竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第61話 死穢八斎會

 そこから数日。ジ・アドベンチャーについて日本中を巡っていることになっている呼人は、たしかに手空きの時間は神王寺とともに県内の農村部などに赴いてはちょっとしたパトロールなどをしながら日を過ごし、拠点に戻った後はアーニャとモンスター達を遊ばせながら神王寺や星詠みからもたらされる情報や、リザード、モーメントからのちょっとした報告を聞く日を過ごしていた。

 この間インターンということで長期の公欠はおかしくないのだが流石にクラスメイトに心配されたものの、休み無く日本中を巡っていると言っておいた。はっきりと嘘をつくのは初めてだが、あまり心地の良いものではないのだなと、初めてそれを実感したが目的が変わるわけではない。

 

 そして見張っていたモーメントからヒーロー達が勢揃いしていると連絡が来た早朝。呼人も彼に連れられてそれが見える場所に、と言ってもはるかなるモンスターの視力なので距離にして1キロ以上離れているが、現場が見える場所まで行く。

 

「んじゃあ、俺は全部終わった後に犯人の奪取、っと」

「ああ。病院まで搬送された後で構わないからな。あまり早い段階では無しだ」

「そこまで気を使うならやらなけりゃあ良いと思うんだが」

「歪んだ理想なのは理解してる。じゃあ、よろしく頼んだぞ」

 

 はいはい、とモーメントは首を軽く鳴らすと姿を消す。呼人ほどの視力が無い彼は、もっと近くで見ていないと状況がわからないのだ。

 

 そして戦闘が始まる。死穢八斎會の人間も抵抗はしているようだが、さすがヒーロー達と言うべきかすぐに制圧し邸内に侵入していく。

 

 そこから先は外から見ているだけの呼人には正確には計れない。何故なら、死穢八斎會の拠点である建物は地下に広大に広がっているからだ。若頭である治崎と、鉄砲玉と呼ばれる実力者連中の一人がそういう物を自由に改変できる個性を持っているので、それを使えばそうした構造を秘密裏に作ることも容易い。

 

 やがて、しばらく見ていると地上の方で動きがある。

 

「蛙吹と、麗日。ちゃんとやれてるな。にしても、あれが例のドラッグか。いびつだな」

 

 ポツリと漏らした言葉は、風に溶けて消えていく。

 

 呼人は、モンスター達から個性に関する重大な秘密について聞いた時に、それに関する知識として神王寺の知っている個性に関与する薬などについても聞いていた。そしてそういうものは、撲滅すべきものだと考えていたので、現物の効果をその目で見ることが出来たのは大きい。

 

 『エネルギー理論』と呼人たちは名付けているが、個性にはちゃんと来歴があり、その源を、仮にエネルギーと呼ぶとする。それが個性を使える原因なのだが、それが物理的に見える場所に因子として出ているのを良いことに好き勝手にそれをいじろうとする人間が多いのだ。特に裏の人間に多いのは、彼らが倫理を平気で踏みにじるから。そして、個性なんて強い方が暴れやすいから。いずれはそれらも制圧したいとは考えているが、できそうにない。とすればそうしたものは、特に危険な物を裏から排除すべきだとそれに関する情報収集も呼人は神王寺を介して行ってもらっている。

 

 その活動はヒーローのようなもので、実際にヒーローとして活動すれば良いかも知れない。だが、呼人はそうした歪みと自分が考えたものは消しつつも、一般的なヴィランを捕まえるつもりは全く無かった。だから、ヒーローではない。文字通り個性を勝手に使って暴れるヴィランとして、勝手に気に入らない物を叩き潰していくのだ。

 

 やがて戦闘は更に移行し、地面を突き破る形で何かが地面から生えてくる。そこにいるのは、少女と、死穢八斎會の首領であろう男と、そして緑谷。

 

「おいおい……」

 

 まさかあの治崎を相手にまだ学生の緑谷が先行しているのかと呼人は思わず言葉を漏らすが、動きを見れば、技術的には拙いものの少なくともパワーアップの出力的に十分なものがあるように見える。おそらくは、更に四肢を壊さないまま個性の出力を高めることに成功したか。

