竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第72話 A組B組対抗訓練・2

 一試合目の試合開始前。

 

「お前が味方ってなんか心強いわ」

「……どうも」

「一応素だからね? これ。個性とかじゃなくてさ」

「わかってるよ」

 

 チームメイトになった上鳴と心操は、互いにだけわかる会話を交わしていた。短い間だが共に相澤に教えを受けただけに、それぞれ凄いところは把握している。

 

 上鳴から見た心操の凄いところは、その熱意と愚直なところ。そして実はかなり高かった操縛のセンス。自分が全く出来ないことをさらさらと習得してしまう。

 

 一方心操も、正直に言うことはないが上鳴の凄いと思うところはある。まずヒーロー科の訓練がハードだろうに自分と同じメニューにくらいついている所。そして、個性だけでも強力なのにさらなる術を、それも教えてもらうのではなく開発しようとしているところ。ヒーロー科に対して闘志を燃やしている心操も、上鳴のことは特別認めていた。

 

「え、上鳴知り合いだったのかよ」

「これ教えてもらう時にな。まあレベルは天と地だけど」

「どういうことかしら」

「心操が相澤先生のちょっと下位互換で俺が超下位互換ぐらいってこと」

「そこまで無いだろ」

「まあ、俺はそう感じてる、ってこと。さ、作戦練ろうぜ」

 

 移動を行いながら、心操の個性についての説明を行われる。改めて聞くとえげつない個性だ。

 

「変声機も合わせてとても強力ね」

「まあ通用するかどうかは……やってみないとな」

 

 そう話しているうちにスタートの合図。歩いて移動しながらも作戦の相談をする。

 

「相手でやばいつったら塩崎さんだよな。上鳴の電撃も効かねえし自由自在だし」

「そうね、警戒しないと」

「いや、そうじゃねえ」

 

 蛙吹の指摘に皆が頷いたところに、スケートボードを蹴りながら移動している上鳴が異論を唱える。

 

「なんでだよ上鳴」

「だからこそ塩崎さんを囮にするだろ、普通。俺だってこのメンバーなら俺か心操を狙うぜ。だからこそ、囮にするんだろ」

「そ、そうか?」

「でもそこまで考えてくるかしら」

「最悪の想定、だろ。そもそも相手の個性はっきりわかってねえけど、他のメンバーにも電気が効くかも怪しいぜ。変身した百竜には電気が通用しねえんだし、宍戸だって通じない可能性もある。それに宍戸に突っ込まれたときまともにパワーで止めれるメンバーが居ない。別に塩崎が来なくてもこっちは普通に詰めるんだって。後宍戸の個性なら鼻か耳は良くなるはずだ。それこそ百竜と一緒だな」

 

 上鳴のいささか厳しい評価に、全員の表情から余裕が消える。笑っていたわけではないが、その顔つきに険しさが現れていた。

 

「そうね、口田ちゃん、お願いできる?」

 

 蛙吹の指摘に口田はコクコクと頷き、鳥たちを呼び寄せて再度指示を与えている。

 

「……冴えてるな」

「嫌でもスパルタ男に突っ込んでれば鍛えられますよほんと。心操は……守るとか言わないから。俺より操縛は強えし。でも俺が個性的に前ね」

「わかってる」

 

 守られるだけのつもりはない。自分は、何のためにこの武器を身に着けたのだ。そう心操は強く自分に問いかける。

 

 1人でどうにかするためだ。

 

 それが、心操の戦い方。個性が通用しないからなんだ、と。今の心操には、そう言えるだけの強さがあった。

 

 と、口田の元に二匹の鳥が慌てた様子で飛んでくる。一匹の方がさえずりが激しい。

 

「切島くん、そこのタンクの裏!」

「っ! おう!」

 

 口田の珍しく大きな声を聞いた切島が前に飛び出すと同時、その陰から飛び出した宍戸が切島を壁に叩きつける。それに巻き込まれた蛙吹も一時戦線離脱するが、上鳴はそちらに目を向けずに叫んだ。

 

「心操宍戸!」

 

 そう叫んだ後、宍戸の体に向かって電縛布を投げつける。これだけ大きな的、上鳴でも外さない。

 

(そんでもって触ったら―――!)

 

「『ボルト』!」

 

 電縛布を伝った上鳴の電撃が炸裂すると同時、宍戸の背中に隠れていた円場が体をのけぞらせて硬直する。宍戸に触れていたために、電気の通過点となったのだ。それを見た心操は、即座に彼を利用することにする。

 

「もらっていくわ!」

 

 切島吹っ飛びの被害からいち早く抜け出した蛙吹が痺れたままの円場を舌で捉えて引っ張る。舌に引っ張られて円場が宍戸の頭上を超える瞬間、感電したはずの宍戸が動き始める。

 

 そしてその瞬間、円場が叫んだ。

 

「助けるな! 暴れろ宍戸!」

「っ! わかりまし――」

 

 正確には、円場の声で心操が叫んだ。もともと痺れた円場は体が痙攣して話せるような状態にない。そして捉えた宍戸は、蛙吹の後を追わせる。これで2人捕獲。

 

 

******

 

 

「なんか上鳴めっちゃ冴えてね? あんなだったか?」

「なあ……俺も驚いた」

「え、あれほんとにアホの上鳴?」

 

 上鳴が驚かせたいと言って頑張っていることを秘密にしていたクラスメイトたちは、その立ち回りの冷静さと反応、そして成果に驚きの声を上げる。

 

 だが、呼人は当然の成果だと考えていた。呼人は、個人相手の訓練ではいつもの演習のような優しいことはしない。もちろん怪我はさせない。だが、例えば相澤に瞬殺されても怪我はしなくてもその圧倒感は伝わってくる。呼人は上鳴相手にはそれをぶつけていた。

 

 そして休憩時間や戦闘直後の反省時には、様々なシチュエーション、状況判断に関する問題や動きのパターンを。それこそ刷り込んでいった。そして上鳴も、それに応えようとした。

 

 そんな上鳴の成長に驚くクラスメイトに、モニターを見上げたままの相澤が告げる。

 

「上鳴はUSJ襲撃事件からこっち、ずっと先を見据えた努力をしていた。強力な個性をただ放つのではなくどういかし、足りない部分を補うか。一番最初に俺のところに捕縛布の教えを請いに来た時も、一足先にサポート科を訪れた時も、2度目に請いに来たときも、あいつは先を見据えていた。評価するのは良いが讃えるなよ。お前らにも当然出来たことだ」

 

 先を見据え、出来る事を探す。簡単なようで難しい。

 

 もちろん、上鳴だけの力ではない。呼人という努力の塊とも言うべき人間を見ていなければそこまで自分を追い込めなかっただろうし、師としての呼人も確かに大きかっただろう。組手や移動術、体を鍛えることにおいては尾白や障子との放課後訓練も力になっている。

 だが、呼人も相澤も知っている。夜、文化祭練習中でさえ消灯時間になった後に上鳴が、真っ暗な中庭で捕縛布を振り回していたことを。それで授業中に寝ていれば世話は無いのだが、それだけ上鳴は自分を切り詰めた。だからあの動きを身に着けたのだ。

 

 そしてこれは呼人も知らない。上鳴の机の上には、呼人がその日言ったアドバイスやシチュエーションの問題をうろ覚えにまとめたものがあるということを。汚い、丁寧にまとめられた緑谷のそれとは比べ物にならないノート。だが、確かにそれを残していた。

 

 適当な男だと、軽い男だと笑えばいい。

 

 だが少なくとも、すべきことには努力を示せる男だ。

 

 

******

 

 

「速いな」

「役割分担。俺は接触お前は非接触」

「わかってる。お前にも負けない」

「うし! 口田索敵よろしく! で、どうする心操」

 

 吹き飛ばされた先から復帰してくる切島を待ちながら、上鳴は心操に投げかける。いつも上鳴が貸し出していた、汚いヒーロー科のノート。それを一々付箋で修正しては変換したり『読めない』などと書いて返してきたのは心操だ。上鳴が書いたことを覚えているからすら怪しいことまで。その頭脳は、確実にアホな自分よりも高いところにある。そう上鳴は気付いていた。

 

「向こうが2人が仕留められたことに気付いているか……多分すぐ気づかれる。宍戸が暴れてれば破壊音が出る」

「切島! 取り敢えずその辺のタンク殴って壊しておいて!」

「え、いいのかよ! てかもう2人は捕まえたのかよ!」

「戦ってるって思わせないと残りの2人が攻めてくるって!」

 

 心操が頭を回している間に、その発言を受けた上鳴が切島に指示を出す。聞いた切島は首を傾げながらも腕を硬化させてタンクやパイプをぶん殴っていく。

 

「相手が減ったから俺の個性は使いづらい。やるなら、上鳴がダッシュで塩崎の方に逃げて、それを追っていく俺が声を出す、か。口田、2人の位置は?」

 

