「それで竜治君達は今回のトラブルについてどこまで調べているのですか?」
「……それをおしえるまえに一つききたい。今回のけん、Aクラスは関わるつもりはあるのか?」
橋本のあいさつ(?)が終わり坂柳が早速本題に入ると、竜治は探るような目を彼女に向ける。これだけのやり取りで竜治がそれなり大きな情報を掴んでいることを確信した坂柳は笑みを浮かべて首を横に振った。
「いいえ。Aクラスは今回の件は静観するつもりです」
「そうか。わかった」
坂柳と竜治の会話を聞いて情報のやり取りをしても大丈夫だと思った櫛田が、昨日の会話を思い出しながら口を開く。
「えっと……。確か特別棟の監視カメラのデータを調べるって話だったよね?」
「特別棟? 特別棟にはカメラなんてないって聞いたけど?」
櫛田の言葉に神室が言うと、綾小路がそれを否定する。
「いや、特別棟には隠しカメラが無数にあった。ご丁寧に集音マイクもセットだ」
竜治は綾小路の言葉に頷くと、昨日自分が何をしたのかを説明する。
「きのうオレは『かみなりぐも』の調整をしていた。だからのその合間にがっこうのデータベースにハッキングをして映像データを手にいれた」
「データベースにハッキングを作業の合間に? 何か、さらりと凄いこと言ってませんか、雨田さん?」
「……」
橋本と鬼頭の二人が若干引いた顔で竜治を見るが、竜治はそれを無視して話を続ける。
「でも、それでもんだいがふたつ発生した。……これをみてくれ」
そこまで言って竜治は自分の携帯端末を取り出すと、そこに入力した映像データを再生する。携帯端末の画面に映し出されたのは、特別棟の廊下で言い合う須藤とCクラスの生徒三人が言い合う姿であった。
携帯端末の画面の中ではCクラスの生徒三人は呼び出した須藤を挑発し、それに激怒した須藤がCクラスの生徒達を一方的に叩きのめし、それを見ていた坂柳が笑いを堪えるような表情で口を開く。
「あらあら……。これは確かに有力な情報ですけど、諸刃の剣になりそうですね」
「そうなんだよな……」
坂柳の言葉に竜治はため息を吐いて頷く。
確かにこの映像データは先に仕掛けたのはCクラスである証拠になるが、同時に須藤が「無抵抗の生徒三人に一方的に暴力を振るった」という証拠にもなる。
「いやいや、これって須藤のヤツ、やりすぎじゃね? どっちかって言うと須藤の方が悪者だろ?」
橋本の言う通り、これを審議の場で見せればすぐに決着はつくのだろうが、その場合はCクラスの生徒三人よりも過剰暴力を振るった須藤の方が処罰を受ける可能性が高い。
「なるほど。これが二つの問題の一つか。じゃあ、もう一つの問題は何だ?」
綾小路が聞くと、竜治は難しい顔となって黙り、やがてゆっくりと話し出す。
「……まずさいしょに、これはスドウくんの件とはかんけいない。だけど、こっちの方がスドウくんの件よりおおごとだ。がっこうのデータベースをハッキング中に、ぐうぜん分かったんだけど、がっこうの敷地内でだれかが外部にれんらくをとっていたのが分かった。……それも、がっこうやかいしゃを通じずに」
「っ!? そうですか……。確かにそれは須藤君の件よりも重要な案件ですね」
「え? え? 一体どう言うこと?」
竜治が告げた二つ目の問題に坂柳が目を細めて呟くと、櫛田が訳の分からないと言った風に聞いてきて、坂柳が詳しく説明をする。
「この学校は生徒の教育と身柄の安全のために、外部との出入りや連絡は可能な限り最小限としています。それは学校の職員や敷地内にあるお店の従業員も例外ではなく、外部と連絡をする時は学校の事務室か自分の会社を経由するのが原則。違反者は即時退職を言い渡された上に情報漏洩の罪に問われることもあります。そして竜治君の言う通り、その原則を破って直接外部に連絡を取る人がいたとしたら……」
坂柳はそこまで言うと一度言葉を切り、冷たい目となって続きを口にする。
「その人は学校のスポンサーとは別の企業のスパイ。最悪は企業テロの可能性があります」