竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

71 / 82
第70話 

 11月も下旬に差し掛かったある日。緑谷たち死穢八斎會攻略作戦に参加したメンバーは相澤に呼ばれて職員寮を訪れた。

 

「ってエリちゃん!?」

「わー! また来てくれたんやねエリちゃん!」

「また会えて嬉しいわ」

 

 訪れた先で待っていたのは、ビッグ3の3人に遊んでもらっているエリちゃんであった。休学中の通形も、私服を来て訪れている。

 

雄英(うち)で預かることになった」

「どういった経緯が!?」

 

 思わず緑谷が声を上げると相澤と通形はシーッと口元に人差し指を当てた後、玄関の外に1年生の4人を連れて行く。

 

「ちょっとややこしい理由があってな」

「実は、エリちゃんの病室にお手紙が置かれてたんだよね!」

「お手紙、ですか?」

 

 相澤は緑谷の言葉にうなずいた後、短く説明をする。

 

「差出人は死穢八斎會組長と連名で治崎廻。内容はエリちゃんが本来の両親から捨てられて八斎會にいた事。これ以上彼女を裏の世界にいさせるべきではないこと。養育権一切を両親にも放棄させたので今後の彼女の世話は彼女を救った者達に任せること。今後八斎會のメンバーがエリちゃんに関わることはなく、仮に自分の指示に従わずに手を出した者がいた場合には八斎會の側で処理すること。そしてエリちゃんをこれ以上泣かせるようなことがあれば許さないこと。そういう手紙だった」

「え、ちょ先生それがエリちゃんのところに届いたっているところがバレてるってことすか!?」

 

 思わず切島が尋ねると、通形がチッチッチッと人差し指を左右に振る。

 

「違うんだよね。彼女の病室の中に置いてあったんだ。聞いてみたんだけど、看護師さんもお医者さんも誰も届けてないんだよね!」

「それって……」

 

 驚愕の表情で問いかける麗日に頷いて相澤は預かった理由を説明する。

 

「よって、エリちゃんの居場所がバレていること、気づかれずに侵入できる人物が八斎會側にいること、それにエリちゃんの両親が本当に彼女の養育権を放棄していることが確認できたからウチで預かることになった。うちの寮ならちゃんとした部屋もあるし教師も仮免持ちもたくさんいる。セキュリティも病院より高い」

「それに、エリちゃんの角、また大きくなり始めてるみたいなんだよね。だからイレイザーがいると安心なんだって」

「……それもある。正確には俺じゃないと対応できない可能性が高い、だがな。とにかく、今の話はエリちゃんにも他の生徒にも他言無用だ。彼女を預かることになったという事実さえあれば良い」

 

 そこで、何かに気付いた蛙吹が手を挙げる。

 

「先生良いかしら」

「なんだ」

「エリちゃんの病室に来たのに誰にも気づかれずに来たのに連れて行かなかったってことは、手紙の内容は信頼出来るんじゃないかしら」

「あくまで手紙だ。騙すためのものの可能性もある。それこそ、ヒーローに保護された少女がヒーローの手落ちで奪われたとなっては更にヒーローそのものに対する信頼も歪む。治崎らを奪っていったのが敵連合であればそのための作戦だということも考えられる。あるいは小さなものをワープさせる個性かもしれない。どちらにしろ、どうにかしないといけない点だけを見るしか無いんだこの状況じゃあ」

「……そうね。考えが足りなかったわ、ごめんなさい」

「大丈夫なんだよね! 俺も最初同じこと思ったから!」

 

 通形が明るく励ますが、空気は暗いまま。だが、相澤の言葉で明るさを取り戻す。

 

「とにかく、エリちゃんには楽しい、普通の子供達がしているような事を経験させてあげたい。だからお前たちもそのつもりでいてくれ」

「! はいッ!」

「楽しいことかー、やっぱり一緒にお餅食べたいな!」

「妹を思い出すわ」

「任してください! 俺らそういうの得意っすから!」

 

 決意を新たにする4人に、通形も笑顔でうなずく。

 

「取り敢えず俺は暇だから一緒にいるけど、みんなも遊びに来てほしいんだよね!」

「了解っす!」

 

 少女は、また笑うことが出来る。今は、そう。その笑顔を守るのが自分たちの仕事なのだ。

 

