竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~  モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア   作:アママサ二次創作

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第75話 竜の力

 何度、場所が変わったかは思い出せない。

 

 ただ、強大な物を見せつけられたとだけ。

 

 脅威と感じていた最初の方はまだ優しい方で、そのうちマグマすらそこにいるだけで凍らせるような美しい竜や、あたりの森を一瞬で焼き払ってしまうようなモンスターもいた。

 

 そして気がつけば、石造りの玉座のある広間のような場所に来ていた。

 

「んだここ」

「玉座、だよねこれって」

 

 次は何が飛び出してくるのかと身構えていると、後ろから声が響く。

 

『楽しんでもらえたかな』

 

 勢いよく振り返ると、杖をついた初老の男性が立っていた。その髭は長く、地に突きそうな程である。

 

「失礼ながらあなたはどなたでしょうか!」

『わしもモンスターの一人じゃよ。呼人から説明役を任されての。どうせならかっこよく見せてついでに脅かしたいと、皆が言い出しよってな』

「皆、って?」

『ぬんっ』

 

 トンッ、とその男性が地面に杖を突き立てると、壁と天井が消滅しより広い場所へと変わる。そしてその周囲を、これまで彼らを襲ったモンスター達が取り囲んでいた。

 

「これ……!」

「改めて見るとすさまじい威圧感ですわね……」

 

『わしらは。今君たちが見てきたようにただ自然に生きていた生物じゃ。ここじゃない世界でな』

「ここじゃない世界、とは?」

『さあの。わしらも個性の無い別の世界としか知らんでな。して、呼人の中にはわしら、その世界のモンスター達が巣食っとる。生きてた頃はただの動物だったんじゃが、何故か全員人間の姿と思考回路を得てな。ほれ』

 

 老人が周囲を示すと、今までモンスターがひしめていた場所に多数の人間が立っていた。全員個性的な、呼人のコスチュームと同じ雰囲気を感じる服を纏っている。

 

『それらすべての力を呼人は扱えるし、あるいはわしらが表にでて体を使うことも出来る』

「具体的には、どんな力なんですかね? ほら、今日物間が変身して暴れたのとか」

『それがのう、数が多くてじゃな。ざっと万を超えるんじゃよ。だからのう、全部を教えるのはそもそも無理な話になるんじゃ。そこでじゃが』

「喧嘩しようぜ! 思い切り!」

『やめんかラー』

 

 一人のモンスターだった男が歩み出てくる。

 

「どうせそーいう話だろーが!」

『はあ……まあというわけじゃ。勝手にこいつらが言い出しただけじゃから無視してくれてもいい。それに、この空間では死ぬことがないでな。加減もせん。もっともして欲しければするが』

「死ぬことが無いから死ぬぐらい痛めつけられる……」

『そういうことじゃ。一応それぞれの個性に似た力を持つモンスターもおるでな。勉強になると言えば勉強になるんじゃが……どうするな』

 

 そんな事を言われて、黙っていない男が少なくとも一人いる。

 

「良いぜ、速攻で叩きのめしてやるよ」

「お前が相手してくれんのかバクゴー!」

「なんで名前知っとんだクソが」

「俺はラーだ。まあ楽しませてくれや」

『それじゃあ、場所を変えようか』

 

 再度杖の音がなると、再び場所が変わる。円形の、広い闘技場のような場所。その観客席に生徒らやモンスター達が座り、爆豪とラーだけが闘技場の中に取り残された。

 

『それでは、始め!』

 

 案内役の男性の合図と共に、爆豪が飛び出す。それを皆固唾を飲んで見守った。

 

 と。試合中だと言うのに案内役の男性がまた話始める。

 

『わしらは、呼人が出来るのと同じことが出来る。ただしそれぞれモンスター1体分じゃがな。呼人はそれを組み合わせる。じゃが』

 

 そう男は続ける。

 

『あのラー。未だ呼人相手に負け無しじゃ』

 

 その言葉と同時。一撃で吹き飛ばされた爆豪が客席に着弾した。

 

「おい爆豪!?」

「まじかよ……!」

 

 決着は一瞬。一撃で爆豪が弾き飛ばされた。

 

「おい! 次は誰が相手だ!」

 

 闘技場から叫ぶラーのその言葉に誰も答えられない。性格は悪くて社交性も最低とも言える爆豪だが、それでも実力は誰もが認めていたし、今日もそれを確かに発揮した。吹き飛ばされた爆豪はすぐに飛び出してくるが、その場にうずくまってしまう。現実で受けていれば即死の威力だ。

 

『ブラキ、主が行って来いや』

「……良いだろう」

 

 案内役の男性がそう言うと、その近くに座っていた別の男が闘技場に飛び降りていく。最初のラーと呼ばれた男が毛皮のような物をわずかに纏って上半身を露出しているのに対して、こちらは黒い硬質な服を着ているように見える。

 

『ブラキはあれじゃ、今日は主らの仲間が変身して暴れたやつじゃな』

「あの黒いやつ……?」

「物間が変身してた……」

「僕は全然覚えてないんだけどね」

 

 ざわつく生徒達に、男性は大事な点を伝える。

 

『わしらもともとはモンスターじゃから変身すると思考回路も人間のそれとは変わるでな。慣れてないと理性を失って本能で動いてしまうんじゃ。故にあれは、暴走というよりは当然ではあるんじゃよ』

 

 本能に従ったモンスター達に。番と、子を守る以外の発想はない。それ以外はすべて破壊しても良いものでしか無いのだ。

 

 そうこうしているうちに、飛び降りていったブラキと、待ち受けていたラーが激突する。離れた客席まで響く硬質な音。ただ人間形態で殴り合っているだけなのに、凄まじい音がする。

