ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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決着

「よかった。まにあったみたいだ」

 

 竜治が「かみなりぐも」のコックピットでクウェンサーとヘイヴィアの姿を確認して安堵の息を吐くと、無線機から当の本人達の声が聞こえてきた。

 

『リュージ! 来てくれたのか!』

 

『何だよチキショウ。メシを恵んでくれただけじゃなく生命まで助けてくれるだなんて、この超絶美形貴族のヘイヴィア様の次くらいにいい男だぜ、テメェは』

 

 増援の「かみなりぐも」の姿を見て安心したクウェンサーとヘイヴィアの軽口に竜治が小さく笑うと、無線機にある意味最も聞きたくない男の声が割り込んできた。

 

『馬鹿な!? 何故オブジェクトの増援が来る!?』

 

 割り込んできたのは正統王国の評議員で、多国籍軍の司令官のフライドであった。

 

 どうやら監視衛星でクウェンサーとヘイヴィアの様子を見ていたのだろう。オブジェクトが生身の兵士二人をなぶり殺しにするのを観察する悪趣味さに竜治が顔をしかめていると、無線機からフライドの怒声が聞こえてきた。

 

『貴様! タナミ砂漠には来るなと命令しただろう! これは明確な命令違反「だまれよ。ルールいはんをしたのはそっちだろう」……何?』

 

 竜治はフライドの言葉を遮ると、坂柳から送られてきた音声データを再生させた。

 

 音声データはクウェンサーとヘイヴィア、そしてフライドの会話で、会話の内容を簡単にまとめると次のようになる。

 

 フライドはオブジェクト関連やエリートの育成に向こうに昔から深く関わっており、オブジェクトが戦争を制する「クリーンな戦争」こそが世界を平和にする方法だと心から信じている。

 

 しかしクウェンサーとヘイヴィアがオブジェクトを生身で破壊するという奇跡を起こしたため、「オブジェクトを倒せるのはオブジェクトだけ」という定説とそれによって支えられている「クリーンな戦争」という言葉に揺らぎが生じ始めた。

 

 その「揺らぎ」を無くすためにフライドはクウェンサー達の抹殺を企み、二人の増援要請を封じるとジャミングを使って通信も出来無くし、オセアニア軍事国のオブジェクトにクウェンサー達を殺させようとした。

 

 オセアニア軍事国のオブジェクトがクウェンサーとヘイヴィアを殺したら、その後は大量虐殺を行うと知った上で。

 

 これは「部族」の人々を守るためという名目で結成された多国籍軍の司令官として、これ以上ない反逆行為と言えた。

 

『な、何故その会話が……!? 通信はクウェンサー達の無線機にしか送っていないはず……?』

 

『それは簡単なことです』

 

 竜治が再生した音声データを聞いてフライドが驚き呟くと、別の通信チャンネルから坂柳の声が聞こえてきて、フライドの呟きに答える。

 

『だ、誰だ?』

 

『初めまして。私は「かみなりぐも」の戦術オペレーターを勤めている坂柳有栖といいます。どうぞお見知りおきを。それで貴方達の会話を聞いた理由ですが、竜治君の「かみなりぐも」は便利な「ペット」を飼っているのです』

 

『ペット、だと?』

 

 坂柳の言葉にフライドが訳がわからないという風に呟くと、彼女は楽しそうな口調で説明をする。

 

『「かみなりぐも」の主砲は、レーザービーム砲だけでなくレーザー式軌道エレベーターとしても使えます。「かみなりぐも」は戦いの最初に主砲から無人偵察機を打ち上げ、そこから得られる情報で狙撃の精度を上げるのですが、その偵察機が貴方達の通信データを入手したというわけです』

 

『………!』

 

『無人偵察機の打ち上げ、か。資本企業は宇宙への打ち上げ技術に優れているって聞いたけど、そんな使い方が……』

 

『というか、主砲のレーザービーム砲から偵察機を打ち上げるなんて、色々とかっ飛んでねぇか?』

 

 坂柳の説明にフライドが歯噛みをして、クウェンサーとヘイヴィアがそれぞれ意見を口にするが、坂柳は正統王国のヒーロー二人の言葉を無視してフライドに話しかける。

 

『貴方には感謝していますよ? 貴方の愚かとしか言いようのない指示のお陰で、オセアニア軍事国のオブジェクト撃破という名誉は私達のものとなりましたし』

 

 竜治が視線を前に向けると、機体のほとんどが黒焦げになったオセアニア軍事国のオブジェクトがこちらに背を向けて逃げようとしていた。しかし先程のビーム攻撃によって推進装置にダメージを受けたのか動きは遅く、武装のほとんども使用不能となっており、ここから逃すことはまずないだろう。

 

 オセアニア軍事国のオブジェクトに竜治が意識を向けていると、坂柳の心なしか冷たく感じられる声がフライドに向けられる。

 

『ですが、貴方の指示のお陰で竜治君やこちらの兵士達が危機的状況に陥りかけたのも事実。ですから私達は貴方に賠償金を請求します』

 

『な……!?』

 

『おいおい……! 資本企業らしいストレートな要求が出たぞ、オイ?』

 

『おっかねぇな。資本企業から賠償金だなんて、ケツの毛までむしり取られるんじゃねぇか?』

 

 坂柳の言葉にがフライドが絶句し、クウェンサーとヘイヴィアが恐れ慄く声で呟くが、やはり坂柳は正統王国のヒーロー二人の言葉を無視して言葉を続ける。

 

『そうですね……。まずは貴方の財産、それから貴方はオブジェクトとエリートに深く関わっているようですから、その情報や特許の権利を全ていただきますね。ああ、ちなみにさっき竜治君が再生した音声データは先程多国籍軍に送りましたから逃げられませんよ?』

 

 鬼がいた。

 

 フライドの退路を絶った上にこれから身ぐるみを剥ぐと、それはそれは楽しそうな声で宣言する坂柳に、同じ資本企業の竜治ですら軽く引いた。

 

『怖え……! あのアリスって子、可愛い声をしているけど、ウチの十八歳銀髪爆乳司令官とは別の意味で怖いぞ?』

 

『ついでに言えば二人共根っこは同じとみた。二人共生粋のドSだぜ、絶対』

 

 無線機から聞こえてくるクウェンサーとヘイヴィアの震えるような声を聞いて竜治が内心で頷いていると、坂柳の声が聞こえてきた。

 

『それでは竜治君。予定が山積みですから、まずはそのオセアニア軍事国のオブジェクトから……やっちゃってください♩』

 

「あらほらさっさー」

 

 坂柳が楽しそうにオブジェクトの撃破指示を出すと、竜治は謎の言語で返事をしてレーザービームを発射し、今度こそオセアニア軍事国のオブジェクトを破壊した。

 

 これでオセアニアでの戦いは終わった。しかしオブジェクトに乗る竜治の仕事はまだまだ終わりではなく、むしろこれからが本番のようでようである。

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