竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第62話 その男、生命を踏みにじり

 サー・ナイトアイの病室には、重い空気が漂っていた。ナイトアイの傷は重く、治癒力促進の個性を持つリカバリーガールでも、傷が大きすぎて体力を消費してしまっている状況では促進する元手が無い。つまり、もう助からない。

 

 そんなナイトアイの死地に、喧嘩別れの形になってしまっていたオールマイトも駆けつけていた。そしてオールマイト、緑谷に語りかけ終えたナイトアイが、遅れて病室に駆け込んできた通形と話し、笑いかけた所で新しい来客が訪れる。

 

「サー・ナイトアイの病室は……ここであってるみたいだな」

 

 その声に、オールマイトと、そしてイレイザー・ヘッドが弾かれたように振り返る。

 

「アドベンチャー……!」

 

 その男の姿は2人が待ちわびたもので。けれど来ることは無いだろうと諦めていた人物だった。個人的な連絡手段はなく、公安委員会の連絡に対しても気分次第。更にヒーローネットワーク上でも一切反応しない男だ。無闇に期待は持てない。

 

 だが、彼は来た。ヒーローを救うために。

 

 オールマイトとイレイザーの2人だけが注目する中、アドベンチャーはオールマイトの隣まで歩いてくる。

 

「オールマイトの涙が見れるとは、珍しいこともある」

「来てくれたのか……!」

「悪いが、オールマイト以外は席を外してもらえるか」

 

 簡潔にそう告げたアドベンチャーに、たまらず通形や緑谷、それにサイドキック達が反発する。

 

「何故ですか! サーは……もう……! 最後なんですよ……!」

「誰、なんですか……? でも……!」

 

 泣きながら言うバブルガールに、通形や緑谷達も口々に神王寺の指示を拒絶する。が、その指示は、当のオールマイトから再度出された。

 

「悪いけど、彼と私以外は席を外してもらえるかな。お願いだ」

 

 そう言ってオールマイトは、深々と頭を下げる。おそらく、衆人環視の状況下ではアドベンチャーは個性を使わない。だから、彼らに席を外してもらえなければ、ナイトアイを救えない。この男は、見捨てる時は躊躇なく命を見捨てると知っているオールマイトだからこその言葉だ。

 

「オールマイト……! なんで―――!」

「お願いだ。今すぐに、部屋から出て欲しい。時間が、無い」

 

 そしてその言葉を、イレイザー・ヘッドも支持する。

 

「出ておきましょう。緑谷、通形」

「先生!!?」

「イレイザー!? なんで!」

「出るぞ。バブルガールとセンチピーダーも」

 

 有無を言わせぬ相澤の言葉と頭を下げたままのオールマイトの間で視線をさまよわせた後、未だに状況が飲み込めないながらも全員が部屋を後にし扉が閉じる。既に意識が混濁しているナイトアイは、そんな室内の状況に気づくことはなく静かに目を閉じたままだ。

 

「オールマイト、酸素マスクを外して口を開けておいてくれ」

「……助かるのか」

「助かるな。よほどおかしな個性を受けてなければ。急がないと、代償が大きくなる一方だぞ」

「……ありがとう」

 

 アドベンチャーに指示されるままに、オールマイトがナイトアイの口元から酸素マスクを外し、その後その顎を引いて口を開かせる。

 

 その直上に手を差し出した神王寺は、その上で手のひらを切り裂き、血をナイトアイの口の中に垂らした。

 

 直後。ナイトアイの体が2度ほど跳ね、白い光のような稲妻のようなものがその体を駆け巡る。

 

 それは、適応と再生の象徴。彼らの世界では純粋に白いエネルギーというのは、実はほとんど無いらしい。様々な色を持つエネルギーはあれど、ただ白は無し。そう。その色こそが、この世界の。個性の色。

 

 そして、何者にも染まる、原始の輝き。

 

 オールマイトがその様子を息を呑んで見つめている中、アドベンチャーは腹に刺さったままの機器を引き抜いていく。機器を加えこんだまま適応されると事だ。以前も、同じことをやってしまったことがある。自分の体でやったときだったが、その時は完全に組織と結合してしまって外すのが大変だった。

