竜治は坂柳達との会話があった日から数日間、須藤の件について更に詳しい情報を調べると同時に、学校や会社を通さずに外部と連絡を取りあっていた人物について調査をした。その結果、外部と連絡を取りあっていた人物は坂柳の予想通り、企業テロの協力者であることが分かった。
企業テロの協力者は、学校の敷地内にある一つの店の男性従業員だったのだが、彼は重度のストーカーであったのだ。
従業員は以前から一人の女性に強い執着を見せており、その女性が今年の高度育成高等学校の新入生として入学すると知ると狂喜乱舞して、次第に女性を自分だけで独占したいと考えるようになる。そこで企業テロのグループは従業員に次のような取引を持ちかけた。
建物等の学校の敷地内のデータ、そしてお前が手に入れられる店の顧客データを全て寄越せば、目当ての女性を手に入れる援助をしてやる、と。
学校から生徒を誘拐すればすぐに発覚して必ず大騒ぎになり、とてもではないが一介の店の従業員程度が集められるデータでは釣り合いが全く取れない。企業テロのグループも実際にまともな援助をするつもりはなく、従業員が女性が拐ったところでその事実を世間に公表し、学校とそのスポンサーの評判を貶める「嫌がらせ」程度の目的であった。
この程度の嫌がらせは資本企業では……いいや、どの勢力のどの国々でも普通に行われていて、従業員は企業テロの取引に応じた。その際に従業員が行った連絡の通信電波を、学校のデータベースへハッキング中だった竜治が感知したのである。
「まったくふざけやがって……!」
現在、竜治は学校の敷地内にある一つの店の前に立っていて、怒りを押し殺した声で呟いた。
ちなみ竜治の近くにはいつも一緒にいる綾小路、そして櫛田の姿はなかった。今日は生徒会の立ち会いのもとで行われるDクラスとCクラスの審議が行われる日であり、綾小路と櫛田の二人は須藤の弁護のために、彼と一緒に審議が行われる教室に行っていた。
審議の結果は気にはなるがそれ程心配はしていなかった。この数日間、情報収集をすると同時にもう一回学校のデータベースにハッキングをした竜治は、特別棟の映像データとは別の事件に関係するデータを発見して綾小路に渡してある。彼ならばその二つのデータを上手く活かして審議も有利に進めてくれるだろう。
だから竜治は目の前の問題に集中することができる……いや、この問題以外気にする余裕などなかったという方が正しかった。何故ならば、企業テロに協力している従業員が勤めている店の看板には次のような文字が書かれていた。
アマダデンキ。
そう、企業テロに協力している従業員が勤めているのは、竜治の実家の企業、雨田電機の支店の一つであったのだ。もし今回の生徒の誘拐が実行されれば、学校とそのスポンサーの企業よりも先に雨田電機の評判が下がるのは明らかだ。
「ストーカーにゆうかい……? そんなことをして『あまだでんき』の株がさがったらどうしてくれるんだ?」
資本企業は、情報の速さと正確さを何よりも重視する情報同盟程ではないが、企業の情報には常に目を光らせている。そんな中で末端の一従業員とは言え、ストーカー目的で企業テロに協力したという事実は大きな汚点となる。
竜治は実家の雨田電機、そしてそこで働く従業員のことを大切に思っている。だからこそ今回の従業員の裏切り行為は許せず、先程から竜治が怒りに燃えているのもこれが理由であった。
「2、3発はなぐってもべつにいいよな?」
右手を固く握り締めながら竜治は、実家の支店に向かって歩いて行く。
調査の結果、今支店にいるのは裏切り者の従業員だけだと言うのは分かっている。だから従業員を捕らえるには、エリートになる訓練で身体能力を強化してある自分だけで充分だと、坂柳だけでなく学校からも了解をとってある。
今、企業戦士リュウジの戦いが始まろうとしていた。