 

 そしてその後、少女は緑谷の手によって奪還され、戦闘は死穢八斎會の敗北で終わる。死者は、少なくとも見える範囲に消し飛ばされた人間はいないし、死の気配はない。数名重傷者や疲労困憊の人間がいる様子だが、

 

「満足かリーダー」

「ああ。奪還は?」

「しばらく空けてからって言ったのはお前だろ。先にあんたを運んどこうかと思って」

 

 奪還した後は、全員を郊外の廃墟、と言っても神王寺の手で内装がかなり修繕されているところへ運び、そこで事を済ませる算段になっている。運搬は基本モーメントと個性持ちの対策の為に神王寺が向かうことになっている。久しぶりに裏の衣装を切ると神王寺が柄にも無く感慨深そうにしていたのは見ていて奇妙な気分だった。

 

「わかった」

「そんじゃま失礼して」

 

 モーメントが呼人の背中に手を当てた直後、視界が二転三転する。幾度かの変化を経た後、そこはそれなりの広さがある部屋だった。

 

「ほんとに希少な個性持ちを引き入れられてありがたい限りだ」

「礼ならアドベンチャーに言っておけ」

「そうする」

 

 じゃ、と短く言うと、モーメントは再び姿を消す。

 

 モーメントの個性は『瞬間移動』。文字通り想像した先に移動する。色々と移動先の条件はあるらしいが、訓練によって最大射程1キロ以内であればいつでも移動できるとのことだった。そしてクールタイムは最大射程でも1秒程度。また触れたものを最大人間3人程度の重量で運ぶことが出来る。まあなんというか、彼も何故表にいないのかと聞きたくなるような人材だ。事件現場への移動なんかも考えて、彼も引く手あまたの人材であったろうに。

 

 しばらく待っていると、次々と、担架に似た拘束具で拘束された死穢八斎會のメンバー達が運ばれてくる。対面の時は近い。

 

 

******

 

 

「お前、なにもんだ」

「oops。なんか良くねえとこに来ちまったみたいだなこりゃ」

 

 幹部連中の運搬を終え、最後に残った若頭治崎のところへとワープしたモーメントは、そこでめんどくさいものを見てしまった。ヒーローらしき人間が、ヴィランらしき人間の個性によって閉じ込められる瞬間だ。別に知らない人間の犠牲はどうでもいい、とてもどうでも良いのだが、さてヒーローが犠牲になるとはリーダーも考えていなかったなと首を捻る。結果。その圧縮された空間へと飛び込んでヒーローを回収して外に飛び出した。

 

「あっづ!! 燃えてんなら先に言えや」

 

 回収したヒーローは、下半身が焼けているものの一命を取り留めている様子で取り敢えずそのへんに放り出しておいた。そして改めてヴィランらしき連中、いや、ヴィラン連合へと向き直る。

 

「あー俺は取り敢えず治崎を一発ぶん殴りてえからって連れてこいって言われたんだが、お兄さん方もしかして治崎君に用があった感じ?」

「……用はあるが連れて行くつもりはない。こっちの用がすむまで待っててくれるならこっちも手出しはしない」

「あ、じゃあそういうことで。でも殺すのは勘弁な。死体殴っても楽しくないから」

 

 そう言ってモーメントは、壁の花ですよとでも言いたげに倒れたトラックにもたれかかる。胡散臭そうな表情で見ていた死柄木だが、本気でモーメントが邪魔しようとしないのを見て取り死柄木へと近づいていく。コンプレスの拘束をたやすく突破し、かつ目にも止まらぬ速度でヒーローを救出した相手をすぐに相手したくないというのもあった。死柄木は、いきなり喧嘩を売らないということを学んでいるのだ。

 

 だが、当然興味は抱く。その個性にも、実力にも。

 

 治崎を散々煽りその手を破壊した後、死柄木は改めてモーメントを振り返った。

 