 

******

 

 

 呼人が室内で個性の鍛錬を行っていると、部屋の扉がノックされる。

 

「どうぞ」

「そろそろ来るらしいから降りてきて」

 

 扉を開けて入ってきた尾白は、肩口から生えたオドガロンの足に特に驚くこともなく用事を伝える。よく部屋に来る障子や尾白、それに上鳴などは、呼人の部屋のこの光景に慣れていた。

 

「ああ、もうそんな時間か」

「百竜一応主役だよね?」

「もう夏休み中に会って礼言われてるんだけどな」

「それ初耳だよ……」

 

 今日はプッシーキャッツが雄英を訪れるという連絡を受けたので、普段は外に出ていたりするクラスメイトも全員寮に残っていてその訪問を待っている。待っている間大半のクラスメイトは1階の共有スペースで談笑していたりするのだが、呼人はいつものごとく部屋にこもっていたので尾白が呼びに来てくれた。

 

 冷蔵庫から500mlのカルピスを一本持って1階に降りると、ちょうどプッシーキャッツが玄関を開けて入ってきた所だった。懐かしいポーズ(私服)を披露した後、生徒達に歓迎されて挨拶を交わしている。と、視線をうろつかせていたラグドールが呼人を見つけて駆け寄ってくる。

 

「直接話すのは初めてだよね」

「そうですね」

「んでも、君のおかげであちきもやっと復帰できることになったから、お礼を言いに来たんだ。ありがとね、あの時は」

 

 ラグドールと呼人が隅の方で話している一方で、他のクラスメイトと話していたピクシーボブが復帰の報告に来たと説明して盛り上がっていた。

 

「回復おめでとうございます」

「ありがとね。おかげで個性取られずにすんだからね」

 

 ラグドールだけが誘拐されたのはオール・フォー・ワンが個性を奪うためだったと推察されている。だがラグドールはその前段階で救出されたので個性は奪われずにすんだ。ただし怪我が非常に重かった上にその状態で呼人が長時間運んだのと、表では出回らない薬を使われていたらしくそれからの回復に時間がかかったためこんな時期まで復帰が遅れたのだ。

 

「んじゃ、君の活躍も楽しみにしてるよ。いつでもサイドキックとして来てくれるの待ってるからね」

「ええ、まあ。はい」

 

 さらっとした勧誘に困った反応を返すと、ラグドールは笑って握手を求めた後、呼人のところから去っていった。

 代わりに呼人のところには、洸汰がやってくる。彼と会うのも林間合宿以来だ。

 

「久しぶりだな」

「……ああ」

 

 そう言った後、気まずそうに視線をそらしているが話したい内容があって呼人のところまで来たんだろうと大人しく待っていると、やがて話し始めた。

 

「あんた、名前は?」

「百竜呼人だ。100匹の竜を呼ぶ人って書く」

「そうか。……呼人の言ってたこと、あの後考えた」

「ああ」

 

 呼人が言ったこと。それは、彼が恨むべきは両親ではなく社会であるということ。

 

「お父さんとお母さんが死んだことを、立派だって言われるのは今も嫌だ。けど、お父さんとお母さんは、悪くないんだと、思う」

「そうだな」

「それに、デクにーちゃんが自分が怪我してるのに守ってくれたから……」

「ヒーローがどういうものかわかった、か?」

 

 コクリと、呼人の問いかけに洸汰はうなずく。その頭を、呼人は優しくポンポンと叩く。

 

「そうだな。ヒーローはそういうことがしたい人たちなんだ。けど、俺はやっぱりそれを当たり前だとか思ってる人は良くないと思う。でも、ヒーローは嫌ってやるなよ」

「うん……でも、俺に悪口言われても頑張るデクにーちゃん見たら、かっこいいなって思った、から」

「そうか……。まあ、考え方は人それぞれだ。お前は、お前が思うようにヒーローをかっこいいと思って、応援してやってくれ」

 

 再度呼人にうなずくと、洸汰は心配そうにこちらを見ていた緑谷の方へと歩いていった。一体呼人は何だと思われているのだろうか。流石に子供には優しくするし、クラスメイトにも訓練がスパルタな事以外は酷いことはしていないはずなのだが。

