竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第66話 個性とは

 放課後の訓練の時間が削られて、更に夜の外出時間も無くなってトレーニングが減った呼人は、短時間で鍛えることが出来るように朝の走り込みを厳しくし、更に通常の道路などを使った走り込みから雄英内に存在する森を使ったたものへと変更していた。

 

 普段してなかったのは、寮からの場所が普通に走るのに比べて遠かったのと、負荷をかけていればそれなりに十分に鍛えられていたからだが、これを機会に更にトレーニングの負荷を1段階あげようと思っていたのである。体を変化させて重量をあげた上で、更に足場の悪い森の中を走る。いずれは、雄英敷地内の山にも行ってみたいがそっちは更に遠い。

 

 と。いつもどおり森の中を駆け抜けていると、横手から突風を受け体が浮き上がる。普段は周囲を探っている事の多い呼人だがそれでも場によっては気を抜くことはあるし、トレーニング中は自分の体への負荷などに気を割いているので、直前まで気づくことが出来なかった。

 

「う、おっ!!」

 

 体重をあげて重心が上に上がっている為に転倒しそうになる体を咄嗟に人間のものに戻すとともに地面を踏みしめて耐え、突風の原因の方へと索敵を向ける。ヴィランであればことだと思ったのだが、森の中を高速で走り抜けている呼人をただ狙ってくる理屈がわからないのだ。

 

 と。慌てたような声が聞こえた。

 

「え、今の声!?」

「誰かいたのかも知れない。怪我をしているようなら保健室に運ばないと」

 

 その声は呼人も良く知ったもので。ヴィランのものではないとわかったので安心して木陰から顔を出す。

 

「今の突風は緑谷か?」

「ひゃ、百竜君!? やっぱり巻き込んでた!? ごめん大丈夫!?」

 

 慌てて緑谷が駆け寄ってこようとするので、呼人もそっちに歩いて近寄る。

 

「一応いなしたから大丈夫だが……人を巻き込まないように気をつけろよ。まあこんなところ走ってた俺も悪いけど」

「ほんとにごめん!」

「怪我は無いかい百竜少年」

 

 オールマイトも後から近づいてきて呼人の様子を確認してくれる。本当は緑谷と一緒にいるところを見られるのはまずいオールマイトだが、それでも生徒が怪我してないかの確認が先だと呼人の方を気にする。

 

「大丈夫です。ふっ飛ばされたわけでもないので」

 

 普通に人間の状態で走っていたら確実に飛ばされた、というほどではないが転がされていただろう。だが体重を増加させていたためたたらを踏むだけですんだ。

 

『――――――』

 

 と。そこで呼人の中にいる竜人の一人が呼人に話しかけてくる。

 

「緑谷、ちょっと手を出してもらっていいか」

「え? えーと……」

「頼む。そんな時間がかかる話じゃない」

「う、うんわかったよ」

 

 緑谷の出した手を、呼人は上下から自分の手で挟み、目を閉じる。以前アーニャにしたのとは、違う。これは、ただ呼人のエネルギーを緑谷に触れさせることで、そのエネルギーなどについて探っているだけだ。触れることで精度が上がる、といっても詳細に個性のことがわかるのではなく、ただ蓄積されたエネルギーについてのことがわかっていくだけという話。

 

 だが、それだけでもわかることはある。

 

 例えば。緑谷の個性にためられたエネルギーは膨大で。いつ変質を起こしてもおかしくないということとか。あるいは、それがある形で出現するのではないだろうか、ということを。

 

「緑谷」

「う、うん。どうしたの? 急に僕の手を触って。怪我なら大丈夫だよ? 跡はあるけどもう治ってるし」

「いや、そうじゃない」

 

 どう伝えるべきかと少し悩んで、呼人は彼には求めることだけ短く伝えることにする。

 

「お前の個性……これ以上個性を持った相手には引き継ぐな。相手の個性次第じゃあ、一人でも大変なことになる」

「え? 引き、継ぐ……って、どういう、こと? 僕の個性は―――」

 

 途端にしどろもどろになり、顔色も青ざめる緑谷。そんな状態だと、呼人でなくてもわかってしまいそうなものだがまあそれは緑谷の問題だ。

 