「あんた、どういう個性か知らないがヴィラン連合って知ってるか?」

「あー一応。つっても俺アメリカンなもんであんま詳しくないんだわ。すまんね」

「そうか……。あんたなら思想次第じゃあ受け入れてもいいかと思ったが、興味が無いんじゃあ仕方ない。帰るぞお前ら」

 

 すぐに勧誘を諦めて、死柄木は去っていく。個性も得体も知れない人間と同乗するつもりも、連絡先を渡すつもりもない。そんな愚は犯さない。場面が悪かった。ただそれだけのことである。

 

 ヴィラン連合が去った後、モーメントは拘束された治崎に近寄る。

 

「何者だ、お前は。……ヴィラン連合じゃないのか」

「ちょっと訳あり。取り敢えず失礼するぞ」

 

 死柄木らによって切断された手を避けて腹に手を当てたモーメントは、個性を使用して彼を運ぶ。生きていれば、というか最悪肉体があればどうってことないのに、ほとんど五体満足で回収できたのは運が良かった。後は、アドベンチャーとリーダーの仕事である。

 

 

******

 

 

 個性で顔を変質させて隠した呼人は、次々と運ばれてくる死穢八斎會の人間にお前らは何者かと問い詰められていた。中には、クロノや窃野など暴れようとする人間もいたので、個性を無力化した上で穏便にぶん殴って黙らせておいた。神王寺はニヤニヤと面白そうに眺めているし、殴った相手も何のつもりで連れてきたのかとごねてめんどくさい。

 そうこうしているうちにモーメントが治崎を連れて戻ってきて、後は寝たきりの組長だけとなった。

 

「若頭!」

 

 両腕を弾け飛ばされた治崎の姿に、鉄砲玉の面々がざわめく、というか数名は駆け寄っているし、個性が使えなくなったということにわずかに驚きの声を漏らすものもいる。そんな中、神王寺が彼の前へと歩み出た。

 

「腕を治してやる」

「は?」

「俺なら腕を治してやれる。だからお前は、組長を治してくれや。知り合いなんだよ、古い」

 

 神王寺の言葉の後、しばらく黙っていた治崎は絞り出すように答える。

 

「……治せ」

 

 まだ、組長に返せるだけのものが出来ていない、どころか全てを失ってしまった。だが、腕はこのままでは絶対に治らない。であれば、治させてしまえばどうとでもなるという判断での返答だ。

 

「じゃあ両手を揃えて手を前に出せ」

「……どうやって治すつもりだ」

「俺の血をぶっかける。そうすれば見事治る。そういう個性だ俺は」

 

 血をかける。その言葉に、治崎は顔をしかめる、どころか思い切り聞こえるほどの音で歯を食いしばりながらも、その腕を差し出した。潔癖症の治崎にとって、他人の血なんておぞましくて仕方がない。だが、そうしなければ手が返ってこない。

 

 治崎の差し出した両手に、手のひらをナイフで切り裂いた神王寺がその血をかける。直後、ドクンと治崎の体が揺れると同時にその手先が光始め、そのまま光が欠損した腕を形作っていく。2分程の後には光も収まり、完全に回復した治崎がそこにいた。

 

「おお……!」

「治りやがった!」

 

 他がざわめく中、静かに手を動かして感覚を確かめた治崎は静かに立ち上がる。

 

「礼は言わないが、目的ぐらいなら聞いてやる。組長を治させてどうするつもりだ」

「治崎! やはり貴様……!」

 

 声を荒げる者も約1名いたが、他の者に制圧された。治崎の問いに、神王寺に変わって呼人が説明する。声は、声帯模写の技術で全く違うものに変えていた。

 

「裏社会に顔が効く、そして一般人に積極的に害を与えない人間に一大組織を作ってもらう。オール・フォー・ワンみたいな巨悪や、ヴィラン連合なんて無法者の集団はいらん。必要なのは、社会からあぶれた人間が生きていける、適度に統制された悪だ。組長には、その一角を担ってもらうつもりだ」

「……オール・フォー・ワン亡き後の裏社会は俺が支配する。親父には、それを手にしてから捧げる」

「お前は、今の思想ではオール・フォー・ワンに変わる巨悪になりうるから駄目だ。一度組長に徹底的に叱ってもらえ」

「言葉には気をつけろ」

 