 

 

******

 

 

 プッシーキャッツの訪問から数日後の昼間。珍しく呼人は、木の枝に腰掛けて神王寺と電話していた。いつもの報告ではなく、特に他愛のない日常会話である。

 

 つい先日にはビルボード・チャートが発表された。呼人の知るヒーローで言えば、ミルコが5位とリューキュウが10位。それに轟の父であるエンデヴァーが1位。他にも以前調べた上位陣はほとんど面子を変えていない。

 

 なんというか、オールマイト亡き今不安なところはある。その辺のヴィランであればたやすく制圧出来るのだろうが、相手がオール・フォー・ワンのような特級の化け物であった場合、それを制圧できそうな出力を持つ人間がいないのだ。まあそんな出力を持つヴィランというのもオール・フォー・ワンぐらいなものなのだろうが。緑谷が更に成長するのは当然として、戦力的にはまだ欲しい。オール・フォー・ワンは強い。だが一人であった。海外のヴィランは……また違った意味で比較にならないのだ。

 

 ちなみにジ・アドベンチャーの名前は、一番下の方にちんまりと並んでいた。ニュースどころか記事でも取り上げられない下の方に。

 

「お前はこれで良いのかよ神王寺」

『見えない仕事だからな。仕方ない。これでもインゲニウムにサー・ナイトアイ、他にも優秀なヒーローをそれなりに助けてんのよ』

「そうかい」

『お――――』

 

 と。話の途中で神王寺の声が途切れる。後ろで何か揉めているように聞こえるのはテレビの音だろうか。

 

「何かあったか?」

『こりゃまた……テレビ付けてみろよ。凄いのやってるぜ』

「今外だ。ちょうどロードワークで山の上の方まで走ってきたから」

『そうかい。九州でエンデヴァーがヴィランと戦ってるんだが……これあれじゃねえか、個性の感じ的に。脳無だ。しかも相当強い。エンデヴァーが相当押されてる』

「ほう……。モーメントとブラーあたりに記録取らせにいけないか? エンデヴァーが死にそうになったら介入させていい」

『また大盤振る舞いなこって』

「エンデヴァーには死なれると困るだろ流石に。それに脳無は場合によっちゃあ変異する可能性がある。変異は流石にまずい。ブラーに消させれば目立たないだろ」

『了解了解。モーメントと……イスカンダルだな。後ブラーも』

「イスカンダルも来てくれたのか。わかった」

『後俺も向かうぜ。最悪生き返らす』

「頼む」

 

 表の人間がいてこそ、裏との釣り合いが取れる。これ以上優秀なヒーローが失われるのは困るのだ。

 

 ちなみにイスカンダルというのも、神王寺が海外から呼び寄せた人間であるのだが、これもまた裏の人間である。ただしヴィラン組織ではなく、格闘技の出身だ。あくまで行ったのは勧誘であり、呼人の戦闘をビデオにしてみせることで興味を持たせることに成功した。呼人は覚えていないのだが、以前一度会ったことがあるらしいのだ。あったといっても呼人と戦って生き延びているのだ。その彼だけに、再戦のためにと海を渡ってきた。ので。今年中には一度会って相手をしなければならない。

 

(さて……俺はまだ訓練しておくか)

 

 大出力の放出はエリア一帯が荒れる。やるとするなら国外の砂漠かアメリカの荒野。とにかくそうした地域に行かなければ、イメージ以上のトレーニングが出来ない。イメージで十分であればいざというときにはぶっ放すが、それだと齟齬が出る可能性がある。ちょっと想定より強いだけで周囲への被害が増してしまう。そういう個性の制御が、呼人が一番苦心するところであった。

 

 

******

 

 

 ひとしきり訓練を終えて、山の木を数本消し炭にした後呼人が寮へと戻っていると、神王寺から連絡が来た。

 

『治した』。

 

たった一言。その一言で、エンデヴァーがそれだけ追い込まれたのだとわかる。帰りながらニュース記事を見れば、他にもNo.2のホークスに後詰めでミルコもやってきたらしい。また敵連合の荼毘も来ていたらしい。

 

