ようこそ「エリート」、実力至上主義の教室へ   作:兵庫人

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坂柳のお友達

 竜治が特別棟にある隠しカメラの映像データを調べると言った日の翌日。その日の学校の授業が終わると竜治は、綾小路と櫛田を自分の部屋に呼んで昨日行った調査の結果を報告しようとしたのだが、彼の部屋に訪れたのは綾小路と櫛田の二人だけではなかった。

 

「うわぁ……。凄い数のモデルガンだね」

 

「そうだな。しかも資本企業だけじゃなくて正統王国や情報同盟、信心組織のものもあるぞ。よく揃えたな?」

 

「モデルガンのコレクションは竜治君の数少ない趣味ですからね。昔から少しずつ集めていたみたいですよ」

 

「……なぜ、お前がいるんだ、アリス?」

 

 竜治の部屋の壁には無数のモデルガンが飾られていて、それを見た櫛田と綾小路が言うと本人ではなく何故か呼んでもいないのにここにいる坂柳が答え、坂柳に竜治が話しかける。

 

「そんな冷たいことを言わないでください。DクラスとCクラスのトラブルのことは私も知っています。それを竜治君達がどう対処するか気になりましたし、それに私の『お友達』を紹介したいと思いましたから」

 

「おともだち、ね……」

 

 坂柳の言葉に竜治はそう呟くと、彼女の後ろにいる三人の男女に視線を向ける。学校からの帰り道に綾小路と櫛田と一緒に合流してきた坂柳は、その時からこの三人の男女を連れていた。

 

「あんたが『例の』リュウジくんか? 俺は橋本正義だ。まあ、よろしくな」

 

 竜治に視線を向けられると坂柳の後ろにいる三人の男女のうち、金髪でどこか軽そうな雰囲気の男子生徒が自己紹介をして、それに続いて他の二人も自己紹介をする。

 

「神室真澄よ。色々あって、坂柳と一緒にいるわ」

 

「鬼頭隼だ」

 

「アマダリュウジだ。こちらこそよろしく。……それより『例の』ってどういうこと?」

 

 気の強そうな女生徒と強面の男子生徒の自己紹介を聞いて竜治は名乗り返すと橋本に質問をする。

 

「ああ、坂柳さんはよくお前さんの名前を口にするんでね。それで前から少し気になっていたんだよ」

 

 竜治の質問に橋本が答えると横にいる神室と鬼頭も頷き、坂柳は小さく笑いながら橋本達に話しかける。

 

「ふふっ。それはそうですよ。竜治君は私の大切なパートナーですからね」

 

「……貴女がそこまで言うなんて、彼って一体何者なの?」

 

 坂柳の言葉に興味を覚えた神室が聞くと、坂柳は横目で竜治を見て彼が仕方なさそうに頷くと、神室達に竜治が何者であるかを教える。

 

「竜治はあの雨田電機の社長の長男で、オブジェクト『かみなりぐも』の操縦士なのですよ。そして私は竜治の専属の戦術オペレーターを務めていたりします」

 

『『………!?』』

 

 竜治がオブジェクトの操縦士であると坂柳に知らされた橋本、神室、鬼頭は目を見開いて驚き、橋本はしばし絶句した後で恐る恐るという感じで口を開く。

 

「オブジェクトの操縦士に、戦術オペレーター……? 坂柳さん? それって、マジですか……?」

 

「本当ですよ。それでそこにいる綾小路君はオブジェクトの整備士で、櫛田さんは仕事で竜治君と綾小路君が学校を離れた時にクラスとの連絡役をしてくれてます」

 

「……………!?」

 

 その瞬間、橋本に稲妻が走った。

 

 橋本正義という男は、一見軽そうに見えるが実際はかなり計算高く、人並み以上に出世欲がある。

 

 橋本の目標は最終的にAクラスとなってこの学校を卒業し、Aクラスの卒業生だけが得られる「望む大学や企業に確実に進学か就職できる権利」を得て人生の勝ち組となることだ。坂柳と行動を共にしているのも、彼女が最もAクラスの卒業生に近く、一緒にいれば途中で何らかのおこぼれにあずかれると考えたからである。

 

 そんな橋本の前に現れた雨田竜治というこの男は、全学年でも十人もいない特待生で、大企業の雨田電機の社長の長男で、オブジェクトの操縦士で、まさに橋本が考える勝ち組そのものであった。

 

 もし坂柳だけでなく竜治の庇護も受けれたら、これからの学生生活どころか卒業後の人生も磐石なものになるだろう。そう考えた橋本は……。

 

「リュウジくん……いいや、雨田さん。これからどうぞ、よろしくお願いします」

 

 と、竜治の前に進み出ると深くお辞儀をするのだった。それは直角九十度の綺麗なお辞儀で、橋本の突然な行動に坂柳以外の全員が目を丸くして、竜治は思わず呟いた。

 

「いや……いきなりなにごと?」

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