モブウマ娘達の挽歌   作:塞翁が馬

3 / 9
落差のある自己紹介

 二時間近くの間を置いてやっと再起動したライオンハートを加え、改めて自己紹介の時間となる。

 

 まず初めにトレーナーだが、オグリキャップのトレーナーをしていたのは先ほどの通りだが、それ以外にも数多くのウマ娘を担当し、その中にはかの名門メジロ家の一人、メジロマックイーンの担当をしていた事もあるという数多の実績を持つ人物だったのだ。

 

 このメジロマックイーンも、メジロ家史上最強のステイヤーと名高い名ウマ娘だ。成程、トレーナーの仕事部屋にトロフィーが数多く並んでいるのも納得である。

 

 そしてオグリキャップ。引退してからは故郷で悠々自適に過ごしていたそうだが、つい最近このトレセン学園に呼び戻されたらしい。

 

 なんでも、食料の仕入れに関係する職員が事情により急遽退職となったため、その代理として白羽の矢が立ったようなのだ。

 

 基本的にウマ娘は普通の人たちより身体能力が高い分、大食いである。当然、そのウマ娘達が集まるこのトレセン学園の食料消費量は、どのアスリート団体と比較しても段違いの量だ。その分、食料の荷下ろしなどは量も多く、足腰に負担がかかる大変ハードな仕事となってしまう。

 

 しかし、オグリキャップならその足腰の強さと豊富な体力は現役時代に証明済み…という事での選考らしく、そしてその内容をオグリキャップも快く受け入れたそうだ。

 

「オグリ…。頼むから仕入れた食料を全部胃袋に入れる…なんてマジックを披露するのはやめてくれよ」

 

「失礼だぞトレーナー。いくら私でもそんな事はしない! じゅるっ………多分」

 

 冗談とも本気とも取れない微妙な表情で口を開くトレーナーに、憤慨した様子で断言するオグリキャップ。が、涎を服の裾で拭きながらのぼそりと呟いた最後の言葉が非常に不安をあおる。

 

 ハルウララはこのやり取りにポカンと口を開けていたが、彼女が天性の豪脚と共に天性の胃袋を持っているのは有名な話だ。故に、ライオンハートも少し冷や汗をかいている。

 

 次にハルウララなのだが、この子も地方出身にしてライオンハートと同じく今日トレーナーからスカウトを受けたらしい。

 

 なんでも、ハルウララの故郷が経営苦であり、それを少しでも助けるために上京してきたのだが、ライオンハートと同じく結果が出せず苦労していたところにトレーナーから声がかかったそうだ。

 

 こんな無邪気で天真爛漫…悪く言えば能天気な子ですら気づける経営苦とは割とシャレになっていないのでは? とも思ったライオンハートだったが、

 

「ウララが有名になったらみんなを助けられると思ったの! だからトレーナー! 宜しくお願いします!!」

 

「うん、いい目つきだ。僕もできる限りの事はしてみるから、一緒に頑張ろうな」

 

 桜の見える瞳に熱い闘志を燃やすハルウララにトレーナーもすっかりほだされたらしい。慈愛の笑みを浮かべてハルウララの頭を撫でながら頷く。

 

 そして最後、ライオンハートの番がくる。

 

「わ、私は…。その、小さい頃に見たオグリキャップさんの走る姿を見て…」

 

「そうか。それは嬉しいな」

 

 何やら歯切れの悪いライオンハートの言葉に、オグリキャップが笑みを浮かべる。が、

 

「違うんです! 確かに最初はオグリさんに憧れていたんですけど、学校でアンタみたいなどんくさいのがオグリさんみたいになれるわけがない…って言われて、それで絶対に見返してやるって…」

 

 悲痛な叫びで告白するライオンハートだったが、その声量は尻すぼみにどんどん小さくなっていく。何やら委縮している感じだ。

 

 とはいえ、それも無理はないかもしれない。目の前には最早語るまでもないレジェンドが二人。更に隣にいる少女も実力こそ五十歩百歩かもしれないが、その目標は大きく眩しいものだ。

 

 片や、馬鹿にされたから見返してやる…などという私怨バリバリの理由を告白してしまったライオンハート。一人だけ明らかに小者臭が漂い始めている。それが分かっているからこそ、恥ずかしさで自然と視線を俯かせてしまう。

 

「…ライオンハート。顔を上げてくれ」

 

 そんなライオンハートに、オグリキャップが穏やかな口調で語り掛けてきた。

 

「いいか? 私は目標を…それこそお金が欲しいなんていう理由だとしても、それ自体をバカにしたりはしない。何故なら、どのみち意志の弱い者は遠からずこの学園を去る事になるからだ」

 

「うんうん。馬鹿にされて悔しかったから見返してみせる、大いに結構じゃないか。後は、君がその目標を達成する強い意志を持っているかだけだ」

 

「がんばろうねハートちゃん!!」

 

 オグリキャップの話に、トレーナーとハルウララも加わる。そんな器の広い答えを示してくれる三人に、ライオンハートはもう嬉しいやら申し訳ないやらでどんな顔をしていいのかわからない。

 

 そんな中、唐突にオグリキャップがとんでもない提案を口にしたのだ!

 

「そうだ。ハルウララも一緒に今から私と併走してみないか? 私も久しぶりに中央のターフを走ってみたいし、私の走り方が何かヒントになるかもしれないしな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。