 問いかけられるがまだ鳥たちが戻ってこないことに口田が困っていると、ちょうど偵察を終えた鳥たちが帰ってくる。

 

「えと、塩崎さんは左側さっきから動いてないって。鱗君は檻のところからちょうどこっちに向かって歩き始めたみたい」

「鱗を狙う。口田もう一回飛ばしておいて。できれば逐一報告が欲しいけど……」

「鳥たちが少ないから」

「わかった」

 

 切島があたりのものを手当たりしだいにぶん殴っている音の隙間からなんとか口田の小さな声を聞く。そしてすぐさま心操は指示を出した。塩崎は、正直4人で狙っても同時に対応できる可能性の高い強個性だ。それに対して鱗はわからないが、塩崎が無理なのはわかっている。

 

「あの、逃げておかないの? 今逃げれば2対0で……」

「それもありだと思う。けど……どこまでやれるか試したい」

「俺も心操なら応援するぜ!」

 

 でも、と口田は口ごもる。確かに、逃げるという選択肢はあまりに消極的に過ぎるとしても、守りに入るというのは当然だ。今ならそのまま逃げ切れば勝てる。だから攻めるというのは、心操と上鳴のわがまま。例えば全員は逃げなくても、機動力のある蛙吹が1人突っ込んで囮を仕切れば良い。

 

「口田―――」

 

 口田を説得しようとした上鳴を、心操が手で制する。

 

「俺達がヒーローで相手がヴィランなら、絶対に全員捕縛すると思う。俺は、そういうヒーローになりたい」

 

 それは道理の通らない殺し文句。実際にはヒーローも、一旦撤退して様子を探ることだって当然のようになる。でも、心操の決意を伝えるのには十分だった。

 

「切島にそのままやってて鱗と塩崎を引きつけるように伝えてくれ」

 

 心操に言われた上鳴が、暴れまわり切島のところに言ってその旨を伝える。

 

「俺は前に出ねえで良いのかよ」

「ここでドッカンドッカンやれるのが切島だけ、ってことじゃね? 後塩崎は固くなっても拘束されちまったら関係ないし」

「鱗は?」

「多分、心操の個性で狙うんだと思うぜ。直前まで引きつけて。だから切島はここで待機と、バレた時に前面に出る要員。じゃないかな? わからんけど」

「お、おう。なんか上鳴、久しぶりの模擬戦だけど冴えがやべえな」

「心操には引きずられるのよほんと。あいつ凄いの」

 

 2人が話していると口田の鳥が再び報告に現れ、心操が上鳴を手招きする。作戦は固まった。後はやるのみ。

 

 

 

 結局、第一試合は4対0でA組が勝利した。鱗はなんなく拘束に成功し、上鳴が塩崎の拘束を受けたものの蛙吹と心操、切島が囮をしている間に口田が鳥に咥えさせた遠隔用のターゲットを塩崎の後方に落とし、それに向かって放電して戦闘終了。終始A組が優位に勝負をすすめることとなった。

 

 

 

******

 

 

「駄目だ。完全に上鳴に引っ張られた」

「そこは俺の活躍と言って頂戴!? てかお前が宍戸と鱗仕留めたんでしょうが!」

「宍戸はお前の方が反応早かった。鱗はまあ……」

「俺もよく投げられたと思うよ!?」

 

 鱗を捕まえた時の手順は単純で、心操が上鳴を鱗の近くに向かって投げ、そして『離れるように』伝える。それに鱗が返事してチェックメイト。シンプルが故に、咄嗟に応えてしまう。鱗がペルソナ・コードに存在を知らなかったがゆえに刺さった攻撃だ。

 

「でも上鳴ちゃんも心操ちゃんも凄かったわ」

「やっぱ俺は反応が遅れちまって駄目だ!」

「口田が常に索敵し続けてくれたからだ。ありがとう」

「う、ううん! 2人とも凄かったよ!」

 

 そもそもが、B組の手は呼人からしてみればまずいものだった。5対2に突っ込むなど、呼人ならするが普通はやらない。だって数に押されるのだから。それも相手には心操、上鳴という一瞬で制圧出来るメンバーが居る上に索敵能力も口田が十全に発揮する。少なくとも戦闘中に後から到着した鱗や塩崎が参戦できるタイミングなら良かったものの、まったくそうではなかったのだ。

 

 良く言えば強みを押し付けようとした。だが悪く言えば、個に頼りすぎた。宍戸が暴れることができていれば。違ったかもしれない。だが、実際には上鳴に一瞬の足止めをくらい、そこから更に心操のダブルコンボで落ちた。

 

 全員が戻ってきたところで、それぞれの担任が集めて反省会を行う。

 

「全員反省点を述べろ」

「気抜いたらまずい前衛なのに気抜きました。後射程の長い相手に対して踏み込めなかったっす」

「全部心操君と上鳴君に考えてもらって動くだけでした。それともっと細かな指示を……」

「最初初手で誰が乗ってるのかわかんなかったのと、本当はあの場面なら電縛布投げながら前に出るべきだったっす。後まだ機動力を扱い切れて無いのと、気付いてたのに戦闘前に短く伝えきれなかったっす」

「保護色が使えるから宍戸ちゃんのように先に行くべきだったわ。取り敢えず集まろうっていうのは逃げね。後咄嗟に反応できなかったわ」

「全部反応が遅かった。後は教えてもらったことの1割も実践できませんでした。悔しいです」

 

 それぞれが反省を述べた後、相澤はまず心操に評価を伝える。

 

「俺はそれを使いこなすのに6年かかっている。すぐに出来たら苦労はしない。それと作戦立案は良かった。出来たところは認めて、悔しさも喜びも次の糧にしろ」

「はい」

 

 心操に伝えた後、相澤はクラスの生徒を振り返る。

 

「切島は正面に誘い込めるセットアップを意識しろ。口田は自覚どおりだ。もっと細かい指示が出せれば索敵の精度も上がるし搦手もうまくなる。上鳴はそこまでの考えがあるなら早い段階で短く的確に伝えろ。蛙吹は味方を信じろ、そしてチーム内での役割分担も考えろ。一番機動力があるのはお前だった」

 

 それぞれが頷いたのを確認して、集まっていたメンバーを解散させる。それはそれぞれが確かに理解していることだった。

 

「上鳴君、凄い変わったね」

「ね! 相澤先生の武器を使ってたし」

「なんだよあのヤローモテそうなことこっそりしやがって!」

「なんやびっくりやわ。文化祭の練習のときとかいつもの感じやったのに」

 

 チームごとに座っているのでチームメイトの声が呼人のところに聞こえてくる。

 

「最初に俺達が訓練してるところに来たのは職場体験後だったな」

 

 だから呼人は、上鳴がこれまでしてきた努力を言う。もう上鳴も隠そうとは思わないだろう。4人の注目を集めながら呼人は続ける。

 

「その頃にはサポートアイテムの開発を誰よりも先にしていた。夏休みは学校で俺と訓練したこともあるが大方相澤先生のところに行っていたんだろう。圧縮訓練の頃からまた俺個人との訓練を頼み込んできたから叩きのめし続けた。それから時間がある時はずっとな」

 

 成長もするさ、と呼人は言う。その訓練が生んだのは、何も肉体的な強さや格闘戦の強さだけではない。戦闘の中で考える力。そして引き締まった時間を過ごしたことで、時間を引き締めて使うという感覚が身についた。当然そんな上鳴からすれば、だらける時間は無駄なものに感じられる。だから訓練をした。勉強にいかなかったのは苦手だったからだ。それでもヒーローに必要な勉強は頑張ったし、それ以外もなんとかついていこうとした。

 

「叩きのめす、って、文字通り?」

「比喩だ。上鳴に一回も勝たせないどころか惜しいとも思わせてない。そもそも俺は電気が効かないしな」

 

 もちろん訓練の内容には合わせているが。

 

「まあ、それだけだ。やろうとすれば誰でも出来た。そして上鳴はそれをやったから強くなった。それだけの話だ」

「……くうぅぅぅぅぅう! 私たちも負けてられないよ!」

「そうやね! うちらも頑張らんと!」

「上鳴、絶許ッ!」

 

 チームメイトが意気を高める中、緑谷が呼人に話しかけてくる。

 

「百竜君、ずっと手伝ってたんだね」

「俺の個性訓練をするようになってからはまちまちだけどな」

「うん、でも百竜君ってそういう感じじゃないのかと思ってたから……」

「そういう感じって?」

「みんなを誘う感じ?」

 

 首を傾げながら言う緑谷に、呼人はうなずく。

 

「そりゃあそんな事してないからな。上鳴は自分から相手しろって言いに来たから俺も応えた。それだけだ」

「そっか……。じゃあ僕もお願いしに行くよ」

「いつでもどうぞ。相手できるかはわからないけどな」

 

 




上鳴魔改造。


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