 

 当然引き抜かれた機器はナイトアイの体に繋がっていたので血や肉が付着しているが、雑な引き抜きで損傷した部分も迸る光に呑まれて修復されていく。全てが治るのだ。全身が、適応再生を終えるまでその光は止まらない。そして、それは即ちその最中の傷はいくらでも治り続けることを意味する。

 

 やがて、5分もする頃。静かにナイトアイの目が開いた。

 

「オールマイト……私は……」

 

 寝ているのは、さっきまでの、既に命の火が幾ばくも残っていないナイトアイではない。完全に無傷の、まだ未来のある一人の人間だ。

 

「良かった……ゔうっ……」

 

 珍しくオールマイトが嗚咽をこぼして涙を流す。

 

「あー感動のご対面悪いが、これにサインしてもらえるか? やっぱりちゃんと本人にしてもらいたいんだが……」

「あなたは?」

「あんたを治療した人間、ってところだ。ほら、体は治ってんだろ。起き上がって書いてくれ」

 

 傷一つ無い自分の体に、一体何が起きたのかと不思議そうなナイトアイだが、体を起こし、書類に目を通すうちに表情が驚愕に染まっていく。

 

「これは……」

「まあ書いてる事以上に俺が言えることはない。治す代わりに秘密にするってのは、アンフェアな約束じゃないだろう?」

「後で何か悪影響……も書かれているのか。私はこれでどれぐらい?」

「4年ってところだろうな。瀕死だったから」

「……わかりました。ペンを」

 

 神王寺がペンを渡すと、ナイトアイはさらさらと署名をする。こんな個性を何故秘密にしているのか、など言いたいことはあったが、命を救われている。それを追求するというのは、しないほうがいいことなのだろう。

 

「はい、OK。じゃあそういうことで。じゃあなオールマイト」

「本当にありがとう、アドベンチャー」

 

 深く頭を下げるオールマイトに軽く手を挙げると、神王寺は部屋を後にする。

 

 その背中を見送り、再度自分の体を確かめるようにあちこちを触ったり腰を捻ったりしていたナイトアイは、オールマイトの方を見上げる。

 

「オールマイト、あれは一体何だったんですか? 私は本当に治ってるようですが」

「んー……」

 

 素直に話すことは出来ない。そう唸った後、オールマイトはニコリと笑う。

 

「とても気難し屋な妖精かな?」

 

 そんな冗談を彼に言えるのが、とても嬉しかった。

 

 

******

 

 

 部屋から出た神王寺は、外で待機していたイレイザーヘッドに声をかけられる。他のインターン生やサイドキックたちは、一旦休ませるために座れる場所に行かせていた。

 

「治したんですか?」

「おう。他言無用、な。まあ気づくかもしれないけどあくまであんたは何も知らない、ってことで」

「わかりました。感謝します。ジ・アドベンチャー。それと、通形ミリオについてはご存知ですか?」

「個性が使えなくなったヒーロー候補生だろ? ここに来るまで軽くだが耳に挟んだ。それも俺に治してほしいって?」

「そうです」

 

 頷くイレイザーに、アドベンチャーはメモ用紙を一枚ちぎるとそこにサラサラと書き綴る。

 

「今から半日以内に本人の個性と何故使えなくなったか、原因が個性であるなら個性の詳細、それと本人が何故治すに値するか書いて送ってくれ」

「感謝します」

 

 検討する、というアドベンチャ―の言葉に、イレイザーは頭を下げる。先達のヒーローとして、そして教師として。生徒を助けられるなら助けてやりたい。

 

 ただ、残念ながらアドベンチャーは自分には不可能なのを知っていた。彼の個性は、異常と認識されるものに対して適応し、修復する。だが『巻き戻し』の個性は状態を固定してしまう上に、そもそも『ある段階での正常な状態』を上書きしているに過ぎず、異常ではないのだ。そう推察されるので、下手に状況をさらに固定して不可逆にしてしまってもまずいため、何も出来ないのである。

 

 アドベンチャーが去った後、イレイザーは緑谷や通形、そしてナイトアイのサイドキックらを呼びに行った。喜びを表に出すような事はしない。ただ端的に、ナイトアイが待っていると伝えるだけ。

 

 だから、彼らが死んだであろう、オールマイトが最後の別れを交わしたであろうナイトアイの病室に駆け込み、その奇跡の生還を涙で喜ぶとき、彼は一人、壁にもたれて心の中に沸き起こる熱と戦うのだ。不器用なイレイザーは、人の前で泣けるようには出来ていなかった。

 

 

******

 

 

「サーが退院で俺がまだ退院出来ないっておかしくないですか?」

「私は、もう治ったからな」

「たはー! でもなんで治ったんでしょうね! そんな個性があるとしたら、とてもたくさんの人が救えますよ!」

「……そうだな」

 

 翌日。一足先に退院となったナイトアイは、通形の病室を訪れていた。アドベンチャーの個性によって傷が全快したナイトアイに対して、通形はまだ個性の消失から復活していない。昨日の謎の人物についても、オールマイトからも重ねて禁止されたので話すことはしない。

 

 昨日は、あの後大変だった。

 

 沈痛な面持ちで部屋に入ってきたサイドキックやインターン生達は、元気に起きたナイトアイが珍しく照れた様子で手をあげるのを見て目を疑い、涙を流し、それが真実だと確認すると、今度こそ勢いよく飛びついてきたのだ。緑谷は遠慮し、センチピーダーは冷静に歩いて近づいてきただけだったが、バブルガールと通形の体当たりは座っているだけのナイトアイは受けきれず思い切り後ろに倒れてしまい、更に医療機器を破壊しかけるという危ない状態になった。

 

 その後オールマイトと2人がかりで彼らをなだめ、自分が回復したことを伝えたが、今度は通形の番である。ナイトアイの最期だと気合で怪我を押して病室を抜け出して来たが、気が抜けたのか話している最中にいきなり倒れたのだ。慌てて彼を病室に運び直し、そこで改めて生還を祝った。

 

 その後笑い泣きしながら談笑していた5人の元に、ヴィラン連合に護送車が襲撃されて治崎ら死穢八斎會のメンバーの身柄が奪われたと連絡があった。そこから情報収集を開始し、高速道路で待ち伏せを受けたこと、護衛についていたヒーローも大やけどを負った事、そして奪われたのは死穢八斎會の幹部連中の身柄だったことなどの情報が確認され、ドライブレコーダーからの映像も回してもらって確認した。

 

 見る限りでは確かにヴィラン連合の面々であり、更に見たことのない人間もいた。その人物が治崎を連れて去っていったというが、治崎に対してはトラックを止めての襲撃であったのにたいして、その他の人物に対しては気がつけば消えていた、という報告であった。

 

「治崎は……死穢八斎會はどうなったんでしょうね」

「治崎を連れ去った人物は全くの第三勢力だというのが一般的な見解だが、そうであるなら推測以上の事は言えない」

「ですよね。また新しいヴィラン組織、かー。大変ですね」

 

 あはは、と明るく通形は笑う。彼の個性は未だ失われたままで。ヒーローとしてこれ以上に絶望的なことは無いと言っても良い。だが、彼は笑う。

 

 笑わないヒーローに、人々を心の底から笑顔になど出来ないと知っているから。

 

「……死穢八斎會にヴィラン連合、そして新しい勢力。まだヒーローの力が必要だ」

「はい」

 

 無表情に語りかけるナイトアイに、通形は笑顔を絶やさずに答える。

 

「私はルミリオンの帰還を信じているぞ」

「絶対に! また帰ってきます! ちょっとだけ待っててくださいよサー!」

 

 ヒーローは、けして足を止めない。ただ、時々羽を休めるぐらいは、許されるのではないだろうか。




原作死亡キャラ生存……もちろん逆もそのうちありますが。

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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