(百竜君は知ってる? でもなんで―――知ってるはず……)

 

「オールマイトから引き継いだものだろ、それは。それは別にどうでも良いんだ。ただ、それ以上個性を持ってる相手に引き継いだら駄目だ。本当はそれ以上引き継いでいくことすら危ないが、無個性の相手ならどうにかなる。ただ絶対に無個性の相手じゃないと駄目だ。それと、そのうちお前か、お前が引き継いだ相手から角が生えてくるかもしれない。そうなったら、そこから引き継いでも1代で終わりにしろ」

「待って、待って百竜君! 何を言ってるかよくわからないんだけど……どういうこと、かな」

 

 それでも緑谷が誤魔化そうとするので、百竜は首を振る。

 

「わかった。一から説明するから、取り敢えず今日の昼休み。オールマイトも来てください」

「大事な話、なんだね?」

「そうです」

 

 オールマイトの方は、緑谷よりも頭が回っていた。オールマイトの個性について詮索する人間は多い、というより興味を持たない人間はいない。だが、呼人はそれをどうでも良いと良い、それよりも『引き継ぐこと』が問題だと指摘した。それすなわち、オールマイトの個性がどういうものかわかっているということを示す。ならば今更隠すことは無駄であろうという判断だ。

 

 

******

 

 

 昼休み。よくオールマイト達が話しているという仮眠室で話をしようということになり、呼人は緑谷と連れ立ってそこに向かった。

 

「あの、百竜くん」

「なんだ?」

「その、本当に知ってるの? オールマイトの、個性」

「全部は知らない、けどある程度は。それもちゃんと説明する。隠しておきたいことだったんだろ?」

「う、うん、秘密にしておかないと駄目なんだ。僕のことじゃなくてオールマイトのことは」

「なるほど」

 

 呼人は、別にオールマイトの事情を知っているわけではない。ただ、『エネルギー理論』。呼人達がそう呼んでいる個性や古龍の操る力に関する理論において、彼の個性が危険になる可能性が高いのだ。

 

 仮眠室につくと、先にオールマイトが来ていたようでお茶を用意してくれていた。

 

「ようこそ2人とも。取り敢えず座って」

「失礼します」

 

 呼人がオールマイトの正面に座り、悩んだ様子の緑谷はオールマイトの隣を選んだ。

 そして早速、呼人が口火を切る。

 

「まず、俺は2人の個性がどういう力なのかは正確には把握してません。ただ、入学当初から2人から感じる力を同質のものだと感じてました。そしてさっき改めて確信しましたが、似ているとかじゃなくて同じものです。だから引き継いだものだと判断しました。でしょう?」

 

 呼人の問いかけに、緑谷はオールマイトの顔色を伺う。

 当のオールマイトは、しばし考え込んだ後あえて質問で返した。

 

「このことは、他に知ってる人はいるのかい?」

「俺の胸の中にだけ」

「なるほど」

 

 その言い回しに、オールマイトはうなずく。おそらく、モンスター達は知っているのだろうと。それは知っているオールマイトにのみわかる言い回しだった。

 

「それで、何故引き継いでいくのが駄目なんだい?」

「まず、個性というのは人間の感知できないエネルギーが人間に宿って変質したものです。そしてさっき緑谷に触れてわかりましたが、多分、その個性オールマイトよりももっと前から来てますよね。その過程で、複数の人間の持ってた個性、まあようするに、複数のエネルギーが混ざり合った状態になってます」

「本来は1人1つのはずのエネルギーが、複数宿っている状態が緑谷少年やこれからの者にとって良くない」

「というわけではないです」

 

 そこで呼人は居住まいを正す。ここから先は、重大な話だ。

 

「さっきも言った通り、個性の元になっているエネルギーを人間は感知できません。それ即ち、わかっているだけのことで勝手に法則に当てはめようとしているに過ぎないんです」

「はっきり言ってくれて構わないよ」

「これ以上エネルギーの総量が増えるようなことがあったとき、何が起こるかわかりません」

「それは……どういう風に何が起こるかわからないんだい? 緑谷君の体が耐えきれない、ということかい?」

「いえ、おそらくそういう方向ではないです。今の個性は見ている感じパワーアップ系なんですが、変質して例えば触れたもの全てを水に変えるとか、あるいは視界に入ったものを全て塵にするとか、そういうものになる可能性があるということです」

「それも、個性、なのかい?」

「そうです。もともと自然な形でエネルギーが人間に溜まる量はたかが知れています。だから今も、地球を真っ二つに割ってしまうような個性は無いわけですし、触れた全てを灰燼に帰すようなような個性も存在してません。それは個性の元になったエネルギーの出力上の問題です。まあわかりやすく言えば、轟と耳郎の個性では、その元になっているエネルギーの量が違うんです」

 

 当然変質しているのではっきりと判別できているわけではないし、どういう個性が特に強大なエネルギーに由来するのかははっきりとしていない。ただ、そういう風にエネルギーの差というのは確かに存在している。

 

「ただ、ここで問題になってくるのがエネルギーが集まっているということです。個性特異点、というのは?」

「個性がどんどん混ざり合って深化していって、いつの日か人間の手に負えるものじゃなくなる、っていう終末思想、だよね」

 

 緑谷の言葉に、呼人はうなずく。

 

「そう言われてるが、細かく言えば間違えてる。個性が混ざっていくだけなら問題は無いんだ。もともと人間が10持てるエネルギーが、5と5に分かれれば当然それぞれの力は減少する。問題なのは、親から10を引き継いだ上に、子供が生まれる時点で外部から更に10を獲得していることだ。だから、世代を追うごとに個性の出力が上がっていってる。そして全体量が上がっているから、両親から引き継がれる個性もどちらかに偏るんではなくて混ざったものになる傾向がどんどん強くなっていってる」

 

 生物濃縮というものを知っているだろうか。モンスター達の世界でも起きている、というか特定の属性を発動する古龍以外のモンスターは得てしてその原因にこの生物濃縮を持っているのだが、要するに最初は小さなものが、どんどん上の階層にいくに従って溜まっていき、本来のそれとは比べ物にならないほど高濃度になっていく。

 それと似た現象として、人間の中にある個性のエネルギーはどんどん高まっていき、やがて、地球、宇宙すら滅ぼすようなものへと変わっていく。

 

「このままそれが進めば、個性特異点の思想のとおり個性は人間の手に負えるものじゃなくなります。例えば地面に手を触れただけで地球が2つに割れるとか。地球上の大気の全てを毒ガスに変えてしまうとか。そういうことが起きる可能性があります」

「……それが本当のことだとして、なんで君はそれを知っているんだい?」

「それについては言えません。彼らが教えてくれたとだけ」

「そうか……それが私や緑谷少年の個性に関わっている、ということだね」

 

 オールマイトの確認に呼人はうなずく。緑谷はもはや話についてこれずに目を回している様子だ。

 

「まず先に訂正しておくのは、個性特異点と2人の個性はまた別物だということです。個性特異点ではエネルギーが溜まっていき影響力も増していきますが、それでもあくまで複合された個性に由来する影響力しかありません。それに対して、2人の個性はそれ以上エネルギーの量が増えると突然変異を起こす可能性があります」

「突然変異……それは個性の、ということか」

「そうです。基本、個性がいきなり変化することなんて無いです。もともと形が定まったエネルギーですから。けど2人の個性の場合は、もう器がいっぱいになりかけてるんです。普通は器なんて存在しないんですけど、何故か緑谷のエネルギーは1つのエネルギーが他の全部を包み込んでいます。そしてそれがもう限界まで来ています。これ以上詰め込もうとした場合、無理に押し込まれた個性が変質するか、あるいは外に溢れ出して何かが起きるのかはわかりませんが、少なくとも膨大な量のエネルギーです。ちょっとした影響じゃすみません。もともと人間は世代を追うごとに両親の2人からと外からの3箇所からエネルギーを少しずつ引き継ぎます。さっきはああ言いましたが、両親が10ずつ持っていると、子供が引き継ぐのは20ではないです。一部を引き継ぐんです。ですが、多分2人の個性には引き継ぐ過程で全部持ってきてしまったんだと思うんですけど、10世代どころじゃないエネルギーが溜まってしまってるんです」

「なるほど……」

 

 オールマイトは顎に手を当てて話を頭の中で整理する。つまり、本来は自然な形で蓄積されていくはずであったものを、『ワン・フォー・オール』という、力を溜め、譲渡する、という個性によって一気に、それも歪な形で溜めきってしまったのだ。

 

「それと」

 

 そして呼人はもう一つの情報を伝える。

 

「個性特異点の方は、あくまで自然なエネルギーの流れなのでどうにかなります。小さい川の流れを変えてしまうようなものです。ですが2人の個性で引き継がれると、それは既に人の手が加わったものになってしまうので例え自然なエネルギーの蓄積をどうにかしたところでそれを無視できてしまうんです」

「どうにかなるとは、具体的にはどうするんだい?」

「詳しくは言えませんが、アドベンチャー他数名と一緒に手立てを考えています。そもそもこのまま行って絶望的な状況にまでなるのはまだ何世代も先です。ただ、緑谷の場合はそれがもうすぐそこに迫っている状況です」

 

 そこで、沈黙を守っていた緑谷が口を開く。

 

「えと、百竜君? つまり、僕が個性を無個性の相手に引き継げば問題ない、ってこと?」

「そういうことだ」

「なら、僕は使い続けても大丈夫なんだね」

「ああ。さっきも言った通り個性の元になってるエネルギーはあくまで非物理的なもので、お前がどれだけ頑張ってもそれ以上引きつけられてくることはない。ただ、そうだな。個性因子を利用した違法な薬物なんかを体内に取り込んだ時には何があるかわからん」

「そ、そんなことしないよ!」

 

 慌てたように手を振る緑谷だが、彼は忘れてしまっている。彼らが先日助けた少女が、どうされていたか。それが、どう扱われていたか。

 

「どんな形でも、だぞ。お前が意図的に摂取しなくても飲まされたり、あるいはガス状にしてばらまかれたり、銃弾にして打ち込まれたり。まあその程度ちょっとならすぐに影響は無いが、あんまりくらいすぎるとまずい。個性因子はエネルギーが実体化したもので、多少はエネルギーを含んでいるからな」

「それも駄目なんだね。わかった、気をつけるよ」

 

 呼人と緑谷が暢気な会話を繰り広げる一方、オールマイトの頭の中は二択で揺れていた。

 オール・フォー・ワンについて伝えるべきか否か。

 

 個性の伝承による蓄積がまずいのであれば、それもまずいものであると言えるのではないだろうか。だが、あのヴィランの事は学生に伝えて良いようなものではない。

 結局オールマイトは、伝えない事を選んだ。伝えた所で、どうしようも出来ないだろう。彼は今牢獄の中にいる。

 

 そもそも。彼には悪いが話には信憑性が無い。ただ、無個性の人間に引き継いでいきたいという理由はオールマイトの側にもあるので、その話自体はわるいことではない。

 

「教えてくれてありがとう百竜少年。だが、そんな重大なことなら然るべき機関に広げた方が良いんじゃないかな。君の話を聞いていると私もぞっとしたし……」

「まだアドベンチャーが研究している段階なので……もっと詳しく判明したら多分そうすると思います」

 

 嘘だ。広めるつもりなんてない。この件については呼人が、数年のうちに対処してしまうつもりだ。呼人にはそれが出来る。

 

 モンスター達の世界と違うのは、あちらはエネルギーが充満していたのに対してこちらは人間に集中しているということである。つまり、人間以外の全てが個性に対して脆い状態にあるのだ。モンスター達は莫大な力を持っていようと、星を破壊することは出来なかった。何故ならエネルギーの流れが様々な形でそれを防いできたから。だが、この世界にはストッパーがいない。

 

 呼人は1人先に仮眠室を出る。オールマイトと緑谷がまだ話すことがあるらしい。昼食は食べそこねたが、こんなこともあろうかとエナジーバーなどを鞄に持ってきていた。

 

 




前の話の感想くれてもええんやで……

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

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  • あまり興味がない
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