 呼人の言葉に、治崎の額に青筋が走る。普段は穏やかな人物を演じている治崎だが、今はヒーローに対する敗北で気が立っていた。だから目の前に立つ神王寺と、その後ろの呼人に向かって手を伸ばす。そしてそれぞれの体に触れ、破壊した。

 

 結果。神王寺の体は粉微塵になった端から一瞬で再集合するかのように再生し、呼人はそもそも破壊されなかった。

 

「言葉には、何だ?」

 

 そう言った呼人は、治崎ですら反応できない速度でその腹を殴って壁に叩きつける。

 

「お前は確かに実力も、知性も高水準にあるが、俺の計画には不向きだ。少なくとも組長の管理下に入らない限りは生かしておくつもりはない。それとも、俺に従う奴以外はここで死んでおくか」

 

 ゾクリと。やくざ者達の背中に悪寒が走った。治崎の個性で死なない、どころか最強である治崎が反応できない速度で殴った。明らかな、強者である。乱波だけは楽しそうに表情を輝かせたのが気配で伝わってきたが。

 

「それとな治崎。お前の目的を1つ削げそうだから教えておくが、この世界から個性を駆逐するのはお前のやり方じゃ不可能だ」

「ガハッ……何の話だ……」

 

 呼人が自己の目的まで知っているとは知らない治崎はそう返すが、われ関せずに呼人は話し始めようとする。と、そこで。

 

「リーダー、ちょっと治療に行ってくる」

「ああ。モーメント、送ってくれ」

「はいはい」

 

 連絡を受けた神王寺と、それを送るためにモーメントが部屋から消えた。

 そして呼人は改めて彼の方を見つめる者達の方に視線を向ける。治崎以外は満身創痍であるし、その治崎も自分の傷は一瞬で修復したが大人しく呼人の話を聞こうとしていた。

 

「個性は、とあるモノ、仮にエネルギーというが、それが人間に宿り変質したものだ。それが物理的に一部分だけ見えるようになったのが個性因子。そして、お前が作っていたのはその個性因子から逆探して機能しない状態を『上書きしてしまう』モノだ。当然、個性がない状態を上書きされてしまえば個性は使えなくなる。個性因子が消えるのもそのせいだ。だが、エネルギー自体は人体に残っているし、世界に今も溢れ出している。言ってみれば、お前がやろうとしていたのは無駄なあがきという奴だ。弾丸を受けた当人の個性は消滅したように見えるが、実際は子には普通に受け継がれるし、このまま個性特異点を迎えてもエネルギーの総量が増えていけば、やがて個性が人間の扱える領域を越えていく」

「……お前の言葉を信用する理由がどこにある」

「少なくとも、この世界の誰よりも個性というモノの本質に迫っていると思うが?」

「隠していることがあるなら全部話せ」

 

 そう言って治崎が呼人をにらみ、それに合わせて音本が『素直にさせる』という個性を使うが、呼人は話さない。

 

「見ていればわかると思うが、俺には個性は通用しない。クロノはもうわかっているだろう?」

「どういう個性だ」

「そもそも、個性じゃない。この世界に突然溢れ出したエネルギーが別の形で存在していた世界から、エネルギーの流れに乗ってやってきたものが俺に乗っかっているだけだ」

 

 それが、呼人の個性、否、力の秘密。夏休み中、モンスター達に教えられた重大な個性に関する情報の1つだ。実質個性として定着しているが、個性ではない。そんな、異端の力。

 

「だがまあ、お前がきっちり組長に謝って、社会をぶっ壊さない程度に裏をまとめてくれると言うなら重要な事は教えてやる」

 

 選べ。

 

 そう呼人は言う。死穢八斎會の組長は、正直惜しい人材だ。裏側の人間で、表の人々に害を与える事を避ける人物というのは。人格者でもある。だが、いないのであればいないで呼人の方針が決まるだけだ。自分がそうなればいい。どちらにしろ、いずれは自分の別の形でそちらに関わるつもりなのだ。

 

