竜と龍の血を継ぎし者~英雄と狩人の証~ モンスターハンター×僕のヒーローアカデミア 作:アママサ二次創作
『なるほど。だから冬季はずっと外に出れると』
「ああ。また詳しい事は会ってからだ」
『オーライ。こっちも……まああんまりよろしくねえ報告が1つ2つ3つ』
「わかった。じゃあな」
ポチリと。電話を切って呼人は室内に戻る。今日は12月24日。日本では、というよりは世界の割と広い場所においては『クリスマス』というイベントごとをする日だったらしく皆でパーティーもしたがそれももう終わり。共有スペースには数名のみが残るようになっている。
「百竜」
キッチンで水を飲んでいると、ちょうど通りかかった轟が呼人に声をかけてきた。
「なんだ?」
「お前、インターン先は決まってるのか?」
「決まってるぞ」
「そうか」
呼人の答えに、何故か轟は残念そうな表情をする。それが気になった呼人は、理由を尋ねた。
「何かあるのか?」
「いや、決まって無いならエンデヴァーのところに来ないかと思った。今はNo.1だし学べることもあるんじゃねえかと思ったんだが……」
「そう言うことか。悪いな。俺は行きたい先は決まってるんだ」
「いや、こっちこそ急にわりぃ。行き先ってのは前も行ってたところか?」
「ああ。ジ・アドベンチャーっていう……まあ今回のビルボードじゃあ一番下の方に並んでたな」
それを思い出して思わず笑いながら言う呼人に、轟は首を傾げる。
「そんなヒーローのどこが良いんだ?」
「あー違う仕事をしてないわけじゃないぞ? ただ表で評価出来る仕事がパトロールぐらいしか無いんだよ」
「その、裏の仕事をお前も?」
「いや、そういうわけでもない」
「じゃあなんでその人のところに行くんだ? あ、いや別にせめてるわけじゃねえんだが気になったから」
つい責めるような言い方になってしまったと轟が謝罪する。入学当初は相手の気持ちなんて微塵も考えなかった轟も、クラスメイトとの交流の中でそうした気遣いが出来るようになっていた。
「エンデヴァーとかホークスとか、そういうヒーローがいる場所って大抵の人間が救われるだろ? けど、例えば限界集落とか、僻地に少数ですんでる人たちとか。そういう『救われない』人達もいる。で、そういう場所はときにヴィランの巣窟になってたりする。インターンに行った時はだいたいそんなところを見て回ってる。言ってみれば、他のヒーローの届かない穴を埋めてる感じだな」
「そ、うか。そんなことまで考えてんだな」
「まあな。誘ってくれてありがとな」
「いや。お前も頑張ってくれ」
轟に礼を言って、呼人は自室に戻る。
言ったことは真実呼人が考えていることで。けれどそれをヒーローとして達成するつもりはさらさらない。
難しい。未だに正解がなんのなのかなんてわからない。救われず、結果として壊すことを選んだ人間を自分はどうするのだろうか。あるいは。壊すことにしか生き方を見いだせないとは、どこからを言うのか。
ヴィランが生まれないように全員に救いの手を差し伸べる世界すら、きっと作ることは不可能だろう。人が生物として争い上を目指す競争の中にいる以上。
そしてさらに、人間は本能で生きることが出来るモンスターと違って、なんとも面倒な感情、思考なんてものを持ってしまった。それがただ、めんどくさく、だからこそ愛おしい。
つくづく、人とはめんどくさいものなのだ。
******
冬休みが始まるとともに呼人はインターンのために寮を後にした。他のクラスメイトたちは年明けからのインターンを行うものばかりだが、別にしてはならないとは決まっていない。大晦日もヒーローの護衛ありで帰宅することが許可されていたが、そもそも自宅なんてものは呼人には無いのだ。
ひとまずの集合場所は、依然アーニャとモーメントが寝泊まりしている部屋だ。ただのアパートの一室に思えるがセキュリティーは神王寺が手を出したのでガチガチ。その一室で、久方ぶりにきたアーニャとキリンたちを遊ばせてやりながら、神王寺がまとめてくれた様々な記録に目を通す。
その中には、先月から行われていたとある地域での敵連合とギガントマキアの戦闘や、そこからのデトラネット、異能解放軍の暗躍、そして新勢力『超常解放戦線』成立までの流れがまとめられていた。
「馬鹿なのか?」
「誰に言ってんだよ」
「……こんな流れにした誰か?」
思わずそう愚痴りたくもなる。もともと異能解放軍は、それぞれの幹部が表社会でも有数の権力を持つかなり危険な集団で。更にそれ以外にも戦闘面での幹部連中が下手なヒーローでは歯がたたないような武闘派ぞろいな上に頭数もヒーローの総数よりも多いという危険きわまりない集団なのだが。
