ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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 綾小路がオブジェクトの整備士になることを了承した後、竜治は坂柳と綾小路と一緒に、どうやったら綾小路をオブジェクトの整備士だと周りに納得してもらえるか考えた。

 

 そして考えた結果、「綾小路の元々頭が良かったが目立つのが嫌いで普段は実力を隠していた。そして以前からオブジェクトに興味を持っていて、放課後図書館でオブジェクト関連の資格の勉強をしていたところを竜治が見つかった。その後、竜治の紹介で彼と同じ整備基地の採用試験を受けて合格し、五月から特待生として整備基地で働くことになった」というカバーストーリーが完成した。

 

 この話を信じてもらうために綾小路は中間テストで高得点を取らなくなった上に、放課後は忙しいフリをしなくてはならなくなったが、綾小路も自分の父親から逃れるためならと納得してくれた。こうして話し合いが全て終わった竜治達三人は学校に戻るのであった。

 

「遅くなったな」

 

「そうですか? 今日は調整作業も綾小路君の説得も早く済んだと思いますけど」

 

「オレもアリスと同意見だ。なぁ、アリス、アヤノコウジくん。よかったらどこかで食べていかない? おごるよ」

 

 夜の学校の敷地内で話す綾小路と坂柳に、竜治は一緒にどこかの店で夕飯を食べることを提案する。

 

「それは助かるが、ポイントは大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ」

 

「………!?」

 

 竜治は綾小路の言葉に答えると、自分の携帯端末を取り出して保有しているポイントを見せ、綾小路はそのポイントの数に目を見開いた。

 

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「……二百万ポイント以上もどうして持っているんだ?」

 

「ああ、それはオブジェクトの電気を売った報酬ですか?」

 

 驚いた顔で言う綾小路の質問に坂柳が答える。

 

「電気を売った?」

 

「そうだ。がっこうから待機中のオブジェクトの電気をうってほしいとメールがきて、四月のげつまつに振込まれた」

 

 竜治が四月にきた学校からのメールについて話すと、綾小路は探るような目で彼を見てきた。

 

「……すでにオブジェクトのエリートっていう権力を持っていて、実力も学力もポイントもある。雨田、いっそのことお前がDクラスを率いた方がいいんじゃないか?」

 

「私も以前そう言ったのですけど、本人はリーダーなんて柄じゃないと言って……。私としてはもっと色々と積極的になってほしいのですが……」

 

 綾小路の言葉に坂柳が「困ったものです」と言いたげな顔で同意して、竜治が二人になんて言おうか迷っていると……。

 

 ガンッ!

 

 と、誰かが固い金属を蹴ったような音が聞こえてきた。

 

『『………?』』

 

 突然聞こえてきた音に竜治達三人は顔を見合わせた後、音が聞こえてきた方へ向かう。するとそこでは一人の女学生が忌々しげに電柱を何度も蹴りながら、呪詛にような呟きを口にしていた。

 

「ああ〜、ムカつく! あの女! あの女! 勉強会をしたいから協力してって言ったのは自分の方でしょ? それなのに何よあの態度! そもそもアンタなんかに人に何かを教えられるわけないでしょ? というか、あんな言い方したら須藤達だって怒って当たり前だっての! それなのに『私は悪くありません』みたいなすました顔をしやがって! 死ねばいいのに、堀北なんか! 死ね、堀北! 死ね、堀北! 死ね! 死ね! 死ね!」

 

『『………!?』』

 

「………」

 

 電柱を蹴りながら恨み言を口にしているのは竜治と綾小路と同じDクラスの櫛田であった。今の彼女はいつも笑顔を絶やさない普段の姿からは想像もできない憤怒の表情を浮かべていて、加速する暴言に竜治と綾小路は思わず絶句し、坂柳だけが面白そうに櫛田を見ていた。

 

「はぁ……! はぁ……! ………っ!?」

 

 恨み言を言いながら電柱を蹴り続けて体力を消費したのか、それとも多少は気持ちが落ち着いたのか、一先ず電柱を蹴るのを止めて荒い息を吐いていた櫛田は、そこでようやく竜治達三人がいることに気づく。

 

「貴方達……!」

 

「こんばんわ。一人で夜の散歩をするのはいいですけど、近所迷惑になるかもしれませんから、大声はあまり出さない方がいいですよ?」

 

 目を見開く櫛田に笑顔で挨拶をする坂柳。竜治と綾小路の二人はそんな坂柳の背中を畏怖の目で見ていた。

 

「………貴女、今の話聞いた?」

 

「ええ。中々興味深い独り言でしたね」

 

 こちらへと近づき、まるで今から刺し殺してきそうな目で聞いてくる櫛田に、坂柳は笑顔を崩すことなく答え、それを見て竜治と綾小路は坂柳に逆らわないことに決めた。すると櫛田は次に竜治と綾小路の方へ殺気のこもった視線を向ける。

 

「綾小路君と雨田君も聞いたの?」

 

「あら? 二人と同じクラスでしたか?」

 

「そうだけどそれが何? それで? 二人とも聞いたの?」

 

 櫛田は坂柳に短く答えると竜治と綾小路に再び質問をして、それに二人が頷いて答えると、櫛田は大きく息を吐いた。

 

「……そう。それで三人はどうするの? 今日のことをクラスに言いふらすの?」

 

「それは詳しい話を聞いてから決めたいと思います。まずは何であそこまで怒っていたか教えてくれませんか?」

 

 半ば自暴自棄になった櫛田に坂柳はそう言い、櫛田は自分が怒っていた理由、今日の放課後に起こった出来事を話始めた。

 

 櫛田は竜治達がオブジェクトの整備基地に行った後、堀北に話しかけられてある事を頼まれた。それは須藤、池、山内といった前の小テストで赤点を取り、次の中間テストで退学になるかもしれないのに勉強をする気配のないクラスメイトと勉強会をしたいので、彼らに声をかけてほしいというものであった。

 

 堀北は上位のAクラスとなることに必死で、そのためにクラス全体の学力を上げたいと考えていて、恐らくは放課後に綾小路に用事があると言っていたのもこれのことだろう。

 

 櫛田の協力で何とか須藤達を集めて勉強会を開いて堀北だったが、途中で問題の意味すら分からず成果が見られない須藤達に堀北は暴言を言い(本人は単に注意しただけのつもりらしいが)、これに須藤達は激怒して勉強会は途中で解散となってしまう。

 

 その上、自分で勉強会を企画した上に櫛田に協力を頼んだ堀北は、自分が全く悪いとは思っていないようで「時間を無駄にした」だの「出来の悪いクラスメイトは切り捨てたほうがいい」と言って、最後まで須藤達を引き止めようとしていた櫛田を置いて先に帰ってしまう。

 

 ここまで聞いた竜治達は、それは櫛田も怒っても仕方がないだろう、と思ってしまった。

 

「これでいい? それで私をどうするつもり?」

 

「……そうですね。櫛田さんでしたっけ? 私……というか、竜治君と綾小路君の協力者になりませんか? 役に立ったらお礼はしますよ。竜治君が」

 

『『えっ?』』

 

 坂柳の提案に、櫛田だけでなく竜治と綾小路も同時に声を上げた。

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