼人の後ろに隠れる。

 

「『人? でも変……』」

「『アーニャ、この人達は元は人じゃない。でも、今は人として動けるんだ。そうだな。例えば犬、わかる?』」

 

 アーニャが頷いたの確認して、呼人は説明を続ける。

 

「『犬が、人間みたいに話して、一緒に考えたり遊んだり出来るんだ』」

「『動物さんと話せるの?』」

「『まあ、そんな感じだ。ほら、行っておいで、皆も待ってくれてるよ』」

「『でも……』」

 

 何か訳のわからない状況に怯えるアーニャだが、キリンとキリアが暖かな、草原の上を走り回ったり、一緒に川で遊んでいるイメージを送ると、それに惹かれたのか少し呼人の背中から顔をだした。その手をそっとケルビが掴み、更にポポがその頭を撫でて連れて行く。

 

 その背中を見送った呼人は、大人の女性人格を持つモンスターたちから性急過ぎると怒られていた。そもそもこの精神世界に引き入れるというのは、夏休み中、モンスター達から秘密を明かされたようやく使えるようになった力であるし、まだ引き入れたことがあるのは神王寺と、『星詠み』の2人だけ。それに怯えている少女を更に別の場所に連れてくるのはいかがなものかと。

 

 そんな説教を受けながら、呼人は草原の花畑で遊んでいる子どもたち(に見えるし人格もそうだが経験は一人を除いて不老不死級)の姿を眺めていた。

 

 

******

 

 

 やがて、説明が終わったと神王寺が呼びに来たので呼人は意識を失ったままのアーニャの両手を握ったまま複製した腕で抱えあげ、元の部屋へと戻る。最初からこうしていれば話も聞こえないし良かったのではないかと。

 

 そのアーニャを見たモーメントがガタリと大きな音を立てて立ち上がるが、別に複製した腕で彼も精神世界に案内して楽しそうにしているアーニャの姿を見せて納得してもらった。

 

「で、モーメントは取り敢えず計画は良いか?」

「問題ない。そこまでアーニャに優しくしてもらったら手貸さんと男が立たないだろ」

「モーメント君は随分妹さんが大事みたいだね」

「当たり前だろうが」

 

 ふふっ、と不機嫌そうに照れるという器用な真似をするモーメントを見たリザードは笑う。

 

「リザードは取り敢えず当初の計画通り……」

「救われない子の目処立て、でしょ。わかってる。ついでに美味しいもの食べさせてあげるぐらいは許してほしいけどね」

「まだ助けた後迎え入れる体勢が整ってない。場所の選定と建築物作れる人間が来たらとっとと作りたいがそれも人員がな……」

「うーん、じゃあ僕が優しいレディを連れてきて上げれば良いのかな?」

「だからそういう人材がいるなら先に教えてくれと―――」

 

 情報を後出しにするリザードに神王寺が苦言を呈するが、彼の表情は変わらない。

 

「言っておくけど、彼女は裏の人間なんかじゃないからね。とても優しい、一人の女性さ。君たちのことを信用してない段階で教えるなんて出来ないよ」

「じゃあ取り敢えず信用はしてくれた、と」

「子供を大切にしてくれるのはわかったよ。と、言うことで僕は一旦帰国するから」

 

 そう言って立ち上がったリザードは、他の3人が止める暇も無い中部屋から出ていってしまう。なんというか、会話のあちこちから気障さの感じられる人間だった。

 

「あー……まあじゃあ俺の方もまた何かあったら連絡してくれよ。アーニャと住める家も探しとかないとな」

「ここは一応そのつもりで借りたんだぜ。俺達の議論場所にもなってるが、そのために部屋が複数あるんだ」

 

 まじで! と驚くモーメントからは、その容姿以外ではとても外国人という様子は感じられない。言葉の通じ無さで言えば、ラージャンとかガルルガとかの方がもっと異邦人感激しいのだ。

 

「けど、見て思ったんだがこの治崎って組の頭、結構やばくないか? トレイターとか百竜なら―――」

「モーメント、この国では神王寺かジ・アドベンチャーで通してるんだ。裏に完全に潜るまではその呼び方はやめてくれ」

「まあお前ら2人なら死ぬような事はねえけどよ。ヒーローも多数死ぬぜ? これ相手じゃあ」

 

 『星詠み』が見る映像は細部に渡り、更に繰り返し、あるいは減速しながらみることも出来る。だから、特に脅威たりうる戦闘能力の部分に関しては丁寧に見て報告をくれている。それによれば、死穢八斎會の若頭、現在の実質の頭領の個性は、触れただけで相手を殺すことが可能で、更に素の戦闘能力ですらずば抜けていると来ている。ヒーローの1人や2人、簡単に血溜まりに変えることが出来てしまう。

 

「お前らもヒーロー死なすつもりはないんだろ?」

 

 モーメントが懸念しているのはそこだ。自分は悪事にも手を染めろと言われれば染める。だが少なくとも現行の彼らの活動方針では、人が死ぬことを積極的に目指しているわけではないはずだ。

 