それが敵連合と手を組んだ。
ただ救いといえば、そもそも敵連合は頭数が少なく、更に異能解放軍という母体を持ってしまったために情報漏洩の観点からそれ以上のヴィランの引き入れが難しくなったことぐらいか。それ以外の脅威で言えば、ギガントマキア、それに脳無製造者ともに補足済みで。ただ1つ問題があるとすれば、星詠みの個性はあくまで見ることだけである上に多数の場面を同時に見れるわけではないので、情報は常にリアルタイムから遅れることになることだ。
「あ? これ変異してねえか」
「だろ? やっぱそう思うよな。つっても俺らには観測の方法がねえから取り敢えず記録したんだが」
そんな中呼人が目をつけたのは、敵連合のトップ死柄木弔の個性。以前は触れたものを触れた地点から崩壊させるものだったが。入手してくれた映像を見るにどうも、効果範囲が変わっているような感じがする。
それは、非常にまずい。そもそも個性というのはとても不安定で。おそらくだが人間の感情にすら左右されうるものである。他者を拒絶する禁忌の存在達の住む場所が何者も生存できない死の世界になったように。オール・フォー・ワンがタルタロスにいる以上、死柄木の側で何か心境の変化や感情の強烈な発露があり、それが個性の深化を促したと考えるのが妥当だろう。それに、報告を読む限りではギガントマキアとやらとの戦闘で極限に追い込まれている。深化の素地は十分にあった。
ただ問題は、彼の個性が崩壊させるものであるということで。その対象が今は固体にとどまっているが、より自由にエネルギーに関与できるようになったときに、液体、あるいは気体すら伝播する可能性がある。その時は……地球が保たない。
(殺す、か。いや……まだ様子見で大丈夫か。どちらにしろ地球を壊すほどであれば個の個性量であればエネルギーが足りない。変質したといってもエネルギーの量自体に爆発的な成長はありえない。とすれば……先にこっちの医者の方に釘を指しておくか……いや、そうするとせっかくヒーローが調査をしているのに―――)
「つかこの映像も撮ってきたのか?」
「いや、そろそろ来ると思うんだが……」
「ああ、来てくれた連中か」
いつもの星詠みからの情報を文字でまとめたレポートに添付されていた映像の数と音声などのクリアさに、呼人は首を傾げる。あまりにも精密かつしっかりしすぎた情報にどうやって入手したのかと首を傾げたのだ。モーメントの移動が万能と言ってもここまでいい場面いい場面をいい角度で撮れるものではない。
と。呼人が見ているタブレットにウィンドウが開き、そこに一人の人間の顔が移る。日本人ではない顔つき。おそらく外国人だろう。そして英語で話しかけてきた。
『『ヘイ、お前が呼人か。俺の作った映像を早速見てくれてるんだな。良い出来だろ』」
その声の最後は呼人の正面から響いた。タブレットから視線を上げると、4人の人間が立っているのが目に入る。うち一人は組織の足、モーメントだ。
モーメントに連れられてやってきたのは2人の男性と1人の女性だ。新しく海外からやってきたメンバーである。
「連れてきたぞ。悪いな、来るたび来るたび相手してもらって」
「相手してるのは俺じゃないけどな。ありがとうモーメント」
モーメントを労った後、呼人は新しく来た3人の方を向き直る。
「『俺が百竜呼人だ。ノーマンと呼んでくれ。詳しい事は後で説明するが、お前らに求める事はたった1つ。俺の言うとおりに動いてくれ。それ以外の事は好きにしてもらっていい』」
「『ヘイ! 俺はいいぜ! お前がだいぶクールなやつだってジンノージから聞いたしな! ヘイジンノージ! 腕は磨いたか?』」
陽気に大声を出す若い男を、モーメントがジロリと睨む。アーニャが寝ているだろうと言いたげだ。実際は寝ているわけではないので問題は一切ない。男は呼人をスルーすると、神王寺の方に行ってしまった。まず彼の名前も聞いていない。
「私も構わない。どうせどこにいても一緒だし。それに昔から日本には来たかったから。仕事がもらえるならありがたくこなすよ」
「住む場所や都会、田舎の好みなどは? 後なんと呼べばいい?」
「無い。でも人がいないレベルの田舎は嫌だ。適当に人がいる場所がいい。ブラーと呼んで。名前は忘れた」
「わかった」
ショートカットにボーイッシュな格好をした女性は帽子のつばで顔を隠したまま呼人の問いかけに答える。
