竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
呼人が寮に戻ったのは、死穢八斎會とヒーローの戦闘が終わった翌日の夜であった。
あの後。治崎の個性によって修復された組長が治崎を殴り倒し。出てきたのははるか6時間以上が経過した後だった。その間呼人は、乱波に殴り合いを申し込まれて外の森で殴り倒したり、あるいは天蓋に治崎とはまた違った意味でだが惚れ込まれたりしたが、特に鉄砲玉の面々が逃げ出そうとするようなこともなく、途中で弁当を買い込んで戻ってきたモーメントや鉄砲玉の面々と一緒に飯を食べたりと、割とまったり過ごしていた。
また、治崎にはああは言ったものの、その瞬間は頭に血が昇っていたというのもあって落ち着いた後は改めて八斎會の幹部達に認めかねる点、勝手にやってほしい点などについての説明を行った。
認めかねる点は、やはり子供を利用したということ。積極的に協力するように洗脳するような事も避けて欲しいということ。
まず呼人の思想の中では、純粋無垢な子供は自分で傾いていくものであり、それを大人が引っ張ってはならない、と考えている。そしてたとえ利用する形でも子供達に気付かれないようにし、せめて笑えるように。少なくとも、泣かせ、怯えさせるやり方は認めない、と。
とはいえ、難しいところだ。呼人が全てのヴィランを管理するつもりは無いし、出来もしない。あくまで、支配下に置いた場所の方針の話だ。少なくとも組長が再び指導者に戻れば、子供をただただ泣かせるような事は起きないだろう。
また、してほしいこととしては、やはり裏を取りまとめて勢力を作って欲しい事。勢力と言ってもヒーローと直接対決をするものではなく、はみだした人間たちに生きる道を与え、また受け入れる組織である。その過程での犯罪行為は容認するが、積極的に社会を壊すための行動は取らないで欲しいことなどを伝えた。反社組織と言っても、革命家とヤクザ者は別なのだ。
その後神王寺、そして治崎と組長が戻ったので、改めて組長に挨拶をし、その後神王寺や呼人から話をし取り敢えずは再び組織を立ち上げてくれることとなったが、それはまた、別のお話。今語るべきことでも無いだろう。
******
学校に戻ってきた呼人が寮に入ると、ちょうどインターン組の他のメンバーが戻ってきてすぐだったのか寮の一階は大騒ぎになっていた。
ひとまず全員無事に戻ってきたことに、呼人は改めて安堵の息を吐く。自分が手を出すわけには行かないだの、最近では社会的にだの考えている呼人だが、それでも友人には無事でいて欲しいのだ。
既に彼らの事件の事はネットニュースにもなっており、クラスメイトらも心配していたのだろう。
「あー! 百竜も帰ってきた!」
「え。あ、ほんとだ帰ってきてる! ってか何部屋に行こうとしてんの!」
八斎會と戦った4人を皆がねぎらっている様子だったので呼人はそそくさと自室に引きこもろうとしていたのだが、芦戸と上鳴に気づかれてしまった。
「百竜も戦ってたんでしょ! 大丈夫だった!?」
「いや、俺は全然別の場所に―――」
「あれ?」
「え?」
興奮した様子のクラスメイト達をなだめて話を聞くと、彼女たちの中では呼人は緑谷たちよりも更に深く死穢八斎會の事件に関わっていることになっていたらしい。その調査の為にずっと学校を休んでいたことになっていたそうだ。
「俺はインターン先のヒーロー一人と僻地ばっかり回ってたな。今でも100人以下の少数の集落はあるし、そういうところはヒーローが駐在してない。ヴィランに襲われても、ヴィランの温床になってても大変だからってことでずっとあちこち行ってた」
「ほあー。じゃあ緑谷達の方とは関係ないってことか」
「まあニュースで見るぐらいはしたが、それぐらいだな」
実際モーメントが来てからは空いた時間やアーニャが眠った後を利用して僻地を見て回っていた。ヴィラン集団の情報収集と、空いている土地などを探したりだ。こういうのは悪いかもしれないが、モーメントの個性は非常に有益だ。なにせ移動速度が呼人の最高速より速い上に、目立たない。これをオール・フォー・ワンに取られていたらと思うと呼人でも厄介だという思いが強い。
適度に歓談をした後、遅い夕食をインターン組の4人と一緒に取る。その間もクラスメイトも一階に残っていて、大きな事件だったために緑谷達に遠慮したのかあまり激しく聞いてはないが、ちょこちょこと話をしていた。