 

 ラーの一撃がブラキを吹き飛ばし、更に吹き飛んだ先に一瞬で詰めて追撃する。それに対してブラキは右腕から放った爆発でその勢いを殺すと、爆発で加速させた左拳を叩き込んだ。

 

「かっちゃんの!?」

「あれ爆豪のじゃねえか!?」

『ほーほっほっ。あれはブラキの力でな。あやつは爆発する微生物を飼っとるんじゃよ。それを体のあちこちに張り巡らして自由に爆発を起こしとるんじゃ』

「ラーっつう人の方は、どういう個性なんすか?」

 

 切島の問いかけに、案内役の男性は首を振る。

 

『個性ではない。わしらの世界では普通のことじゃ。動物が爪を持つように、サソリが毒を持つように。そういう生態じゃ。して、ラーじゃが』

 

 うーん、とそこで珍しく案内役の男性が言いよどむ。闘気化とか、気光とか名前はあるのだが、厳密になんなのかと言われるとそういうエネルギーだとしてか言えないのだ。

 

『エネルギーを纏って身体能力の強化、それに体表の硬質化、エネルギーを放出しての攻撃じゃな。まあ後は見りゃあええわ』

 

 適当に投げ出す案内役の男性。なにせラーのそれは他の属性エネルギーとも逸脱した特殊なもので、竜人たちですら解析出来なかったものなのだ。

 

 闘技場では、周囲を破壊して爆炎を巻き上げながらラーとブラキが暴れまわっている。2人の状態はいわゆるハイビースト。人間と成体の間の状態だ。

 

 以前の、ただ本能に任せて生きていたときのようにただぶっ放すだけの戦い方ではない。当てるために、そして有利な位置に引き込むために。高速で2体は駆け引きをしながら殴り合う。

 

『主ら、もうそれぐらいで良いじゃろうて』

 

 案内役の話を聞かず、既に自分たちだけの世界に入り込んでしまっている2体は殴り合いを続ける。もともと気性の荒いモンスターだった2人は、人間になってもその気性の荒さを引き継いでいた。

 

 と。3度無視された案内役が静かに立ち上がり、闘技場の中央付近に向かって高く高くジャンプする。

 

「あ、おい!」

 

 思わず叫んだのは誰だっただろうか。

 

 空中に飛び出した彼は。2体のモンスター達が戦っている上空で、本来の姿へと戻った。

 

 

******

 

 

「壁……」

「ではないよ。熔山龍ゾラ・マグダラオス。全長200メートル、全高100メートル。超大型古龍に分類されるモンスターだ。まあ僕らのスケールからすれば動く山だけどね」

「誰だ?」

「え、誰?」

 

 突然出現した巨大な壁を見上げる生徒たちの後ろに立っていたのは、白衣のようなものを纏った一人の若い男である。奇妙なことに丸眼鏡をかけていた。

 

「おっと失礼。僕はシルフト。竜人と呼ばれる彼らの世界の人間の一種さ。彼は普段は温厚なんだけど、怒らせると恐いからね。それと、いつでもモンスター達の教えを請いたければ来ると良いよ。みんな結構暇してるから相手してくれる。それじゃあ、一旦お別れの時間だ」

 

 え、と困惑の声を漏らす生徒達に頓着せず、シルフトは指を鳴らす。その合図を受けて、ずっと外の体に残って監視をしていた呼人が手を離した。

 

 

******

 

 

 ムクリ、ムクリと。倒れていた、というより精神だけの世界に行っていたクラスメイト達が目を覚ます。彼らを送り込んだ呼人だが紹介はモンスター達に任せて、自分だけは外の現実に残って監視をしていたのだ。

 

「どうだった?」

「……凄かった」

「そりゃありがたい」

 

 クラスメイト達にとっては驚愕の時間になっただろうが、怪獣やモンスターが大好きな障子にとっては歓喜の時間になったのだろう。少しばかり目元が紅潮して見える。

 

「今のが俺の個性の全容だ。それに今の紹介で紹介できてない、モンスター達の世界でも触れるのがタブーとされてた奴らもいる。こういう力だから秘密にしてたし、解放もしてなかった」

「うん……確かにこれだったら、制御する、ってことになるよね。僕とおんなじだ」

 

 自身も自傷する、そして周囲に膨大な破壊を生み出す可能性がある緑谷が納得したようにうなずく。

 

「まあもしモンスター達と手合わせしたいとかただ見たいとかでもあったら言ってくれ。一応みんなの個性に似たモンスターもそれぞれいたりするから、それなりに良い刺激になったりもすると思う」

 

 じゃあそういうことで、と一足先に呼人は自室に戻った。なんというか、ああいう空気の場にずっといるのは居心地が良くない。それに彼らにも、整理する時間が必要だろう。その過程で呼人がいると言いづらいこともある。

 

 と思ったのだが。

 

「……来たぞ」

「お前ら早すぎるだろ」

「む……すまない。気が急いた」

「俺はあの電気の虫が気になるのよ」

「俺は組手の相手を頼めれば。あの空間でも経験値にはなるようだったし、呼人より強い人がいるなら嬉しいしね」

 

 呼人が部屋に戻ってすぐに、上鳴、尾白、障子の3人が呼人の部屋を訪問してきた。

 

「他の人は?」

「驚きが強いみたいだよ。でも百竜が色々詳しいのはそういうことか、って感じだったよ」

「そうか。じゃあまあ、取り敢えずお前らだけでも来るか」

 

 先ほどと同じように、4人で円を作って輪っかになる。

 

「じゃあ行くぞ。手に集中しろ」

 

 再び、呼人の中の、モンスター達に出会うために呼人たちは旅立った。




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