「そこは俺達が手を出せるところじゃない。ヒーローの作戦が成功するかどうかって話はな。俺達が狙ってるのは作戦終了後のメンバーの奪回。その過程で死者を出す気こそ無いが、それ以外で死ぬ分にはどうしようもない」

「なーんてことを言ってるけど、怪我人に関しては死にかけてるのは俺が後でちゃんと治しに行くさ。ヒーローも端から殺されるだけの相手を向かわせないだろ。せっかく確保した容疑者を奪うわけだしそれぐらいのお礼はせんとな。それに、まあ……」

 

 なあ? と目線で尋ねる神王寺に、呼人は頷く。

 

「この程度の相手を倒せないヒーローばかりじゃあ、そもそも俺達の計画の一個が若干怪しくなる。そういう意味でも、試させてもらうよ」

 

 さいですか、とモーメントは頭をかく。そう言うことであれば自分が口を出すことでもないだろう。どうせモーメントは、半分雇われて、そしてあの国、自由を謳い、傷つけることまでもが自由だと言わんばかりの国にアーニャをあれ以上いさせたくなかったのだ。それが住む場所と食料、ついでに給料も出してもらえるとなれば願ったりだ。この国なら、すぐにちゃんとした学校には行かせてやれないまでも勉強は出来るし、この集団を抜けた後はそれこそ学校に通える。

 

 そんな、あくまで損得勘定でモーメントは呼人達の元へとやってきたのだ。

 

 

******

 

 

「我々ナイトアイ事務所は、およそ2週間ほど前から死穢八斎會という指定敵団体について―――」

 

 一方こちらは、裏側であんな計画が進行しているとは思いもよらないナイトアイが集めたヒーロー達が、死穢八斎會についての説明を受けていた。

 死穢八斎會という組織について調べたきっかけ、そして現在裏でどのような活動をしているかなど、淡々とした説明を行っていく。更に、当該団体がヴィラン連合と接触していることが説明されると僅かに部屋がざわついた。

 

 そしてその後説明が続き、最後にサー・ナイトアイが口を開く。

 

「そして先日ですが、この件に関して匿名の情報提供がありました。匿名のメールで送られてきたので送信元はわかりませんが、死穢八斎會の主力人員の個性、来歴、そして拠点などについての詳細な情報が書かれていました。そして最後に、『子供を泣かせたらぶっ殺す』という一文が付け加えられていました」

 

 サー・ナイトアイの発言に、それほど広くない会議室がざわめく。一体誰がそんなことをしたのかと。あるいは、当然ながらそのヒーローもこの部屋に呼ばれているのだろうと。

 そんな考えに、ナイトアイは釘を刺す。

 

「あらかじめ言っておきますが、ここにお呼びしたヒーローの中にその情報の提供者はいません、というよりは、その情報は真偽のほどは置いておいて、精度で言えばとても外部の人間と思えるものではなく、そして内容で言えば、内部の人間が書くとは思えないほど重要な秘密に触れています。よって、その内容を精査、再調査して信頼できる情報を獲得するというのも、先程述べた調査の目的となります」

 

 そう説明したナイトアイにロックロックが異論を唱える。

 

「そんな情報危なくて使えるわけねえだろうが。そもそも罠だったらどうするって話だ」

「そうです。ですからあくまで調査はフラットに。ですが、場所の調査が進むほど情報の信憑性が増します。そしてその情報には、救助対象の少女の個性、加えて調査で判明していなかった幹部の事も記載されていました。これらが事前に確認できていれば、対策を立てることが可能です」

 

 救助対象の少女の個性。その言葉に、緑谷たちは、つい先程述べられた少女に対するヴィランの仕打ちについて思い出す。

 

『少女の血や組織を使って作られた弾丸』

 

 それが事実であれば、一体その個性はどんなものなのか。それを思わずと言ったように緑谷が尋ねる。

 

「あの、ナイトアイ、そのエリちゃんの個性って、なんなんですか?」

「……情報を信じるとすれば、巻き戻す個性だ。怪我人を怪我直前の状態まで巻き戻す。そして、この情報のせいで情報の信頼度が大きく下がるが、初めて個性が発現した時には人間を1人、おそらく精子と卵子以前の無の段階まで巻き戻して消してしまっているようです。また治崎は、この個性の巻き戻す対象を限定し、人間の中の個性因子だけを巻き戻すことで、世界から個性という存在を消そうとしているようです。詳細は後ほどお配りします。信憑性の判断も含めて皆さんには目を通しておいていただきたい」

 

 あまりに細かすぎる、そして壮大過ぎる話に、誰もが流石に適当なネタだろうとため息を吐く。だが同時に、それを匿名で、そして当たっている部分もあるというのがおかしな話だ。

 

「可能な限りの早期解決を目指します。ご協力よろしくおねがいします」

 

 とはいえ、その情報の信憑性に関わらず情報の裏を取って少女を救い出すことには変わりない。

 

 ヒーロー達が動き出す。一人の少女を救うために。




あけましておめでとうございます。
年明けそうそう精神が辛いです。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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