「そう言えば、百竜君は誰のところにインターンで行ってるのかな。聞いた事なかった気がして」
「確かに、インターン始まってからほとんど学校来れて無かったから話してないな。と言っても知らないと思うが、俺は育ての親のジ・アドベンチャーっていうヒーローの所でインターンやってる。まあ、あんまり大きな事件には関われてないし、ひたすら見て回るって方が多いけどな」
「ジ・アドベンチャー……うちは聞いたこと無いなあ」
「私も無いわ―――緑谷ちゃん、知ってるの?」
他の3人が首を捻る様子を示す中、緑谷だけが何かを思い出すかのような表情をしていた。だが、他の3人に声をかけられると慌てて首を横に振る。
「う、ううん! ちょっと事件の事思い出しちゃっただけだよ! でも、僕も聞いたこと無いよ、そのヒーローの名前は。どんな個性かとか、教えてもらえないかな?」
笑顔を見せようとしている緑谷だが、その表情は強張っている。それを見て、呼人は神王寺がナイトアイを治しに行った時にまだ若いヒーローもいたということを聞いたのを思い出した。ナイトアイと言えば、緑谷のインターン先。おそらくそのとき病室にいた緑谷は、彼の名前を聞いたのだろう。
「あんまりヒーローっぽくないやつだな。普段もわかりやすいコスチュームみたいなの着てないし、そもそも本人は研究者をメインでやってた人間だからな。カナダとか他の国に行ってるときも、まあ災害救助とかは手伝うけどヴィランと戦うってことはあんまり無かった。今もパトロールとか避難誘導ばっかりやってるらしい。個性は体中から斧とかのこぎりとか、その場所でサバイバルするためのものに体を変化させられるぐらいだ」
「そ、そっか。 僕も調べてみるよ!」
少し様子のおかしい緑谷に、他の3人が怪訝そうな表情をする。だから呼人は、緑谷に言っておくことにする。
「緑谷」
「な、なにかな?」
「あいつに関するそれ以上の事は、知っていても俺は言わない。お前が何も知らされなかったのは、あいつがそれを広めるのを望んでいないからだ。わかるな?」
「えっ、と、百竜くんどういうこと?」
突然身緑谷に対してだけ話しかけた呼人に、麗日たちは困惑した表情をする。
「まあつまり、ジ・アドベンチャーは俺が知ってる表のヒーローとしての仕事以外に秘密の仕事も持ってるってことだ。けどその内容は、秘密なんだから表に出るものじゃない。だから詮索はするな。八斎會のことも、調査段階では箝口令が敷かれていただろ?」
ヒーローとして、秘密を何らかの形で抱えているというのはおかしな話ではない。潜入捜査なんてのはその最たる例だ。
だが、基本となる個性やスタイルまで秘密になっているというのは、普通ではない。
「……うん、わかった」
「みんなも、そういう秘密があるってこと自体秘密にしておいてくれよ」
「う、うん。わかった。けど百竜くん、そんな人の所でインターンしてて大丈夫なん?」
「そうね、少し心配だわ」
「でも百竜はもうその人とずっと生活してたんだろ? じゃあ今更じゃねえか?」
切島の指摘に、それもそうかと他の2人も頷く。緑谷だけは、起きたことが起きたことだけに納得していない様子だったがそれ以上の詮索も出来ずに頷いていた。
「にしても、そっちは結構大変だったみたいだな。ヴィラン連合は何をしたかったのかよくわからないが」
「うん……手を組んでるのかって思ったけど、やっぱりそうだとするとおかしなことが多いんだ。多分一応の同盟関係で、仲があんまり良くない感じだったんじゃないかな。それで八斎會はもうダメだったから一度潰れた後に奪いに来たとか」
「でもオール・フォー・ワンはまだタルタロスだろ? 連れて行っても個性を奪えないと思うんだが」
「そうなんだ。だからよくわからなくて……」
呼人と緑谷の間で交わされる議論に、他の3人は感心した様子で聞いているが途中で蛙吹が口を挟む。
「2人とも、あまり考えすぎるのは良くないわ。そう言うことはプロの人達や警察が考えているはずよ」
「……うん、それもそうだね」
「そだな。ここで話しても結論は出ないか」
「私たちは、今は力をつけるときよ」
「ああ……。俺ももっと強くならねえと」
「うちも。がんばらんとね」