「……組長は」

「隣の部屋で寝てる」

 

 呼人の返答に一睨みした治崎は、その足で部屋から出ていった。後に残された鉄砲玉たちは、しばらく何も口にすることが出来ずにいたが、やがてクロノが口を開く。

 

「お前は、何が目的なんだ。統制された悪が必要だと言うなら、何故私たちを助けた。お前の目的とは遠いだろう」

「1つは組長の修理だ。言った通り、あれは俺の持てる駒では治崎にしか治せない。2つ目は使えそうな人材がいるか探るためだ。どうせ俺に嘘を吐いても反逆の意思を持っても俺はすぐわかる。なら使える人間はこちらに引き入れておきたい」

「引き入れて、どうする。それだけの力があるなら、巨悪なんて簡単に片付けられるだろう。オール・フォー・ワンですら、若頭を倒したお前なら」

「ヴィラン、なんて社会じゃ言われてるが、中には積極的に人を傷つけたい人間もいれば。それしか生き方を持っていないという人間もいる。知っているか? 既に逮捕されたが元ヴィラン連合の渡我被身子。彼女の恋愛観は、最後には相手を血だらけにして殺したくなる、というものだ。恨んで、とかじゃない。好きだから殺したくなるんだ。そんな人間はいつの時代もいるし、必ず生まれてくる。うまく生きていけなかった人間というのはな。そして今の社会は、そういうやつはヒーローが助けるからと、見殺しにする。制度も、人間もな。だから、常に一定数の脅威が必要なんだ。適度に平和を享受する人間たちに身近に脅威があると悟らせ、見えている範囲の人間をそちらに沈ませまいと気を配るための脅威がな。何より、何もそういうヴィランだけじゃない。実際治崎だって子供の頃は誰にも助けてもらえず組長に拾われているし、ヴィラン連合の死柄木も個性を暴走させた結果家族を失い、周囲の人間に助けてもらえなかった結果オール・フォー・ワンに拾われた。そういう人間を脅威だと言いながら、そう至る前に救おうとはしない。だから、救わせるために。そして常に脅威が身近にあると示し続ける為に、手駒が必要だ」

 

 酷く矛盾した、歪な理想だ。平和を感じさせるために、脅威を与え続ける。平和を維持するために、脅威を提供し続ける。

 

「馬鹿げた目標だ」

「俺もそう思う。が、これが諸処の目的を合わせた結果至った結論だ。裏で動けるのであればやりようはある。例えば、各地のチンピラを先導して適度なヴィラン災害を起こさせ、ついでに逮捕させる。あるいは、時たま力を貸して大規模な被害を引き起こす。まあ他にもやりようは考えてるが、そんなところだ」

「そんな事をして何になる」

「さあな。だが俺の想像では、少なくとも人間は今よりありきたりな平和に感謝し、そして守られることに感謝する。そしてヴィランは、少なくとも救ってくれる相手がいない状態ではなく、もたれかかれる裏組織が存在する。それだけで救われる人間もいるだろうさ。言っておくが、ただ個性を持て余しただけのチンピラになんて興味はない。本当にはみ出した人間たち、そう生きるしか無い奴らの話を俺はしている。そういう奴らが生きていける場所も必要だろうし、そしてそれから一般人を守る為の壁も必要だ」

 

 そもそもが、両方を助けるなんてとても無理な話なのだ。なにせ一方は秩序で、一方はカオス。だが、カオスではなく秩序ある悪意にすることは出来る。そしてそれを適度に吐き出させることさえできれば、あるいははみ出しても行き着く先があれば、人は絶望しないですむ。

 

 後は単純に、ただすがって生きる人間が気に入らないのだ。日々に重みがあれば。あるいは明日を知れぬ命であれば。それらがかけがえないものになる。だから呼人は、脅威がこの世界には必要だと思っているのだ。

 

「馬鹿なのは俺も自覚してる。だが俺は、人間が必死に生きない世界も、生きていくことが出来ない世界も嫌いでな」

 

 全ての人間は、平等に厳しい現実の中を生きる。そうあるべきだと、呼人は思う。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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