彼女はブラー。認識を阻害する個性を持つ人物だ。神王寺との関係は、彼女の親が神王寺と交流があったことだけ。ただ、暗い仕事をしていた両親が死んだときに一時神王寺が面倒を見、アメリカの信頼出来る裏組織、それもけして表で大暴れするのではなく、裏の取引を受け持つだけの組織に連絡を取り、彼女を預け、それからも時々連絡を取っていたらしい。彼女を裏の世界に入れたのは、明るい世界を生理的に嫌い、また両親と同じ道に進みたいという彼女の意向ゆえだ。大事な相手はいない、と公言してはばからない神王寺だが、付き合いのある相手はそれなりにいるのだ。
そして最後に、呼人は黙ったままの男に話しかける。
「『お前がイスカンダルだな』」
「『そうだ。俺はお前が相手をしてくれれば他は従う』」
「『オーケーだ。明日にでもやろう。今日は彼女がいるから我慢してくれ』」
イスカンダルは海外の地下格闘技出身の若い男だ。年は18。まだまだこれから稼いでいくという相手だが本人には稼ぐつもりなど一切なく、ただ強者との戦いを望んでいた。そこで神王寺が呼人の映像を見せ、これと戦わせてやると勧誘したのだ。彼もいずれは、呼人の中に招いてモンスター達と殴り合わせれば満足するだろう。
と。そう話していると、玄関が開く音がして2人の人間が入ってくる。一人は以前も会ったリザードで、もう一人は彼が連れてきた子どもたちの世話係、マドレというあだ名の女性だ。スペイン語で『お母さん』と。2人とは最初に呼人が到着したときに挨拶をしており、食品などを買いにでかけたのだ。もの静かな女性であり、少ない口数よりも行動で子供の相手をしている。
リザードは早速ブラーに目をつけた様子で陽気に話しかける。
「やあ、可愛い女性が増えたのは嬉しいよ。僕はリザード。君は?」
「……そういうのは、苦手」
「おやおや、振られてしまったようだ。あ、リーダー、僕の書いたレポート見てもらえたかな?」
「詳細情報に可愛いか可愛くないかが絶対に書かれている頭の悪そうな報告なら読んだぞ」
「でも良い出来だったでしょ?」
若干というかかなり引いた様子のブラーはスススとリザードから距離を取り、呼人のアーニャを挟んだ隣にぽすんと座った。その手がゆらゆらとアーニャに触れようとしては引き戻され、それが繰り返されるのを見て呼人は彼女に話しかける。
「撫でて大丈夫だぞ。今は撫でても目を覚まさないし」
「この子は?」
「モーメントの妹だ」
「何をしてるの?」
「後で教える。取り敢えずそれぞれ勝手に自己紹介はしておいてくれ。それと、Mr
.PC」
呼人が声をかけると、神王寺のパソコンを勝手にカタカタといじっていた騒がしい男がグリンと振り返る。
「『ヘイなんだよノーマン! あ、そうだ俺の作り直した映像見たかよ! カイホーグンの捏造映像をカイホーグンのやったことが見えるように作り直したの! 俺あーゆうセコイのぶっ潰すの大好きなんだよな!』」
「『見た。これからもその調子で頼む。ただし情報の公開は解放軍関連で何か大きな動きがあってからだ』」
「『その辺は任せる! ジンノージがやってくれるから! 俺は取り敢えずヒーローネットワークに通路ぶっこんでくる!』」
「『お前……絶対逆探されるなよ』」
「『任せとけ!』」
Mr.PC。個性はPC。本人がパソコンの様々な機能からネットへの接続、更にハッキングなどを一切のツール無しで『本人が電脳空間に直接アクセスして』出来るという、パソコンだけでなく回線なども含めて扱える強力な個性なのだが、そんな個性の彼は何故かその個性を使わないハッキングを好む。曰く、自分はスペックが高く自由度が高すぎて使っても面白くない、との事だ。本人の中では自分の使い方が本能に染み付いている部分もあって、そうではない外部のPCとが良いのだという。
取り敢えず新しいメンバーとの顔合わせがすんだところで呼人は次の指示を出す。
「『よし。それじゃあ各自解散。ビルドメイクが合流し次第拠点を移動させる。今後の方針について興味のあるやつは残ってくれ。それとここも泊まれるが、部屋数はそれほど多くない。相部屋になるから適当にやってくれ』」
異能解放軍に潜入していた、というかもともと所属していたビルドメイクだが、Mr.PCが来たことで情報収集をする必要がなくなったのでこちらに合流することになっている。Mr.PCは既にあちこちのコンピューターやサーバーだけでなく、衛星にまでハッキングの手を伸ばしているそうなのでそれらの利用、遮断も出来てしまう。こんな人間が何故在野に眠ってるのかと思ったが、ただただ悪さなどにも興味はなく、かっこいいものに惚れ込んではハッキングで情報収集したり、むしろハッキングすること自体を楽しんだりと愉快犯的なことばかりをしていたらしい。