嘘をつき続けるというのは、存外にしんどい。今度からは関わる話はなるべく避けようと思う呼人であった。
******
それから数日。ヴィラン連合の動きが活発になっているといこともあり、インターンが一時的に中止されることとなり、当面のことも神王寺達に任せることが出来た呼人は、放課後補習を終えた後に自主練で演習場を訪れていた。今日はいつも一緒に訓練していた尾白や障子たちとは別行動である。
やろうとしているのは、個性のさらなる探求。夏休みに開拓した方もまだ全然体に染み付いていないのだが、モンスター達の話を聞いた後他にもできそうなことがいくつかあると言われたのだ。
そのいくつかを、今日は試そうとしているのである。
(オドガロンに変身……ただのオドガロンじゃない。高エネルギー下で生育し、栄養も豊富、更に歴戦の傷を克服した―――)
そもそも、呼人が変身するモンスターとは何なのか。
生物である。
では呼人が普段変身しているのは何か。
そのモンスターという生物の、一例である。
つまり。
普段変身するそれ以外にも、まだまだ個体は存在する。何も、オーソドックスなサイズにオーソドックスな体格、オーソドックスな栄養状態etc. に変身する必要はない。
そもそも呼人の中にいるモンスター達は、種の区別すらが怪しいのだ。元来生物というのは、分岐し、進化し、生き残った種のみが存続するものである。そしてモンスター達の中には、祖先と子孫の関係にある者たちもいる。
では、それを分ける基準はどこなのだろうか。進化過程にあるモンスターは、どちらに含まれるのだろうか。
また、彼らの世界にはモンスターの亜種という存在もいる。これは、姿形が非常に似通っているが、食性や住処、進化の過程での選択などによって差異があるモンスターの事を示す。例を上げるのであれば、鎧竜と黒鎧竜。呼人の中には、それぞれがちゃんと人格を持って存在している。
だが彼らの差異は、幼体、岩竜と呼ばれる時期に排熱能力に優れていたか否か、という点だけだ。そして、その差異によって種が区別されるわけだが、であれば。呼人はその両方、あるいはその中間に変身する事も可能なはずである。
では、ここで考え方を変えてみよう。
鎧竜と黒鎧竜を比較したとき、竜人たちによれば彼らの世界では黒鎧竜の方が遥かに危険な存在として認識されるらしい。何故ならその排熱能力故に発する熱量が鎧竜のそれを遥かに上回り、またその熱量、そしてその強力さ故の高エネルギーの環境下で生育が可能な結果、身体能力、そして体組織も遥かに強靭な物となっているからだ。
生物としての基本的な能力の違いで、そうした身体、能力の差が生まれる。
ならば、それを極限まで強力な方向に振った時にはどうなるのだろうか。黒鎧竜の甲殻は、強大なエネルギーと熱量にさらされた結果、鎧竜のそれより遥かに堅牢となる。ならば、彼らの歴史上もっとも排熱能力に優れた個体は、どれだけの堅牢な甲殻を持っていたのだろうか。そして、どれだけのエネルギーにさらされ、どれだけの力に成長したのだろうか。
それを想像し、探し、再現すればいい。
もともと、呼人の中にいるモンスター達は全ての個体の記憶を持っているのだ。ならば、その力を借りている呼人が、ただの平均的な個体に変身しなければならない理由はない。
強大なエネルギーの存在する環境下で生育し。生まれつき他の個体よりも頑強であり。更に栄養に恵まれ。されど驕ること無く、より強大な他種族との闘争を生き抜き。日々ただ生きるのではなく険しい環境下を走り続け。他種族の放つ電撃や炎、冷気、その他毒や属性エネルギーにさらされ。それでも生き抜いた個体。
そんな個体が存在した可能性も、あるのではないだろうか。
呼人の力について、ここで1つ訂正しておこう。彼は、モンスターに変身するのではない。
『モンスター達の可能性を引き出し、それを再現する』。そういう力だったのだ。
ならば、大きさも、筋肉量も、骨の太さも視力の良さも、種としての最低値と最大値はあれど、自由自在。
結果。呼人が想像し変身したオドガロン、体格は以前まで変身していた個体の優に2回り以上上。全長19メートル。体高6メートル。そして、常時食事後にのみオドガロンが発揮する強化状態である赤熱状態。筋肉の付き方も、以前の個体と比べてガッシリとしている。