(とするとこれは脳無で確定か。前はあんなにダサかったのに随分スタイリッシュになって。再生能力は俺以下。消滅したらわからんのは俺も一緒か。出力も単体ならモンスター超えるがEDWよりは下。俺なら消せる。が、オール・フォー・ワンが捕まった後もこんなのがでてくるのか。やるな敵連合)

 

 呼人は、敵連合に対して直接的な敵意は持っていなかった。それは構成員の一部の過去に由来するのだが、彼らもまた呼人の考える『救われなかったものたち』なのだ。だから積極的に潰そうとは思わない。まあ治崎は潰したがっていたようだが。ただヒーローで止められないレベルとなると話が変わってくる。

 

(こっちの報告もほしいな。オール・フォー・ワン回りでやばい奴ら。多分もうまとめてくれてると思うんだが)

 

 呼人が動き始めるに当たって、『星詠み』にもフル稼働してもらっている。その御礼がモンスター達の世界を見せるという他愛もないものなのだが。すべてが見える彼女には、自分の見えないものというだけで新鮮で心地良いらしい。

 

(冬休みには一旦出て海外……どこがいいかな。やっぱりアメリカかアフリカ……)

 

 ひとまず、このレベルの相手を周囲に被害を出さずに叩き潰す為の力の練習をしなければならないと、呼人もまた決意を新たにした。

 

 

******

 

 

 その次の晩。自室で個性を鍛えていた呼人は、強力なエネルギーに反応してビクリと肩を揺らす。

 

『なんだ?』

『―――――――』

『―――――――』

『生の人間のエネルギーじゃないだろこれ』

 

 部屋を飛び出し、個性を感じる下の方へと向かう。3階を通り越して2階。気配はエレベーターを降りて2つ目の緑谷の部屋から。急いで駆け寄りドアをノックするが、返事はない。更にラインにも連絡を入れるがこれも返事は無し。その間にも、部屋の中から伝わる気配は続いている。

 

『どうするか。人を呼ぶわけにもこんなので部屋の扉をぶっ壊すのも――』

 

 そんな事を考えていると、部屋の中から感じるエネルギーが強力なものになっていく。そしてその中に感じるのは、僅かな人の気配。

 

『これ―――』

『―――――――』

『個性が肉体を失っても存在し続けた果て……』

 

 ここに至って扉を破ってでも緑谷を見なければならないと決めた呼人が扉に正対すると同時。破壊音と同時に扉が勢いよく開く。その扉を手で受け止めた呼人が室内を覗くと、緑谷がベッドの上に四つん這いになっていた。音に気付いて出てきた青山を大丈夫だと行って部屋に戻らせ、呼人は緑谷のところまで行く。

 

「おい、緑谷」

「え? あ、百竜君!? ごごごごめん起こしちゃった!?」

「いや、起きてた。けどあんなエネルギーを発してたら嫌でも気づく」

「そ、っか、あれは百竜君が感じてる話だったんだね」

 

 あれ、と。緑谷が思い出したのは以前の呼人の忠告。エネルギーが、など難しい話をしていたが、それはすべて呼人が探知していたものなのだ。

 

「まあな。今日はいつもと違う気配を感じたから思わず来たんだが……大丈夫か?」

「う、うん。前もあったことだから。それにちゃんとオールマイトにも説明受けてるし」

 

 緑谷の言葉からは嘘は感じられないものの、動揺が感じられる。つまり、嘘はついていないが想定外の事態である、と。ただまあ、それは呼人が手を出すことじゃない。少なくとも変異するまでは。

 

「そうか……。ならいい。悪かった勝手に入って」

「ううん! こっちこそごめんね邪魔しちゃって!」

 

 慌てて手を振る緑谷に謝罪をして、呼人は緑谷の部屋から出る。確かに大きなエネルギーを感じたが、変異の予兆なんてものが呼人にわかるわけではない。それに関しては経験が無さすぎて一体どれがどういう反応なのかわからないのだ。それでなくても緑谷は複数抱えていて人と気配が違うのに。

 

 暴走しないでくれるとありがたいと、切に願う呼人であった。




Pixiv fanbox を開設しました。
今後もどんどん書けって人は是非支援お願いします。月200円で応援できます。
https://amanohoshikuzu.fanbox.cc/

小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか

  • 欲しい
  • 勝手にニヤつくからいらない
  • あまり興味がない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。