指示を受けて今後の方針など興味のないイスカンダルは部屋から出ていったものの、それなりに広いリビングは既に人でいっぱいだ。なんともアットホームなヴィラン集団もあったものだと、呼人は変な気分がしたが、彼らが呼人の手足となってくれる。大切な仲間達だ。
「『オーケー、じゃあMr.PCとブラーはこっちだ。説明をしておこう』」
「『ヘイ! お前のクレイジーでクールなアイデアってのきかせろよ!』」
着々と、戦力は整い始めていた。
******
「『かー! クレイジーな野郎だなほんとに!』」
「本気で、言ってる?」
「本気だ」
「『ヘイ! 日本語だと何言ってるかわからねえよ英語で話してくれ!』」
方針、目指すところの説明を終えたところでブラーとMr.PCからはそんな答えが帰ってくる。
「『だから人材を揃えてる。それに……これから獲得する目処も立ってるだろ』」
「『言っておきますけど。私はまだ納得してませんからね』」
「『流石に0になるのは困るが、なら子どもたちを真っ直ぐに育ててやれば良い。基本はあなたにおまかせするさ』」
ふん、と鼻を鳴らすのはマドレだ。彼女が来たのは、他のメンバーと違ってただただ子どもたちの世話をするためである。そのため、『将来的には保護し育てた子どもたちの一部を利用する』という呼人の考えに異論を示しているのだ。
確かに方針と大きく外れる内容だが、呼人の側にも反論はある。まず1つ目は、絶対に強制的には子どもたちをこちら側には引き入れないようにする。これは当然、意思を尊重するためだ。そして2つ目、子どもたちには、社会一般的な善と悪が判別できるような教育をする。フラットにどちらの良い場所も悪い場所も、なんてことはしない。まず最初に善悪の判断を与えた上で、そこから様々な考え方に対する知識を与える。
つまり、基本子どもたちには呼人達の活動が悪に見えるように教えた上で、15を迎えたときに、自分たちの組織の実態を教えてそれでも協力するかという問いかけを行うのだ。そして協力しない、あるいは呼人達に敵意を持った子どもたちは表の世界に返し、それ以外の、積極的に悪になろうと決めた子どもたちをプロパガンダとして、そして戦力として育て上げる。
『お前達社会が見捨てた子どもたちは、これほど立派で凶悪なヴィランになりましたよ』と。
目指すのは、呼人達裏で手を回す人間がいなくても誰かが誰かに自然に手を差し伸べ、救われない者がいない社会。ただ、それは法制度その他倫理の観点などからも困難である。だから常に警鐘を鳴らし続けるのだ。
「『マドレは……お母さん?』」
「『私は戦いませんよ。ただ子どもたちにより良い明日を、と。それだけを願っています』」
そう言ったマドレは、ささっと机の上に食べ物を並べていく。トルティージャを始めとしたスペイン料理に加えて、唐揚げなどの日本の料理もある。曰く、日本に来ることになってから勉強したらしい。食事は子育てにおいて、栄養の観点だけでなく精神の成長にとっても重要、だそうだ。
「『うまそうじゃん! いただきまーす!』」
「『どうぞ―――! パトリックさん。あなた箸やフォークぐらい使いなさい。これから子どもたちを迎えることになるんですよ』」
早速いただきますと素手で食べ物に手を伸ばしたMr.PCは、子供の教育に悪いとマドレに怒られていた。当面、人が足りていない以上実働隊のメンバーも子どもたちと関わる必要がある。そのため、お手本となる行動をしなければいけないのだが、まあMr.PCには厳しいだろう。しばらくはマドレのお小言を受ける時間が続きそうだ。
ちなみに彼の名前は本名か偽名か不明だが『パトリック・コールドウェル』である。それと個性をかけ合わせてMr.PCと呼人は呼んでいた。
呼人の作る組織の仲間が集まってきました。皆それぞれに実力者だったり有用な個性を持ってます。人物紹介はそのうち作ります。
Pixiv fanboxをしています。
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月200円から応援できるので、是非お願いします。応援は生活費に返させていただきます。頑張って書きます。
小説内で登場したモンスターの形態変化とか生態について細かい説明が欲しいですか
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欲しい
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勝手にニヤつくからいらない
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あまり興味がない