これには、呼人の脳内にいるオドガロンも協力してくれた。というより、限界サイズや能力の探求は、モンスター達の協力がなければ不可能だ。彼らが記憶を探り、その最大サイズや環境下など、様々な情報を与えてくれ、そこから呼人と共に想像する。それによって初めて、その状態をイメージすることが出来る。
更に。
例えば、オドガロンというのは彼らの世界においてはごく一部の、瘴気の谷と呼ばれるエリアにのみ生息している種である。そのため、そのエリアに適した生態を持っており、例えばそこに漂う瘴気という微生物から目を保護するために目を覆うように半透明の鱗が発達してまぶたのようになっており、視力は非常に悪い。そしてその代わりに嗅覚や聴覚が発達している。
ではこの種族が、別のエリアで進化を遂げていれば、視力を失わなかった代わりに、嗅覚はこれほどまでに発達していなかったのだろうか。
その可能性もありうる。
(ま、流石に進化を辿るのは時間がかかるか)
ただ、そこまでの“可能性”を再現しようとするのは、ただ適当に想像するだけでは駄目だ。再度、最初の時代から時間をかけて思考し、到達点を探らなければならないらしい。
それは今実際に、一部のモンスター達と、そしてこれまでは呼人に一切語りかけてこず、精神世界でも一切姿を表してこなかった竜人達、そしてそれ以前の古代人達が探求してくれている。
さて、そしてここでもう一つ。
「次は……粘菌……いけるかどうか」
呼人の中に人格を持って存在しているのは、確かにモンスター達だけであり、微生物や、魚類、小型の爬虫類や鳥類は存在していない。
だが、待って欲しい。モンスター達が生物である以上そうしたものを食してきたわけであるし、中にはそれらの生物を利用しているモンスターもいる。
例えば、砕竜。屈強な体格にパワーと、頑強な甲殻、そして粘菌という爆発する微生物を利用して戦闘する強力なモンスター。そして呼人が砕竜に変身した時には、当然、その爆発する粘菌を操作し、操る事も出来る。
わかるだろうか。
呼人は、モンスター達以外のものを再現しているのだ。
他にも泡狐竜。泡を吐き出し操るモンスターだが、その泡は、泡狐竜が食べた魚類によってその性質が異なり、爆発性のものから、癒やしを与えるものまである。そして呼人は、それを使うことが出来る。
加えて先程の鎧竜。膨大な熱量を放出すると言ったが、あくまで『排熱器官』しか持っていない。そう、彼らの熱量の大部分は、彼らが好んで潜行する溶岩や食べた爆発性の鉱石などから獲得したものなのだ。
他にも、自分で毒を生成するのではなく、食した毒虫や毒キノコの毒を混合、熟成して戦闘に用いるモンスターも存在し、その全てを、呼人は使うことが出来る。
ならば、その性質、あるいはモンスター達でない微生物、物体すら再現できてもおかしくないはず。
「いづっ! まあ、そうなるか。けど、出来ないことはない、と」
結果。オドガロンの皮膚の上に、呼人が再現しようとした粘菌は確かに現れ、そして出現した直後に爆発した。もともと、砕竜のみが粘菌を操る能力を持ち、また本体も焼かれる事があるのでそれに備えた屈強な甲殻を持つ。
加えて、今呼人が想像・再現したのは、普段砕竜が使っている粘菌、すなわち『活性化した』粘菌である。これを非活性化したものを再現すれば、爆発することはないはずだ。ただ活性化できるのもまた砕竜だけであり、それを他のモンスターで再現するには、その成分をもつよだれを再現しなければならない。出来ないことはないのだろうが。
他にも、例を上げるとすれば屍套龍が操る瘴気なんかも、屍套龍とは全く別の微生物である。一方黒蝕竜が操るウイルスでもある鱗粉はその皮膚や角質が剥がれ落ちたものであるため、他の生物ではない。そんなものを、全て呼人は扱えるのだ。まだ全て再現できるわけではないし、出来ないものもあるだろう。例えば既に食された後の魚類を再現できるかは不明だ。だが。
呼人の中に眠っているのは、モンスターではない。
1つの世界が、眠っているのだ。
それらを操るためには、より詳細に、モンスター達の生態について、それこそ細胞レベルで知らなければならない。やっていることはある種、八百万と似たようなものである。それをこれから、呼人はやっていくのだ。
やっぱり呼人の力はぶっ壊れてると思うんだ……
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない